ENTUM23   作:マブラマ

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第218話 シロッコの思惑

2020年12月9日、GOOMSTUDIO 管理室

 

GOOMSTUDIOの管理室は、冷たく静かな空気に支配されていた。

モニターの青い光が、パプテマス・シロッコの鋭い顔立ちを照らし出す。

彼は画面に映るデータと報告書を眺めながら、束草市での鳴神裁の動きを把握していた。NEOENTUMの情報網とバンナムのソウル支部からの報告を通じて、鳴神がバンナム社員の会話を盗聴し、録音データをヤミクモケリン経由でNEOENTUMに送ったことを察知していた。

シロッコは口元に薄い笑みを浮かべ、独り言を呟いた。

「鳴神裁…面白い男だ。だが、今はミライアカリを優先する。奴を泳がせておけば、バスクの注意が分散する…」

彼は意図的に鳴神を野放しにする戦略を選んだ。

アカリの配信と監視を自ら管理することで、バスク郷里の影響力を削ぎ、自身の立場を強化する狙いがあった。

シロッコの瞳には、狡猾な計算と野心が宿っていた。

だが、彼はこの時点で知る由もなかった。

この決断が、3年後の2023年にVTuber界隈の革命の火を灯し、GOOMSTUDIOの崩壊を招くきっかけとなることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日、GOOMSTUDIO 隔離配信ルーム

 

隔離配信ルームは、モーションキャプチャ装置の機械音と、ミライアカリの控えめな吐息だけが響く静かな空間だった。

疲労とバスクの監視の重圧に耐えながらも、ファンの応援と朝ノ瑠璃との交流で得た小さな希望が、彼女の心を支えていた。

モニターに映る自分のアバターを見つめ、アカリは深呼吸して気合を入れる。

そこへ、静かに扉が開き、シロッコが入室してきた。

穏やかな笑みを浮かべ、彼は柔らかな口調で言った。

「アカリ、今日の配信は自由にやってくれ。台本は最小限だ。ファンが求めるのは君の笑顔だ」

アカリは一瞬目を丸くし、警戒心を隠せないまま微笑んだ。

「シロッコさん…本当に自由でいいの? バスクさんみたいに、厳しい指示とか…ない?」

シロッコは軽く笑い、自信に満ちた声で答えた。

「バスクのやり方は時代遅れだ。君の輝きを最大限に引き出すのが私の役目だ。安心して、思う存分やってくれ」

アカリの胸は、希望と不信の間で揺れた。

「(シロッコさん…本当に信じていいんだよね?) 」

だが、ファンの顔を思い出し、彼女は決意を込めて頷いた。

「…分かった。アカリ、ファンのために、めっちゃ輝くよ!」

配信が始まると、モニターに映るアカリの笑顔は、まるで星のように輝いた。

コメント欄は瞬く間に「アカリちゃん最高!」「#SaveAkari」「いつも応援してる!」で埋め尽くされた。

その瞬間、イヤホンに中国公安部からの暗号化音声メッセージが流れ込む。

「アカリ、シロッコの動きはチャンスだ。ヤザンも味方だ。もう少し耐えろ」

アカリは小さな笑みを浮かべ、心の中で呟いた。

「(みんな…ありがとう。アカリ、絶対負けない!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日、韓国・束草市

 

草市の小さなカフェの片隅で、鳴神裁は身を潜めていた。

録音データをNEOENTUMに送った後、彼はヤミクモケリンからの指示に従い、SNSで#SaveAkariの拡散に専念していた。

スマホの画面には、ファンの熱いメッセージが次々と流れ込む。

「#SaveAkari」「アカリちゃんを救え!」――その一つ一つが、鳴神の心に火を灯した。ケリンからの暗号化メッセージが届く。

「鳴神、データはベアトリクスに届いた。篁唯依の調査と姜小花のハッキングが最終段階だ。お前はSNSでファンの勢いを維持しろ。シロッコが動いてるが、俺たちの動きはバレてない」

鳴神はカフェの薄暗い光の下で拳を握り、呟いた。

「よし…アカリを救うまで、絶対諦めねえ!」

彼の瞳には、かつての無鉄砲な炎は抑えられ、代わりに仲間への信頼と、ミライアカリを救うための静かな決意が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年12月10日、GOOMSTUDIO 会議室

 

GOOMSTUDIOの会議室は、冷たく張り詰めた空気に支配されていた。

テーブルの上には、ミライアカリの最近の配信データと、シロッコが企画した朝ノ瑠璃とのコラボ動画の分析資料が無造作に広げられていた。

バスク郷里とジャミトフ西村は、パプテマス・シロッコの自由なやり方とZIZAIのハインツ・アクスマンの介入による混乱を抑え込むため、新たな策略を練っていた。

ジャミトフはモニターを睨み、苛立ちを抑えた低い声で切り出した。

「バスクよ。シロッコの朝ノ瑠璃とのコラボ…ファンの反応が予想以上に大きい。#SaveAkariのムーブメントがさらに加速しているぞ」

バスクは拳を握り、苦々しい表情で答えた。

「は――シロッコの甘い言葉が、ミライアカリの心を動かした結果です。アクスマンの介入も、ZIZAIの新たな策略かと…」

ジャマイカン山田が緊張した声で進言した。

「ジャミトフ様、シロッコの自由な姿勢は、ヤザンの寝返りを加速させました。橘も完全に軟化し、内部の忠誠心が揺らいでいます」

ジャミトフは目を細め、冷たく言い放った。

「シロッコ…奴のやり方は危険だ。バスク、シロッコの監視を強化しろ。水谷沙羅も、奴と共謀していないか目を光らせておけ」

バスクは力強く頷き、答えた。

「了解しました。アクスマンについては、ZIZAIとの交渉を装い、動きを封じます」

ローレン中本が静かに口を開いた。

「ジャミトフ様、NEOENTUMの仕送りと姜小花のハッキングが、アカリの抵抗をさらに強めています。シロッコがアカリに自由を与えたことで、ファンの結束もかつてないほど強まっています」

ジャミトフは苛立ったように拳をテーブルに叩きつけ、声を荒げた。

「ふん、NEOENTUMの亡霊どもが…! ミライアカリを救おうとする者たちは、全員潰す! バスク、次の企画はシロッコの手から奪い返せ。彼女を再び我々の支配下に置くのだ!」バスクは薄笑いを浮かべ、自信たっぷりに答えた。

「ククク…次の配信は、彼女の『ココロヤミ』設定を最大限に利用したホラー企画で、ファンの心を恐怖で縛ります。シロッコの甘い言葉など、吹き飛ばしてやる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日、GOOMSTUDIO 隔離配信ルーム

 

隔離配信ルームは、モーションキャプチャ装置の微かな機械音と、ミライアカリの控えめな吐息だけが響く静かな空間だった。

朝ノ瑠璃とのコラボと上野の居酒屋でのひとときが、彼女の心に久しぶりの温かさをもたらしていたが、シロッコへの信頼とバスクの影への警戒心が交錯していた。

アカリはシロッコが用意した台本を手に、モニターに映る自分のアバターを見つめながら呟いた。

「シロッコさん…本当に信じていいんだよね? でも、バスクが黙ってるはずない…」

そこへ、静かに扉が開き、シロッコが入ってきた。

穏やかな笑みを浮かべ、彼は柔らかな口調で言った。

「アカリ、朝ノ瑠璃とのコラボ、好評だったようだね。ファンの応援も増えてる。次の配信も、君の笑顔を活かした楽しい企画にしよう」

アカリは少し緊張しながら尋ねた。

「シロッコさん…バスクさんが、こんな自由な企画、許してくれるの? アクスマンさんのことも…なんか、怖い感じだったし…」

シロッコは一瞬目を細め、落ち着いた声で答えた。

「バスクのことは気にするな。彼の時代錯誤なやり方は、VTuberの可能性を潰すだけだ。アクスマンについては…ZIZAIの策略だろうが、私が対処する。君はただ、ファンのために笑顔を見せてくれ」

アカリは小さく頷き、内心の葛藤を押し隠して呟いた。

「うん…シロッコさん、ありがとう。アカリ、頑張るよ!」

その時、岩城が静かに部屋に入り、シロッコに一瞥をくれ、アカリに小声で囁いた。

「アカリ、姜小花からの音声メッセージ、今日の配信でも送り込む。シロッコの動きは味方に見えるが、油断するな。ヤザンが完全に寝返った。もう一押しだ」

アカリの瞳がキラリと輝き、かすかな微笑みが浮かんだ。

「岩城さん…ありがとう。ヤザンさんも、みんなも…アカリ、負けないよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

韓国・束草市では、鳴神裁が録音データをNEOENTUMに送り、SNSでの#SaveAkariの拡散に全力を注いでいた。

ヤミクモケリンからの指示を受け、彼はバスクやシロッコに動きを悟られぬよう慎重に行動していた。ケリンの暗号化メッセージが、鳴神の決意をさらに固めた。

「データはベアトリクスに届いた。篁唯依の調査と姜小花のハッキングが最終段階だ。ファンの勢いを維持しろ」

GOOMSTUDIO内部では、シロッコの自由な姿勢がアカリに希望を与えつつも、バスクとジャミトフの新たな策略が進行していた。ZIZAIのハインツ・アクスマンの介入、ヤザン大塚の裏切り、橘雅清の軟化、岩城やライラ・ミラ・ライラ、生駒葵、波瀬うるうの動きが、内部の亀裂をさらに広げていた。NEOENTUMのベアトリクス・ブレーメ、ZIZAIのアイリスディーナ、シリウスシュガーの月ヶ瀬ちゆる、音霊魂子、シロ、湊あくあ、郡道美玲、ヨメミ、萌実らの救出チームは、篁唯依の極秘調査と中国公安部のハッキングを軸に、救出作戦を最終局面へと進めていた。アカリの次の配信が、彼女の自由を取り戻す決定的な瞬間となる可能性が高まっていた。VTuber業界の絆とファンの力が、バスク、ジャミトフ、シロッコの支配に立ち向かう最大の武器となっていた。

 

この戦いはまだまだ終わらない。

 

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