ENTUM23   作:マブラマ

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第122話 炎上の連鎖と新たな波紋

2019年9月19日、ネットの海は再び騒然としていた。ベノちゃんのYouTubeチャンネルに新たな動画が投稿された。タイトルは『本を燃やしたら放火予告された!警察に行くよ』。サムネイルには、困り顔のベノちゃんが炎のエフェクトに囲まれ、まるで危機を訴えるようなデザインが施されている。エトラは自宅の配信部屋で、モニターに映るこの動画を見つめ、半分呆れた表情でマウスをクリックした。

「またベノちゃん…今度は放火予告!?ほんと、どこまで突き進むの!?」

エトラは眉をひそめ、モニターに突っ込む。

「アイちゃんの本燃やした後で、これって…自業自得じゃん、ちょっと…いや、かなり!」

動画が始まると、ベノちゃんはいつもの軽快なテンションとは裏腹に、どこか真剣な表情でカメラに語りかけた。

《はい、皆さんこんにちは、ベノちゃんです。…あのね、ちょっと大事な話。実は、私、キズナアイちゃんの本燃やした動画の後で、アンチから放火予告されちゃったの。コメント欄だから何かいても言い訳じゃないよ。放火予告とか……馬鹿だよね?別に私がかつて出した曲を収録したCDを燃やすとかなら大丈夫なのに、私の家燃やすって書くのは法に触れる事ぐらいわかるよね?でもさ、私が言える立場じゃないけどハッキリ言うね。世の中には冗談で済まされない事だってある。自分の人生を台無しにするだけだから殺害予告とかやめてね》

彼女の声には、普段のコミカルさとは異なる重みが宿っていた。画面の端には、問題のコメント欄のスクリーンショットが映し出され、アンチの過激な書き込みがぼかされて表示されている。動画の最後で、ベノちゃんは小さくため息をつく

《…まあ、とりあえず警察には相談しに行くよ。みんなも、変なこと書かないでね。じゃ、バーイ》

と締めくくった。

エトラは動画を見終え、呆れたように首を振る。

「いや、ベノちゃん…自分で火つけておいて、放火予告されたって…。そりゃ、アイちゃんの本燃やしたんだから、こうなるよね!?でも、脅迫はさすがにダメだよ…。何このカオス…!」

彼女はコメント欄に目を移す。そこには、視聴者の一人が冷静に書いたコメントが目立っていた。

「確かにキズナアイさんの本を燃やしたり、バカにしたりするのはよくないのですが、そういう稼ぎ方だと思うし、キズナアイさんもそれは了承してると思います。なので外野がとやかく言う必要ないんじゃないんでしょうか?ましてや脅迫などと言う法に触れる行為は何があってもしてはいけないと思います。冗談でそういうことを書き込むのはやめましょう。最終的には自分に回ってきますよ」

「うわ、このコメント、めっちゃまとも…!」

エトラは感心したように呟く。

「でも、ベノちゃんの炎上商法、ほんとどこまで行くんだろ…。キズナアイさんの心の広さに救われてるけど、これ、収拾つくの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、萌実の自宅のリビングで、エトラと萌実はソファに並び、ノートパソコンでベノちゃんの最新動画を見終えた。テーブルの上には、マウンパのキーホルダーと、昨日食べ残したピザの空き箱が無造作に置かれている。部屋には、呆れと複雑な感情が漂っていた。

「…ベノちゃん、放火予告されちゃったんだって…」

萌実はマウンパを握りしめ、呆れたようにため息をつく。

「アイちゃんの本燃やしたから、そりゃ怒る人もいるよね…。でも、脅迫はさすがにやりすぎだよ…」

エトラは腕を組み、半分呆れた顔で頷く。

「でしょ?自分で炎上ネタやっといて、放火予告されたからって警察行くって…。いや、脅迫は絶対ダメだけど、ベノちゃんの行動も大概だよ!アイちゃんの本、サイレント映画風に燃やしたばっかりなのに、懲りてないんだから!」

萌実は小さく笑い、目を細める。

「うん…。あの時のパズドラのことも、アイちゃんの本燃やしたことも、ベノちゃんらしいっちゃらしいよね。炎上して目立とうとしてるんだろうけど…。アイちゃんのお気持ち表明見て、なんかベノちゃんの騒動がちっぽけに思えてきたよ」

「ほんとそれ!」

エトラは勢いよく身を乗り出し、拳を握る。

「アイちゃんの心の広さ、めっちゃすごいよ!あんな風に笑顔で許せるなんて、私、絶対真似できない!ベノちゃんの炎上商法、ほんとカオスだけど…アイちゃんのおかげで、なんか笑えてきちゃった!」

萌実はニコリと笑い、マウンパを掲げる。

「うん、エトラの言う通り!アイちゃんの笑顔見てると、ベノちゃんの騒動なんて、なんか…ちっちゃいよね。私たち、12月11日の生放送で、アイちゃんみたいなハッピーな気持ちをみんなに届けようよ!」

「絶対だよ!」

エトラは目を輝かせ、萌実と拳をぶつけ合う。

「ベノちゃんの炎上も、脅迫騒動も、私たちの絆で全部吹き飛ばす!未来のアンドロイドとマウンパのコンビ、最高の配信でVTuber界を盛り上げるよ!」

二人の笑顔が、リビングを温かく照らした。窓の外では、夜の闇が静かに広がるが、彼女たちの心は12月11日の生放送への希望で満ちていた。

 

 

 

ベノちゃんの放火予告動画は、キズナアイのお気持ち表明と視聴者の冷静なコメントによって、さらなる議論を巻き起こしていた。彼女の炎上商法は、VTuber界に波紋を広げつつも、キズナアイの寛大な心によってその熱を冷まされていた。一方、にじさんじのギルザレンⅢ世は次の策略を企み、樺太のエイレーンは炎上の収束に奔走する。萌実とエトラは、過去の傷と現在の騒動を乗り越え、12月11日の生放送に向けて絆を深めていた。炎と脅迫、笑顔と絆――VTuber界の舞台は、複雑に絡み合いながら、さらなるドラマへと突き進んでいた。

 

 

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