魔法少女まどか☆マギカ ~少女へ捧げる鎮魂歌~   作:kasyopa

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『英雄、か。最初から、全て受け入れていたのかしら…』 byAC4 フィオナ・イェル・ネフェルト




第六話『玄人、素人』

Outside

 

 

放課後。

マミは新たに魔法少女になったさやかと共に、結界の捜索に当たっていた。

勿論、付き添いでまどかも付いてきている。

マミの魔法少女体験コースはまだ続いているのだ。

 

「この前も言ったけど、こうやってソウルジェムを使って魔女の残していった魔力を追うの」

「んー、でも全然光変わりませんよ?」

「これだけはどうしようもないわ。何か手掛かりになる物があればいいんだけど」

 

逆にそういう事が少ない方が、魔女の存在する数や影響が少ないので喜ばしいことなんだけど。

そう心の中で思いながら、マミは魔女の気配を探る。

 

「あの、マミさん」

「? どうしたの鹿目さん」

「朝ニュースでやってたんですけど……市街地の脇道で暴力事件があったって」

「! マミさんそれって」

「ええ、とにかく行ってみましょう!」

 

 

 

市街地の脇道。

ここは先に藍香とほむらがごたごたを起こし、藍香が使い魔を殲滅させた場所なのだが。

 

「確かに反応してる。この反応、魔女ね」

「え! 私のはちょっとしか反応してないのに」

「長年の勘って物かしら。大丈夫、すぐに慣れるわ」

「ん~、どうなんだろ」

「………」

 

初めから上手くいくはずがない。

そうとは解っていても、少し焦るさやか。

そしてまどかは後ろから付いていくだけの自分に、納得が出来なかった。

 

 

///////////////////////

 

 

マミが足を止める。

 

「ここね」

「そうみたいですね」

 

マミのソウルジェムもさやかのソウルジェムも、かなりの輝きを放っている。

さやかも心の中でこの反応なら魔女の反応だろうと確信を得る。

 

ソウルジェムをかざすと結界の入口が現れ、その中に飛び込む変身した魔法少女二人と少女一人。

結界。草原を思わせる緑に一色に塗られた細い通路と壁。

ところどころ、様々なクレヨンで落書きされたような跡がある。

 

「ブウウウウウウンンンンン!!!」

「あ、マミさんあれ!」

 

遠くの方にある広間でエンジン音の様な声をあげて走り回る、使い魔。

その姿は、鍵穴の形に口と舌だけを継ぎ足し、足のある部分には、幼児達が描く車が繋がっていた。

その声にふさわしいかどうかわからないが、かなりのスピードで走りまわっている。

 

マミは複数のマスケット銃を空中に舞い上がらせ、一本持っては撃ち、一本持っては撃ちを繰り返し、当てはしないものの確実に追い詰めていた。

最後の2発を使い魔の前後に打ち込み足を止める。

 

「美樹さん!」

「はい!」

 

足場を強く蹴り、低空飛行の高速直進移動で突っ込み、剣を振り下ろす。

完全に不意を突かれた使い魔はいともたやすく切り裂かれた。

しかしその上にもまた別の使い魔が潜んでいた。

先ほどの使い魔の車の部分がプロペラ機になった使い魔だ。

切り込んだ彼女は当然気付いていない。

と、銃声が再び鳴り響く。

 

「っ?!」

 

上を見るさやか。

そこには見事に風穴が空いた使い魔の姿が。

 

「………」

「油断は命取りよ!」

「は、はい!」

 

さやかは上を見上げ、空中を漂っている使い魔を視界にとらえた。

通路よりも広間の方が、天井が高かった為マミのいる位置からは死角の場所にいる。

複数召喚した剣を地面に突き刺し、体を回転させて遠心力も使いながら鋭い剣が使い魔に襲いかかる。

2本で動きを制限し、1本で確実に仕留める。

仕留める為によく考えてはいるものの、これでは魔力の効率が悪いのは目に見えていた。

 

マミとまどかが追いつく頃には広間の使い魔はさやかによって全滅していた。

と言っても数体しかいなかったのだが。

 

「流石ね美樹さん」

「いやぁ、マミさんに比べたらどうってことないですよ。このくらい」

 

それからも順調に奥に進んで使い魔の数を減らしていき、ついに最下層までたどり着いた。

 

巨大な積み木で囲まれた開けた場所。ところどころにクレヨンや文字ブロックが転がっていて障害物になっていた。

そしてその奥。この結界の主である落書きの魔女がそこにいた。

 

「なんか、最近あんな魔女ばっかりなんですど……」

 

その姿はどうも前回マミ達が戦っていた、人形状態のシャルロッテを連想させる姿をしている。

 

「見た目に惑わされては駄目よ。どんな攻撃をしてくるかなんて魔女によってさまざまだから」

「わ、解ってますって!」

「鹿目さんは危ないからここにいて」

「あ、はい……」

 

やはり何もできないという現実が、まどかに襲いかかる。今の彼女はそれに呑まれるしかない。

 

「鹿目さん、そんなに自己嫌悪になっちゃだめよ」

「そうだよまどか。まどかはまどかで出来ることがあるから!」

「………」

『自分が、その相手にとってどんな存在か。それを自分で理解すること』

 

『そしてそれを理解したら、自分は何をしたらいいかを考えて行動する。かな?』

 

二人の励まし、藍香の言葉。

魔法少女ではない自分にできることなどあるのだろうか。

そのことが理解出来たら幾分か今が楽になるのかな、と思うのだった。

 

「美樹さん、しつこく言うけど油断しないでね」

「マミさんも、前みたいに油断しないでくださいね!」

 

二人は互いに笑みをこぼし、魔女に切り込んでいった。

 

 

 

ちょっと気が抜けるような姿の魔女。

初めて見た魔女の方が正直気持ち悪かったと、さやかは思った。

ところで、今その魔女は何故か床に何か描いている。

 

「アハハハ! アハハハ!!」

「!」

 

と、その描いたものが使い魔になって空を飛び回りだした。

 

「おっちろおおおおお!!」

 

さやかが叫びながら地面をけり上げ、出てきたばかりの使い魔をそのまま貫く。

まだ魔女は落書きを続けていて、止める様子は見てとれない。

二体の使い魔が魔女の落書きから現れる。

空中に飛び出したさやかは剣を二本両手に持ち、両腕を広げそのまま落下。

落下の勢いを味方につけ、発した二閃が使い魔を切り裂いた。

そのまま落下すれば魔女の目の前に落ちるので、空中に足場を作り、蹴って後ろに下がる。

 

マミから見ればかなり無茶な戦い方で危なっかしい物ではあったが、実際に経験してみて解ることがあると、余計な口出しはあえてしなかった。

 

一方のマミはマスケット銃を召喚し、魔女を牽制、または部分的な攻撃を行ってこれ以上使い魔が増えるのを抑えている。

それでも結界内から集まってくる使い魔がいる為、それも的確に撃ち落としていく。

まずは安全を確保してからの魔女退治だ。使い魔でも、人を食い殺すだけの力は持っているのだから。

 

使い魔を瞬く間にせん滅。

だが、気付いた時には魔女がいなくなっていた。

二人は魔女の気配を探る。最深層から逃げることは無いだろうが、身を隠すことだってあるだろう。

 

「……そこよ!」

 

銃声。まわりに積まれた積み木の山の一角が崩れると、その後ろから魔女が姿を現した。

見つかったのを少々嬉しそうに思っているのか、はしゃぎながら再び広場に出できた。

その隙を見逃さず、マミがレガーレで拘束し、足にマスケット銃を乱射しそこからのびるリボンがさらに拘束する。

 

「美樹さん!」

「はい!」

 

即座に魔女の元に接近、青い剣閃が五芒星を象った。

 

「マミさん!」

「OK!」

 

「ティロ―――」

 

マミはリボンを巨大なマスケット銃に変え、必殺技を炸裂、させようとした。

 

ドスッ。

 

鈍い音が響き、魔女の胸に槍が突き刺さる。

 

「「っ?!」」

 

そして赤い閃光が縦に魔女を引き裂き、結界が消滅した。

 

「まーたマミはそんな新人連れて、いつまでも変わらないもんだねぇ」

「そういうあなたも藍香さんを連れてるわりには変わらないのね。佐倉さん」

 

赤い幻影の魔法少女、佐倉杏子がそこにいた。

 

「なっ! あんた私達の魔女をいきなり……」

「ベテランが新人連れてチンタラやってんじゃねーっての」

 

上から落ちてきたグリーフシードを槍先で受け止め、掌に乗せる。

 

「流石に貴女でも、魔女の横取りは感心しないわね」

「ま、ちったぁ悪いとは思ってるよ。でもこいつを有効利用できるのは藍香だけなんでね」

 

マミは思い出す。藍香がグリーフシードから何かを分離させ、それの魔力回復の効率を向上させたのを。

当然杏子は藍香と共に行動してるので、杏子の採ってくるグリーフシードの効率もあげているはずだ。

 

「マミさん、あの魔法少女なんなんですか!?」

「彼女とはちょっと昔に因縁があってね。美樹さんは下がってて」

「で、でも」

「今の貴女に敵う相手じゃないわ。出来る限り穏便に済ませたいけど」

「………」

 

さやかは黙って引き下がるものの、やるせない気持ちに腹を立てていた。

 

「ん?」

 

杏子は見覚えのある顔を見つける。

 

「まどかじゃねーか。何してんだそんなところで」

「あっ、杏子ちゃん……」

「……なるほど。マミも無謀なことするねぇ。そんな危険な目にあわせて何の意味がある?」

「貴女には到底解らないでしょうね。『あの場所』では彼女が居たから穏便に済ましたのかしら?」

「藍香は関係ねーよ。あたしはあたしだ」

 

掌にあるグリーフシードを弄びながら視線も合わせない杏子と、いつにも増して真剣な視線を飛ばすマミ。

 

「≪ねぇまどか、なんであいつのこと……それに藍香って≫」

「≪えっと、藍香ちゃんっていうのは黄昏ちゃんのことで≫」

「≪黄昏ってあの仮面かぶってた魔法少女?≫」

「≪うん。昨日仁美ちゃんと工場の人が集団幻惑に掛ったって事件があったでしょ?≫」

「≪あー、っと。魔女が原因だったんだよね? でも誰が倒したの? マミさん? 転校生?」

「≪ううん、それが黄昏藍香ちゃんだったの≫」

「≪ええっ?!≫」

 

意外な人物の名前に驚くさやか。

 

「≪ということはあの仮面の奴もう名前言ったわけ?!(それに黄昏って嘘の名前だと思ったのにまさか名字だったのかー!)≫」

「≪うん。その後お茶会に招待されて、それで杏子ちゃんと知り合ったの≫」

「≪どんな奴だった? 嫌な奴だった?≫」

「≪んと、不思議な子って言うか、荒々しい子だったけど、でもいい子だったよ?≫」

「≪んー、まどかが言うならそうなんだろうけどさ。でもあれは≫」

 

さやかはマミと杏子の方に意識を向ける。

 

「「………」」

 

いつの間にか二人は互いに見合い、緊迫した雰囲気がその場を支配していた。

 

「どうも腑に落ちないわ。貴女がどうして藍香さんと共にいるのか」

「あいつは、不思議な奴なんだよ。マミだって解ってるだろ? あいつのあの雰囲気」

「ええ。あの時ご相伴にあずかった時、ね」

「だったら解るだろ? 私は藍香と一緒にいるだけだ。人は変わるもんさ。あたしみたいにな」

「………」

 

杏子は再び先ほど入手したグリーフシードを見つめる。

 

「ほらよ」

 

何を思ったのか、マミにそれを山なりに投げる。

その行動に彼女は驚きを隠せなかったが、受け取って冷静を装った。

 

「! どうしたの急に?」

「まぁ、今回は悪かったよ。ただ―――」

 

「これ他人以上巻き込むな。これはあたしたち魔法少女の問題だ。魔法少女じゃなくても、これ以上首を突っ込めば戻れなくなるぞ」

 

そう言って今度はさやかの方に視線を写す杏子。

 

「あんたがさやかだな。まどかの言ってた」

「ん、だからなんだってのよ!」

「生半可な気持ちで魔法少女やってんじゃねぇ。死ぬぞ」

「な! あんたこそなんなのよ! いきなり割り込んでグリーフシード奪ったと思えば、すぐ返したりして!」

「後マミ。使うなら藍香に浄化してもらってから、使ったほうがいいぞ」

 

杏子は後ろで一つにまとめた髪を翻し、その場から去ろうとする。

が、途中でその足を止めた。

 

「……よかったな。今あいつが全速力でこっちに向かって来てる」

「! 藍香さんが!?」

「なんでも別の場所に現れた魔女もいたが、ほむらとか言う奴と瞬殺したってよ」

「杏子ちゃーーーん!!」

「「「っ?!」」」

 

そんな大声と共に、一人の少女が空から降ってきた。

青く腰まで伸びた髪が舞い上がり、風を纏う。

 

「ごめんね、遅くなっちゃった」

「気にしてねーよ。むしろ話が終わって丁度いいくらいだ」

 

彼女は息を整えながらマミ達のいる方に視線を向けた。

 

「マミさん、まどかちゃん、久しぶり。さやかちゃんは、初めましてかな?」

「どうして私の名前をって、なんか普通の顔……」

「えぇ?! 私に何の期待してたの!?」

「いやぁ、初対面で仮面してたからもしかしたら絶世の美女かと」

「残念藍香ちゃんでした?」

「まどかちゃんまで!?」

 

そのやり取りの様子を見てマミと杏子は笑っている。

 

「≪やっぱり藍香さんは面白いわね。貴女が居るだけで不思議と場が落ち着くわ≫」

「≪それが藍香のいいとこなんだよ≫」

「≪佐倉さんは彼女に会って初めて、こんなことになったことはある?≫」

「≪そうだな。あたしが結界のお茶会に呼ばれて≫」

 

 

********

 

 

「ようこそ杏子ちゃん」

「……何の用だ、なんであたしをこんなわけのわからない場所に連れ込んだ?」

 

結界の森の中。そこで二人は見合っていた。

杏子が藍香の首元に槍を突きつける。

それに全く動じない彼女は、髪を翻し、振り返って去ろうとして。

 

ガンッ!!

 

木に額を思い切りぶつけてその場にうずくまった。

 

 

********

 

 

「≪………≫」

「≪今でも抜けてないんだなぁ、あいつ≫」

「≪でもそれが彼女のいいところ、なんでしょ?≫」

「≪よく分かってるじゃねぇか≫」

 

そんな会話の中で、藍香、さやかの会話は続く。

 

「そもそも正体隠す時、名字そのまま使うってどうよ……」

「あ、あれはとっさに思い浮かばなくて!」

「ま、まぁまぁ二人とも」

 

まどかも制止に入って巻き込まれていた。

 

「で、藍香。今日はどうすんだ?」

「んー、そうだね。さやかちゃんが魔法少女になったし、いいかな」

「ふーん。じゃあまたご相伴に預かることにするよ」

「うんうん。私は何人でも歓迎するよー」

「ご相伴? 歓迎? なんの話よ」

「さやかちゃんはあの時いなかったからね。藍香ちゃんの結界でお茶会したりするの」

「け、結界? 魔法少女も結界作れるの?」

「いいえ、藍香さんだけよ。藍香さんは私達とは違う魔法少女だから」

「そ、そうなんですか」

 

そういえば、さやかちゃんは初めてだよね。

そう呟いて、藍香は結界を開いた。

 




接触した、赤き幻影の魔法少女と青き旋律の魔法少女。
生きし生ける玄人の魔法少女は何を思うのか。

という訳で、今回マミ&さやかの合同魔女狩り。
え? 更新が早いって? ああいえ、この話と次の話は繋げて投稿したいと思ったわけでして。
早めに更新させていただきました。作者の勝手ですみません。

次回予告 CV:黄昏藍香

それでもこの子達は急ぎながらも、嬉しそうに準備している。
私にかまって貰えるからだろうか。それとも。

『お持て成しの友達』


P.S. 上の文章が指すのは杏子、さやか、マミの事です。
   ツェペリのおっさん……あんたはいい師だった……本当に。
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