魔法少女まどか☆マギカ ~少女へ捧げる鎮魂歌~ 作:kasyopa
『誇ってくれ。それが手向けだ』 byAC4 アンジェ
Side 黄昏藍香
テーブルには今、私とマミさんが向き合って座っていた。
お皿は引かれ、食後の紅茶とお茶菓子が出ている。
口の中と舌を火傷したさやかちゃんとまどかちゃんは帰る時間が遅くなるからと帰って行って、同じく杏子ちゃんもお腹が満足したのか自分の住む場所に帰って行った。
「(……さやかちゃんって、どこの時間軸でもあんな感じな気がする)」
「藍香さん」
「あ、なんですかマミさん」
「貴女、ご両親はどうしてるの?」
そういえば、私はずっと一人だけどお父さん、お母さんはいるのだろうか。
この世に生きているのだろうか。私が存在するという事は、当然親が居ると言う事。
しかし、私が時間軸をやり直して『最初から』をしても、私の家に両親はいない。
そもそも私自身が知らない。
「すみません。私ずっと一人暮らしで。親が居るかどうかも解らないんです」
「そうなの……悪いこと聞いてしまったわね。ごめんなさい」
マミさんは少しだけ考えるそぶりを見せたが、それでもすぐにやめて返事を返してくれた。
ここはひとつ、賭けに出てみるかな。
「マミさんはお父さん、お母さんいないんですか?」
「……数年前に事故で亡くなったの。だから今は藍香さんと同じ一人暮らしね」
「あ! ご、ごめんなさい!」
自分の中にある事を言葉で吐き出せば、自分の中からは消える。
だから、マミさんにはそういう人に言えないことを言ってもらって吐き出して欲しかった。
「いいのよ。それよりも」
「藍香さん。私と手を組まない?」
その提案に、私は驚きながらも目を閉じた。
Side 巴マミ
驚きながらも、目を閉じ考え始める彼女。
ついさっきまで焦って謝っていたのに、この変わりようだ。
もしかしたら、暁美さんよりも掴みにくい性格なのかもしれない。
と、そんなことは置いておいて。
私がこの話を持ち出したのに、深い意味は無い。
ただ、どういった答えを出してくるのかが気になったのだ。
彼女の趣向としては佐倉さんより私の方が同調しやすいと思う。
現に、藍香さんは使い魔も魔女も倒している。ただ佐倉さんの為に魔女退治は控えているように思えるが。
息を吐き、傍に置いてあった紅茶を含む彼女。
しかし目は開けない。まだ考えているということであろう。
「(わりと考えるわね。そこまで難しい事だったかしら?)」
「んー。今はお断りします、かな」
今は。そして語尾につけた、かな。
まだはっきりしないので、一番無難な答えを選んだのだろう。
「今はって事は、今後変わることもあるって見てもいいのね?」
「はい。でもそれ以前の問題もありますし」
「……ワルプルギスの夜」
ワルプルギスの夜。
噂とキュゥべえからしか聞いたことがない、最強の魔女。
あまりにも強大で結界を必要としない為、一つの街を壊滅させるなど、いとも容易く行える魔女。
「そうですね。あれは私でさえも、一人ではどうにもなりませんから」
「ワルプルギスの夜を知っているの?」
「よく知ってます。彼女は、私が助けてあげたいから」
「(彼女……?)」
その言葉を言い終わってから、ハッとして自分の口を抑える藍香さん。
「いえ、言葉を間違えました」
「何か貴女は知ってるのね。ワルプルギスの夜について」
「………」
「沈黙は肯定を意味するわよ」
「そう取ってもらって結構です。ただ、このことは言えません」
「どうして?」
「それを知ったら受け取り方次第で、マミさんが絶望してしまうかもしれないから」
「……それは、まるで魔法少女と魔女には何か関係があるとでも言っているようね?」
攻める。彼女の隠し事を全て暴く為。
私が絶望するかもしれない。しかし、受け止め方次第の話だ。
それに……もしもの時は藍香さんが救いの手を差し伸べてくれるだろう。
「もうここまで問い詰められたら、言い逃れできないや」
彼女は少し笑って残っていた紅茶を全部飲み干し、席を立つ。
「本当に、真実を。現実を受け止める覚悟があるのなら、付いて来て下さい」
「………」
その問いに私は首を縦に振り、席を立った。
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お城を超えた先にもあった森。
私達がこの結界に招待された時最初におとずれる森とは違って、大樹や大岩が転がっており、幻想的な雰囲気が漂っている。
地面には大きな根や雑草が蔓延り、苔生しごつごつした岩がむき出しになっていた。
道なき道をまるで小動物の様に身軽に跳んでいく彼女の姿は、まるで昔アニメで見た森の妖精と同じ。
時折振り返り、手招きする姿がそれをより一層感じさせた。
「(よくこんな場所を進めるわね……魔法で強化しないと辛いか)」
私は再び変身して追いかける。
と、今度こそ彼女は跳ぶのを止めた。
隣に降りて、彼女の見つめる先を見る。
その視線の先には苔生した祭壇が。
「ここは?」
「私の大切な友達が眠る場所」
藍香さんが祭壇に手を触れると光のベッドへと変貌する。
そこには、白い魔法少女が眠っていた。
「眠っているようだけど、まるで死んでいるみたい」
「もう死んでいる状態なんだけど、完全な死を遂げていない状態」
「どういうこと?」
「傍に魂が無いんです」
「ソウルジェムという名の、魂が」
その発言に眩暈を覚える。
ソウルジェムという名の魂。
彼女は確かにそう言った。
「ソウルジェムが魂……?」
「そうです。キュゥべえと契約した魔法少女は魂を抜きとり、ソウルジェムに変えられてしまうんです」
ソウルジェム。魔法少女になった者が手にする宝石。
魂の宝石……。あまりにも出来過ぎた話だ。
「そんなことをして、キュゥべえは何を考えてるの? 一つの願いを叶えたから?」
「そんな簡単な事じゃない。彼らの目的の為に」
「目的? 魔法少女を増やし、魔女を倒すことじゃないとでもいうの?」
「契約。その言葉の意味を、しっかりと理解して下さい。約束なんて言う生ぬるいものじゃないってことは、マミさんも解ってるはずです」
確かに。契約とは二人以上の当事者の意思表示の合致によって成立する、法律行為。
でもキュゥべえはそれを思わせないかのように、あの言葉を素質のある少女達に掛ける。
『僕と契約して、魔法少女になってよ!』
「ならもし、もしよ? ソウルジェムが無くなったり壊れたりしたら」
「魂の消失ということで、肉体も機能しなくなります」
「―――!」
そこで、私のしていることの間違いに気付く。
一つの願いの代償に、自らを死の淵に追いやる。その意味を解らせるために。
そう言う事は初めから解っていた。
でもそれ以上に私はどこかで、魔法少女としての仲間を求めていた。
でもそれは二度と戻れない道に、関係の無い少女達を引きずり込んでいた。
自らを戦いによって死の淵に追いやるのではなく、契約自体で死の淵に追いやる。
そんなこと、どんな願いも打ち消して絶望してしまう。
私の願った、自らの命を繋ぐという願いさえ。
「知らぬが仏……ね。本当に」
「何れ知らなければならない。それが現実であり事実なんです」
「でも、この事実以上に辛い現実があるんです。魔法少女には」
続くことは解っていた。魔法少女と魔女の関係について彼女はまだ触れていない。
これ以上の絶望に打ちひしがれることも、もう解った。
ならば、もう受け止めるしかない。自分なりの方法で。
「もう、諦めない」
「マミさん?」
「現実は、変えられない物ね。抗ったってその場しのぎでしかないもの」
「………」
「藍香さん。もう何も怖くない。だから、続けてくれないかしら?」
「はい」
ここで絶望したら、自分の今までしてきたことの意味も、自分が望んだ願いも、すべてをここで否定することになる。
私はそれを一番恐れているんだ。
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魔法少女が絶望に堕ちた時、魔女になる。
その絶望の時に発生するエネルギーを、キュゥべえは回収している。
藍香さんの話を聞き終えて、私は空を仰いだ。
「ごめんなさい。マミさん」
「いいのよ。話の展開上、なんとなくは解っていたから」
藍香さんの雰囲気から感じ取れた。
これ以上に辛い現実は無いのだと、自分の中で道を絞れたからこそ、そこまで絶望することもなかった。
「強いんですね。マミさんは」
「何年も魔法少女をやっていれば、洞察力もなかなか強くなるものよ」
「解っちゃいましたか」
「でもそのお陰で、予想というクッションが出来たわ。ありがとう」
『静かに眠っている』白い魔法少女に目を向ける。
これで死んでいるなんて、信じられない。
「じゃあ、彼女のソウルジェムは魔女を生んだから、こうなってると見ていいのね?」
「それも、超弩級の魔女です。魔法少女の素質の強さで、生まれる魔女の強さも変わってきますから」
「ワルプルギスの夜の正体……それが彼女」
素質の強さによって魔女の強さが変わる。
ワルプルギスの夜も一人の魔法少女によって生み出された魔女なら、その元となったあの少女はどれほどの資質を持っているのであろうか。
どれほどの強い素質を。
「……鹿目さん?」
強い素質を持った少女が傍にいる。
その素質の高さは、底知れないことを私も、暁美さんも知っている。
もしかして暁美さんが鹿目さんを、魔法少女にさせたくない理由って……
「今のまどかちゃんが魔法少女になったら、それこそ本当に取り返しのつかないことになる。あの素質は本当に異常でしかないから」
「もしかすれば、ワルプルギスの夜を超えるような魔女が」
「生まれるかもしれません」
首を縦に振り、言葉を付け加える藍香さん。
「キュゥべえも執拗に狙ってます。そこまでの素質をまどかちゃんは持ってますから」
「どうにかして止めないと……でも鹿目さんは」
私は話す。お菓子の魔女結界の中で聞いた、鹿目さんの思いを。
魔法少女になって、私の傍にいる。
魔法少女になって、使い魔や魔女から人々を守る。
それが鹿目さんの願いだという事を。
「まどかちゃんは、自分の意味を探してます。自分とはどういう存在なのか」
「だから貴女はあの時、ああ言ったのね」
「自分が、その相手にとってどんな存在か。それを自分で理解すること」
今の鹿目さんには、いいお灸となるといいけど。
Side 黄昏藍香
祭壇を元に戻して、私はマミさんと向き直る。
「今日はいろいろ言っちゃってすみませんでした」
「そんな畏まる必要はないわよ。今知ることができて感謝してるほどだもの」
3回目の時間軸とは全く違うマミさん。
あの時は、時間を止められるほむらちゃんを拘束し、攻撃力の一番高い杏子ちゃんを一瞬で打ち抜くという、とんでもない判断力でその場を支配していた。
あれでも、冷静な判断なのだ。だからこそ、あんな行動に出たんだと思う。
発狂したかに見えて、かなり分析的な攻撃を。
「でも、何かさせて下さい! 全く辛い思いをさせたわけじゃ無いわけですし」
「……そこまでいうなら、お願い聞いてくれるかしら?」
「はい!」
出されたお願いは、不思議な物でした。
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「お邪魔します」
「はい、いらっしゃい」
それは、『今日私の家に泊まっていって欲しい』というもの。
マミさんの家に上がるのもこれが初めて。当然、今までの時間軸で行ったことすらない。
綺麗に家具が配置され、観葉植物を多く取り入れた緑のある部屋。
所々にはいろんな色のクッションや小物が置かれていて、女の子らしさを出していた。
外は真っ暗。大きなベランダからは綺麗な夜景が見える。
「すっごく素敵な部屋ですね!」
「そんなことないわ。藍香さんのお城の中の方が素敵よ」
「あれと比べちゃ駄目ですよー」
互いにクスクスと笑いあった。
「そういえば、お風呂どうします?」
「そうね。出来れば一緒に入ってもらいたいけど」
「それもお願いって事ですか?」
「そこまで強制はしないわ。藍香さんの意思を尊重するわよ」
「んー……」
なんとなく、一緒に入ってもいい気がしてきた。
それに、今のマミさんとは出来る限り一緒にいた方がいい気がした。
「いいですよ。お背中流します」
・
・
お風呂場。
マミさんの背中を泡立ったスポンジで優しくこする。
ストレートな髪型の彼女は初めて見た。
「まさか後輩に背中を流されるなんて夢にも思ってなかったわ」
「私も、先輩の背中を流すなんて思ってもみませんでした」
実際の話、年上年下なだけで学校としての先輩ではなく。
魔法少女同士といっても別の部類同士なので、先輩後輩は無いと思う。
ただ、普通に魔法少女同士として見ればマミさんの方が先輩だ。
お湯を掛けて、石鹸を洗い流す。
「はい、終わりましたよー」
「ありがとう。それじゃあ私の番ね」
「え? あ、大丈夫ですよ。自分で流せますし」
「遠慮することないわ、早く座って」
せかされるように座らされ、背中を流される。
髪が邪魔にならないように、分けて両肩から前に流した。
「綺麗な髪……手入れ大変じゃない?」
「そんなことないですよ。髪が綺麗だと自分自身も嬉しいですし」
「それにこれだけ長いならいろんな髪型試せるわよ?」
「髪を傷めるから編んだりしないんです。質も気にしてますから」
「そうなの? ならこのシャンプー使っても大丈夫かしら」
「なんでも合うんで大丈夫ですよ」
背中を流してもらうついでに髪まで洗ってもらう。
髪は女の子の身だしなみだからね。気を付けないと。
「そういえば今日は美樹さんを連れてきたのだけれど、どうだった?」
「まだまだ未熟だけど、貴女の目で見てみてどう思ったか聞かせてほしいの」
「そうですね……」
杏子ちゃんとはあんまり温厚な感じじゃないかな。
でもあの二人ならきっとうまくやっていけると信じている。
同じ、人の為に自分を戦いの地に向かわせた者同士である故。
「今は、様子見って感じですかね。マミさんはまだまだ心身共に幼い魔法少女を、しっかりサポートしてあげて下さい」
「そうね。美樹さん、少し偏った部分があるから、ぶつかることも多いと思うし」
「できれば、一番解ってあげられる存在が傍に入れくれるだけで、随分楽になると思うんです」
「鹿目さんにも限界があるわ。当然、私にも気付けない点もある。藍香さん、お願いできないかしら?」
「了解しました」
まぁ、さやかちゃんにとってまどかちゃんの方が接しやすいとは思うけど。
それでも、本当に自分を理解して受け止めてくれる人が必要なのは変わりない。
「はい、終わり」
「ありがとうございます」
二人の夜は、まだまだ続く――――
もう、何も怖くない。
そう彼女は心の中でつぶやいた。
少々無双し始める独自設定。
マミさんが豆腐メンタルだって? とんでもない!
しっかり調べれば解る事ですよ。皆死ぬしかないじゃない!の、
マミさんも発狂してるわけじゃありませんしお寿司。
次回。さやかが、あのさやかがああああ!!!!
次回予告 CV:美樹さやか
もうここまで来たから後戻りはできない。
私だって魔法少女だ。正義の味方なんだ。
『貴女の望んだ真意』
P.S. 外伝的な物でリクエストがあれば、出来る限りお応えいたしますので、
ドシドシどーぞ。要望の内容によってはメインストーリーに係るかも……?
(行き当たりばったり開発故)