魔法少女まどか☆マギカ ~少女へ捧げる鎮魂歌~   作:kasyopa

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『管理者を破壊する・・・バカげたことを』 byAC3 ファンファーレ




第一話『救済技法』

Side 黄昏藍香

 

 

崩壊する都市。私は仰向けになって、明るくそして暗い堕ちた空を茫然と眺めていた。

 

「倒した……んだよね」

「倒した……筈よ」

 

もう私は腕を動かすのもままならない程に傷付き、疲れ果てていた。

倒した筈だった。魔女を。救済の魔女を。

 

それでも、私は解りきっていた。この輪廻は、終わらないのだと。

 

「ねぇ、藍香」

「なに、―――さん」

 

顔だけを横に向けてお互い向き合う。

 

彼女ももう限界だ。しかもその限界は二つの意味を持っている。

一つは命尽きる意味での限界。そしてもう一つが。

 

「ぐっ! ぁああああ!!」

「―――さん?! しっかり気を持って!」

 

彼女の綺麗な白色のソウルジェムは黒く塗りつぶしたように濁っていた。

私は知っていた。魔法少女はいずれ魔女になってしまう運命なのだと言う事を。

そして彼女に話した。でも、彼女はこう言った。

 

『ならそれまでに、いっぱい魔女を倒さないと』

 

私はその返事に驚愕し、問いかけた。

彼女は一度、絶望に負けたというのに。

 

『なんでそういう風に思えるの!?』

『それは仕方のない事よ。私は一度絶望に負けた。なら今は守れる今を想うと決めたの』

 

涙で視界がぼやける。あの時、魔女を倒すのを止めても、結局彼女の結末は変えられないと。

 

「藍香。最後のお願い、聞いてくれないかしら?」

「最後なんて言わないで、―――さん」

「いいえ、最後のお願い」

 

彼女はソウルジェムを私に向けて掲げ、口を開いた。

 

「私を……殺して」

「―――――――」

 

言葉を失った。

 

「このままだと、また魔女が……ううん、また『本来の私』が生まれる」

 

体が震え、視界が歪む。

今の私はどうしたらいいか解らない顔をしているだろう。

対する彼女は相変わらず私に向かって微笑みかけている。

 

「早く、お願い……時間が……ないわ」

 

嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!!

長い輪廻の中で初めて出来た友達なのに、こんな終わりなんて嫌だ!!

初めて。私が……助けた子なのに!!

 

「逃げていては駄目」

 

緑色の瞳が私の顔を写す。

そこに居たのは目に涙をため、困惑している私。

 

私は体を起こし、彼女の目を見て楼幻刀を生成する。

 

「……藍香、貴女の事は忘れないわ」

 

世界が、弾けた。

 

 

*********

 

 

目を開ければ、よく知った天井が出迎えてくれた。

 

「夢……かぁ」

 

何回目かの輪廻の中であった事。時折、夢で思い出す。

私としては勘弁なんだけど、仕方ない。体の仕組みなんだから。

 

一階に下りてお弁当を作り、朝ご飯を作って食べて、家を出る。

 

「行ってきます」

 

親はいない。最初から一人きりだったから。

 

 

 

//////////////////////

 

 

 

学校。少し気だるい授業が終わってお昼休み。

私はいつも通り屋上で一人お弁当を食べる……筈だった。

 

「あんたよくこんなとこに居るよね」

「私は私。私のやり方には誰も否定はさせないからね」

「ふ~ん」

 

佐倉杏子。彼女はこの街をテリトリーとする魔法少女。

でもある時私が使い魔を倒している時に偶然接触してしまい、一戦交えた。

 

結果としては引き分けだったけど。

それからの付き合いで仲良くしている。

 

それから、これが普通というものなのか。

時間と共に仲も深くなっていき、杏子ちゃんは彼女の過去について話してくれた。

そして彼女は、私が普通の魔法少女じゃないって事に気付いた。

詳しい事は話していないけど、私は私で、彼女は彼女で自分の道を歩いている。

 

ある意味、私の初めての友達。

 

「あんたさぁ、もうちょっと効率ってもん考えないの?」

「杏子ちゃんはちょっと軸がぶれてるみたいに思えるよ」

「良いじゃんか。これが私のやり方なんだよ」

 

そう言って彼女は手で卵焼きをつまみ、頬張る。

私は杏子ちゃんの右手にしている指輪を見た。

 

「杏子ちゃん、最近調子はどう?」

「ん……どうって、キュゥべえの野郎最近執拗に来んだよな」

「それはどうして?」

「解ってて聞いてるだろ、藍香」

 

ジト目で私の方を見てくる彼女。もしかして、魔法少女について話したからなのかな。

なら、私の事も今見ているだろう。

 

「キュゥべえ、居るんでしょ?」

「よく解ったね。流石は最高のイレギュラーだ」

「っ?!」

 

キュゥべえは駆けよってきて正座している私の膝の上に乗る。

杏子ちゃんは驚き、そのまま跳び引いて警戒をあらわにした。

 

「テメェ、どの面下げて出てきあがった?」

「今日の僕は君達にお願いがあって来たまでだ。特に黄昏藍花。君にね」

 

キュゥべえは私にその機械の様な冷めきった瞳を向け、尻尾をゆらゆらと動かす。

杏子ちゃんと接触しすぎた結果がこれ。最終的には交渉の末、和解を果たしたが。

 

彼らにとって絶望のエネルギーを採取出来れば、別に構わないのだ。

今までそのエネルギーを採取する方法がそうするしかなかっただけであり。

ノルマを達成すれば後は放っておくだけ。

人類の問題として全てを野放しにして自分達は帰っていく。

 

だから私は神様に魔女から魔法少女からその絶望のエネルギーを抽出する魔法を真っ先に望んだ。

キュゥべえにではなく、私にこの世界への転生の運命を強いた神々から。

 

キュゥべえ自身が私の特異さに気付くのには、そこまで時間を要した訳ではない。

私が杏子ちゃんと和解を果たし、単身で魔女を倒した時の事だったろうか。

まぁ、ばれたものは誤魔化しようがなかったから一部のみ明かしたけど。

 

一つは、私が普通の魔法少女ではない事。

 

もう一つは、穢れを抽出して別物体にできる事。

 

「で、お願いって?」

「最近この付近のある町で、魔女の活動が異常なんだ」

「つまり、ここよりも魔女がうじゃうじゃしてるって事か?」

「現時点ではそこまでとはいかないね。でも何れそうなるだろう」

 

なんとなく読めてきた。キュゥべえのお願いというものが。

 

「君達にはその町に出向いて貰いたい」

「率直だね。私にも学校とか在るのに」

「あたしは問題ないね。ここより良いならすぐにでも移ってやるよ」

 

やはりというかなんというか、杏子ちゃんは効率を考えて動いている。

私の方と言えば、人が死ぬのが嫌だから使い魔も魔女も倒している。

 

「君にとって、重要なのはその程度の事なのかい? 藍香」

 

いちいち頭に来そうになる言葉を放つキュゥべえ。

彼の正体を知っているのだから尚更だ。

 

「人間の価値観は、図りしえない物。感情を持たない彼方達は私達以上に理解できないよ」

「はっ、だからお前達の口癖が『訳が分らないよ』なんだよ」

 

杏子ちゃんはキュゥべえに、おふざけの声真似で馬鹿にする。

その可笑しさに私は少し吹き出してしまった。

 

以前までは自分の意思で行っていたが、今回はこういった形で向かう事になるとは。

 

「藍香は移ってから学校行くのかよ?」

「うーん、どうだろ。行かないって言うのも手かな」

 

こんなに早かったら、あの子に接触する可能性も出てくるし。

すっ、と何処からか黒光りする漆黒の塊を取り出して渡す。

キュゥべえはそれを頭で受けて背中の部分に格納した。

 

「さってと、私は一足お先に行っときますか」

 

杏子ちゃんは柵の上に立ち、遠くを見据えて口を開く。

 

「そっか、じゃあ私は退学書類も出したし一緒に行こっか」

 

風と共に消える。私達はもうそこには存在しなかった。

 

 

///////////////////////////////

 

 

結界。甘いお菓子の匂いと薬品の臭いが混ざり合って、咽返りそうな臭いが漂う。

私は変装して仮面も付けて道ある道を歩いて行く。

杏子ちゃんは何か思う事があったのか、結界の外で諦観に浸っていた。

 

「(確かにここはマミさんの管轄。杏子ちゃんが嫌うのも無理ないかな)」

 

人の気配を感じたから隠れて見てみる。

そこにはまるで蜘蛛の巣に捕まった蝶の様な姿の少女、暁美ほむらがいた。

 

私は楼幻刀を生成。ほむらちゃんを縛っているリボンを切り裂いた。

 

「っ?! ――――」

「大丈夫? 貴女―――」

 

納刀して振り返ると同時に拳銃を額の部分に押しあてられる。

 

「あなた、一体何者?」

「人にいきなり銃を突きつけておいて、それはないと思うよ」

 

私はそう言いながらも両手を上げて、撃たないでとアピールした。

 

「助けてもらった事に対しては礼を言うわ。ありがとう」

 

そう言ってもほむらちゃんは警戒の雰囲気を解かずに、仮面から覗く私の目をじっと見ている。

対する私は視線を外さずに魔女の状態を探っていた。後どれほどで孵化してしまうか、と。

 

今の所なんともないが、この状況を打開できなければ私も彼女も動く事は出来ない。

強行突破も可能だろう。

しかしそれでは彼女が発砲、貴重な弾を消費し、未来に大きな誤差が生まれる可能性もある。

それこそ、今回の魔女は異常な相手だ。今すぐそこにある未来が変わる可能性も……

 

「あなたの名前は?」

「………」

「質問を変えるわ。あなたは何をしに此処まで来たの? 目的は何?」

「魔女を狩る。私の方法で」

「どこの魔法少女か知らないけど、命が惜しければ退きなさい。今回の魔女は今までのとは違う」

「それなら、早く先に行った子を追いかけた方がいいと思うよ」

「そうしたいけど、生憎そうもいかないみたい」

 

彼女が辺りを見渡すと、使い魔が私達のやり取りを見物にするかのように囲んでいた。

そして感じる、魔女の魔力。どうやら、それに刺激されて使い魔が出てきたようだ。

 

「「孵化が始まった」」

 

重なる声。ほむらちゃんは一瞬驚いた表情を見せたが、意識を使い魔へ向けた。

 

「此処は私が受け持つから、貴女は先に行って」

「そう言う訳にいかないわ。あなたの目的がなんなのか、それがはっきりするまで―――」

 

彼女が自分の言葉を言い切る前に、私はカールグスタフ二門を両肩に担いで乱射と高速リロード。

後ろに居るほむらちゃんからはかなり離れたからバックファイアとかも大丈夫だし、防御もかけてる。

効果範囲の広い榴弾が、周囲の使い魔を軽々と吹き飛ばし焼き払っていく。

 

気付いた頃には辺りは穴だらけで、火薬の臭いが空気に混じっていた。

 

「………」

「貴女は私の目的より、私が味方なのかを知りたいんじゃないかな?」

 

そう告げて私はその場から消えてなくなった。

 

 

Side 暁美ほむら

 

 

名前も、目的も聞けないまま、まるで存在自体が消えたかのように姿を消した魔法少女。

実際は感謝している。私にはどうしようも出来なかった拘束を解いてくれたのだから。

あれだけの使い魔を、こちらの弾を消費せずに片付けてくれたのだから。

 

「………」

 

火薬の臭いが鼻に衝く。

あれは確実に現実の兵器だ。巴マミの様に魔法で構築した物ではない。

 

<貴女は私の目的より、私が味方なのかを知りたいんじゃないかな?>

 

全てを見透かしていたかのような発言であった。

確かに、私はこうなっても心の何処かで味方を探していたのかもしれない。

―――もし彼女が協力してくれたなら、大きな戦力となってくれるだろう―――

 

「……考えていても仕方ないわ」

 

今は、巴マミを止めなければ。

 

 

Side 黄昏藍香

 

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

結界内に声と轟音に近い銃声が響き渡る。

この魔女、シャルロッテは普通と違うのは嫌というほど知っていた。

対処さえ間違えなければ簡単に倒せるであろう、という事も。

 

小さな人形の口から吐き出された第二形態とも言える、幼虫の様な姿のシャルロッテ。

そのままマミさんを狙って一気に近付き、丸かじりと言わんばかりに口を開けた直後。

 

私は死角殺しのソニックストライクで横に魔女を吹き飛ばした。

壁に撃ちつけられて落ちる魔女。そこに鎚からミサイルコンテナを射出してそのままぶつける。

撒き上がる爆炎と鳴り響く爆音。

少しばかり視線を観客の二人の方を向けると、案の定二人は耳と目を塞いでいた。

 

「あ、あなたは……?」

「私は名乗る名も無き魔法少女」

 

あまりに素気ない返事だったので、マミさんに心の奥で謝罪しながらも爆炎を見詰める。

次の瞬間炎を突っ切って特攻を仕掛けてきた魔女。此処にいる私以外はその光景に驚愕した。

 

死角殺しで今度は上に撃ちあげたが、新たな本体を吐き出して私を捕食しようと突っ込んでくる。

 

「キュゥべえ、なんなのよアイツ!」

「おそらく、脱皮するかのように再生しているんだ、そして」

「その方にグリーフシードを移していく」

「「っ?!」」

「ほむらちゃん?!」

 

マミさんとさやかちゃんは驚き、まどかちゃんは声を上げた。

突然風の様に現れた、暁美ほむら。

 

「あなた、どうしてここにいるの? 確かに拘束した筈なのに」

「彼女が助けてくれたのよ」

 

そう言って私を見詰める彼女。その顔はまだ若干の警戒が残っていた。

マミさんもその言葉を聞いて私に警戒の視線を向ける。

 

突き刺さる視線をよそに、私はシャルロッテと交戦を続けていた。

突っ込んでくる相手を死角殺しで打ち返し、そして再生して再び突っ込んでくる。

二、三回繰り返した後、懐に隠し持っていた何かを放り投げた。

そうすればどうだろうか。魔女は私達をそっちのけにして放り投げた何かの方へ向かっていく。

 

「あなた、本当に何者?」

「何の事かな?」

 

ほむらちゃんの問いかけ。私は惚けた様なリアクションを取る。

 

「ふざけないで、何故あの魔女の弱点……いや、好物を知ってるの?」

「「好物?」」

 

その言葉にまどかちゃんとさやかちゃんは首を傾げる。

 

「さっき投げたのはチーズ。あの魔女はチーズに目が無いの」

「な、なんか意外過ぎて緊張感保てない……」

「うん、そうだね……」

「でも確かに、あの魔女は今までの魔女とは違う。少なくとも私はあんな魔女を知らないわ」

「「………」」

 

長年この街で戦っていたマミさんでさえ、知らない魔女。

二人は思い出したかのように顔を青く染めた。

たぶん、マミさんが食べられそうになった瞬間を思い出したのだろう。

 

「暁美さん、今回ばかりは謝るわ。ごめんなさい」

「そんなことより、今はあの魔女を倒す事に専念しなさい」

「(なるほど、素直になれない。か)」

 

マミさんは誰にも解らないように笑みを零し、私の方を見た。

先ほどの笑みは、ほむらちゃんの何かを理解したからによるものだと、私は推測する。

 

「あなたにもお礼を言わなきゃね。ありがとう、えっと……」

「……黄昏。黄昏でいいよ」

「ありがとう、黄昏さん」

 

呼び名。そんな感じだ。名字になっちゃったけど。

 

「来るわよ」

「ええ」「うん」

 

ほむらちゃんの言葉通り、再び私達を標的にしたシャルロッテが戻ってきた。

ミサイルコンテナを再装填してから武器を切り替え、ブラッドレイと破幻刀を持つ。

 

ブラッドレイでレーザーを放った後、破幻刀で続け様にレイパレードを繰り出す。

再生し、口から出てきた魔女をマミさんが複数のマスケット銃で撃ち抜いた。

しかしながらイタチごっこに変わりはない。決定打と言うものが無い訳ではないのだが。

 

「そんな事をしても、また再生されるだけよ」

「そうは言っても……」

「手が無いのだから仕方ないわね」

 

相手は魔女。疲労などもないだろうから、永久機関に近い物だろう。あの魔女の再生も。

向かってくる相手に再び引き金を引こうとしたが、ほむらちゃんの手が銃身を静かに押さえた。

 

「二人はそこで少し見てなさい」

 

そう吐き捨てるかのように告げると、彼女は一人で向かっていく。

マミさんが止めようとしたけど、今度は私が遮った。

視線を合わせ、向かい合う。

 

「黄昏さん!」

「大丈夫。信頼する事も、頼る事も、時には大切な事でしょ」

「でも……」

「彼女は強い。実力も、そして意志も」

 

次の瞬間、マミさんがはっとするように目を見開いた。

私もそれに反応して振り返れば、ほむらちゃんの居た所を魔女が食べている光景が。

それでも私は焦らなかった。彼女には、奥手が在る事を知っていたから。

 

視線を他の所に移せば、ほむらちゃんは別の場所に移っていた。

不機嫌そうな顔をした魔女が再び、彼女をその場所ごと呑み込もうとするが。

既にそこに彼女の姿はなく、また別の場所へと移っている。

魔法少女に翻弄される魔女。魔女を翻弄する魔法少女。

 

私以外の観客はその摩訶不思議な光景をただただ見詰めるだけ。

 

だが、その均衡は意外な形で崩れることになる。

無意味という事を理解したのか、魔女が標的を私達に変更したのだ。

 

マミさんはその急な展開に追いつけず、咄嗟には動けない。

私は動けるのだが、此処から動けば彼女が犠牲になる。そうなれば守るしかない。

 

防衛の構えにより、前方に見えない魔力の壁を作って守る。相手はものの見事に正面衝突。

しかし怒ったのか壁ごと食べてやる、と言わんばかりの大口を開けて被り付こうとして来た。

壁も広いし強度もそれなりだから破れる事はないのだが……

 

「こうも相手が必死だと流石に怖いね」

「そうも言ってられないみたいだけれど」

 

余裕を取り戻し始めた彼女は笑みを浮かべ、中くらいのサイズの銃を生成する。

 

「黄昏さん。この壁、内側の攻撃は通す?」

「えっ、あ、はい」

「なら、やらせてもらうわね!」

 

爆音が響き、魔女が吹き飛ぶ。

そして空中で爆発の連鎖。

その合間を縫うかのようにクラッシャーを投げつけ、起爆する。

跡形も残らないように焼き払い。

 

「ティロ・フィナーレ!!」

 

最後にマミさんの砲火が魔女を貫き、業火に散った。

結界が解け、グリーフシードが落ちた所で私は安堵の溜息を吐く。

 

さて、私はもう引こうかな。

 

 

Side 巴マミ

 

 

黄昏と名乗ったその少女。

彼女は私の命を救ってくれた。

 

その恩も兼ねて。

 

「黄昏さん」

 

名前を読んで、振りかえったと同時にグリーフシードを投げ渡す。

彼女は少しばかり驚いたが、なんとか受け取ってまじまじと見つめる。

そして、次の光景に私達は肝を抜かれるのであった。

 

両掌でそれを包み、指の間から青い光が微かに漏れる。

次の瞬間、彼女の左手には磨き上げられたガラス玉の様に綺麗で透明なグリーフシード。

右手にはブラックダイヤの様に黒く禍々しい物体が乗っていた。

そして綺麗なグリーフシードを私に向かって投げ渡す。

 

「それは貴女達が使って。通常のグリーフシードよりもずっと使えるだろうから」

 

右手にある物体の説明はせずに、彼女はそう言い残して風と共に消えた。

 

仮面で顔は見えなかったが、私には見えた。優しい微笑みがその仮面の下にあるのが。

 

 

Side 黄昏藍香

 

 

ある建築中のビルの屋上。

私はむき出しになった鉄筋に腰を掛け、足を振る。

手荷物になっている紙袋を隣に置いて街を見据えた。

 

「この街が、魔女の活動が活発な場所」

「あの野郎、こんな嫌な場所を選びやがって」

 

不意に現れた杏子ちゃんは私の紙袋に乱暴に手を突っ込んで、サンドイッチを取り被り付く。

 

「マミさんが苦手?」

「ああ、あんなヒーロー気取りの偽善者なんて、私には真っ平ごめんだね」

「人の為に。それはその人が自分の望んだ姿を見せてくれる事で、自分の心が満たされるって事じゃないかな」

「……ちょっと黙れ」

「………」

 

それを自覚している彼女。でも忘れたい記憶。

我が儘だけど、人とはそういう者だ。私だって傲慢な強者でしかない。

でもそんな人達が作り上げた歴史も少なからず存在する。

 

ガツガツとがっつく音と風が通り抜けていく音が交差して、寂しげな雰囲気を醸し出していた。

会話が無いとはこういうもの。

私は紙袋から私用にサンドイッチを取りだそうとして……固まった。

 

「杏子ちゃん! 私用のサンドイッチ取ったでしょ!」

「うるせー! 誰が食べたって同じじゃねーか!」

「だからってその言い方はないでしょ!?」

「それに別の所に入れておけばいいんだよ!」

 

それからは言い合いからの笑いあい。そして解散した。

心が温まり、やはり無くてはならないなのかなと思った私であった。

 

 

///////////////////////////////////////

 

 

場所は変わって新しい家。

そこで夕食も風呂も済まし、髪を丁寧に乾かしながらキュゥべえを呼んだ。

 

「キュゥべえ」

「なんだい、藍香」

 

傍に置いておいた穢れの結晶を投げ渡す。

彼は頭で上手に受けとめると、背中が開いてそれを格納した。

正確には捕食したと言った方がいいのだろうが。

 

「君のお蔭でかなりのエネルギーが溜まってきている。感謝してるよ」

「使い捨てほど、無駄の多い物はないよ。私はそれをしてるだけ」

 

彼に対してはこういった言葉を吐き捨てる方がいいだろう。

自分の行動の真意は今の所悟られていない。

冷酷な道具であればあるほど自分のボロに気付き、そこを突いてくる物はないと思う。

その事を心に命じながら、キュゥべえとはそこまでの関係で居たい。

 

なにせやり方が間違っているだけで、彼らの行っている事は理に適っているのだから。




アニメ第三話。そしてマミさん救出。そして発揮される藍香の存在と力。
ずっとこんな感じです。多分。

さて、誤字脱字の指摘は大いに受けますのでよろしくお願いいたします。
その他、ご要望などありましたら感想等でお寄せ下さい。
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