ENTUM23   作:マブラマ

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第192話 アクスマンの謀略

2020年10月23日

NEOENTUM 大ホール

 

NEOENTUMの大ホールは、輝く照明と静かな情熱に包まれていた。エトラは、三菱ランサーエボリューションファイナルエディションを主役にしたASMR撮影に完全に没頭していた。

このラリーカーは、ZIZAIのアイリスディーナ・ベルンハルトの夫、テオドール・エーベルバッハが購入を検討している特別な一台だった。

ホールの照明がランサーの流麗なボディを輝かせ、エトラの動きはまるで車と恋人のような親密さで満たされていた。

彼女は、ミライアカリがGOOMSTUDIOでバスクのパワハラに苦しんでいることを知る由もなかった。

エトラはランサーのエンブレムを指で弾き、パッチンという軽快な音を響かせた。

「ランサー…♡」

その声は、愛情と陶酔に満ち、まるで車に囁きかけるような甘さだった。

ホイールを指でそっと撫で、ドアをゆっくり開け閉めする仕草は、車と対話しているかのようだった。

「ランサー……♡」

彼女の指先は、優しく、まるで大切なものを慈しむように動いた。

フロントランプを点灯させ、シフトレバーをそっと弄りながら、エトラの目はキラキラと輝いた。

「ランサー………♡」

その声は、抑えきれない情熱を帯び、ホールの空気を温かく震わせた。エンジンをかけ、アクセルを軽く吹かすと、力強い咆哮がホールに響き渡り、彼女の心をさらに高揚させた。

ハザードランプを点滅させ、レカロ製のシートの革を愛おしげに撫でる。

「ランサー………♡」

その仕草は、車に魂が宿っているかのように繊細で、愛に溢れていた。

最後に、ハンドルをそっと優しく撫でながら、エトラは微笑んだ。

「ランサー………♡」

その瞬間、ホールは彼女とランサーの世界だけで満たされ、時間が止まったかのようだった。

 

 

しかし、この穏やかなひとときとは裏腹に、ミライアカリを巡る戦いは本格的に突入していた。

シリウスシュガーの月ヶ瀬ちゆるは、NEOENTUM本社に向かい、エトラにアカリの危機を伝えるため、父親の愛車トヨタ・パブリカ800デラックスで疾走していた。

姜小花の公安コネクションとリリー・ラヴォアのシギント技術により、GOOMSTUDIOの監視カメラハッキングが進み、アカリへの直接メッセージ送信の準備が整いつつあった。

一方、バスクはチャイニーズマフィアの黒龍と密約し、ちゆるの暗殺を企てていたが、ヤザン大塚の離反がバスクの計画に亀裂を生んでいた。

あおぎり高校の音霊魂子、.LIVEのシロ、他のVTuberは、#SaveAkariのムーブメントをさらに加速させ、ファンの力を結集していた。

エトラがアカリの危機を知るのは、ちゆるがNEOENTUMに到着し、直接話す瞬間まであとわずかだった。

彼女のランサーへの愛に満ちた時間が、NEOENTUM大ホールに静かな輝きを放つ一方で、VTuberたちの絆と国際的な協力は、バスクと黒龍の冷酷な策略に立ち向かう希望の剣をさらに鋭く研ぎ澄ませていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年10月24日

GOOMSTUDIO近郊

 

GOOMSTUDIOの周辺は、冷たい秋風が吹き抜ける中、緊迫した空気に包まれていた。

ZIZAIの幹部、ハインツ・アクスマンは、側近のミヒャエル・ゾーネを連れ、GOOMSTUDIOに向かおうとしていた。

彼の目的は、表向きには「ミライアカリの様子を確認する」ことだったが、その裏に潜む意図は不明だった。

そこに、萌実が一人、毅然とした態度で立ち塞がった。

彼女の瞳には、ミライアカリを救う決意と、アクスマンへの不信感が燃えていた。

アクスマンは冷たく微笑み、落ち着いた口調で言った。

「退きたまえ。私はミライアカリの様子を覗おうとしているだけだ。」

萌実は一歩も引かず、鋭い視線で応じた。

「…アカリちゃんには会わせない。アンタ、何を企んでるの?」

アクスマンは鼻で笑い、余裕たっぷりに答えた。

「フン…別に。何も企んではいないよ。『嫁ノ萌実』。」

萌実の目が見開かれ、声に動揺が滲んだ。

「!」

アクスマンはさらに畳み掛けた。

「忘れたのかね? 君の『真の本名』だった筈だ。夏実萌実? 他人の名前を借りた偽りの名を騙って何したかったんだ?」

萌実は唇を噛み、声を低くして言った。

「…何で知ってるの?」

アクスマンは冷ややかな笑みを深め、淡々と答えた。

「『鳴神』からの情報だよ。彼は問題児だ。無闇に接触するのは避けた方が…」

萌実は拳を握り、怒りを抑えながら反論した。

「アンタが関係ある事? そんなの…言われなくても分かってる。」

アクスマンは目を細め、まるで彼女を試すように言った。

「…彼女は救えないよ。コンクリートのように固められ一生バンナムに縛られる運命なのだよ。」

萌実は一瞬言葉を失い、すぐに叫んだ。

「煩い! 何? アカリちゃんは助けられないって言うの!?――そんな事はない!」

アクスマンは冷笑を浮かべ、ゆっくりと言った。

「醜い…実に醜いよ。君は幻想を見過ぎだ。現実を直視しろ。」

萌実は息を呑み、怒りを爆発させた。

「!――アンタ…萌実達の邪魔する気なの!?」

アクスマンは肩をすくめ、曖昧に答えた。

「さあ? ご想像にお任せするよ。」

彼はミヒャエル・ゾーネを一瞥し、踵を返した。

「…私は失礼するよ。次の機会に話そう―――」

萌実は叫んだ。

「待ちなさい!」

アクスマンは振り返らず、歩きながら一言付け加えた。

「あ、そうだ。言い忘れたよ。君の友人にはまだ話してないようだね?」

萌実の心臓が跳ねた。

「…エトラに何しようとしてるの!? 彼女は…」

アクスマンは立ち止まり、冷たく笑った。

「関係ある―――かもしれない。また会おう。」

彼とゾーネは闇に消えるように去っていった。萌実は拳を握り締め、悔しさに震えた。

「く…! アカリちゃん…エトラ…絶対に守るよ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月ヶ瀬ちゆるは、父親の愛車トヨタ・パブリカ800デラックスを運転し、NEOENTUM本社に急いでいた。

彼女は姜小花とリリー・ラヴォアからの最新情報を受け、チャイニーズマフィアの黒龍による暗殺計画と、ヤザン大塚の離反を知っていた。

そこに、萌実から緊急の通信が入った。

《ちゆるちゃん! ZIZAIのハインツ・アクスマンがGOOMSTUDIOに近づいてる! なんか企んでるみたい…私の過去のことまで知ってて、エトラにも何かする気かも!》

ちゆるはハンドルを握りながら、決意を込めて答えた。

「萌実ちゃん、ありがとう! アクスマン、めっちゃ怪しいね…! 小花さん、リリーさんに連絡して、ZIZAIの動きも追ってもらうよ! エトラちゃんにアカリちゃんの危機を伝えて、絶対みんなで守る!」

姜小花の声が通信から響いた。

《月ヶ瀬さん、アクスマンの動きは公安のネットワークで監視します。ZIZAIがバスクと繋がっている可能性も調査します。劉少奇同志の精神で、闇を暴いてみせます。》

リリーが勢いよく割り込んだ。

《ちゆるちゃん、萌実ちゃん、任せて! シギントでアクスマンとゾーネの通信ログ、ガッツリハックするよ! ジャスピオンの正義にかけて、エトラちゃんもアカリちゃんも守る!》

 

アクスマンの登場と萌実の過去の暴露により、#SaveAkariのムーブメントは新たな試練に直面していた。しかし、ちゆる、萌実、魂子、シロ、ひなた、そして姜小花、リリーらの絆は、バスク、黒龍、アクスマンの策略に立ち向かう希望の剣をさらに強くしていた。戦いは、ミライアカリとエトラ、ちゆるの命を守る戦いへと突き進んでいた。

果たしてこの戦いが終わる日は訪れるだろうか?

 

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