2019年10月7日、株式会社ENTUM本社の最上階にある名誉会長室は、重厚な空気に包まれていた。巨大な窓から見下ろす東京の夜景を背に、ベアトリクス・ブレーメ名誉会長は革張りの椅子に座り、モニターに映る萌実の『発狂シーン集』を視聴していた。チェーンソーを振り回し、ドアをぶち破る萌実の姿に、彼女の唇に黒い笑みが浮かぶ。
「ふふ、萌実のこのカオス…VTuber界を揺さぶる素晴らしい力だ。ぴぐまりおん。のくるみが削除を求めたのも無理はないが、この炎は消すべきではない…」
彼女の声は、策士の威厳と興奮に満ちていた。モニターの隣には、ベノちゃんの『エトラにフラれた』動画や、昨日アップされたドローン空撮動画のコメント欄が映し出され、ファンの「チェーンソー!」「ふざけんな!」「12月11日ヤバそう!」という熱狂が並ぶ。ベアトリクスは目を細め、呟く。
「ベノ、勝手に色丹島から戻ったか…。だが、このカオス、12月11日の生放送をさらに盛り上げるだろう…」
一方、同じ時刻、ENTUM傘下の株式会社リィズ・ホーエンシュタインの配信スタジオでは、エトラがクールな雰囲気で配信中だった。黒を基調としたスタジオには、彼女のミステリアスな魅力を引き立てるダークな装飾が並び、モニターには「エトラの深夜トーク」と題した配信画面が映る。彼女の声は落ち着きつつも鋭い。
「…さて、みんな、12月11日の生放送、萌実とのコンビで何やろうかな?コメントでアイディアくれると嬉しいな。」
コメント欄は「チェーンソーNG!」「カオス期待!」「エトラ、ベノちゃんにフラれた話聞きたい!」と賑わっていた。
その時、エトラのスマホに萌実からの着信が鳴る。配信を一時中断し、彼女が電話に出ると、萌実の興奮した声が響く。
《エトラ!聞いてよ!ベノちゃん…昨日私の家の上空にドローン飛ばして、空撮して配信したんだから!『クソ生意気』とか言ってた!―――――ふざけんなよ!》
萌実の声には、『発狂シーン集』を彷彿とさせる怒りと、どこか楽しげなトーンが混じる。エトラは眉を上げ、クールに返す。
「…ベノ、色丹島から勝手に戻ってそんなことしてたの?相変わらずね。で、萌実、チェーンソー持ち出さなかったのは偉いよ。」
彼女の声には皮肉が滲みつつ、萌実への信頼が感じられた。萌実は電話越しに叫ぶ。
《チェーンソー!?冗談でもやめてよ!でもさ、エトラ、ベノのドローン、ちょっと面白かったんだよね…。12月11日、なんか一緒にカオスなことやっちゃう?花音ちゃんも昨日来てくれて、なんかいい感じだったし!》
エトラは小さく笑い、言う。
「…花音?あの清楚系の?面白い組み合わせね。12月11日、ベノちゃんのカオスも巻き込んで、盛り上げるか。とりあえず、ベノちゃんには後で直接話つけるよ。」
彼女は配信を再開し、コメント欄に軽く触れる。
「…みんな、ベノちゃんが萌実の家をドローンで撮ったってさ。ぶっ飛んでるよね?12月11日、もっとヤバいことになる予定だから、楽しみにしといて。」
コメント欄は「ベノ、やりすぎw」「萌実とエトラ、最強!」「花音も絡む!?」とさらに盛り上がった。
ベノちゃんのドローン空撮動画『萌実ちゃんの家を空撮してみた』のコメント欄は、カオスの極みに。「ベノ、ガチで命知らずw」「萌実の『ふざけんな!』キター!」「チェーンソー出なくてよかった」「12月11日、絶対カオス確定!」萌実の『発狂シーン集』のコメント欄も引き続き沸騰。「トイザらスで欲しいものを買ってもらえなかった時の幼児みたい」「檻の中で暴れるチンパンジーを眺めてる気分になる」「チェーンソーは駄目だろ(笑)」「萌実ちゃんの口癖→→→ふざけんなよ。←←←」「ハロー、旦那様。あなたの嫁の萌実だよー。発狂します! は?」
エトラはコメント欄を眺め、クールに呟く。
「…ベノちゃんの炎上商法、相変わらずだね。萌実のカオスと私の冷静さ、12月11日でどう融合するか…楽しみにしてね。」
彼女の瞳には、VTuber界のカオスを楽しみつつ、秩序を保とうとする決意が宿っていた。ベアトリクスは名誉会長室で、コメント欄の熱狂を眺め、黒い笑みを深める。
「…ベノ、萌実、エトラ…このカオスは、ENTUMの名をさらに高めるだろう。12月11日、VTuber界の歴史に新たなページを刻む…!」
彼女の手には、12月11日の生放送の企画書が握られていた。