ENTUM23   作:マブラマ

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第163話 黒い予感

2019年10月18日

 

東京・港区のENTUM本社、最上階。

名誉会長室の扉が重く閉まる音が響き、室内は黒い大理石の冷たさと、銀の燭台が揺らす影に満ちていた。

ベアトリクス・ブレーメは黒いスーツのジャケットを羽織り、タイトスカートが艶やかに腿を包む。

漆黒のロングヘアーを高く結い上げ、普段の妖艶な笑みが、今日は深淵の底から這い上がるような闇を宿している。机の上に置かれた巨大モニターが、VTuber界の最新ニュースを次々と吐き出す。

――花譜一周年記念番組配信!

 花譜ブランド&ファンクラブ発足!

 クリエイティブレーベル「KAMITSUBAKI STUDIO」始動!

 新規バーチャルシンガー・デビュー発表!

――スマホLive2Dアプリ「2DR」VRM対応&Android正式リリース!

――VTuber動画制作アプリ「3teneSTUDIO」リリース!

――キズナアイ新番組「てぇてぇTV」毎週放送開始!

ベアトリクスはゆっくりと椅子に腰を沈め、黒いレースの手袋でモニターを撫でる。

「……花譜? ああ、あのバーチャルシンガーね」

部屋の隅から、ニコラが一歩踏み出す。

青色の髪を揺らし、緑色の瞳で見つめ冷静な声で報告。

「デビューから1年で右肩上がりで人気上昇しています。『KAMITSUBAKI STUDIO』の始動と新規バーチャルシンガーのデビューは、序章に過ぎないかと」

ベアトリクスは指先で机を叩く。

トントン、と死の行進のようなリズム。

「……成る程。これに関しては、彼女の実績を認めざるを得ないわね。で?」

ニコラはタブレットを差し出す。

「スマートフォン向けLive2Dアプリ『2DR』がVRMモデルに対応、及びAndroid版正式リリース開始しました。それとVTuber動画制作アプリ『3teneSTUDIO』リリース。――――これらの普及により、VTuber界隈は活発的に盛り上がってます」

ベアトリクスの唇が、黒いチョコレートのように歪む。

「お祭り状態。ね?キズナアイの人気はそのうち急降下するわね。パラシュートが開いて、突然急降下するみたいに……」

ニコラは一瞬、視線を伏せた。

「はい、少佐……」

ベアトリクスは眉を上げる。

「?」

ニコラは息を吸い、続ける。

「お言葉ですが……キズナアイは……」

ベアトリクスは首を傾げる。

「……?」

カタリーナが横から割り込む。

茶髪サイドテールを翻し、興奮気味に。

「BS日テレでの新番組『てぇてぇTV(てぇてぇてぇべぇ)』が毎週放送開始されるようで、彼女の人気は以前より急上昇しています」

部屋に沈黙が落ちる。

ベアトリクスの瞳が、深淵の闇をさらに深くする。

彼女はゆっくりと立ち上がり、黒いハイヒールが大理石を打ち、カツン、カツン、と死の宣告のような音を立てる。

「5人だけ残れ。ニコラ、カタリーナ、ファルカ、ZMAPP、キュア」

ニコラ、カタリーナ、ファルカ、ZMAPPちゃん、キュアちゃんは息を潜めて残り、エボラちゃんやその他スタッフ諸々は、静かに扉を閉めて退室した。

残された5人の前に、ベアトリクスは黒い笑みを浮かべる。

「………」

モニターに映る花譜の歌声、キズナアイのピンクの笑顔、新アプリのデモ動画、KAMITSUBAKI STUDIOのロゴ。

すべてが、甘く、黒く、VTuber界の新しい嵐を予感させる。

ベアトリクスは静かに呟く。

「甘いだけのお祭りは、私が黒く塗り替えてあげる」

部屋の燭台が揺れ、

影が5人の女性たちを包む。

――11月11日、ポッキー戦争。

――12月11日、海戦コロシアム。

――そして、この新しい波。 すべてが繋がり、黒い嫉妬の炎が、静かに、しかし確実に、燃え上がろうとしていた――。

 

 

 

 

コメント欄の甘黒嵐

「花譜1周年おめ!KAMITSUBAKI始動でVSinger界もカオス!」

「2DR Android版キター!VRM対応でスマホVTuber爆誕www」

「3teneSTUDIOリリース!動画制作が革命的に楽になる!」

「てぇてぇTV毎週化!アイちゃんのピンクが止まらない!」

「ベアトリクス、ガチで闇落ち?黒ポッキー第二弾くるぞ」

「シュタージの亡霊 vs 新生VSinger、12.11で決戦!」

 

 

 

 

 

 

ベアトリクスの黒い笑みが、ENTUMの闇を、VTuber界全体を、甘く、黒く、染め上げていく――。

 

 

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