2019年10月11日深夜、ENTUMの「樺太支部」――VTuber界の伝説とカオスが交錯する架空の拠点は、冷たい北風が吹きすさぶ中で異様な熱気を帯びていた。支部長室の窓から見えるオホーツク海の暗闇を背に、エイレーンは巨大なモニターに映る宝鐘マリンの「やまゆき」模擬演習の映像を凝視していた。
「ふふふ、マリン船長、なかなかやるじゃない…! 海上自衛隊を巻き込んでカオスを撒き散らすなんて、ENTUMの炎上魂にも匹敵する!」
彼女の声には、破天荒なリーダーシップと策略の興奮が滲む。エイレーンは、ホロライブのこの「やべーやつ」枠の動きを、12月11日の生放送に向けた絶好のチャンスと捉えていた。彼女は即座に東京のリィズ・ホーエンシュタインスタジオにいるエトラに電話をかける。
《エトラさん、新たな指令を下します。ホロライブの宝鐘マリン率いる海賊団を完全瓦解して欲しいのです!》
エイレーンの声は、まるで世界征服を企む悪の総帥のようだった。
エトラは、スタジオの暗い照明の下、クールな視線でスマホを見つめる。
「…宝鐘マリンって、ホロライブの…あの『やべーやつ』枠の船長? 『やまゆき』で騒いでた子でしょ? 何で私がそんなことに…」
彼女の声には、いつもの冷静さと若干の呆れが混じる。エイレーンは熱を帯びた口調で続ける。
《勿論、暴力ではなく平和的な企画としてですよ! 12月11日の生放送で、萌実さんと一緒に歴史を作るための布石なんです! マリンのカオスを逆手に取り、ENTUMの存在感をさらに高める!》
エトラは眉を上げ、ため息をつく。
「エイレーン、アンタさ、樺太支部にいて支部長務めてるよね? なんでいつもこんなぶっ飛んだアイディアばっかり…」
彼女の言葉には、エイレーンへの信頼と同時に、長年の付き合いで培ったツッコミの鋭さが光る。エイレーンは無邪気に笑う。
《え? それがどうかしたんですか?》
エトラはさらに突っ込む。
「アンタの事だから、普通の企画じゃないって事は分かってるのよ。言ってみなさい、どんな無茶な案?」
エイレーンはモニターに映るマリンの映像を見ながら、目を輝かせて宣言。
《ふふふ、よくぞ気付いてくれましたね。そうです! ロシア海軍の全面協力で、バルチック艦隊の旗艦、ソヴレメンヌイ級駆逐艦ナストーイチヴイに乗船し、海賊団を殲滅…》
エトラは即座に遮る。
「エイレーン?」
エイレーンは無垢な声で応える。
《?》
エトラの声が一段低くなる。
「―――もう遅いから早く寝れば?」
エイレーンは一瞬固まり、「!」と声を上げる。
エトラは淡々と続ける。
「ね? 樺太に長くいるから疲れてるんだよ。多分。ロシア海軍とか、夢でも見てんじゃない?」
エイレーンは少しムッとして、「…そうですね。今日はここまでにしときましょう。態々気遣ってすみません」と返すが、声にはどこか拗ねた響きがあった。エトラは小さく笑い、柔らかく言う。
「ふふ、いいのよ。だってエイレーンは私を拾ってくれた恩人…だから。」
彼女の言葉には、クールな外見の下に隠れた深い絆が滲む。エイレーンは再び「?」と首を傾げる。
エトラは少し照れながら締める。
「…とにかく早く寝なさいよね。」
通話が切れ、スタジオに静寂が戻る。エトラはモニターに映る萌実の『発狂シーン集』を眺め、呟く。
「…マリン、萌実、12月11日…カオスすぎるな。さて、どう料理してやろうか。」
彼女の瞳には、冷静な策略家の一面と、VTuberとしての情熱が宿っていた。
宝鐘マリンの「やまゆき」模擬演習の話題は、VTuber界を席巻していた。ホロライブのコメント欄は「船長、ガチで海賊w」「自衛隊、ホロライブに占領された」「12月11日、カオス確定!」と沸騰。萌実の『発狂シーン集』のコメント欄も依然としてカオス。「トイザらスで欲しいものを買ってもらえなかった時の幼児みたい」「檻の中で暴れるチンパンジーを眺めてる気分になる」「チェーンソーは駄目だろ(笑)」「萌実ちゃんの口癖→→→ふざけんなよ。←←←」「ハロー、旦那様。あなたの嫁の萌実だよー。発狂します! は?」ベノちゃんのドローン空撮動画や『エトラにフラれた』のコメント欄も「ベノ、命知らずw」「萌実の『ふざけんな!』キター!」と盛り上がっていた。エトラはコメント欄をチラ見し、呟く。
「…マリンの海賊団、萌実のカオス、エイレーンのでたらめなアイディア。12月11日、ただじゃ済まないな。」
彼女の冷静な声には、ENTUMの看板を背負う決意が滲む。一方、樺太支部のエイレーンは、ベッドに倒れ込みながら呟く。
「…ロシア海軍、いいアイディアだったのに…。でも、エトラなら、12月11日を最高のカオスにしてくれるはず!」
彼女の笑顔には、VTuber界のカオスを愛する純粋な情熱があった。