魔法少女まどか☆マギカ ~少女へ捧げる鎮魂歌~ 作:kasyopa
Side 黄昏藍香
朝ごはんを頂いて、私のお泊まり会はお終い。
結界のお城の中。応接間を抜けたその先。純白の世界に黄、紫、青、赤の扉が二分されてそこにあった。
そして3人の魔法少女と向き合っていた。因みに全員変身済み。
「で、なんで集められたの?」
「よくぞ聞いてくれましたさやかちゃん!」
その簡単な問答でマミさんと杏子ちゃんはやれやれと首を横に振り、さやかちゃんはその行動の意味が解らず首をかしげた。
「もうすぐワルプルギスの夜が来るからね。対ワルプルギス戦の訓練を行います!」
「あー、そういえばもうそんな時期かー……全然実感なかったけど」
「そこら辺は実感持て。ただでさえ普通の魔女もまともに相手出来ねーんだからよ」
「ぐ、そ、そこは」
「はいはい茶番はそこまでにして。藍香さん、まずは何をすればいいのかしら?」
「まずは長所を伸ばしてもらおうかなって。マミさんは射撃・拘束、さやかちゃんは近接・回復、杏子ちゃんは近接と……」
「なんでそこ黙るんだよ」
「とりあえずそこが入口だから、自分のソウルジェムと同じ色の扉に入ってね」
そう言うと、真っ先にマミさんが黄の扉の前に立つ。
「ここでいいかしら?」
「はい。あ、それと目標達成かギブアップで部屋から出られますから、もしもの事があったら言ってください」
「解ったわ」
ドアノブを回し、マミさんは部屋の奥に消えた。
「対ワルプルギスの夜訓練って言っても、要は個々の能力を上げるだけじゃねーか」
「意外と個々がしっかりしてたら何とかなりそうなんだけどね。連携とかチームワークは後でやるよ」
「ま、そっちの方が気軽でいいよ。じゃああたしは赤の扉を選ぶぜ」
杏子ちゃんも扉の奥に消えて行った。残ったのはさやかちゃん。
「なんかこれ、ゲームみたい」
「そう言われてみればそうかもね。ささ、早くさやかちゃんも」
「その前に質問! あの紫の扉ってもしかして転校生用?」
「うん。一応連絡はしたんだけどね。今は来てないみたい」
「そっか……一応入ってるんだね。あいつも」
「気にいらない?」
「そりゃそうよ! まどかに何かと付きまとって変な事言ったり、魔女をいつの間にか横取りしてたり!」
「それにあの時マミさんが食べられそうになった時だって」
『それは違うわ』
「マミさん?!」
スクリーンが映って、その中にはマミさんが居た。
『美樹さん、よく聞いて。あの時暁美さんが遅れてきた理由は』
「あ! 危ない!」
画面の後ろから、マネキンのような的が襲いかかってきた。
あの扉の奥。そこでの初期訓練は、標的を確実に倒す技術の向上。
たまに頭を回さないと倒せない動きや場所に現れるそれ。
バキャ!
裏拳のようにマスケット銃を振り抜いて、背後のマネキンが砕けた。
『流石ね藍香さん、まだ入って五分も経ってないのにこれだけ中身のある訓練を用意していたなんて』
「お褒めに預かり光栄です。それにしても通信スイッチよく解りましたね」
『扉の隣にあるなんて、用意周到ね』
「ギブアップ用の連絡に用意したんですけどね」
『そう。美樹さん、あの時は私と暁美さんとの関係はあまり温厚ではなかったの』
『だからあの時はついに決裂した。私が暁美さんを拘束したの』
「えっ?! マミさんが?」
『ええ。だから遅れた。藍香さんとほぼ同時にやってきたのは、暁美さんを彼女が助けたから』
『彼女は不器用なだけ。それだけなの』
「………」
マミさんはそれを言い終えて通信を切る。
「藍香、あいつがもしここに来たら……」
「それは自分で言った方がいいよ。その方が自分もすっきりするだろうし」
「そうだよね。あはは、私ったらどうしちゃったんだろ」
「戸惑う事はよくある事。さぁ、頑張って行ってみよー!」
「おー! 美樹さやか、行っきまーす!!」
掛け声と共にさやかちゃんは扉の奥へ飛び込んで行った。
「さて、と」
私は四つの扉の真ん中にある無意味なスペースに手をかざす。
すると純白の壁の中から桃色の扉が現れた。
「この扉ももう必要ないよね」
手を当てて、魔力を送る。そしてその扉は光の粒になって消えた。
「良かったのですか?」
「夢。驚かさないでよ」
「すみません。しかし気になったもので」
「大丈夫大丈夫。それより、ほむらちゃんの方は?」
「彼女は先ほど到着いたしました。しかしお会いにならない方がよろしいかと」
「ん? どうして?」
「どうやら藍香様に因縁があるように思われるので」
「そっか」
私はお城の外へと向かう。
「ほむらちゃんの所に行ってくる」
「今行けば何をされるか解りませんよ?」
「まぁ、何があっても私は死なないから。代わりに皆の事見ててくれる?」
「了解しました。お気をつけて」
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結界の入口の森。
そこではほむらちゃんが魔法少女に変身して待っていた。
「ようこそほむらちゃん」
「来たわね、黄昏藍香」
「私に用があるみたいだったから。で、何?」
「まず貴女の存在と行動のお蔭で、新たな道が開けた。その点はお礼を言うわ。ありがとう」
「私は当然の事をしたまでだよ」
「そして、貴女の存在がまどかを変えてしまったのも事実」
あぁ、やっぱりそれか……
「だから、貴女はここまでで退場してもらわよ。イレギュラー」
「イレギュラー、ね。良い響き」
「なら部外者と言った方が良かったかしら」
「それを言ったら貴女もイレギュラーでしょ? ほむらちゃん」
「私は違うわ。私の契約が生んだ結果、それが今ここにいる私よ。でも貴女は違う」
「なにも違わないよ。幾多の終わりを超えて、終末を変えようと努力する存在。貴女と同じ」
「……貴女のそのお喋りな口と話し合っても、私の調子が崩されるだけね」
ほむらちゃんはおもむろに盾に手を入れ、拳銃を取り出した。
「ここで私を殺すつもり?」
「そうね。出来る限りイレギュラーは排除しておかないと」
「そう。残念だけど、今殺される訳にはいかないの。誰にもね」
「なら、私は全力で貴女を排除する」
Outside
二人の魔法少女は互いに相手の目を見合い、張りつめた空気を肌で感じていた。
一人の少女は、本当に相手の命を奪わんとせんかのごとく。
一人の少女は、相手に自らの実力を解らせるために。
「「………」」
最初に動くのはほむら。
時を止め、オートマチック式の銃を全弾乱射。
撃ち出された弾丸は空中で止まり、時は動き出す。
藍香は左手に刀を持って全ての弾丸を弾き飛ばし、次いで斬撃を放った。
風のように消えたほむらは彼女の背後に回り込み、手榴弾を投げつける。
それを藍香は蹴り上げる事によって空中へ放り出し、危機を回避。
藍香の行動も計算の内なのか、ほむらは手製爆弾を彼女の足下に設置。
時間停止で逃げるほむらに対し、設置された藍香は今更気付いたのか即座に下った。
爆炎、爆音が森に響き草原であった広場が燃える。
炎に紛れて藍香は武器をブラッドレイに持ち替え、光線を発射。
その光線はほむらの右腕を掠めて森の奥へ飛んでいった。
間一髪右腕を傷つけることなくかわしたほむらはマシンガンを取り出し、乱射。
それをブラッドレイに付いている刃で全て切り落とし、接近する藍香。
斬りかかる藍香と、それを時間停止でかわし後頭部に銃口を突き付けるほむら。
「「………」」
二人の動きが止まる。
「勝負ありね」
「ま、そうかもしれないけど」
「戦う前は殺す気で居たけど、今は変わったわ。貴女の様な重要な戦力を失う訳にはいかない」
「じゃあ生かしてくれるの?」
「貴女が、これ以上まどかに余計な事を吹き込まないと約束するなら、ね」
「いいよ。約束する」
その即答に驚くほむら。
いくらなんでも素直すぎる。あそこまで接触していた少女が。
「意外と素直ね。この状況では健全な判断だけど」
「まーね。それにもう私が伝えるべき事は全て終わったから」
なるほど、と呟いてほむらは銃を下げて盾にしまう。
「ほむらちゃんごめんね。弾とか無駄遣いさせちゃって」
「いいえ、これも必要な消費だったのよ。貴女とある程度の交渉をするにはね」
「変わっちゃったなぁほむらちゃん」
「何か言ったかしら?」
「ううん何でも? あ、そうだ。弾薬とか兵器とかならお城にいっぱいあるから良かったら来てよ。今ならスキルアップ講座も付けるよ!」
「弾薬と兵器は頂くけれど、後のは必要ないわ」
「皆も対ワルプルギスの夜の為に修行してるのに、暢気だねほむらちゃんは」
「………」
ほむらは彼女の雰囲気に巻き込まれる前に移動しようと、その場を後にし城へ向かった。
「あー! 待ってよー!」
その結界の主を置いてきぼりにして。
・
・
応接間に案内されたほむらは何も言わずに藍香について行く。
「ごめんね。あの子達新しいお客さんだからいろいろはしゃいじゃって」
「……そうね。躾がなってないわ」
「まぁまぁ。あの子達なりの感情表現だから勘弁してよ」
時ははしゃいでほむらの髪の毛に触り、風と守は方に乗っかろうとして、世は料理の代わりに飴玉を差し出した。
ほむらちゃんはそれをあしらっていたが、流石に世からは飴玉を貰っていた。
修行の場へ向かう扉を素通りして、奥にある壁へ向かう。
藍香が手をかざして魔力を流すと、近未来的な白い鉄の扉が現れる。
「メルヘンな作りなのにこの扉は全然違うわね」
「兵器保管庫なんてそんな感じだよ」
扉は自動なのか蒸気の噴き出す音に似た音と共に扉が横に開く。
その中からは独特の火薬の臭いと、黒い鉄の塊が充満していた。
「いろんなものがあるけど、ここにはとりあえず『人が持って扱う銃火器』しか置いてないから」
「その言い回しだと、まるで『持って扱う事の出来ない兵器』が別の所にあるようね」
「まあねー。この部屋の奥の扉の先は演習場になってるから、そこも自由に使ってもらっていいよ」
「で、兵器はどこにあるの?」
「いきなり兵器を扱いたい、と?」
「ええ。そうでもないと、あいつには勝てない」
「そっか。演習場の扉を右に行って付きあたり。その部屋が格納庫。その部屋の奥が大型兵器用演習場。流石に天を焼く剣は置いてないけど」
「………」
「ここでの弾薬の使用した分は全て再生成されるから遠慮なく。じゃあごゆっくりー」
藍香は手を振って部屋から出て行く。
残されたほむらは、大型兵器が格納されている場へ足を運んだ。
Side 黄昏藍香
私は再び修行の扉の前に立つ。
そこでは夢がモニターを映し監視を行っていた。
「夢、どんな感じ?」
「藍香様。良好といえば良好ですね」
「そっかー」
「しかし彼女の所はやり過ぎでは?」
「いーのいーの。本当は初級コースからやるつもりだったけど、回復能力の魔力効率も鍛えなきゃいけないからね」
「そうですか」
『ちょっ! 藍香! 見てるんでしょ! ギ、ギブギブ!!』
「さやかちゃんは現時点では一番弱いからね。荒療治だけど我慢してね」
『荒療治って何よ! って、うわぁ!』
「大丈夫大丈夫、死にはしないから」
『あ、当たり前でしょ! ゾンビなんだから、死ぬわけが!!』
「ゾンビでも死ぬよ?」
『ああもう! やればいいんでしょやればあああああああ!!!』
半分ヤケクソ状態になったさやかちゃんは後ろで踊っているマネキンに斬り込んでいった。
「魔法少女にしては、感情的な方ですね。美樹様は」
「それが重症と取るか、大切な物と取るか。とにかく、戦いの経験が浅いってのは確かだね」
「(はたして同じ戦いを繰り返す藍香様や暁美様は戦いの経験が深いと言うのでしょうか)」
マミさんも杏子ちゃんも上級コースに到達して随分と時間が経った。
マネキン自体の強度も向上し、積極的に攻撃して回避もする。高性能なヒューマノイドも同じ状況。
それにビットの様な空中移動砲台と高威力の固定砲台の遠距離攻撃。
杏子ちゃんは持ち前の速さで回避しているが、マミさんは回避とリボンでの防御を織り交ぜてかわしてる。
「「………」」
「ねぇ夢」
「なんでしょうか」
「これ、どっちが長く持つと思う?」
「そうですね。私としては佐倉様の方が長く持たれるかと」
「私も同じだね。マミさんはどうしても機動力が皆と比べて劣ってるから、回避はどうしても」
暫くして、二人は上級コースも達成して戻ってきた。
「お疲れ様、マミさん杏子ちゃん」
「上級になった途端あれだ。さやかは大丈夫なのかよ」
「さやかちゃんは中級だけだよ。初級はちょっとね」
「美樹さんは初級から始めた方がいいじゃないのかしら?」
「さやかちゃんは攻撃以外に回復がありますから。その速度と魔力効率は経験からしか生まれませんから。マミさんの拘束魔法、それに」
「杏子ちゃんの幻影魔法もね」
「なんでそれ知ってんだ」
やっぱりというかなんというか、睨まれるのは慣れない。特に杏子ちゃんには。
「なんとなくかな。今まで裏で生き続けた者。人を惑わし姿を消す。幻影以外の何物でもない」
「……やっぱ藍香ってよく解んねーな」
「それを戦闘で使えるようになったら、もっと強くなると思うんだけど」
「そういえば佐倉さん使わないわね。昔は「おい! その話はやめろ!」」
「?」
「そういえば藍香さんは知らなかったわね」
「だからその話は止めろって!」
「どうして? せっかく私が技名も考えてあげたのに」
どうやら二人の世界に入ってしまったようで、首を突っ込むのは止めよう。
そういえば、マミさんはどうして『ティロ・フィナーレ』って技名を付けているのだろうか。
イタリア語で確か、最後の砲撃って意味だったけど。
そんな事を考えていると、さやかちゃんが戻ってきてここで修業はお開きになった。
Side 佐倉杏子
日が落ち込む頃、あたしはいつも通り、帰るついでに教会に行く。
たまに不良共がたむろしているから、そいつらを吹っ飛ばしてやらないといけない。
「ん?」
今日の収穫の一つであるリンゴをかじりながら、教会に入ろうとしたところで足を止める。
教会の裏、西洋造りの墓が並んでいる場所。その内の墓の一つが目に入った。
大理石造りの結構大きい墓だ。かなり金を掛けているのが解る。
「こんな墓なんてあったか? いや、真新しいから最近か……」
刻んである命日は4月13日。最近だという事が良く解る。
その下にはローマ字で名前が刻んであった。
『 Tasogare Taketo
Kanna 』
「Ta、so、ga、re……黄昏?」
何かの偶然だろうか。それにしても珍しい名字だから逆に意識してしまう。
「もしかしたらあいつの……ハッ、まさかな」
教会の方に戻ろうとした時、供え物なのか写真立てが置いてあった。
顔立ちのいい男性と、蒼い髪が腰まである女性。
そして、その間に立っている一人の少女。
その女性に似た濃い青の長髪、赤くくすんだ瞳、その笑顔、顔立ち。
「……なんだよ、あいつも両親がいたんじゃねーか」
覚えていないなんて嘘だ。本当に覚えていないのなら、余程のショックで記憶があいまいになったのだろう、と予測する。
自分と同じ、孤児という立場を理解して、あたしは片膝をついて目を閉じ、手を組んで祈る。
今は安らかに。
そして目を開けた時、ある文字が視界に映る。
『 Aika 』
「………」
その場で固まる。黄昏藍香。ローマ字だから同一人物とは限らないのだが、写真が全てを物語っていた。
「どういう事だおい……あいつ、死んでるじゃねーか!」
終わりを告げる、その墓石に刻まれた名前。
それは果たしてどういった結末を見せるのか。
もう終わります。この物語も。
この救済の物語も。運命も。
次回予告
杏子「もうここまで引っ張られてきたんだ。もうあたし達は自分の足で歩く」
藍香「そっか。なら、私はもう必要ないかな?」
杏子「……どういう意味だ?」
藍香「疲れた、かな。もうどうでもよくなっちゃった」
杏子「は?」
藍香「自分の私利私欲の為に動こうかなって。生きようかなって」
『一人の勝手』