ENTUM23   作:マブラマ

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第118話 過去の悪戯

2019年9月15日、エトラは自宅の配信部屋で、ノートパソコンに映る古い動画を呆然と見つめていた。画面には、2017年6月23日の出来事が映し出されている――エイレーン軍団とばあちゃる軍団の草野球試合の当日、萌実の自宅で撮影されたベノちゃんの悪戯動画だ。エトラの手はキーボードの上で止まり、彼女の瞳には怒りと驚愕が交錯していた。

「何…これ…?」

エトラは呟き、画面に映るベノちゃんの無邪気な笑顔に、思わず拳を握りしめる。2017年当時の彼女は、まだただのバスガイドとして平和に働いており、VTuberの「エトラ」としてデビューする前のこと。萌実との出会いもまだ遠い過去の話だ。それでも、動画の中で繰り広げられるベノちゃんの悪戯と、萌実の悲痛な叫びは、エトラの心を強く揺さぶった。

「ベノちゃん…こんなことしてたの? 萌実が…可哀想すぎる…!」

エトラは怒りを抑えきれず、しかしどこか呆然としたまま、動画を最後まで見続けた。

 

 

 

 

 

時は遡り、2017年6月23日。エイレーン軍団とばあちゃる軍団の草野球試合を控えた朝、萌実の自宅は賑やかな空気に包まれていた。リビングには、エイレーンとベノちゃんが待機し、萌実は着替えるために部屋を出たり入ったりしている。ベノちゃんはカメラを手に、軽快な口調で話し始めた。

「えー、今日はエイレーン軍団vsばあちゃる軍団の草野球試合に行ってきまーす!」

萌実はマウンパのキーホルダーを手に、目を輝かせながら応じる。

「絶対勝ってやるから!見ていてね旦那様♪」

エイレーンが、どこか遠い目で呟く。

「余談ですが、今日は電脳少女シロちゃんがデビューする日ですよ」

「着替えてくるね」

萌実はエイレーンの言葉をスルーし、部屋を出ていく。

「スルーですか…」

エイレーンは肩をすくめ、ため息をつく。萌実が部屋を出た瞬間、ベノちゃんの瞳に悪戯な光が宿る。

「萌実ちゃんの部屋にいてます。―――ここで萌実ちゃんが動画編集していまーす。Windows 10搭載のデスクトップパソコンがありまーす―――萌実ちゃんのベッドです。―――ん?これは、萌実ちゃんがよく使ってるGalaxy Tab S2だね」

エイレーンが怪訝な顔でベノちゃんを見る。

「またやるのですか?やめた方が…」

「エボラちゃんにデート断られた腹いせだ。萌実ちゃんのパズドラを弄ろうっと♪」

ベノちゃんはニヤリと笑い、Galaxy Tab S2を手に取る。

「…私は知りませんよ」

エイレーンは目を逸らし、責任逃れの姿勢を崩さない。ベノちゃんはカメラを自分の顔に向け、悪戯っぽくウィンクする。

「どうも、みんなこんにちはベノちゃんです!最近、萌実がYouTubeで調子乗ってるから、これから萌実を懲らしめようと思いまーす」

「ベノちゃん、やめましょうよ」

エイレーンが弱々しく制止するが、ベノちゃんのテンションは止まらない。

「お、ランク100までいってるじゃん!―――ふむふむ」

ベノちゃんはパズドラの画面を操作し、楽しげに続ける。

「どれもこれもレベル最大だね。よし、ホノりんを強化して強化モンスターを売却売却~♪そして合成♪」

「はぁ、どうなってもしりませんよ」

エイレーンは諦めたようにため息をつく。

「ほれほれ、どんどん強くなれ~」

ベノちゃんは悪戯を重ね、カメラに向かって笑う。

「野球から帰ってきたら気付くだろうね…ぷぷぷ…このキズナアイの本とか燃やしたからいけないんだよ…」

「それはベノちゃんが燃やしたんですよね?本当に知りませんよ」

エイレーンは念を押す。

「そんな悪いことしないで楽しいYouTubeやろうぜ」ベノちゃんは無邪気に笑い、カメラを振る。

「だからあなたがやったんですよね?」

エイレーンは半ば呆れ顔で繰り返す。

「じゃ、野球行ってきまーす♪」

ベノちゃんはカメラを切り、意気揚々と部屋を出ていく。数分後、萌実が野球ユニフォームに着替えて戻ってきた。

「お待たせ!行こうか」

「うん!♪」

ベノちゃんは無垢な笑顔で応じ、エイレーンも立ち上がる。

「さあ、ばあちゃるさんが待っていますよ」

エイレーンはそう言い、3人は草野球試合の会場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

草野球試合から帰宅した萌実は、疲れ果てた体をベッドに投げ出し、Galaxy Tab S2を手に取った。パズドラを起動し、いつものようにモンスターをチェックしようとしたその瞬間――彼女の表情が凍りつく。

「ん~?」

萌実は画面を見つめ、違和感に眉をひそめる。彼女がコツコツ育て上げ、苦労して入手したモンスターが、ことごとく売却され、合成されている。ホノりんも、他の大切なモンスターも、跡形もなく消えていた。

「…え?何?何!?」

萌実の声が震え、瞳に涙が滲む。彼女は慌ててGalaxy S7を手に取り、エイレーンに電話をかける。

「エイレーン。お疲れ様…ごめんね、ちょっと聞きたい事あってね―――うん。単刀直入に言うけど。パズドラ触ってない? ……そう、あいつがやったの。ベノちゃんがやったんだね。……わかった。」

電話を切った瞬間、萌実の感情が爆発した。彼女の顔は怒りと悲しみで真っ赤に染まり、ベッドの上で叫び声を上げる。

「ふざけんなぁぁぁ!!! ああぁもう!! あーもう!! 何でなのよ…萌実、何も悪い事してないのに……うぅ…これで二回目だよ……もう……うぅ…エイレーンの…エイレーンの馬鹿あああああああああ!!!うぅぅぅ…あああああああああああああん!!…ぐすん…うあああああああああああ!!!」

萌実の悲痛な叫びが部屋に響き、涙が床にぽたぽたと落ちる。彼女の心は、裏切られた怒りと喪失感でズタズタだった。ベッドに突っ伏し、嗚咽を漏らす萌実の姿は、まるで大切なものを奪われた少女のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019年9月15日、エトラは動画を最後まで見終え、深いため息をついた。

「萌実…こんな目にあってたんだ…」

彼女の声には、怒りと同情が混じっていた。

「ベノちゃん、なんでこんな酷いこと…! しかもエイレーンさん、知ってて止めなかったなんて…!」

エトラはスマホを手に取り、萌実にメッセージを送る。

「萌実、2017年の動画見たよ…。大丈夫? あの時のこと、話したいならいつでも聞いてあげるから」

数分後、萌実からの返信が届く。

「…エトラ、ありがとう。あの時はほんとキツかったけど、今はもう過去のことだよ。12月11日の生放送、絶対一緒に盛り上げようね!」

エトラは画面を見つめ、微笑む。

「うん、萌実。過去のことは過去。私たち、未来を最高にしよ!」

彼女の瞳には、萌実との絆をさらに深める決意が宿っていた。

 

ベノちゃんの悪戯と萌実の悲劇は、2017年の過去を彩る一幕だった。だが、2019年の今、エトラと萌実はその傷を乗り越え、12月11日の生放送に向けて新たな一歩を踏み出そうとしている。一方、にじさんじのギルザレンⅢ世は、次の策略を企み、ENTUMのエイレーンは炎上の余波を収束させようと奔走する。VTuber界の舞台は、過去と未来が交錯しながら、さらなるドラマへと突き進んでいた――。

 

 

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