東京・港区の高層ビル、最上階。
ENTUM本社の名誉会長室は、黒い大理石の床に銀の燭台が揺らめく、まるで闇の宮殿だった。
重厚な扉が静かに閉まる音が響き、室内に満ちるのは、甘いチョコレートの香りと――底知れぬ嫉妬の匂い。ベアトリクス・ブレーメは、黒いスーツのジャケットを羽織り、
タイトスカートが艶やかに腿を包む。
漆黒のロングヘアーを高く結い上げ、
普段は妖艶に弧を描く唇が、今は鋭く引き結ばれている。彼女は、革張りの椅子に深く腰を沈め、片手で握りしめたスマホの画面を睨みつけた。――
「キズナアイ、『ポッキー&プリッツの日』アンバサダー就任決定!」
茶色の髪を振り乱してポッキーをかじるアイちゃんの笑顔。
セブンイレブン限定クリアファイル、TikTok企画、
「おソロ PARTY!」という甘ったるいキャッチコピー。ベアトリクスの瞳が、まるで深淵の底から這い上がる闇のように、
ゆっくりと黒く染まっていく。
「……ふざけるな」
低く、震える声。
指先がスマホを握りしめ、画面が軋む。
「甘いお菓子? シェア? おソロ?」
彼女はゆっくりと立ち上がる。
黒いハイヒールが大理石を打ち、
カツン、カツン、と死の行進のような音を立てる。
「私こそが、VTuber界の“黒い甘さ”の女王だというのに」
唇が歪む。
妖艶な笑みは消え、代わりに浮かぶのは、
まるで奈落の底から湧き上がるような、純粋な――嫉妬の炎。
「キズナアイ……あの小娘に、11月11日を渡すと思うなよ」
彼女は黒いレースの手袋をはめ、
机の上のポッキー箱を掴む。――黒いチョコレートで塗りつぶされた、自作の“ブラックポッキー”。
「私のブラックパーティーで、貴様たちの甘い夢を、真っ黒に塗り替えてやる」
窓の外、東京の夜景が広がる。
その闇の中、ベアトリクスの瞳だけが、燃えるように輝いていた。――11月11日、甘さと黒さの戦争が始まる。
コメント欄の黒い嵐
「ベアトリクス名誉会長、ガチギレwww」
「ブラックポッキー怖すぎて草」
「アイちゃんのピンク vs ベアトリクスの黒、世紀の甘さ対決キター!」
「ENTUM本社、今夜は黒いチョコの匂いで充満してるらしい」
「12.11の海戦コロシアム、ポッキー要素追加でカオス倍増確定」
ベアトリクスは、黒いスーツの裾を翻して、名誉会長室の扉を開ける。
「……行くわよ、みんな。甘いだけの世界なんて、私がぶち壊してあげる」
黒いハイヒールの音が、ENTUMの廊下に、静かに、しかし確実に、嫉妬の足音を刻んでいった――。