ENTUM23   作:マブラマ

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第198話 二重人格

2020年11月4日

東京都渋谷区 渋谷センター街

 

渋谷センター街は、夜の喧騒とネオンの光に溢れていたが、路地裏の一角では緊迫した空気が漂っていた。

姜小花は、中華人民共和国公安部の任務を終え、日本に到着後、#SaveAkariムーブメントの現地調整のため動き回っていた。

彼女は、ミライアカリへの音声メッセージ送信準備を進めつつ、チャイニーズマフィア「黒龍」の暗殺計画を追跡していた。

そんな中、偶然にも鳴神裁が渋谷センター街でGOOMSTUDIO関連の情報を探っている姿を捉えた。

小花は、鳴神の単独行動がムーブメントを危険に晒す可能性を危惧し、彼に接触することを決意した。

路地裏で、小花は黒いコートを翻し、鋭い視線で鳴神を睨みつけた。

「鳴神裁、こんな場所で何してるの? GOOMSTUDIOを嗅ぎ回るのは、いい加減やめなさい。」

彼女の声は、公安の訓練を受けた冷静さと、劉少奇同志の精神を継ぐ決意に満ちていた。鳴神は一瞬驚いたが、すぐに反発した。

「姜小花、てめえに何の関係がある!? 俺はアカリを救うために動いてるんだ! お前らに頼らず、俺なりの方法でやる!」

小花は一歩踏み出し、冷たく言い放った。

「あなたの『俺なり』の方法が、どれだけムーブメントを混乱させるか分かっていますか? にじさんじやホロライブへのデマ騒動で、VTuber業界の信頼を失ったのはあなた自身ですよ。ミライアカリを救うのは、魂子さん、ちゆるさん、ZIZAI、NEOENTUM、aNCHOR、私たちの連携で十分。あなたの無謀な行動は、バスクや黒龍に隙を与えるだけ!」

鳴神は拳を握り、声を荒げた。

「くそっ…! 俺だってアカリを助けたいだけだ! お前になんか分かるかよ!」

小花は目を細め、静かに、だが力強く続けた。

「分かるわ。アカリさんの笑顔は、VTuberみんなの希望です。でも、あなたの過去の行動――ゲーム部やアズマリム、にじさんじへのデマ――それがどれだけ人を傷つけ、信頼を壊したか忘れたわけじゃないですよね? 単独で動いても、バスクの監視網には勝てない。警告します、鳴神。これ以上勝手な行動を続ければ、#SaveAkariの計画が台無しになる。最悪、あなた自身が黒龍の標的になりますよ。」

鳴神は唇を噛み、悔しげに小花を睨んだ。

「…俺が…標的だと? ふざけるな! アカリを救うためなら、俺は…!」

小花は静かに首を振った。

「その情熱は本物かもしれない。でも、間違った方法じゃ誰も救えない。引き返しなさい、鳴神。月ヶ瀬さんや魂子さんたちに任せて、あなたは自分の過去と向き合うべきです。」

彼女は背を向け、路地の闇に消えた。

鳴神は立ち尽くし、拳を震わせながら呟いた。

「…アカリ…俺、ほんとに何もできねえのか…?」

彼の声は、渋谷の喧騒に掻き消された。

 

姜小花は渋谷センター街を後にしながら、通信機でちゆるに連絡した。

「月ヶ瀬さん、鳴神は私が抑えました。エトラさんへの情報開示、準備はできていますか? アカリさんへの音声メッセージ、5日の配信で送り込みます。バスクも黒龍も、私たちの絆には敵わない」

ちゆるは萌実の家から応じた。

「小花さん、ありがとう! エトラちゃんへの連絡、ベアトリクスさんたちと調整中だよ! めるちゃんもデータ解析でガンガン進めてる! #SaveAkari、絶対成功させる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年11月5日

GOOMSTUDIO 休憩室

 

GOOMSTUDIOの休憩室は、薄暗い照明と無機質な壁に囲まれ、いつもとは異なるざわめきに包まれていた。

ジェリド井上とカクリコン戸松はソfaに座り、ミライアカリに関する新たな噂について話し合っていた。

テーブルのタブレットには、アカリの3周年ライブ『Mi:LIVE 2020 AKARI→START』の映像が映し出され、彼女の金髪サイドテールとピンクの星マークが揺れる笑顔が画面を彩っていた。

しかし、その笑顔の裏に隠された「二重人格」という設定が、二人を驚かせていた。

ジェリドはタブレットを手に、眉をひそめて言った。

「此奴は驚いた……アカリは二重人格だってな。」

カクリコンは目を丸くし、首をかしげた。

「アカリは元々エイレーンって百合好きなクリエイターがプロデュースしたんだろ? そんな設定あったのか?」

ジェリドはアカリの映像を見ながら、複雑な表情で答えた。

「…これもエイレーンが付けた設定だ。いや、もしかしたらアカリは本当に二重人格だったりしてな。」

ドアが開き、最近配属された女性社員ライラ・ミラ・ライラが入ってきた。

彼女は二人の会話を聞きつけ、興味深そうに近づいた。

「何を話してるんだ? ジェリド。」

ジェリドはライラを見て、軽く笑った。

「ライラ、丁度良いところに来たな。アカリは二重人格という設定らしい。今知ったぜ。」

ライラは少し驚いたように目を瞬かせ、静かに言った。

「…エイレーン三姉妹は凄いな。そいつはココロヤミっていう女性だよ。」

ジェリドは興味を引かれたように身を乗り出した。

「ココロヤミ……?」

ライラは頷き、穏やかに説明した。

「“心を病んでる”という由来だよ。アカリの明るい笑顔の裏に、闇を抱えたもう一つの人格があるって設定らしい。エイレーンが作り上げたストーリーで、ファンの間でも話題になってるみたい。」

ジェリドは感嘆の声を漏らし、呟いた。

「へぇ…」

カクリコンは腕を組み、深いため息をついた。

「VTuberは奥深いな…」

ライラは微笑み、二人を見つめた。

「アカリさんの笑顔は、ファンのみんなを元気にするけど、その裏にそんな設定があるなんて…彼女、どんな思いで配信してるんだろうね。」

ジェリドはタブレットを手に、アカリの映像を見ながら呟いた。

「ココロヤミか…バスクの監視下で、彼女がどれだけ心を病んでるかと思うと、胸が締め付けられるぜ…」

カクリコンが静かに頷き、言った。

「俺たち、もっとアカリを支えなきゃな。バスクやジャミトフのやり方は間違ってる。アカリを救うために、動くべきだ。」

ライラの目が輝き、力強く言った。

「私もそう思う。アカリさんの心を守るため、内部からできることをやろう。ブライトさんやエマさん、岩城さんも協力してくれるはずよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GOOMSTUDIO 配信ルーム

 

 

ミライアカリは配信ルームの椅子に座り、膝を抱えていた。

モニターは暗く、手元にはバスクが押し付けた新たな台本が置かれていた。

3周年ライブの成功と、コメント欄に紛れ込んだ仲間たちの暗号メッセージ

「AKARI、仲間が待ってる。負けないで。」が、彼女の心に小さな希望を灯していた。

しかし、バスクの監視はさらに厳しく、蒼い瞳には疲労と葛藤が滲んでいた。

「ココロヤミ…私のもう一つの心…本当にそんな私がいるなら、ファンのみんなを守るために、もっと強くなりたい…」

彼女は小さく呟き、胸の内で葛藤と戦っていた。

ドアが開き、岩城が入ってきた。穏やかな表情でアカリに近づき、小声で言った。

「アカリ、姜小花からの音声メッセージの準備が整った。次の配信で、直接お前に届ける。持ちこたえろ。」

アカリの瞳が輝き、涙が滲んだ。

「岩城さん…ありがとう。みんな、私を待っててくれるんだよね…?」

岩城は頷き、微笑んだ。

「ああ、もちろんだ。ZIZAI、NEOENTUM、あおぎり高校…みんな、お前を救うために動いてる。ブライト、エマ、カクリコン、ジェリド、ライラも、内部から協力してる。」

アカリは唇を噛み、決意を込めて頷いた。

「うん…私、負けない。ファンのみんなのために、絶対に頑張る!」

その時、ドアが再び開き、橘雅清が入ってきた。

冷たい視線でアカリを睨み、声を荒げた。

「ミライアカリ、いつまでグズグズしてるんだ? 次の配信で、ホロライブとにじさんじを批判しろ。バスクの命令だ。」

アカリは立ち上がり、橘を睨みつけた。

「そんなこと、絶対にしない! ファンのみんなを裏切るような配信、できない!」

岩城が橘の前に立ち、静かに言った。

「橘、落ち着け。アカリはファンのためにやってるんだ。こんな強引なやり方、間違ってるよ。」

橘は岩城を一瞥し、舌打ちして部屋を出ていった。

岩城はアカリに軽く微笑み、囁いた。

「アカリ、持ちこたえろ。もうすぐだ。」

アカリは小さく頷き、胸に希望を灯した。

 

#SaveAkariのムーブメントは、内部協力者の結束、姜小花の音声メッセージ計画、ヤザンの動揺、めるのデータ解析、にじさんじの情報網、aNCHORの宣伝戦略により、決定的な局面を迎えていた。

アカリは配信ルームで台本を握り潰し、呟いた。

「ココロヤミでも、ミライアカリでも…私は、ファンのみんなのために戦うよ…!」

次の配信での音声メッセージが、アカリの心をさらに強くし、救出作戦の決定的な一歩となる。

ミライアカリの救出とちゆるの命を守る戦いは、すぐそこまで迫っており、先が読めない展開になることを……。

 

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