横浜の騒動から一夜明けた2019年9月6日。ENTUM本社の会議室は、朝の柔らかな陽光に照らされていた。ガラス張りの部屋に集まったのは、萌実とエトラ、そして彼女たちを見守るスタッフたち。部屋の中央に立つベアトリクス・ブレーメの存在感は、まるで場を支配する女王のようだった。彼女の隣には、アイリスディーナが静かに佇み、鋭い視線で二人を見据えている。
「萌実、エトラ」
ベアトリクスが口を開く。彼女の声は、厳格さと温かさが奇妙に混ざり合った響きを持っていた。
「ENTUMとして、君たちに新たな一歩を踏み出してもらう。2019年12月11日、18時55分から19時36分――この時間で、君たちの初の共同生放送を行うことが決定した」
その言葉が響いた瞬間、会議室に静寂が訪れた。萌実は目を丸くし、手に持っていたマウンパのキーホルダーをぎゅっと握りしめる。彼女の瞳には、驚きと喜びが混じり合い、みるみるうちに涙が溢れ出した。
「ほ、ほんと…!?生放送…萌実、こんな大事なこと…!」
萌実は言葉を詰まらせ、感涙に咽ぶ。彼女の声は震え、頬を伝う涙が朝陽にキラリと光った。
「こんなチャンス、夢みたい…!」
一方、エトラは椅子から跳ね上がる勢いで立ち上がり、両手を高く掲げた。
「やった!やったよ!初陣だ!私、めっちゃやる気出てきた!」
彼女の笑顔は、まるで太陽のように眩しく、会議室の空気を一気に明るくした。
「萌実、一緒に最高の配信にしようね!」
萌実は涙を拭い、エトラの笑顔に釣られるように頷く。
「うん…!萌実、絶対頑張るよ!エトラと一緒なら、きっとすっごい配信になる!」
ベアトリクスは二人を見やり、口元に微かな笑みを浮かべる。
「ふん、いい反応だ。エトラ、この配信が君の初陣となる。ENTUMの期待を背負い、視聴者を魅了してみせなさい」
アイリスディーナが静かに補足する。
「配信内容は自由だが、君たちの個性を最大限に活かせ。萌実の情熱、エトラの勢い――その化学反応に期待している」
エトラは拳を握り、目を輝かせる。
「任せて!私、未来から来たアンドロイドとして、ガンガン盛り上げるよ!」
萌実は少し照れながら、しかし決意を込めて呟く。
「萌実だって、負けないよ…!マウンパの可愛さ、みんなに届けちゃうんだから!」
会議室を出た後、萌実とエトラはENTUM本社のロビーで顔を見合わせた。萌実の瞳はまだ少し赤いが、笑顔には確かな希望が宿っている。エトラは彼女の肩をポンと叩き、ニヤリと笑う。
「なあ、萌実。12月11日、絶対忘れられない日にしようね!」
「うん!萌実、貧乳だって…いや、ちがう!その、萌実の全部で勝負するよ!」
萌実の言葉に、エトラは思わず吹き出し、二人は笑い合った。その背後では、ベアトリクスとアイリスディーナがロビーのガラス越しに二人を見守っていた。ベアトリクスは腕を組み、静かに呟く。
「この二人がどんな嵐を巻き起こすか…楽しみだな」
アイリスディーナは小さく微笑み、応じる。
「ああ、。横浜の騒動を思えば、彼女たちの配信は予想もつかぬ展開になるだろうな」
遠く、にじさんじのスタジオでは、ギルザレンⅢ世がこのニュースを聞き、きっとまた哄笑を響かせていることだろう。萌実とエトラの初陣――2019年12月11日の生放送は、VTuber界に新たな伝説を刻む第一歩となるのか。それとも、さらなる波乱の幕開けか。物語は、加速を続けていた――。