2019年10月5日、桜月花音の自宅配信部屋は、桜色の柔らかな光に包まれていた。ピンクと白の花柄カーテン、桜の花びらモチーフのクッション、清楚なデスクにはぬいぐるみが並び、彼女のキャッチフレーズ「あなたに寄り添う心のヒロイン」を体現する空間だった。しかし、前夜の『萌実の発狂シーン集』の視聴は、花音の清楚な心に不快感と恐怖、絶望を刻み込んでいた。チェーンソーを振り回し、ドアをぶち破る萌実の姿は、ホロライブのノエルやぺこら、にじさんじのロアや美玲、ぴぐまりおん。のくるみ、ハニーストラップのメアリたちを震撼させたカオスそのものだった。それでも、花音は動画を見終えた後、萌実の爆発的な感情に悪意がないことを感じ取っていた。
「…萌実さん、怖いけど…本当は純粋な情熱で動いてる気がするのです。のん、心のヒロインとして、直接会って話したいのです!」
彼女は震える手でスマートフォンを握り、萌実の所属先である株式会社リィズ・ホーエンシュタインに連絡。スタッフの案内で、萌実の自宅を訪れる許可を得た。花音は桜色のコートを羽織り、東京都内の閑静な住宅街にある萌実の家へと向かった。ドアベルを押すと、インターホンから元気な声が響く。
「はーい!誰なのー?」
「あ、の、のん、桜月花音、VTuberの…!萌実さんに会いに来たのです~!」
花音の声は緊張で震えていた。ドアが開き、萌実が現れる。普段の配信で見る元気で少しやんちゃな笑顔とは裏腹に、部屋着姿の彼女は意外とリラックスしていた。
「おお、花音ちゃん!?マジで!?わざわざ来てくれたの!?うわ、めっちゃ嬉しいんだけど!入って入って!」
萌実は花音の手を引き、リビングへ案内する。部屋にはアニメポスターやゲームのフィギュアが並び、ENTUMらしいカオスな雰囲気が漂う。花音はソファに座り、ぬいぐるみを模したバッグを握りながら切り出す。
「あの、萌実さん…のん、昨日、あなたの『発狂シーン集』を見たのです…。チェーンソーとか、ヴィーガーとか、めっちゃ怖くて…不快な気持ちになったのです…!」
彼女の語尾「〜なのです」は震え、清楚な瞳に恐怖の余韻が滲む。萌実は目を丸くし、頭をかく。
「うわっ、マジ!?あの動画、めっちゃバズってるみたいだけど…ごめんね、花音ちゃん!あれ、ただのノリで、悪気なかったんだよ!パズドラ消された時はマジでキレたけどさ!」
彼女の笑顔は純粋で、悪意の欠片もない。花音は萌実の笑顔を見つめ、複雑な表情を浮かべる。
「…うう、のん、怖かったけど…萌実さんの情熱、なんか分かる気がするのです。のん、心のヒロインとして、ファンを癒したいって思ってるから…萌実さんのそのパワー、すごいなって…尊敬するのです…」
彼女の声には、恐怖と共感が交錯していた。萌実はニッコリ笑い、ソファにドカッと座る。
「へへ、花音ちゃん、めっちゃいい子じゃん!清楚系ヒロイン、最高だよ!ね、せっかく会えたんだし、なんか一緒にやろうよ!ゲームでも、トークでも!12月11日の生放送、めっちゃカオスになる予定だからさ、花音ちゃんも絡まない?」
花音は一瞬ビクッとし、ぬいぐるみバッグをぎゅっと握る。
「12月11日!?エトラさんと一緒の…!?のん、チェーンソーはNGだけど…萌実さんとだったら、癒しとカオスで、ファンを楽しませられるかも…なのです!」
彼女の清楚な心に、萌実との意外な友情の芽が生まれつつあった。
『萌実の発狂シーン集』のコメント欄は、依然としてカオスの祭りだった。「トイザらスで欲しいものを買ってもらえなかった時の幼児みたい」「檻の中で暴れるチンパンジーを眺めてる気分になる」「チェーンソーは駄目だろ(笑)」「萌実ちゃんの口癖→→→ふざけんなよ。←←←」「ハロー、旦那様。あなたの嫁の萌実だよー。発狂します! は?」「チェンソーはエグい」「夏希ちゃんかわいそう」「萌実ちゃん子供みたいだー。」花音は萌実のスマホでコメント欄を見せられ、震えながら呟く。「…みんな、こんな怖い動画で盛り上がってるのです!?『チンパンジー』とか、ひどいのです…!でも、萌実さんのパワー、ファンをこんなに熱くするなんて…すごいのです…」萌実は笑いながら言う。「でしょ!ファン、めっちゃノリノリだよね!花音ちゃんの清楚な癒しと私のカオス、絶対いいコンビになるよ!次回の配信、コラボしちゃおうぜ!」花音は桜色の髪を揺らし、決意を込めて頷く。「うん、萌実さん!のん、心のヒロインとして、12月11日の生放送、楽しみに準備するのです!一緒に、ファンを癒して…カオスもちょっとだけ、楽しませるのです~!…でも、チェーンソーは絶対NGなのです!」この時、花音はまだ知らなかった。2020年以降、萌実とのコラボ配信が続き、VTuber界で予想外の名コンビとしてファンを魅了する未来が待っていることを………。