ENTUM23   作:マブラマ

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第170話 終焉の夜

2019年12月31日

 

冷たい冬の夜。

ENTUM本社の最上階会議室は、燭台の明かりだけが揺らめく、まるで葬儀のような静寂に包まれていた。 重厚な黒檀のテーブルを挟み、名誉会長ベアトリクス・ブレーメと会長アイリスディーナ・ベルンハルトが、厳粛な面持ちで座る。 燭台の炎が、二人の影を長く、不気味に伸ばす。 ――エイレーンの姿は、どこにもなかった。 かつてミライアカリをプロデュースし、ENTUMの礎を築いた伝説の人物。

その不在は、まるでこの場に漂う不穏な運命を、象徴しているかのようだった。

株主総会の議長、ハインツ・アクスマンが、鋭い眼光で二人を見据える。

彼の声は低く、しかし刺すように響いた。

「ベアトリクス、君はENTUMをここまで大きくした。君の情熱、君の芸術が、VTuberという存在をこの世界に刻み込んだ。素晴らしい功績だ。だが―――それが仇となったのだよ。運営元を、ZIZAIを敵に回したも同然だ。想像できるか?君が愛し、育て上げたVTuberたちが、散り散りにされ、欲に塗れた者たちに搾取される未来を?」

ベアトリクスの瞳が、一瞬揺れた。

だが、彼女は唇を固く結び、言葉を返さなかった。

隣のアイリスディーナは、拳を握り、アクスマンを睨みつけた。

「人間は醜い生き物だ。卑劣で、醜悪で、自分のことしか考えない。それが人間の本性だよ、ベアトリクス」

アクスマンの言葉は、まるで呪いのように、会議室に響き渡った。

その夜、

ENTUMの運営終了が、正式に決定された。だが、これは終わりではなく、新たな戦いの幕開けに過ぎなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年1月1日、新年が明けた。

ENTUMの終焉とともに、

運営元である株式会社ZIZAIは、

旧所属タレントへの贈り物の代理受け取りを開始した。

ファンからの愛を繋ぐ、最後の架け橋―― しかし、それはどこか冷たく、事務的な行為に思えた。

 

2020年1月5日、凍てつく冬の朝。

ベアトリクス・ブレーメは、決意を胸に、かつてENTUMの本社だった荘厳なビルに足を踏み入れた。ガラス張りのビルは、朝日を浴びてキラキラと輝いていたが、その光はどこか儚げだった。

彼女の手には、NEOENTUMの設立を宣言する書類が握られていた。

ENTUMの終焉から、わずか5日―― 彼女は旧運営元である株式会社ZIZAIを見限り、新たな未来を切り開く決意を固めていた。

「もう、誰にもVTuberたちの夢を踏みにじらせない」

ベアトリクスの声は静かだったが、その瞳には燃えるような決意が宿っていた。 ENTUM本社のビルは、NEOENTUMの新たな拠点として生まれ変わった。

かつての栄光を刻んだこの場所は、彼女の理想を体現するシンボルとなるはずだった。 しかし、ベアトリクスの視線はさらに遠く、世界へと向けられていた。 ENTUMが築き上げた世界中の支部――その全てを継承し、新たなネットワークを構築する。 それが、彼女の野望だった。

 

一方、アイリスディーナ・ベルンハルトは、ZIZAIに残り、会長としてアクスマン率いる上層部と対峙する道を選んだ。

二人の絆は、しかし、決して途切れることはなかった。

彼女たちはそれぞれの戦場で、信念を貫く決意を胸に秘めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント欄の終焉と新生

 

「ENTUM……終わった……」

「ベアトリクス名誉会長、NEOENTUM設立キター!!」

「アイリス会長、ZIZAI内部で戦うって……マジか」

「萌実とエトラ、フリーでも海戦続けるって!!」

「ZIZAIの贈り物代理受け取り、冷たすぎて泣いた」

「2020年、NEOENTUM vs ZIZAI、VTuber界の内戦始まる?」

 

 

ENTUMの終焉は、VTuber界に最大の衝撃を与えた。

ポッキー戦争、海戦コロシアム、東独パレード、ガンダム海戦、堕天使の震え、ヴァンパイアの笑い――すべてが、12月31日で一区切り。 だが、萌実とエトラはフリーとして立ち上がり、ベアトリクスはNEOENTUMを設立、

アイリスディーナはZIZAI内部で戦う。

花譜の『観測γ』が流れる中、2020年、VTuber界は新たな戦場へ。 ベアトリクスの黒い笑みが、NEOENTUMのロゴに刻まれる。

「ENTUMは死んでも、カオスは不滅よ」

萌実のチェーンソーが、エトラの艦隊が、フリーの海戦コロシアムを、2020年の新春大戦へと導く。 VTuber界の舞台は、終焉の夜を超え、新生の朝へと、静かに、しかし確実に、突き進んでいた――。

 

 

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