株式会社ENTUMの次長室は、静かなる波乱の舞台となっていた。窓から差し込む夕陽が、部屋の空気を重く、しかし美しく染め上げる。エイレーンはデスクに座り、眉間に皺を寄せ、企画書を睨みつけていた。ミライアカリがそばに立ち、心配そうに彼女を見つめる。遠くのオフィスでは、「1000万再生」の数字がモニターに輝いているが、ここでは炎上の火種がくすぶっていた。
エイレーンが深いため息をつく。
「うーん、アイディアが思い付かない……」
アカリがスマホを手に、声を震わせて言う。
「今日の動画ですが、投稿しただけなのに炎上してますよ……!」
エイレーンが顔を上げ、冷たい視線を向ける。
「名誉会長を貶める方法を考えないと……」
アカリが驚愕に目を丸くする。
「え!? それって……!」
エイレーンが淡々と続ける。
「会社の貢献者は実質的に私です。赤の他人で仕切るなどもっての他です」
アカリが慌てて手を振る。
「それじゃ、2人共会社から追放する訳ですか!? 怖いよー! やめた方が……」
エイレーンが顎に手を当て、呟く。
「しかし、どうやって……」
その時、ドアが勢いよく開き、ベイレーンが怒りに満ちた顔で進み入る。
「エイレーン! そもそも会社を立ち上げ、ヘッドハンティングしたのはお前だろ? 切り捨てるなんて最低極まりないな!」
エイレーンが一瞬たじろぎ、しかし冷静に反論する。
「ベイレーン姉さん……これは会社の存続のためです」
アカリがベイレーンの背後に隠れ、小声で言う。
「社長から言ってるし、やめましょう。ね? 怒らしたら怖いよー!」
ベイレーンがエイレーンを睨みつけ、声を荒げる。
「エイレーン、お前が会社を立ち上げたのは事実だが、ベアトリクスとアイリスディーナは我々の理念を支える柱だ! 彼女たちを追放するなど、ENTUMの根幹を揺るがす行為だぞ!」
エイレーンが目を伏せ、静かに答える。
「しかし、彼女たちのやり方は……ミライアカリを危険に晒している。今日の即興劇も、炎上を引き起こした。会社のイメージが……」
ベイレーンが一歩踏み出し、力強く言う。
「だからと言って、追放が解決策か? 話し合い、改善策を考えるべきだ! エイレーン、お前は賢いはずだ。感情に流されるな!」
アカリが小さく頷き、エイレーンに懇願する。
「エイレーンさん、社長の言う通りだよ。みんなで協力して、ENTUMを守ろうよ……!」
エイレーンが一瞬迷いを見せ、しかしすぐに決意を固める。
「分かった……ベイレーン姉さん、アカリ。まずは話し合いをしましょう。名誉会長と会長に、直接意見を伝えよう」
ベイレーンがホッとしたように息をつく。
「それでいい。ENTUMは我々全員のものだ。独りよがりな行動は、誰も幸せにしない」
アカリが笑顔を取り戻し、明るく言う。
「ハロー♪ みんなで頑張れば、きっと大丈夫だよ!」
次長室に、夕陽の最後の光が差し込む。ENTUMの物語は、内部の対立を乗り越え、新たな絆を紡ぐための第一歩を踏み出した。炎上の火種はまだくすぶっているが、仲間たちの協力があれば、きっと乗り越えられる――そう信じて。