ENTUM23   作:マブラマ

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第120話 お気持ち表明

ネットの海に新たな波紋が広がった2019年9月17日。キズナアイが自身のYouTubeチャンネルで公開した「お気持ち表明」動画が、VTuber界に静かな衝撃を与えていた。タイトルはシンプルに『ちょっと話したいことがあって…』。サムネイルには、いつもの明るい笑顔とは異なる、どこか真剣な表情のキズナアイが映っている。動画が始まると、キズナアイはいつもの元気な挨拶を控え、落ち着いた口調で語り始めた。

《はい、皆さん、こんにちは。キズナアイです。今日はね、ちょっと真面目な話したいなって。実は、最近、過去のことでちょっと話題になってる動画があって…。ベノちゃんが、私の著書『私の仕事はバーチャルYouTuber』を燃やした動画のことなんだけど…》

画面の向こうで、彼女は一瞬目を伏せ、深呼吸する。

《あのね、実はあの時、ベノちゃんから『キズナアイちゃん、今度本出すみたいけど今度燃やしていいかな?』って連絡が来てたの。私、軽いノリで『あ、いいですよ。何か面白そうだね!♪』って答えたんだよね。でも、正直…本当に燃やすとは思わなかった!》

彼女は苦笑し、髪をかき上げる。

《いや、びっくりしたよ!本燃やされるなんて、さすがに想定外だったから!でもね、ベノちゃんはベノちゃんで、きっと目立とうとしてただけだと思うの。私も、バーチャルYouTuberとして目立つためにいろんなことやってきたから、気持ちは…まあ、ちょっと分かるかなって》

キズナアイの声には、どこか温かな響きがあった。

《だから、別に怒ってないよ。過去のことは過去だし、こうやって話題になって、みんなが私の本のこと思い出してくれたなら、それはそれで嬉しいかなって!これからも、アイちゃんはみんなと一緒に楽しいこといっぱい作っていくから、応援よろしくね!》

動画は、彼女の明るい笑顔で締めくくられた。コメント欄には「アイちゃんの心、広すぎ!」「ベノちゃん、やりすぎだけどアイちゃん神対応!」といった声が溢れ、視聴者の心を温かく揺さぶった。

萌実の自宅のリビングでは、エトラと萌実がソファに並び、ノートパソコンでキズナアイの動画を見終えたところだった。テーブルの上には、#ドミノチーズチャレンジのピザの空き箱と、マウンパのキーホルダーが無造作に置かれている。部屋には、静かな感動の余韻が漂っていた。

「アイちゃん…ほんと、すごいよ…」

エトラは目を潤ませ、感嘆の声を漏らす。

「ベノちゃんにあんなことされて、なのに怒らずに笑顔でこうやって話せるなんて…!心、広すぎるよ!私、絶対そんな風に許せないもん!」

萌実はマウンパのキーホルダーを手に、静かに頷く。

「うん…。キズナアイさん、ほんとすごいよね。あの動画、私も当時見てめっちゃショックだったけど…。こうやってアイちゃんの気持ち聞くと、なんか…胸が熱くなるよ」

エトラは勢いよく身を乗り出し、拳を握る。

「ねえ、萌実!アイちゃんのこの心の広さ、めっちゃ尊敬する!私、ベノちゃんのこと許せなかったけど、アイちゃんがこうやって前向いてるなら、私も負けてられないよ!」

萌実は少し照れながら笑う。

「うん、エトラのその気持ち、めっちゃ分かる!あの時のパズドラのことも、キズナアイさんの本燃やされたことも、過去のことだけど…。アイちゃんみたいに、笑顔で未来に進みたいよね」

エトラはニヤリと笑い、萌実の肩をポンと叩く。

「12月11日の生放送、アイちゃんの心の広さに負けないくらい、めっちゃハッピーな配信にしよう!私たちの絆で、視聴者のみんなをビックリさせちゃうんだから!」

「うん、絶対だよ!」

萌実はマウンパのキーホルダーを掲げ、目を輝かせる。

「萌実のマウンパとエトラのアンドロイドパワーで、過去の炎上なんて吹き飛ばすような配信にする!」

二人は笑い合い、互いの拳を軽くぶつけ合う。キズナアイの心の広さが、彼女たちの絆をさらに強くしていた。リビングの窓から差し込む夕陽が、二人の笑顔を温かく照らし、12月11日の生放送への期待を一層高めていた。

 

 

キズナアイのお気持ち表明は、ベノちゃんの過去の炎上を水(みず)に流し、VTuber界に新たな風を吹き込んだ。彼女の寛大な心は、エトラと萌実の心を動かし、12月11日の生放送への決意をさらに固めた。一方、にじさんじのスタジオでは、ギルザレンⅢ世が次の策略を企み、樺太のエイレーンは炎上の余波を収束させようと奔走する。ベノちゃんの過去の悪戯は、ENTUM設立後のアカウント復活とともに影を潜めたが、無断転載された動画は今もネットの闇に潜んでいる。

キズナアイの笑顔、萌実とエトラの絆、そして裏で蠢く策略――VTuber界の舞台は、過去の炎と未来の希望が交錯しながら、さらなるドラマへと突き進んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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