禪院直哉の御三家のススメ   作:北直哉

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3話目です。


禪院直哉の三歩後

 

 

直哉が5歳になってからしばらくして術式が発現した。

 

術式の名は投射呪法

 

この禪院家ではその術名を知らぬ者はいない、現当主も持つ一族相伝の強力な術式だった。

 

呪術界においては五条家に六眼持ちの無下限呪術使いが生まれたことにより勢力図や情勢が激動している中であり、相伝とは言え禪院の歴史の中では比較的新しい方の術式だったため、禪院家きっての天才のことも大きな話題には上がらなかった。

 

しかしそれは呪術界全体の話でありこと禪院家では話は別。

やはり禪院直哉は天才だったのだ。と、更に直哉の一族内での立場が確固たるものとなっていった。

 

 

 

しかし禪院家も一枚岩ではない。

皆が皆一族内に強力な術師が育っていくことに喜んでいる訳では無い。

直哉の吉報が吉報足りえない者も一族内に確かに存在するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直毘人は、直哉から鍛錬中に起きた事象の報告を受け、それが術式によるものそしてその術式が投射呪法であることを確信した。

 

 

直毘人は口では

 

「お前の術式の名は投射呪法、相伝術式であり俺と同様なもの故に手解きをしてやる。今日の夜に時間を作れ。」

 

と簡潔に伝えたのみだったが、直哉が部屋から退出した後はくつくつと笑いが漏れ出た。

こんな時は酒が美味い、いつもの直毘人なら浴びるほどに酒を飲んでいただろう。

そんな直毘人だったが、この日はお気に入りの年代物の酒を水割りでちびちびと飲み、ほろ酔い気分で想像以上の伸び代を見せる息子の為に準備を始める。

 

 

 

 

 

 

「…なんで赤飯なん?」

 

 

いつも豪勢な食事であるがこの日は特に気合いが凄かった。

山盛りの赤飯、立派な鯛の姿焼き、お造り、吸い物etc……それはもうおめでたい何かが生まれたに違いないと言わせるような食事だった。

 

もちろんこれは紅蘭が直哉の術式が発現したことを知り、テンションがぶち上がったまま用意したものであるが、直哉にとってはいつか必ず手にする物が自分の手に届いただけの事であり。

(…これでもっと強い呪いを祓う事が出来る)

くらいにしか考えていなかったので見覚えのない豪勢な食事は、前に見た生贄にされる子供がそうとも知らずご馳走を食べるという昔話のワンシーンを思い出さずにはいられないのであった。

 

「何を言ってるのですか直哉様!今日は直哉様の術式が発現した記念すべき日です。許されるのなら祝日にしたって良いくらいですよ!なのになんで当の直哉様がそんな当たり前みたいに構えてるんですか!?」

 

「大袈裟過ぎやろ。たかが術式が使えるようになっただけの事や…ただ今までよりもっと効率的に呪いが祓えるようになる、それだけのことや」

 

そうやってことも無さげに握った右手を見つめる直哉だったがどことなくその横顔は照れくさそうにはにかんでいた。

その顔が見れただけで紅蘭は何でも出来そうな気持ちになるのだ。

 

(あぁ直哉様、正しく次代の御三家当主に相応しい御方。ノブレス・オブリージュはきっと直哉様を見た人が作った言葉なんだわ………直哉様━)

 

「……好き…………ハッ!!?」

(マズイ心の声が!!!?)

 

 

「な、直哉様これは…!その、あの」

 

 

「なんや紅蘭、急に慌てて?」

 

 

「い、いえ何でもありません…直哉様の術式の事が嬉しくて舞い上がってしまいました。」

(よ、良かった…聞かれてなかったみたい)

 

 

「ほんま紅蘭は大袈裟や」

 

 

 

「まぁ俺も紅蘭の事は嫌いやないで」

 

 

 

 

従者として認めてやってもええわ、なんてはにかんで。

そう言って、まるで当たり前の日常のワンシーンのように吸い物に口を付ける直哉。

 

 

紅蘭の脳内には怒涛の感情が流れ込み、それを処理し切ることは紅蘭の直哉のことに関しては途端に低くなるIQでは不可能だった。

そして脳内に溢れ出した存在しない記憶。

 

 

「…熟年夫婦………か。」

「阿吽の呼吸……当たり前の毎日に…………当たり前じゃない幸せ……当たり前のことに感謝してくれる素晴らしい夫……」

 

 

「毎度の事ながらコイツには何が見えとんねん?」

(うわ、鼻血出しながら白目剥いとるキッショ……)

 

 

未だこちらに意識が戻らない紅蘭のことは放っておいて、丁寧に両手を合わせた直哉は直毘人の部屋へ向かうことにした。

 

食器は部屋に残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

直毘人は直哉にあるアニメーション映画のメイキング映像を見せながら術式の説明を始めた。

メイキング映像には製作スタッフが1枚ずつ絵コンテを書き上げていく様子が映っている。

その映像を指差しながら直毘人がこれが俺とお前の術式の簡単なイメージだ、と言った。

 

 

 

「お前の術式は先程も言ったが投射呪法。己の視界を画角とし1秒を24分割した上であらかじめ画角内で作った動きを後追いする。」

 

「このアニメーション映画も、1つ1つを見れば静止画でありそれを繋げることで動いているように見えるのだ。」

 

「術式で動きを作り続ければ速度は青天井ではあるが、リスクもある。この絵とこの絵、順番を変えてしまえば動きの前後にガタつきが生まれる。これを術式で行えば1秒間フリーズし致命的な隙を晒すことになる。」

 

「しかしお前も鍛錬の時に感じたと思うが、このリスクは相手にも触れることで押し付ける事が出来る。」

 

「まずは使え、慣れろ。術式で動きを作ることを、考えるよりも先に手足を動かすように出来るようになれ。コマ打ちのコツは教えてやる。」

 

ここまでは分かったか?と直哉に視線を向けた。

 

 

「つまりは1秒先の未来の位置を確定させる術式ってことやろ?1秒経つまでに経由しないといけないポイントが二十四箇所ある。一個でも経由せんかったら失敗でフリーズ。触れたモノにもそれを強制する。」

直哉は息をするように簡潔に答えた。

 

 

直哉は続けて口を開く。

 

「無機物や、例えば液体なんかにも術式は使えそうやね」

 

 

(…流石だな、もう応用までに術式の解釈を拡げ始めている)

 

 

「無論出来るだろう、しかし形のないモノを捉えることは今のお前には困難だろう。故に術式を使いながら解釈を拡げるのだ」

 

 

「限界を自分で決めるな、強くなれ直哉よ」

 

「当然や、呪いは祓う。そのためにやれることは全部やるんや」

直哉は自分の術式に大きな可能性を感じていた。

この術式があれば自分はどこまでも強くなれる、と。

 

 

 

それ以降はコマ打ちのコツを直毘人から手解きを受け、直哉の天才的なコマ打ちセンスにまた直毘人は舌を巻いた。

直哉のセンスが抜群だったせいで予定していた時間よりも大幅に伝えておきたいことを伝えきった直毘人は直哉にお気に入りのアニメーションを見せながら久しぶりの2人の時間を過ごしたのであった。

 

 

 

 

 






得体の知れない女→飯は美味い女→信用できる女→キッショこいつ
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