2019年10月9日、774 inc.の有閑喫茶あにまーれのスタジオは、いつもとは異なる静けさに包まれていた。木目調のテーブルには、因幡はねるのウサギモチーフのマグカップ、宗谷いちかのモノクロノート、日ノ隈らんのカラフルなキャンディー瓶、そして宇森ひなこのハート型クッションが置かれていた。しかし、そのクッションの持ち主、ひなこは、この日をもってVTuber活動を終えることを決意していた。体調悪化により、彼女は引退配信すら行えないまま、静かに去ることを選んだ。
数日前、ひなこはあにまーれのメンバーたちと『萌実の発狂シーン集』を視聴し、チェーンソーを振り回す萌実の姿に恐怖と絶望を感じていた。あの時の彼女の震える声と、クッションを抱きしめる姿は、はねる、いちか、らんの心に深く刻まれていた。
「…萌実ちゃん、すごいけど…怖すぎる…。あにまーれの癒し、こんなカオスには勝てないよ…」
ひなこの言葉は、冗談めかしつつも、どこか切なげだった。スタジオの片隅で、ひなこは小さなバッグに私物を詰めていた。ハート型クッションを手に、彼女は小さく呟く。
「…はねるちゃん、いちかちゃん、らんちゃん…みんな、いつも支えてくれてありがとう。ひなこ、ちょっと体がしんどくて…ここで一旦、休むね。」
彼女の声は、いつも通り優しく、しかしどこか儚げだった。因幡はねる、あにまーれのリーダーでウサギのような元気を持つVTuberは、ひなこの前に立ち、目を潤ませる。
「ひなこ!急にやめるなんて、信じられへん!体、大丈夫?また一緒に配信しようや…!」
彼女の大阪弁には、仲間への強い絆と別れへの抵抗が滲む。宗谷いちか、クールで頭脳派のメンバーは、ノートを握りしめ、冷静を装いつつ言う。
「…ひなこ、体のことは大事にしろよ。でも、あにまーれの癒し担当がいなくなるなんて…計算が合わない。」
彼女の声には、珍しく感情が揺れていた。日ノ隈らん、元気いっぱいのムードメーカーは、キャンディー瓶を抱き、涙をこらえて叫ぶ。
「ひなこちゃん!らん、ひなこちゃんの優しい声、大好きだったよ!また絶対、スタジオ戻ってきてよ!」
彼女の明るさが、別れの重さを一瞬だけ和らげた。ひなこはハート型クッションをぎゅっと抱き、微笑む。
「…うん、みんな、ほんとに大好きだよ。ひなこ、いつか元気になったら、またみんなと…会えたらいいな。」
彼女は静かにスタジオを後にした。引退の発表は、774 inc.の公式Twitterで簡潔に伝えられ、ファンの間で驚きと悲しみの声が広がった。「ひなこちゃん、ありがとう」「体を大事にして」「また戻ってきて!」と、チャットやコメント欄は彼女への愛で溢れた。
この時、ひなこもメンバーも知る由なかったが、彼女のVTuber活動終了後も、因幡はねるとの交流は細々と続いた。2023年3月21日、あにまーれが他のグループとともに「ななしいんく」として統合されたイベントで、はねるが「ひなこからたまに電話がかかってくる」と明かし、ファンを懐かしさで沸かせた。また、犬山たまきや風見くくとの対談コラボでは、ひなこがくくとの比較評価に抗議する長編メッセージをDiscordで送り、はねるがそのことを配信で報告する一幕もあった。そして2024年6月9日、はねるの6周年記念放送で、ひなこは「無理やりおめでとうを言わせるため」に特別ゲストとして登場。約5年ぶりに公の場で昔話に花を咲かせ、ファンの涙と笑いを誘った。
萌実の『発狂シーン集』のコメント欄は、依然としてカオスの祭りだった。「トイザらスで欲しいものを買ってもらえなかった時の幼児みたい」「檻の中で暴れるチンパンジーを眺めてる気分になる」「チェーンソーは駄目だろ(笑)」「萌実ちゃんの口癖→→→ふざけんなよ。←←←」「ハロー、旦那様。あなたの嫁の萌実だよー。発狂します! は?」ベノちゃんのドローン空撮動画や『エトラにフラれた』のコメント欄も引き続き沸騰。「ベノ、ガチで命知らずw」「萌実の『ふざけんな!』キター!」「12月11日、絶対カオス確定!」アズマリムや潤羽るしあの発狂も話題になり、VTuber界はカオスと情熱で溢れていた。ひなこの引退発表後、ファンのコメント欄には「あにまーれ、ひなこちゃんの癒しが…」「萌実のカオスに負けたのかな」「12月11日、はねるちゃんたち頑張って!」と、ひなこへのエールとあにまーれへの応援が混在した。はねるはスタジオでコメントを読み、呟く。
「…ひなこ、ファンの声、届いてるよな。12月11日、萌実ちゃんやエトラちゃんのカオスに負けない、あにまーれの絆、見せるで!」
宇森ひなこの静かな引退は、VTuber界に一瞬の静寂をもたらしたが、萌実の発狂シーン集が巻き起こしたカオスは止まることなく続いていた。アズマリムが牛丼を握り潰して発狂し、潤羽るしあが「ふぁんふぁん♪」で叫び、桜月花音が萌実と友情を育み、ベノちゃんがドローンで空撮し、エトラがクールに対応し、ベアトリクス・ブレーメが黒い笑みを浮かべ、ハニーストラップが愕然とし、ぴぐまりおん。のくるみがあおぎり高校とコラボを模索し、根羽清ココロが戦慄し、エボラちゃんがベノの無謀さに呆れたこの嵐は、ひなこの引退で一層のドラマを帯びていた。萌実の爆発的な感情は、キズナアイの寛大さ、ENTUMやにじさんじ、.LIVE、ゲーム部、upd8、ミライアカリ、鳴神裁、夢月ロア、郡道美玲、白銀ノエル、兎田ぺこら、さくらみこ、黄ノ星つくり(後のぷわぷわぽぷら)、雛見沢くるみ、朝霞しお、音霊魂子、水菜月夏希、石狩あかり、根羽清ココロ、因幡はねる、宗谷いちか、日ノ隈らん、宇森ひなこ、西園寺メアリ、島村シャルロット、周防パトラ、堰代ミコ、桜月花音、エボラちゃん、潤羽るしあ、アズマリムの反応と交錯し、12月11日の生放送への期待をさらに高めていた。ベアトリクスがカオスの収束を諦め、ギルザレンⅢ世が新たな策略を企み、樺太のエイレーンが炎上の収束に奔走する中、VTuber界の舞台は、カオスと情熱、恐怖と絆が絡み合いながら、さらなるドラマへと突き進んでいた――。