ENTUM23   作:マブラマ

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第221話 危険信号

2020年12月15日、東京某所

 

東京の喧騒が遠く響くホテルの一室で、姜小花はひっそりと身を潜めていた。

彼女の手元には、NEOENTUMの情報網と中国公安部の暗号化された通信ツールが握られ、#SaveAkariムーブメントの鍵となる情報が次々と流れ込んでいた。

ノートPCの画面には、暗号化されたデータや鳴神裁の録音ファイル、篁唯依の調査報告が映し出されている。

だが、彼女の心を最もざわつかせていたのは、エイレーンによるGOOMSTUDIOの更衣室での下着窃盗という、信じがたい軽率な行動だった。

姜小花は深いため息をつき、キーボードの上で指を止めた。

「(エイレーンさん、なんでこんなタイミングで…! アカリさんを救う大事な局面で、こんなリスクを冒すなんて…)」

彼女は冷静さを取り戻し、匿名メッセージをエイレーンに送信する準備を整えた。

トレーサブルな痕跡を一切残さないよう、暗号化を重ね、細心の注意を払って文章を打ち始めた。

 

匿名メッセージ(姜小花からエイレーンへ)

 

「エイレーン、あなたのGOOMSTUDIOでの行動はあまりにも危険です。スタッフの下着を盗むなんて、#SaveAkariムーブメントの信頼を崩しかねない。私がハッキングで監視カメラの映像を消したからバスクやジャミトフにはバレていませんが、こんな軽率な行動は二度と繰り返さないで。アカリさんのクリスマスライブが目前です。NEOENTUMの作戦に集中し、余計な波紋を広げないでほしい。――匿名」

 

メッセージを送信後、姜小花はノートPCを閉じ、窓の外に広がる東京の夜景を見つめた。ネオンの光が揺れる中、彼女の心にはアカリを救うための決意と、エイレーンへの苛立ちが交錯していた。

「(エイレーンさんがこの警告を真剣に受け止めてくれるといいけど…。今は、アカリさんのライブでバスクの支配を崩すことに全力を注ぐしかない)」

彼女はすぐにNEOENTUMのベアトリクス・ブレーメに連絡を取り、エイレーンの行動についての報告と、クリスマスライブでの作戦の最終確認を始めた。

姜小花のハッキング技術と情報網は、#SaveAkariムーブメントの核心を担い、バスク、ジャミトフ、シロッコの支配に立ち向かう決定的な武器となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年12月16日、GOOMSTUDIO 管理室

 

 

GOOMSTUDIOの管理室で、パプテマス・シロッコはモニターに映るデータと報告書を眺めながら、静かに薄笑いを浮かべていた。

NEOENTUMの情報網とバンナムの内部報告を通じて、エイレーンによる更衣室での下着窃盗の一件を薄々察知していた。

だが、彼はバスク郷里やジャミトフ西村に報告せず、敢えてこの情報を放置することを選んだ。

「(エイレーンの愚行…面白い。バスクの目を逸らすにはちょうどいい混乱だ)」

シロッコは冷静に水谷沙羅を呼び出し、低い声で指示を出した。

「沙羅、エイレーンが更衣室でやらかした件、知ってるな。生駒葵と波瀬うるうを連れて、エイレーンに直接注意しに行け。ただし、バスクやジャミトフには一切知らせるな。彼女たちの動揺を泳がせておく方が、俺たちの動きに有利だ」

沙羅は一瞬驚いたが、すぐに頷いた。

「了解しました、パプテマス様。すぐ動きます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日、エイレーン自宅(東京近郊)

 

 

夕暮れ時、エイレーンが自宅でくつろいでいたところ、ドアベルが鳴った。

ドアを開けると、そこには水谷沙羅、生駒葵、波瀬うるうが立っていた。

沙羅は冷静だが鋭い視線でエイレーンを見据え、切り出した。

「エイレーンさん、GOOMSTUDIOの更衣室でのあなたの行動、私たちは知っています。スタッフの下着を盗むなんて、何を考えていたんですか?」

エイレーンは一瞬たじろぎ、誤魔化すように笑った。

「え、な、何のこと? 私、知りませんよ?」

だが、葵が静かに、しかし強い口調で続けた。

「エイレーンさん、誤魔化さないでください。エマさんやライラさん、うるうのロッカーを物色したんですよね? 私たちの信頼を裏切るような行為、許せません」

波瀬うるうは震える声で、目に涙を浮かべながら訴えた。

「エイレーンさん…なんで…なんでそんなことしたの? アカリちゃんを救う大事な時に…! 私、怖かったんだから…!」

うるうの涙と震える声に、エイレーンは言葉を失い、顔を青ざめた。

沙羅が冷たく追い打ちをかけた。

「姜小花さんが監視カメラの映像を消したからバスクにはバレてませんが、こんな行動が続けば、#SaveAkariムーブメント全体が危険に晒されます。分かってますか?」

エイレーンはついに観念し、肩を落とした。

「…ごめん、みんな。私、軽い気持ちで…ただ、ちょっとしたイタズラのつもりだったの。反省してる。本当にごめんなさい…」

彼女は涙を浮かべ、深く頭を下げた。

葵とうるうは複雑な表情で互いに顔を見合わせ、沙羅が静かに締めくくった。

「二度と繰り返さないでください、エイレーンさん。私たちは#SaveAkariのために動いてるんです。あなたも、その一員ですよね?」

エイレーンは小さく頷き、声を震わせながら答えた。

「うん…分かった。もう、絶対にしない。アカリちゃんのために、ちゃんとやるよ…」

沙羅、葵、うるうは黙ってエイレーンの自宅を後にした。

だが、エイレーンの軽率な行動は、NEOENTUM内部に小さな波紋を残し、信頼の亀裂を完全に修復するには時間がかかることを示唆していた。

 

果たして、この戦いはどう決着するのか?それはまだ分からない。

 

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