2018年5月1日、株式会社ENTUMのロビーは、春の陽光に照らされながらも、どこか落ち着かない空気に包まれていた。エイレーンの解雇や内部の軋轢がまだ尾を引く中、突然の訪問者が現れる。キズナアイ、バーチャルYouTuberの頂点に君臨する彼女が、興味深げな笑みを浮かべてENTUMのロビーに足を踏み入れた。
キズナアイが周囲を見回し、軽やかな声で呟く。
「ここがENTUM……ふ~ん、面白そうな会社だね。さて、お手並み拝見と行きますか」
彼女の瞳には、好奇心と挑戦的な輝きが宿っていた。ロビーのモニターには「1000万再生」の数字が輝き、ミライアカリの笑顔が映し出されているが、キズナアイの存在感はその光を一瞬にして凌駕する。彼女はまるで、ENTUMの全てを見透かすように、ゆっくりと歩みを進める。
受付のスタッフが慌てて対応しようとするが、キズナアイは軽く手を振って制する。
「ふふっ、緊張しなくていいよ。ちょっと見学しに来ただけだからさ♪」
しかし、その言葉の裏には、ライバルとしての鋭い観察力があった。キズナアイは、ミライアカリやENTUMのこれまでの動きをすでに把握している。彼女の「魔法少女サイト」での声優デビューが業界を席巻し、ENTUMがその背中を追いかけていることも知っていた。
ロビーの奥から、カタリーナが急ぎ足で現れる。
「キ、キズナアイさん!? どうしてここに……?」
キズナアイがニコッと笑う。
「やっほー! カタリーナちゃんだよね? ミライアカリの仲間って聞いてたから、ちょっと挨拶しに来たの! それと……どんな企画で私を越えようとしてるのか、気になっちゃって♪」
カタリーナが一瞬たじろぐ。
「え、えっと……それは……」
その時、ニコラがロビーに駆けつける。
「キズナアイ、貴様がここで何の用だ?」
彼女の声には警戒心が滲むが、キズナアイは動じず、軽やかに答える。
「うーん、別に敵意はないよ? ただ、ENTUMって面白いことやってるって聞いて、どんな感じかなって思っただけ! ミライアカリちゃんの即興劇、めっちゃ話題になってたよね? 炎上したみたいだけど……ふふっ、そこも含めて興味深いな~」
カタリーナとニコラが顔を見合わせる。キズナアイの言葉は友好的だが、その裏に隠された挑戦的なニュアンスは明らかだった。ENTUMは、キズナアイという巨大な存在を前に、新たな試練に直面していた。
ロビーの空気が一瞬張り詰める。キズナアイが最後に笑顔で言う。
「ま、楽しそうな会社だし、また遊びに来るかもね! ミライアカリちゃんに、よろしく伝えてよ♪」
彼女が踵を返すと、ロビーに静寂が戻る。カタリーナが小さく呟く。
「同志少佐に報告しないと……」
ニコラが頷く。
「ああ。キズナアイの動き……見逃せないな」
ENTUMの物語は、キズナアイの訪問によって新たな局面を迎える。ミライアカリとENTUMは、彼女の輝きを超えることができるのか? ロビーに残された「1000万再生」の数字は、その答えを静かに待っていた――。