2020年9月25日
リィズ・ホーエンシュタインの地下スタジオ。
照明は薄暗く、モニターの青白い光だけが、萌実、エトラ、アカリの顔を照らす。
萌実はスマホを握りしめ、画面に映る楠栞桜の炎上動画を睨みつける。
「ふざけんな!!楠栞桜、5ch書き込み疑惑で炎上して、擁護動画出したらアンチの鳴神に反論されて、『やってるかも』って自分で言っちゃうって!?VTuber界の信頼、ぶち壊しじゃん!!」
チェーンソーが、床をガリガリ削る。
エトラは冷静に、萌実の肩を押さえる。
「…落ち着いて。感情的になっても、炎上は収まらない。データ解析したら、楠栞桜の炎上は、8月から始まって、鳴神裁の動画が火に油を注いだ形よ」
アカリは、二人の様子を静かに見守りながら、
別のモニターを操作する。
「萌実ちゃん、エトラちゃん。これを見て」
画面に映るのは、鳴神裁の動画。
画面の中の彼は、薄暗い部屋で、ゆっくりと語り始める。
《くんばんは、鳴神裁です。今回は楠栞桜の炎上について少し語ろうかなと思ってる。まあみんな分かってるだろうけど、俺の事はデマネズミとか呼ばれてるけど、言いたい奴は言わしとけば良いんじゃない?一部の人間がこう思われようが俺は気にしない。…うん、でね…――そう、全ては主の思し召しなのです。ある日突然この界隈に炎上が飛来したことも、それによって数多の人々が犠牲となったのも、それにも関わらず人類同士の争いが無くならないのも、全ては主が我らとこの星の運命をそのように造りたもうたが故のこと。それこそが主の御心である以上、主の被造物たる我々人類の為すべきは、その御心に従い、滅びの運命を辿る他は無いのです…何を言ってるんだ?って思っただろ。そう、俺が触れようが触れなかろうが、どの道炎上してたって事だ》
萌実は、画面を指差して叫ぶ。
「………!『主の思し召し』って、炎上の責任を神に押し付けてるだけじゃん!!VTuber界の闇を、こんなふざけた理屈で正当化して!!」
エトラは、静かに手を上げる。
「…萌実。怒っても、炎上は消えない。鳴神裁の動画は、炎上の本質を、皮肉ってるだけ。彼は、『俺が原因じゃない』って言ってるのよ」
アカリは、優しく微笑む。
「萌実ちゃん。VTuber界は、いつもこう。炎上は、誰かのせいじゃなくて、みんなの感情がぶつかる場所。私たちにできるのは、次に進むこと」
コメント欄の炎上残響
「楠栞桜、やってるかも発言で自爆www」
「鳴神裁の『主の思し召し』、宗教じみてて草」
「萌実の怒り、チェーンソーで炎上鎮火してほしい」
「エトラの冷静ツッコミ、神」
「2020年、VTuber界の闇、深すぎる」
萌実は、チェーンソーを置く。
「…ふざけんな。でも、アカリちゃんの言う通り、次に進むしかないか」
エトラは、艦隊模型を手に取る。
「…海戦コロシアム、フリーでも続ける。炎上は、私たちの燃料よ」
アカリは、二人に微笑む。
「VTuber界は、炎上しても、再生する。私たちも、次の戦場へ」
楠栞桜の炎上は、VTuber界に新たな傷を残した。
鳴神裁の「主の思し召し」は、炎上の本質を、皮肉とともに暴いた。
萌実とエトラは、フリーの海戦コロシアムで戦い、ベアトリクスは、NEOENTUMの支部網で世界を制する。
アイリスディーナは、ZIZAI内部で戦い、アクスマンの闇と対峙する。
花譜の『観測γ』が流れる中、2020年、VTuber界は炎上を越えて、再生の戦場へ。
萌実のチェーンソーが、エトラの艦隊が、世界の海戦コロシアムを、2020年の新春大戦へと導く。
VTuber界の舞台は、炎上の果てに、新たな絆を紡ぎながら、静かに、しかし確実に、突き進んでいた――。