魔法少女まどか☆マギカ ~少女へ捧げる鎮魂歌~   作:kasyopa

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『一つの命を守る。それを愚かと呼ぶか』 byACFA ウィン・D・ファンション



第二話『守護者の結界』

Side 黄昏藍香

 

 

朝日と共に目覚めを迎え、日が沈むと共に眠りに就く

人の生活がどうなろうとも、それは太古から自然と共に刻まれた物の一つ。

それに逆らっていれば、いずれ身が持たなくなって朽ち行くだろう。

 

朝一番に目が覚めるのはいつものこと。

昨日は夢を見ていたから少しオーバーしたくらいで。

 

カーテンを開け放ち、段々と赤から青に染まっていく空を見詰める。

暁から青空へ。この光景が私は好きだ。

新しい日の始まりと、その始まりにある生を受けた事に感謝できる。

 

「おはよう、藍香」

「おはようキュゥべえ。今日も早いね」

 

何も置いていない机の上に座っているキュゥべえ。

 

「君の方が、まどかやさやかよりよっぽど早いじゃないか」

「私はこれが普通なの」

 

普段着に着替えて朝食を作り始める。

 

「それにしても異常だね。この頻度は」

 

昨晩、少しばかりこの街全体の様子を視察した。

街の発展具合は最新と言ってもいいだろうが、何故かそれと双璧を誇るかの如く魔女の数が多い。

連日魔女が出現してもなんらおかしくないといった現状。

 

「(ワルプルギスの夜が近いから、他の魔女も活発になって来てるのかな)」

 

手を動かしながらも思考を練る私。

 

何はともあれ、マミさんを助けられたのは良かったと私は思っている。

ちょっとばかり、三人でも様子を見てこよっかな。

 

 

Outside

 

 

まどか、さやか、マミの三人は学校の屋上で昼食を摂っていた。

 

「あの黄昏って子、一体誰だったんですか?」

「私も知らないわ。でも、おそらくあの子は普通じゃない」

「普通じゃないって……そりゃまぁ、変な仮面付けてたし」

「確かにそれもあるかもしれないけど、重要な所はそこじゃない」

 

さやかの言葉を遮るマミ。その言葉に二人は彼女の顔を見た。

それに合わせるかのようにマミは何処からかあの浄化されたグリーフシードを取り出す。

 

「実はあの後キュゥべえに聞いたんだけど、これ一つで通常の何倍もの効果を発揮するらしいわ」

「「えぇっ?!」」

 

何倍もの、という事は少なくとも数倍を超える。おそらく五倍から六倍程だろうか。

 

「でも、どうしてそんな凄いのを自分で作っておいて」

「自分で使わなかったんだろう……?」

「そうよね。普通なら、そんな技術は独占しておいた方が自分の得なのは目に見えてる」

 

浄化されたグリーフシードを仕舞い、再び二人の方に目を向けるマミ。

二人は首を傾げて、何故そんな事をしたのか考えていた。

 

「あの、マミさん」

「どうしたの、鹿目さん?」

「黄昏ちゃん? でしたっけ、あの子とは仲良く出来そうですか?」

「そうね……」

 

マミは目を閉じ、あの時の光景を思い出す。

自分を助け、暁美ほむらの行動の、少しばかりの本質に気付かせてくれた存在。

そしてあの時、仮面に秘めた明るく優しい微笑み。

 

「出来るなら、一緒に戦ってもらいたいわ」

 

 

Side 暁美ほむら

 

 

私は一人昼食を取りながら、昨日の事で頭を使っていた。

 

おそらく彼女が手を出さなければ、巴マミは今は亡き存在となっていたであろう。

それはそれでまどかが魔法少女になるという可能性が生まれる恐ろしい事であった。

だがそれと同じくらい障壁とも成し得た。

魔法少女としての死はどう言ったものなのか教える為にも。

いずれにせよ、彼女には借りが出来た形になる。

 

「………」

 

それにしても、黄昏と名乗った少女は一体どういった存在なのだろうか。

グリーフシードの穢れを取り除き、従来のよりも穢れを吸収するようになったそれ。

その事だけではない。

あれだけ魔法を使ったと言うのにグリーフシードを使用するどころか巴マミに譲った。

いや、でもそんな手段は私も知らない。なら、何故譲ったのか。

ただ単に、とてつもない程のお節介とも思えない。

 

もしかすれば、彼女の魔法は私達の魔法とは根本的な部分で違うのではないか。

キュゥべえと契約する以外の、別の方法で得た力。

 

仮面の下に隠れたあの笑みは、何か知っている顔。

何を知っている? 魔法少女の真実? インキュベーターの真意? それ以上の何か?

 

完全なるイレギュラー。それも、かなりの腕を持った者。

この時間軸は私の知らない次元にさえ成し得ている。

 

―――なら、今度こそ決着を付けられるのでは?―――

 

甘い囁きの様な考えが頭をよぎる。

いや、彼女が、黄昏という少女がいなくても私は今度こそ決着を付ける。

そう信じて私はいままで、ずっと戦い続けているのだから。

まどかを救えさえすれば、後は全て捨て去っても構わない。

 

 

Side 黄昏藍香

 

 

街にある、一番高いビルの屋上。

私はそこから足をぶら下げて振っていた。

 

何故私がこんな場所に居るかというと。

 

「藍香」

 

背後から声、杏子ちゃんだ。

振り返ると同時に投げ渡されるグリーフシード。

私は魔法を使ってそれを浄化し、投げ返した。

 

「ありがと。これだけはあんたにしか出来ないからね」

「これが真の効率の良さってものかな?」

 

杏子ちゃんだけという訳でもないが、彼女とはこの交渉で最初の縁を結んだに近い。

今は、本当の友達だけど。

 

「ところでさぁ、その黒い物体ってアレか?」

「うん。憎悪や憎しみ、呪いの元となる感情の結晶。強力な魔女程それなりの物にもなる」

「それはソウルジェムから抽出したものよりも、グリーフシードを浄化した時の方が純度は高い」

「っ?!」

 

風と共に現れた者。インキュベーター。

杏子ちゃんは相変わらず睨みつける。

 

私は素気なく、おつかれさま。とだけ言ってその結晶を投げ渡した。

彼はそれを受け取ると、何事も無かったかのようにこの場を立ち去っていった。

 

「あいつ、いつか切り刻んでやろうか……」

「無駄だよ。だってインキュベーターは無限に存在するに等しいから」

「ならちょっと位いいじゃねぇか」

「じゃあ杏子ちゃんは、永遠に終わらないモグラ叩きをやり続けるだけの気力がある?」

「………」

 

はぁ、と重い溜息を吐いて彼女は私の隣に座り、たこ焼きを食べ始める。

はふはふと熱そうに食べるその姿は、いつもの彼女と違って面白かった。

 

「食うかい?」

「頂きます」

 

一個だけ貰って口の中に運ぶと、予想以上の熱さに驚いて舌を火傷しそうになる。

その様子を見て杏子ちゃんは声を上げて笑った。ちょっと悔しかったのは内心秘密だ。

 

 

////////////////////////////////

 

 

魔女の気配を感じ取ってすぐさまその方向へ駆けだす。

杏子ちゃんは今日も別の魔女を探しに出ていった。

彼女曰く、『藍香は誰とでも仲良くなれるから奴だから仕方ねーや』だそうで。

単に褒めているのか、皮肉っているのかは解らないが、褒め言葉として取っておく。

 

廃工場のような場所。魔女の結界を半ば無理やり開いて侵入する。

元々他の魔法少女が入った後の入り口なら侵入しやすいのだが、こう一から開くと言うのは辛い。

 

空中に浮かんだメリーゴーランドの様な背景。重力はそこまでないのか浮かぶ事も出来る。

と、目に入ったのはピンク色の髪の少女。そう、鹿目まどかその人。

彼女は、天使を模したマネキンとも言える使い魔に四肢を引っ張られ、今にも千切れそうなほどにまで伸びていた。

その近くにはブラウン管式のパソコンの画面みたいな魔女が。

 

「―――――」

 

私は天空槍牙を五本生成して正確に投げ付ける。

使い魔を貫いたと同時に爆発させ、魔女に私の存在を意識させた。

拡連多節棍を生成、魔女から生まれる使い魔を叩き潰していく。

それと同時にさりげなくまどかちゃんに近付く。理由は不安にさせない為。

 

「まどかちゃん、大丈夫?」

「た、黄昏ちゃん?」

 

若干目に涙を溜めた彼女の顔は不安の色でいっぱいだった。

だから私は耳元で囁く。

 

「大丈夫、私が守るから。安心して」

 

拡連多節棍を思いっきり増やして使い魔を全滅させると、そのまま一本に束ねて間髪入れずに魔女を狙う。

 

魔女の真上から思いっきり叩き割るかのようにぶつけると、何かが拉げる音が鳴る。

縦に凹んだ魔女はそのまま地面に叩きつけられ、黒い水を噴き上げた。

それと同時に解ける魔女の結界。今回も無事に守れたようだ。

 

まどかちゃんはあまりの事の進み用に言葉を失っている。

 

……それにしてもこの仮面蒸れるなぁ。もうちょっと通気性とか考えたらよかった。

実は付けている仮面は魔力で生成したもの。ただの鉄仮面でしかないけど。

 

「鹿目さん!」

 

と、ここでマミさんの登場。

まどかちゃんを抱きしめ、そのまま膝をつく。

 

「良かった……良かった……!」

 

私は自分の髪をいじりながらもその光景を眺める。

やっぱり、此処まで心配してくれる人がいるとうれしい物を感じるのかな、まどかちゃん?

 

 

 

 

「ごめんなさい。また弱い所見せちゃったわね」

「あの、ごめんなさい。マミさん」

「鹿目さんは何も悪くないわ。むしろ私の方こそごめんなさい」

 

暫くマミさんは泣いていた。今は涙をぬぐい、謝り合っていた。

私としては二人とも悪くないと思うんだけど。優しいな、二人とも。

 

「黄昏さんも、ごめんなさいね。迷惑かけちゃって」

「大丈夫ですよ。それよりも何よりも、まどかちゃんを救えたのが幸いでした」

「え? どうして私の名前を……」

「さてなんでかな?」

 

私は笑いながら仮面を手に取り、握りつぶすかのようにして消滅させる。

二人は突然の行動に唖然とした。

 

「私の名前は黄昏藍香。この街にやってきたイレギュラーな魔法少女」

 

そして、私独自の結界を創造した。

 

 

Outside

 

 

まどかとマミの二人は次々に巻き起こる展開に追いつく事が出来ず、茫然と辺りを見渡す。

新緑の緑が煌々としている森と鏡のように透き通った湖。

辺りは白銀の月光と舞い踊る蛍の光で照らされていた。

だがその場にはこの空間の創造主がいない。

 

「あれ、黄昏ちゃん?」

 

まどかは声を掛ける。マミは慎重に辺りを見渡し、気配を探る。

魔女の結界とはまるで違う。だが普通でも無い世界。

 

と、そこにひらりと紙飛行機が舞い込む。

羽根の部分には【マミさんとまどかちゃんへ】と書いてあった。

まどかは何処から飛んできたんだろうと首を傾げながらも、それを解く。

その中には文章が書き連なっていた。

 

『        招かれし、二人の少女へ。

  私は何処に居るでしょう? と言っても解んないよね。

     そこから真っ直ぐな道が見えるでしょ?

   その道を暫く進めば見えてくる建物があるから、

     そこで私は待ってます。必ず来てね。

 

P.S.

まどかちゃんはお家の人に連絡しておいた方がいいよ。  』

 

 

「マミさん」

「ええ。私の方にも一通届いたわ。全く、粋な事してくれるわね」

 

怒っている様な口調だったが、その顔は笑っていた。

 

「行きましょう。折角のお呼ばれ、断る訳にはいかないものね」

「あ、その前に電話しておきます」

 

その発言にマミは思わず少し吹き出してしまった。

 

 

*******

 

 

白銀の月光は優しい光でその世界を照らしていた。

灯りが必要ないほどにまで照らされたその道は、手紙に書いてあるようにまっすぐであった。

 

「黄昏藍香ちゃんかぁ、なんだか不思議な名前ですね」

「ふふっ、人の名前ってそんなものよ」

 

二人とも心から信用しているのか、この世界になんの警戒心も持たずに何気ない会話を交わす。

 

「そういえばどうして藍香ちゃんは、マミさんの名前を知ってるんだろう」

「私のような魔法少女は珍しいから、逆に有名なくらいよ」

 

「それより鹿目さんの名前を知ってる方が私としては不思議だわ」

「うーん、私のクラスにそんな名前の子いないし……他のクラスの子かなぁ?」

「私のクラスにも少なくともいないわ。そもそもあの身長からして二年生かしら」

 

そんな会話を交わしていると、急に森が開けてなだらかな坂が続いていた。

思わずその先にある物を見て歩みを止める。その坂の先。大きなお城が建っていた。

 

もう驚かない。もう慣れたから。

 

今宵、招かれた客として、二人は再び歩き始める。

そして案外早く辿り着く。心なしか楽しみで速足だったのだろう。

 

木製の門の扉が開かれると、出迎えたのは小さな人形。

髪は金髪。瞳の色は青色の少女の姿をした作りこまれた物。

ふわふわと空中を漂っていたが、二人に門をくぐるよう動作で示す。

戸惑いながらも二人は門をくぐると、すぐさまその人形が門を閉めた。

続いて城の扉を開いて招き入れる。

 

「なんだか、不思議な感じですね」

「え、えぇ」

 

人形に先導されるのは良くも悪くもこれが初めてなので、戸惑いを隠せない二人。

それに対して、慣れているのかその人形はテキパキと仕事をこなしていく。

 

長い廊下。その突き当たりにある木製の扉。上には『応接室』と書いたプレートが。

人形が扉を開くと、椅子に腰かけている藍香が出迎えたのであった。

 

 

Side 黄昏藍香

 

 

「いらっしゃい、まどかちゃん。マミさん」

 

私は満面の笑みで彼女達を出迎える。

 

「ありがと、時」

 

私はこちらに飛んできた『時』を膝の上に乗せて頭を撫でる。

時は嬉しそうに目を細めながら私に擦り寄った。

ふと、二人ともまだ立っている事に気付く。

 

「ああ、そこに座っていいよ」

 

四角い机、私と向かい合う形で置かれた二つの椅子。

ポンポンと私が手を叩くと、『風』と『守』が奥の部屋から飛んできて椅子を引いた。

彼女らに再び先導される二人。戸惑いながらも腰を掛ける。

 

それを図ったように今度は『世』が姿を表し、カートに紅茶を乗せてやってきた。

順々にお皿、スプーン、カップ、ケーキと置いていく。

最後に角砂糖とミルクの入った小瓶を添え、頭を下げて奥の部屋に消えていった。

 

「さて、お茶会始めよっか」

 





10話(アニメ6話~7話)までは書きあげているので、結構なペースで更新となります。
問題は、ワルプルギスの夜ですがね……(意味深)

ではではー

2012/11/04 前書きの台詞がまさかのウィンディーの台詞だったでござるの巻
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