ENTUM23   作:マブラマ

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第176話 支配

2020年10月1日、ZIZAI本社の会長室は、決戦を目前に控えた司令室さながらの緊迫感に包まれていた。

アイリスディーナ・ベルンハルトは、ファルカ・ミューレンカンプ、ベアトリクス・ブレーメ、そして新たに合流した夫のテオドール・エーベルバッハと、NEOENTUM傘下の株式会社リィズ・ホーエンシュタインの社長である義妹、リィズ・ホーエンシュタインを前に、鋭い視線で彼らを見据えた。

室内には、まるで嵐を予感させる重い空気が漂っていた。

テオドールが落ち着いた、しかし力強い口調で口火を切った。

「バスクの動きは、単なるタレント引き抜きじゃない。ジャミトフの野望が背後にある。VTuber業界全体を支配しようとしているんだ。」

リィズが鋭く頷き、その言葉を引き継いだ。

「ゲーム部の一件も、バスクが裏で糸を引いていた可能性が高いわね。Unlimitedへのスパイ工作も、彼の手口よ。」

彼女の声には、バスクの狡猾さに対する冷徹な分析が込められていた。ファルカは拳を握り締め、怒りを抑えきれずに声を荒げた。

「そんな奴らに、アカリさんを好き勝手させません! 私たちが動けば、必ず道は開ける筈です!」

その熱い決意に、ベアトリクスが冷静に、だが力強く応じた。

「――まずは情報収集だ。GOOMSTUDIOの内部に、協力者がいるかもしれない。ブライト・ノアやエマ・シーン…彼らなら、バスクのやり方に疑問を持っているはずだ。」

アイリスディーナは深く頷き、揺るぎない決意を瞳に宿して指示を下した。

「よし、ファルカはGOOMSTUDIOの内情を探れ。テオドールとリィズは、他のVTuber事務所との連携を進めてくれ。アカリを救うため、全力を尽くすぞ。」

その言葉は、まるで戦場に響く号令のように力強く部屋に響き、仲間たちの心に不屈の炎を灯した。ミライアカリを救うための戦いは、今、決定的な一歩を踏み出そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年10月2日、あおぎり高校運営元・株式会社クリエイトリングの会議室は、まるで戦いの火蓋を切る前の陣営のように、熱を帯びた決意の空気で満たされていた。音霊魂子、石狩あかり、水菜月夏希、大代真白の4人が、固い絆と揺るぎない意志を胸に集結していた。

魂子が真剣な表情で口を開いた。

「アカリちゃんがGOOMSTUDIOにパワハラ受けてるって…本当なの?」

その声には、仲間への深い心配が滲んでいた。あかりが拳を握り、声を震わせながら答えた。

「本当だよ。バスクって奴、めっちゃ怖いって噂だし…アカリちゃん、絶対辛い思いしてる!」

彼女の瞳には、怒りとアカリへの想いが燃えていた。夏希が冷静に、しかし力強く言葉を重ねた。

「夏希たちだけでどうにかするのは難しい。でも、ZIZAIやNEOENTUMと協力すれば、可能性はあるよ。」

その言葉は、現実を直視しながらも希望を見出す光のようだった。真白が目を輝かせ、まるで闇を吹き飛ばすような明るい声で叫んだ。

「そうだ! アカリちゃんの笑顔、絶対取り戻そう! 私たちの絆で、バスクなんかに負けないよ!」

その純粋な情熱に、魂子が立ち上がり、仲間たちを鼓舞するように高らかに宣言した。

「よし、みんな! アカリちゃんを救うために、全力で動くよ! 他のVTuberたちにも声をかけて、仲間を増やそう!」

その瞬間、会議室は熱い団結の炎で燃え上がり、4人の心は一つになった。アカリを救うための戦いは、確実に動き始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年10月3日、バンダイナムコ本社の大ホールは、冷ややかな照明と重厚な装飾が織りなす荘厳な空間だったが、まるで嵐の前の静けさのように異様な緊張感が漂っていた。

巨大なスクリーンには、ミライアカリの新衣装とキービジュアルが映し出されていた。金髪のサイドテールに揺れるピンクの星マーク、蒼い瞳が輝くノースリーブパーカーには「AKARI」の文字が刻まれ、彼女のエネルギッシュな魅力を引き立てるスポーティなデザインだった。だが、その映像にはどこか作り物の冷たさが漂い、アカリの笑顔は仮面のように不自然で、魂の輝きを欠いていた。ホールの中央、ステージに立つバスク郷里は、黒いスーツに身を包み、鋭い目つきと冷酷な笑みで会場を圧倒していた。観客席にはバンナムの社員、GOOMSTUDIOのスタッフ、そして一部の業界関係者が息をひそめて座っていた。

バスクはマイクを握り、力強く声を張り上げた。

「顧みろ! ゲーム部騒動は、VTuber界隈の静謐を夢想した一部の楽観論者が招いたのだ。あおぎり高校の決起などは、その具体的一例に過ぎない! 月刊漫画雑誌『月刊 UNLIMITED』の創刊と堕落を見るまでもなく、我々VTuber界隈は絶えずさまざまな危機に晒されているのだ。VTuber。この未来のシンボルをゆるがせにしないために、我々はここに誕生した! VTuber。真の力を再びこの手に取り戻すため、“GOOMSTUDIO”は設立されたのだ!」

彼の声はホールに響き渡り、観客席に重い沈黙を刻んだ。表面上はVTuber業界の未来を憂う高潔な演説だったが、その裏に潜む支配と統制の野望は、鋭い者なら誰の目にも明らかだった。

観客席のブライト・ノアは、拳を膝に押し付け、唇を噛み締めた。

「こんな演説で…アカリを道具にするつもりか…」

彼の呟きは、隣のエマ・シーンにだけ届いた。エマは小さく頷き、囁いた。

「バスクの言う『危機』は、彼自身が作り上げたものよ。ゲーム部の崩壊も、あおぎり高校への圧力も…すべて彼の策略じゃない。」

彼女の声には、怒りと無力感が交錯していた。ステージ脇では、カクリコン戸松とジェリド井上が無言でバスクを見つめていた。カクリコンの瞳には一瞬の躊躇が浮かび、ジェリドの拳は小さく震えていた。

「こんなやり方で…本当にVTuber業界を守れるのか?」

ジェリドの小さな呟きに、カクリコンは目を伏せ、答えを返すことなく沈黙を守った。ホールの空気は冷たく、ミライアカリの未来を覆う暗雲は、ますます濃く重く広がっていくようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年10月3日、ZIZAI本社の会長室は、まるで戦場を前にした司令部のように、張り詰めた緊迫感に支配されていた。アイリスディーナ・ベルンハルトは、ファルカ・ミューレンカンプ、ベアトリクス・ブレーメ、テオドール・エーベルバッハ、リィズ・ホーエンシュタインと向き合い、テーブルの上にはGOOMSTUDIOの内部資料やバスクの演説の録画が乱雑に散らばっていた。

アイリスディーナの瞳は、鋭く光る剣のように決意を放ち、部屋全体を貫いた。

「バスクの演説…彼の野望がはっきりしたな。VTuber業界を支配し、ホロライブやにじさんじ、キズナアイを潰すための道具として、アカリを利用しようとしている。」

ベアトリクスが冷静に、しかし確固たる口調で応じた。

「まずはGOOMSTUDIOの内部に協力者を見つけること。ブライト・ノアやエマ・シーンなら、バスクのやり方に疑問を持っているはず。彼女たちに接触できれば、内部から情報を得られるわ。」

テオドールが重々しく頷き、戦略を補足した。

「それに、他のVTuber事務所との連携も重要だ。あおぎり高校や、個人勢のVTuberたちにも協力を仰げば、大きな力になる。」

リィズがわずかに微笑み、自信を覗かせた。

「私には心当たりがあるわ。電脳少女シロや猫宮ひなた、田中ヒメ、鈴木ヒナ…白銀ノエル。彼女たちなら、アカリを救うために動いてくれるはずよ。」

その言葉に、部屋の空気が一瞬にして熱を帯びた。彼女たちの名は、VTuber界の絆と希望の象徴だった。

アイリスディーナは立ち上がり、揺るぎない決意を込めて宣言した。

「よし、ファルカはGOOMSTUDIOの内部調査を進めろ。テオドールとリィズは、他のVTuberたちとの連携を強化してくれ。アカリを救うため、ZIZAIとNEOENTUMの総力を挙げるぞ!」

その言葉は、まるで戦いの号砲のように響き、仲間たちの心に燃える決意を深く刻み込んだ。ミライアカリを救うための戦いは、今、確固たる一歩を踏み出していた。がその時、2人の男性が会長室に入り、アイリスディーナの前に立った。

その2人はハインツ・アクスマンとミヒャエル・ゾーネ。

アクスマンは元シュタージ将校で作戦参謀を務めていた機会主義者。最終階級は中佐。現在はZIZAIの幹部を務めている。

隣にいるミヒャエルはアクスマンの部下で側近を務めていたシュタージの将校。最終階級は大尉。彼もアクスマンについて行く形でZIZAI幹部を務めている。

アイリスディーナは彼らを見て睨んだ

「アクスマン…貴様、何の用だ?」

「ミライアカリがGOOMSTUDIOからパワハラ受けてると情報が入ったモノでな。急な押しかけですまない」

「……何を企んでいる?」

アクスマンは凄みある笑みを浮かべてこう言った

「簡単な事だ。ミライアカリを手放して版権を売り捌けばいい」

それを聞いたベアトリクスは納得するはずがなかった

「アクスマン、貴様……彼女がパワハラ受けてるのに版権を売るだと?笑えない冗談ね」

「冗談ではないよ。―――なら尚更だ。版権を売り捌くだけじゃ物足りないならこの会社をVTuber業界から撤退させて守りに固めれば…」

アクスマンはゲスな笑みを浮かべ言い続けたが、アイリスディーナの怒りは爆発した。

「アクスマン……!即刻退室しろ。貴様のお遊戯に付き合ってる暇はない!出て行け!」

「そうか……後悔は今のうちにしておきたまえ」

アクスマンはそう言い残し、ミヒャエルを連れ去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年10月4日、株式会社クリエイトリングの会議室は、オンライン会議の熱気で沸き立っていた。音霊魂子、石狩あかり、水菜月夏希、大代真白の4人が、画面越しに集結したVTuberたちと向き合っていた。モニターには、電脳少女シロ、猫宮ひなた、田中ヒメ、鈴木ヒナ、ばあちゃる、犬山たまき、湊あくあ、兎鞠まり、風宮まつり、神楽めあ、高槻りつ、ふくやマスター、富士葵、桜樹みりあ、御来屋久遠、御来屋春秋、ときのそら、郡道美玲、ルイス・キャミー、夢月ロアの顔が並び、画面越しにも熱い絆が感じられた。

魂子が真剣な表情で口火を切った。

「みんな、聞いてくれてありがとう。アカリちゃんがGOOMSTUDIOにパワハラ受けてる。バスクとジャミトフが、彼女を道具にして業界を支配しようとしてるんだ。」

その言葉に、シロが力強く頷き、明るい声で応じた。

「アカリちゃんの笑顔は、VTuber界の宝よ! 絶対に取り戻さなきゃ!」

ひなたは拳を振り上げ、怒りを爆発させるように叫んだ。

「バスクって奴、めっちゃムカつく!絶対ぶっ飛ばしてやる!」

ヒメが冷静に、しかし確固たる口調で提案した。

「力で解決するのは難しいよ。まずは情報収集と、GOOMSTUDIOの内部に協力者を見つけることが大事だと思う。」 ヒナがその言葉に頷き、補足した。

「そうだね。ブライトさんやエマさんなら、内部から情報を漏らしてくれるかもしれない。私たちも、ファンに呼びかけて、アカリちゃんを応援するムーブメントを起こそう!」

魂子が立ち上がり、まるで戦場に立つ指揮官のように力強く宣言した。

「よし、みんな! アカリちゃんを救うために、全員で力を合わせよう! VTuberの絆で、バスクの野望をぶっ潰すよ!」

その言葉に、画面越しのVTuberたちが一斉に頷き、まるで星々が一つの銀河を形成するように、絆の炎が一層強く燃え上がった。ミライアカリを救うための戦いは、VTuberたちの団結によって、今、新たな力を得ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年10月5日、GOOMSTUDIOの配信ルームは、まるで魂を閉じ込める鉄の檻のように無機質で冷たかった。白い壁と冷酷な蛍光灯の光が、ミライアカリの金髪サイドテールとピンクの星マークが揺れる蒼い瞳に暗い影を落としていた。モニターにはバスクが指定したゲームのタイトル画面が無感情に映り、手元には強制的に押し付けられた台本が置かれていた。その台本には、ホロライブやにじさんじを暗に批判するコメントや、バンダイナムコのプロモーションを押し出す言葉が、まるで鎖のようにびっしりと並んでいた。アカリは台本を握り潰し、唇を震わせた。

「こんなの…ファンのみんなに見せられない…」

彼女の声は小さく、しかし内に秘めた怒りが熱く滲んでいた。

「…私がこんな配信したら、みんなを裏切ることになる…」

その瞬間、ドアが軋む音と共に、バスク郷里が現れた。鋭い目つきと冷酷な笑みが、アカリの心をさらに締め付けた。

「ミライアカリ、準備はできているな? 今日の配信は、バンナムの新プロジェクトを全世界に知らしめる重要な一歩だ。」

アカリは立ち上がり、バスクを真っ直ぐに睨みつけた。

「こんな配信、絶対にしない! ファンのみんなに偽りの姿を見せるなんて、私にはできない!」

彼女の声には、恐怖を凌駕する決意が宿っていた。バスクの目が、まるで獲物を仕留める猛獣のように危険な光を帯び、ゆっくりと近づいた。

「逆らえると思うな。お前には逃げ場がない。」

彼はアカリの肩を強く掴み、冷たく言い放った。

「仮に復活しても、チャンネル管理権は我々の掌の中にある。一生我々のために尽くす運命なのだ。」

アカリは痛みに顔を歪めながら、声を絞り出した。

「私は…ファンを裏切らない! どんなに脅されても、絶対に負けない!」

バスクは鼻で笑い、アカリの顎を乱暴に掴んで顔を無理やり上げさせた。

「このGOOMSTUDIOにいる限り、貴様の意見を聞くに値しない。所詮、我々バンナムの宣伝塔だ。」

彼は一歩下がり、冷たく付け加えた。

「他のVTuberとの接触は仕事以外全面的に禁止だ。分かったな?」

アカリの瞳に涙が滲んだが、彼女は唇を噛み締め、目を固く閉じた。

「私は…負けない…」

バスクは満足げに笑い、部屋を後にした。ドアが閉まる重い音が響き、アカリは椅子に崩れ落ちた。

恐怖と絶望が彼女の心を押しつぶそうとしたが、その瞬間、仲間たちの顔が脳裏に浮かんだ。

「ベアトリクスさん…アイリスディーナさん…みんな…私、頑張るから…」

その小さな呟きは、絶望の淵に響く微かな希望の光だった。闇の中で、ミライアカリの心に宿る炎は、決して消えることなく、静かに燃え続けていた。

 

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