ENTUM23   作:マブラマ

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第169話 ENTUM崩壊の夜

2019年12月16日、リィズ・ホーエンシュタインの地下スタジオ。

照明は消え、非常灯だけが赤く脈打つ。

壁に映るのは、公式ツイートのスクリーンショット。

 

【重要なお知らせ】

このたび、バーチャルYouTuber事務所「ENTUM」は

2019年12月31日(火)をもちまして活動を終了とさせていただく運びとなりました。

皆守ひいろ、花野蜜は年内をもって活動終了。

その他所属VTuberはフリーへ。

株式会社リィズ・ホーエンシュタインは存続します。

 

 

萌実はチェーンソーを床に突き立て、膝をついていた。

「……ふざけんな」

声は掠れ、震えていた。エトラは艦隊模型を握りしめ、画面を見つめたまま動かない。

「……計算外」

唇が白くなる。

二人の背後、モニターに映るのは、花譜のリミックスアルバム『観測γ』のジャケット。

発売日:本日。

美しい歌声が、静かに流れ始める。

 

 

 

萌実が立ち上がる。

チェーンソーの刃が、床を削る。

「ENTUMが……終わる?私たちの居場所が……消える?」

エトラは艦隊模型を投げつける。

ガシャン。

「……リィズは残る。でも、ENTUMは違う。ひいろちゃん、蜜さん……引退?

 ベアトリクス名誉会長は?ニコラさん、カタリーナさん、ファルカさん、ZMAPPちゃん、キュアちゃん……エイレーン。みんな、どこへ?」

萌実が叫ぶ。

「ふざけんなよ!!!海戦コロシアム、ポッキー戦争、全部意味なくなっちゃうじゃん!!みんなで作ったカオスが……!」

エトラが拳を壁に打ちつける。

「……私の戦略、崩壊。12月11日の勝利も、ただの幻だったのか」

 

 

モニターのスピーカーから、

花譜の『観測γ』が流れる。

「この世界はまだ終わらない」

萌実が顔を上げる。

「……花譜ちゃん?」

エトラが呟く。

「……観測γ。リミックス。過去を再構築して、新しい形へ」

萌実がチェーンソーを握りしめる。

「……ENTUMは終わる。でも、私たちは?」

エトラがゆっくりと立ち上がる。

「……リィズ・ホーエンシュタインは存続する。私たちは、フリーになっても、萌実とエトラ――――萌エトだ」

萌実が笑う。

掠れた声で、でも確かに。

「……終わりなんて、認めないよ」

エトラが艦隊模型を拾い上げる。

「……海戦コロシアムは、事務所じゃなくて、私たちが作るもの。2020年、新春大戦は、フリーの私たちで開催する」

二人は並んで立つ。

背後で、花譜の歌が高まる。

 

 

 

 

「観測は続く」

 

 

 

 

 

コメント欄の終末と新生

 

「ENTUM終了……マジかよ……」

「ひいろちゃん、蜜先生、ありがとう……」

「萌実とエトラ、フリーでも戦うって!?」

「花譜『観測γ』、今日発売で神タイミング」

「2020年、フリー海戦コロシアム、絶対見る!!」

 

 

 

 

ENTUMの終焉は、

VTuber界に最大の衝撃を与えた。

ポッキー戦争、海戦コロシアム、東独パレード、ガンダム海戦、堕天使の震え、ヴァンパイアの笑い――すべてが、12月31日で一区切り。 だが、萌実とエトラは、チェーンソーと艦隊を手に、リィズ・ホーエンシュタインの名の下に、フリーとして立ち上がる。 花譜の『観測γ』が、終わりを告げるのではなく、新たな観測の始まりを告げていた。

ベアトリクスはどこかで、黒い笑みを浮かべる。

「ふふ……面白いわね。ENTUMは死んでも、カオスは不滅よ」

萌実の爆発的な感情は、キズナアイのピンク、ベアトリクスの黒、宝鐘マリンの海賊魂、斗和キセキの△、がぶりえるの癒し、月ヶ瀬ちゆるの爆発、あおぎり高校のロック、にじさんじの心理戦、ホロライブの癒しとカオス――すべてと交錯し、2020年、フリーの海戦コロシアムへの新たな火蓋を、静かに、しかし確実に、切ろうとしていた――。

 

 

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