2020年11月15日
NEOENTUM 会議室
NEOENTUMの会議室は、モダンなデザインと最新の通信機器に囲まれ、緊張感と決意が漂っていた。
テーブルの中央には、姜小花と劉翠蘭から送られた最新情報が映し出された大型モニターが設置されていた。
バスク郷里の警備パターン、GOOMSTUDIOの内部構造、黒龍のちゆる暗殺計画の動向――すべてが詳細に解析されていた。
ベアトリクス・ブレーメは、NEOENTUMの中心として、ファム・ティ・ラン、アネット・ホーゼンフェルト、イングヒルト・ブロニコフスキー、シルヴィア・クシャシンスカ、リィズ・ホーエンシュタイン、ニコラ・ミヒャルケ、カタリーナ・ディーゲルマンと向き合っていた。
彼女の鋭い視線と冷静な指揮が、会議室に一体感をもたらしていた。
ベアトリクスはモニターを指差し、力強く言った。
「同志諸君、姜小花と劉翠蘭のハッキングにより、バスクの監視網の隙が明確になった。カタリーナの潜入情報、ファルカの橘への介入、生駒葵の動揺――すべてが#SaveAkariの最終局面を加速させている。アカリ救出は、明日11月16日が決戦だ!」
リィズ・ホーエンシュタインが腕を組み、頷いた。
「ファルカの介入で、橘が折れた。ヤザン大塚の動揺も進んでいる。内部の協力者が増えれば、バスクの支配は確実に崩れる。」
カタリーナ・ディーゲルマンが拳を握り、付け加えた。
「私の潜入で、GOOMSTUDIOの警備の盲点を特定した。11月16日の配信で、アカリに直接接触するチャンスがある。準備は整った!」
ファム・ティ・ランが静かに、だが決意を込めて言った。
「#SaveAkariは世界的に拡散中。ファンの応援が、アカリの心を支えている。私たちも、その力を最大限に活かしましょう。」
アネット・ホーゼンフェルトが微笑みながら言った。
「魂子やシロ、にじさんじの仲間たちも動いている。アカリを救うための絆は、VTuber業界全体に広がってるわ。」
イングヒルト・ブロニコフスキーとシルヴィア・クシャシンスカが頷き、ニコラ・ミヒャルケが冷静に分析を加えた。
「姜小花のデータによると、黒龍のちゆる暗殺計画はまだ実行段階にない。劉翠蘭の追跡で、黒龍の動きを一部封じ込めている。今が攻め時だ。」
しかし、ベアトリクスは一瞬眉をひそめ、話題を切り替えた。
「…鳴神裁の単独行動についてだ。彼はシロと接触し、#SaveAkariに協力する姿勢を見せているが、過去のデマ騒動(ゲーム部、にじさんじ、ホロライブ、アズマリム関連)や勝手な行動が計画を乱すリスクがある。どう扱うべきか?」
リィズが冷ややかに応じた。
「鳴神の情熱は本物だが、制御が必要だ。レインボーブリッジで私が止めたように、彼の単独行動はリスクが大きい。だが、姜小花のハッキングルートを使った彼の情報収集は役立っている。一応泳がせて、監視しながら利用すべきだ。」
カタリーナが同意し、付け加えた。
「鳴神のメッセージは、11月10日の配信でアカリに届いた可能性が高い。彼の行動を完全に封じるより、劉翠蘭と連携してコントロールした方が、ムーブメントに貢献する。」
ベアトリクスは静かに頷いた。
「分かった。鳴神は泳がせつつ、劉翠蘭とシロに監視を任せる。彼の情熱を正しい方向に導けば、アカリ救出の力になる。同志諸君、明日の作戦を最終確認だ。#SaveAkariは、私たちの絆で必ず成功させる!」
会議室に集まったNEOENTUMのメンバーは、力強く頷き、決意を新たにした。
モニターに映るアカリの笑顔が、彼女たちの戦う理由を象徴していた。
2020年11月16日
株式会社リィズ・ホーエンシュタイン スタジオ
株式会社リィズ・ホーエンシュタインのスタジオは、モダンな内装と最新の配信機材に囲まれ、活気ある雰囲気に包まれていた。
エトラはスタジオのデスクに座り、エイレーンから送られてきた企画書に目を通していた。
しかし、その内容は相変わらず過激で、際どい衣装や扇情的な演出を求める指示が並び、エトラの眉間に深い皺が刻まれた。
彼女の我慢は限界を超えていた。
エトラは苛立ちを抑えつつ、テレビ電話を起動し、エイレーンに接続した。
画面に映るエイレーンは、いつものように自信満々な笑みを浮かべていた。
《えっと…これからエトラさんは脱いで貰います! ファンのみんな、絶対盛り上がると思いますよ!》
エトラの目が一瞬鋭くなり、冷ややかな声で即座に切り返した。
「…殺されたいのかしら? あ、思い出したわ! 潰す――エイレーンのTwitterアカウント凍結させてやる! YouTubeチャンネルも! パソコンもぶっ壊してやるわ!」
エイレーンは画面の向こうでたじろぎ、慌てて手を振った。
《うわっ、待って待って、エトラさん! 冗談、冗談だって! ちょっと過激な方がバズるかなって思っただけで…!》
エトラは腕を組み、冷たく言い放った。
「冗談でも限度ってものがあるのよ、エイレーン。こんな企画、ファンに失礼だし、私のキャラにも合わない。いい加減、まともな企画書持ってきなさい。修正して、明日までに再提出して。」
エイレーンはしぶしぶ頷き、しょんぼりした声で答えた。
《…はーい、了解しましたぁ。すぐ直します、許して~。》
テレビ電話が切れると、エトラは深いため息をつき、企画書をデスクに放り投げた。
「まったく、エイレーンときたら…毎回これだわ。」
この時点で、エトラはミライアカリがGOOMSTUDIOでバスク郷里のパワハラに苦しんでいることを知らなかった。
彼女の関心は、目の前の仕事とエイレーンの過激な企画をどう抑えるかに集中していた。しかし、#SaveAkariのムーブメントは、魂子、シロ、ZIZAI、NEOENTUMの連携により、着実に広がりを見せていた。エトラがこの事態を知るのは、もう少し後のことになるだろう。
2020年11月17日
NEOENTUM本社
NEOENTUM本社のオフィスは、モダンなガラス張りの会議室と忙しく行き交うスタッフで活気づいていた。
エイレーンは、昨日のエトラとのテレビ電話でのやり取りを受け、修正した企画書を急いでFAXで送信した。
過激な要素は削られ、比較的穏やかな内容に改められていたが、エイレーンらしい「スパイシーな質問コーナー」という項目が新たに追加されていた。
数分後、エトラからTwitterのDMで返信が届いた。
エトラはデスクでスマホを手に、鋭い目でメッセージを打ち込んでいた。
彼女のDMは以下のように送られた
「エイレーン、FAX届いたわ。とりあえず、過激な要素は消えたみたいだけど、この『スパイシーな質問コーナー』って何? また変な方向に持っていこうとしてないでしょうね? 健全ならいいけど、変な質問が紛れ込んだら即カットするから。そのつもりで準備しなさい。配信は明後日に設定するから、細かい台本は今日中にメールで送って。」
エイレーンはNEOENTUMのオフィスでDMを確認し、画面の前で少し肩をすくめた。
「うーん、エトラさん、相変わらず厳しいなぁ…。スパイシーって言っても、ただファンからの面白い質問で盛り上げるだけなのに~。」
彼女はすぐにパソコンに向かい、台本の詳細を書き始めたが、頭の片隅ではエトラの厳しいチェックをどうやってくぐり抜けるかを考えていた。
「まぁ、健全に、健全に…でも、ちょっとくらいスパイス効かせてもいいよね?」と呟きながら、ニヤリと笑った。
この時点で、エトラは依然としてミライアカリがGOOMSTUDIOでバスク郷里のパワハラに苦しんでいることを知らなかった。
彼女の関心は、エイレーンとの企画を軌道に乗せることと、自身の配信を成功させることに集中していた。
2020年11月18日
GOOMSTUDIO 会議室
GOOMSTUDIOの会議室は、冷たい蛍光灯の光に照らされ、重苦しい空気が漂っていた。
ミライアカリの救出計画が進む中、NEOENTUMのファルカ・ミューレンカンプの突然の介入が、内部に大きな波紋を広げていた。
バスク郷里とジャミトフ西村は、ファルカの行動に強い警戒心を抱き、監視体制をさらに強化していた。
一方、内部協力者である岩城、ライラ・ミラ・ライラ、ジェリド井上、カクリコン戸松、生駒葵、波瀬うるうは、アカリを支えるために密かに動き始めていた。
橘雅清の心にも変化が生まれ、バスクへの盲従に揺らぎが見えていた。
会議室の隅で、ブライト・ノアとエマ・シーンがひそひそと話していた。
ブライトはタブレットを手に、低い声で言った。
「ファルカ・ミューレンカンプ…彼女の介入は予想外だった。NEOENTUMの幹部とはいえ、なぜここまでアカリのために動くんだ?」
エマは頷き、静かに答えた。
「彼女の過去を調べたわ。シュタージのヴェアヴォルフ大隊出身で、かなりの実力者よ。バスクも、彼女の動きを軽視できないはず。」
生駒葵が驚いたように声を上げた。
「シュタージだと!?」
波瀬うるうは縮こまり、震える声で呟いた。
「ひぃっ! シュタージって東ドイツの…? 怖いですぅ…」
ファルカ・ミューレンカンプは、かつて東ドイツの秘密警察シュタージのヴェアヴォルフ大隊に所属していたエリート諜報員だった。
冷戦時代、過酷な訓練と任務を通じて、情報収集、潜入工作、心理戦の技術を磨き上げた。
シュタージ解体後、彼女は西側の連邦情報局(BND)に引き抜かれ、ニコラ・ミヒャルケやカタリーナ・ディーゲルマンと共に、オウム真理教関連、南北朝鮮関連、テロ組織対策の任務を遂行。
鋭い洞察力と冷徹な判断力で、多くの危険な任務を成功させ、BND内でも一目置かれる存在だった。
しかし、2017年、ファルカは連邦情報局を辞職。諜報の世界の過酷さに疲れ、人生を見つめ直す時期を求めていた。
そんな中、2018年3月、百合をテーマにしたコンテンツで知られるクリエイターで、YouTubeチャンネル『アニメ娘エイレーン』の管理者、エイレーンから誘いを受けた。
エイレーンは、VTuber業界に新たな風を吹き込むべく、株式会社ENTUMを設立し、ファルカに幹部としての参加を打診。エイレーンは、ファルカの経験とリーダーシップが、VTuber業界での挑戦に必要だと考えていた。
ファルカは当初、VTuberという未知の世界に戸惑ったが、エイレーンが描く「絆と夢を届ける」ビジョンに心を動かされた。
2018年3月31日、ファルカはベアトリクス・ブレーメ(名誉会長)、アイリスディーナ・ベルンハルト(会長)、テオドール・エーベルバッハ、アネット・ホーゼンフェルト、ファム・ティ・ラン、イングヒルト・ブロニコフスキー、シルヴィア・クシャシンスカらと共にENTUMに参画。東ドイツ軍(国家人民軍)666中隊の元メンバーたちは、戦友としての強い絆で結ばれ、ENTUMの理念を支える基盤となり株主となった。
ファルカはENTUM時代、ミライアカリと深い関わりを持った。
特に、2018年にアカリが『flowerhoneyQuest』にハマり、RMT(リアルマネートレーディング)にのめり込んでいた時期、ファルカはリダ・カナレスというキャラクターを演じ、アカリにゲームの危険性を教えた。
この経験が、ファルカにとってアカリへの特別な思い入れを生み、現在の#SaveAkariムーブメントにおける彼女の強い決意の原動力となっていた。
ブライトはタブレットのデータを閉じ、呟いた。
「ファルカがアカリにそこまで執着する理由が分かった気がする。彼女にとって、アカリはただのVTuberじゃないんだな…」
エマは静かに頷き、言った。
「ファルカの介入で、橘の態度が変わった。ヤザンも動揺してるみたいだし、内部の協力者が増えてる。姜小花のハッキングも順調よ。次の配信で、アカリに直接メッセージを送り込む準備も整ってる。」
ブライトは目を細め、決意を込めて言った。
「バスクの支配に亀裂が入り始めてる。俺たちも、岩城やジェリドたちと連携して、アカリを救うために動くぞ。」
会議室の外では、橘が一人、廊下で考え込んでいた。
ファルカの言葉とアカリの決意が、彼の心に響いていた。
「…俺、本当にこれでいいのか…? バスクの命令に従うだけじゃ、アカリを傷つけるだけだ…」
一方その頃、ちゆるとめるは、萌実の家で姜小花から送られてきたファルカの過去のデータに目を通していた。
ちゆるは目を丸くし、驚いたように叫んだ。
「え、ファルカさん、シュタージのヴェアヴォルフ大隊!? めっちゃカッコいいけど、怖いよ~! アカリちゃんのためにそこまで動くなんて、ほんとすごい!」
めるは過集中モードでデータを解析しながら、興奮気味に言った。
「ちゆるさん! ファルカさんの過去、めっちゃ深いです! アカリちゃんとの絆も本物ですよ! 今日の配信で、カタリーナさんの潜入と姜小花さんのハッキング、全部繋がりました! アカリちゃん救出、絶対成功してみせます!」
ちゆるは拳を握り、笑顔で応じた。
「めるちゃん、最高! 魂子ちゃん、シロちゃん、みんなと一緒に、アカリちゃんを絶対救うよ!」
GOOMSTUDIOの配信ルームは、モーションキャプチャ装置の機械音とモニターの冷たい光で満たされていた。
ミライアカリは椅子に座り、モーションキャプチャ装置を装着していた。
金髪サイドテールとピンクの星マークが揺れる新衣装をまとい、モニターには彼女の笑顔が映し出されていたが、その裏にはバスク郷里の監視と強制的な台本があった。
橘雅清の心の変化とファルカ・ミューレンカンプの介入により、彼女へのプレッシャーは一時的に緩和されていたが、依然として自由はなかった。
蒼い瞳には、希望と葛藤が交錯していた。
「ファルカさん…あの時、私を救ってくれたよね…今も、みんなが私を支えてくれてる…」
アカリは呟き、2018年の『flowerhoneyQuest』でのファルカとの記憶を胸に抱いた。
彼女の心には、姜小花、劉翠蘭、鳴神裁、魂子、シロ、ギルザレンⅢ世、ちゆる、萌実、める、ベアトリクス、アイリスディーナ、晴子、多恵の想いと、ファンの「#SaveAkari」の応援が響き合っていた。
ドアが開き、岩城副官が入ってきた。
彼は穏やかな表情でアカリに近づき、小声で言った。
「アカリ、姜小花からの音声メッセージ、今日の配信でまた送り込む。ファルカの介入で、橘も少し軟化した。チャンスだ。」
アカリの瞳が輝き、かすかに微笑んだ。
「岩城さん…ありがとう。ファルカさん、すごいよね…あの時も、今も、私を助けてくれて…」
岩城は頷き、力強く言った。
「ああ、ファルカは本物だ。彼女の過去を知れば、なおさらな。シュタージ出身の彼女が、なぜここまでお前を救おうとするか…それは、彼女が本当の絆を信じてるからだ。」アカリは唇を噛み、決意を込めて頷いた。
「うん…私、負けない。ファンのみんなのために、絶対に頑張る!」
その時、ドアが再び開き、ライラ・ミラ・ライラが入ってきた。彼女は穏やかな微笑みを浮かべ、言った。
「アカリさん、ファルカさんからのメッセージも預かってる。『アカリ、昔みたいに諦めるな。仲間がいるよ』って。」
アカリの目から涙が溢れ、彼女は小さく笑った。
「ファルカさん…ありがとう…」
配信が始まり、アカリはモーションキャプチャを通じてエネルギッシュに話し始めた。「みんな、ミライアカリだよ! 今日も一緒に楽しもう!」
彼女の声は明るく、ファンを元気づける力に満ちていたが、台本の強制的な内容(ホロライブとにじさんじへの批判)をどう回避するかが課題だった。
その瞬間、モニターの隅に小さなノイズが走り、姜小花と劉翠蘭からの暗号化された音声メッセージがアカリのイヤホンに流れ込んだ。
「アカリさん、仲間たちがここにいる。今日、必ず救う。#SaveAkari」
音声には、ちゆる、魂子、シロ、ギルザレン、ひなた、萌実、める、ベアトリクス、アイリスディーナ、晴子、多恵、鳴神、そしてファルカの想いが込められていた。
アカリの蒼い瞳が輝き、彼女はアドリブで台本を無視した。
「みんなの応援、ちゃんと届いてるよ! 私、絶対に負けない! ファンのみんな、いつもありがとう!」
コメント欄には「アカリちゃん、最高!」「#SaveAkari」「負けないで!」とファンの応援が溢れ、彼女の心をさらに強くした。
バックステージでは、橘雅清がモニターを見つめ、複雑な表情を浮かべていた。ファルカの介入とアカリの決意が、彼の心を揺さぶっていた。
「…俺、間違ってたのかもしれない…アカリの笑顔は、バスクの利益じゃなく、ファンのためにある…」
葵がそばに立ち、静かに言った。
「橘さん、アカリの配信を見て分かった。彼女の笑顔は本物だ。バスクの命令は…間違っている。私も、彼女を守るために動く。」
うるうは縮こまりながらも、勇気を振り絞って言った。
「わ、私も…アカリさんを応援したいです…!」
岩城が微笑み、二人に頷いた。
「生駒、波瀬、ありがとう。内部協力者が増えた。カタリーナの潜入データで、今日、裏口からアカリを救出する準備が整ってる。」
GOOMSTUDIOの配信ルームで、アカリはモニターを見つめ、呟いた。
「みんな…今日、絶対に負けないよ…!」
彼女の心には、ファルカの過去、仲間たちの想い、ファンの応援が響き合い、「ココロヤミ」を超える希望が燃えていた。#SaveAkariのムーブメントは、ファルカの介入、橘と生駒の転向、カタリーナの潜入、姜小花と劉翠蘭の諜報、NEOENTUMと内部協力者の結束により、決定的な勝利へと突き進む。
ミライアカリの救出とちゆるの命を守る戦いは、11月18日の配信で、成功の瞬間を迎えようとしていた。
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