ENTUM23   作:マブラマ

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第15話 ENTUMの焦燥 ~頂点への渇望~

2018年4月29日、株式会社ENTUMの名誉会長室は、張り詰めた空気に支配されていた。窓から差し込む春の陽光が、ベアトリクスの鋭い眼光を一層際立たせる。部屋には、ベアトリクスを中心に、ニコラ、カタリーナ、ファルカ、エイレーン、萌実、そしてヨメミ、ベノちゃん、ベイレーンが集まっていた。遠くのオフィスでは、「1000万再生」の数字がモニターに輝くが、今、その栄光は新たな挑戦の影に隠れていた。

ニコラが慎重に口を開く。

「キズナアイ?」

ベアトリクスが力強く頷く。

「そうだ。今、反響を呼んでいるバーチャルYouTuberの頂点に上った女だ」

カタリーナがピンとくる。

「『魔法少女サイト』ですよね?」

ベアトリクスが僅かに笑う。

「察しが早いわね。そう、彼女は声優デビューを果たしたのよ。それに比べて……」

彼女の視線がエイレーンに突き刺さる。

エイレーンがたじろぐ。

「え? 私?」

ベアトリクスが声を荒げる。

「貴様以外に考えられない! 先に越されたのよ!! 悔しいと思わないの!?」

エイレーンが慌てて弁解する。

「コンプライアンスの関係で声優デビューは……難しいかと」

ベアトリクスが机を叩き、勢いよく立ち上がる。

「TVアニメ『中間管理録トネガワ』でミライアカリを出演させ、帝愛グループの女性社員として演じさせる!」

ファルカが恐る恐る進み出る。

「同志少佐、マッドハウスに連絡し、出演オファーをしてみましたが……」

ベアトリクスが鋭く問う。

「で? どうだったの?」

ニコラが目を伏せ、静かに答える。

「……残念ながら出演見送ると返答が来ました。ミライアカリの声優デビューは立ち消えに」

部屋が一瞬凍りつく。ベアトリクスの表情が硬くなり、彼女は低い声で命じる。

「5名だけ残れ。エイレーン、萌実、ニコラ、カタリーナ、ファルカ」

ヨメミが無言で俯き、ベノちゃんが小さく息をつく。ベイレーンも一瞥を残し、静かに退室する。

ガチャ、バタム。ドアが閉まり、部屋に重い静寂が降りる。

ベアトリクスが深いため息をつく。

「……はぁ……」

ニコラ、カタリーナ、ファルカ、エイレーン、萌実が互いに顔を見合わせ、言葉を失う。

ベアトリクスが突然声を張り上げる。

「これはどういう事なの!?」

ニコラが慌てて頭を下げる。

「も、申し訳ありません!」

ベアトリクスが一歩踏み出し、全員を睨みつける。

「出演オファーを見送るってことは、キズナアイに負けたも同然よ!! 貴様らはミライアカリをアニメに出す気があるの!?その結果がこれだ。みんな嘘ばかり吐いている」

カタリーナがエイレーンをチラリと見て、口を開く。

「あ、あの……これは全部エイレーンが――」

エイレーンが即座に反発する。

「何で私なんですか!?」

ベアトリクスが怒号を上げる。

「みんな嘘吐きだ!他のVTuber事務所さえもだ!VTuber事務所と名ばかりでその実態はVTuber達を金儲けにさせる奴等の集まりでどいつもこいつも嘘吐きで無能な臆病者で裏切り者揃いだ!」

「名誉会長、それはあまりにも侮辱で…」

エイレーンが食い下がるが、ベアトリクスは一蹴した。

「黙れ!腰抜け共!裏切り者の負け犬共が!」

「名誉会長、幾ら何でも言い過ぎです!」

「VTuberを金儲けの道具として利用する連中は世界人民のクズだ!」

ベアトリクスはこう言い放ち、机にボールペンを叩き付ける

「恥晒し共が!! 何が”好きな事で生きていく”だ!?YouTuber専門学校で習ったのは動画制作と動画編集だけ!肝心のネタがまるっきり見え透いていないわ!これではミライアカリは落ちこぼれと思われてしまうわ! 私なら無理にでも強制的に出演オファーさせるわ!」

萌実が小さな声で呟く。

「でも、ベルンハルト会長は『そんなもの出なくていい』って言ってたけど……」

ベアトリクスが一喝する。

「私はアイリスディーナと違うわ! 私は私なりのやり方でやる!私も彼を習うべきだった……スターリンみたいに、高級将校の大粛正みたいにUUUMの連中全員粛正するべきだった!!」

エイレーンが声を張る。

「コンプライアンスに反します!」

ベアトリクスが冷笑する。

「法令厳守など、所詮言葉に過ぎないわ」

エイレーンが食い下がる。

「ENTUMは健全たる動画を提供することが我が社の理念です!」

ベアトリクスが目を細め、吐き捨てる。

「ふざけるな。貴様はアクスマンと同類だ」

エイレーンがショックを受けたように声を上げる。

「何故同類にするんですか!? 不適切なのでやめてください!」

ベアトリクスが不敵な笑みを浮かべ、静かに言う。

「それなら、考えがあるわ」

ニコラが息を呑む。

「ま、まさか……?」

部屋の空気が一気に冷たくなる。ベアトリクスの「考え」が何を意味するのか、誰もが言葉を失う。窓の外では春の風がそよぐが、名誉会長室は嵐の予感に支配されていた。ENTUMの物語は、キズナアイの成功という強烈な刺激を受け、さらなる試練と葛藤へと突き進む――。ミライアカリの未来は、ベアトリクスの決断にかかっている。

 

 

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