ENTUM23   作:マブラマ

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第223話 SEDの亡霊

2020年12月17日、aNCHOR本社

 

東京の雑踏を抜け、篁唯依は静かにaNCHOR本社へと足を踏み入れた。

彼女の鋭い目は、GOOMSTUDIOの実態とミライアカリの現状を暴く手がかりを求め、細心の注意を払って周囲を観察していた。

#SaveAkariムーブメントの核心を担う調査員として、唯依はこれまで極秘裏に情報を集め続けてきた。

今日、aNCHORのスタッフである柏木晴子と築地多恵から直接聞き込みを行い、決定的な情報を入手する機会だった。

aNCHORの応接室は、シンプルだが落ち着いた雰囲気に包まれていた。

唯依を迎え入れた晴子と多恵は、VTuber業界の裏事情に詳しく、GOOMSTUDIOとの繋がりも薄くなかった。

唯依は穏やかな笑みを浮かべつつ、鋭い質問を投げかけた。

「晴子さん、多恵さん、GOOMSTUDIOの最近の動向について、何か知ってる? 特に、ミライアカリの状況や、バスク郷里、ジャミトフ西村、シロッコの動きについて…」

晴子は少し緊張した表情で、声を抑えて答えた。

「唯依さん…GOOMSTUDIOの内部は、今、かなり混乱してるよ。バスクとジャミトフがアカリちゃんを搾取し続けてるけど、ヤザン大塚が完全に寝返ったって噂だよ。シロッコの自由な姿勢も、バスクの支配を揺さぶってるみたい」

多恵が小声で補足した。

「それに、幸福の科学とのコラボ企画やお台場のクリスマスライブ…ファンの間では賛否両論だよ。アカリちゃんの配信での笑顔は健在だけど、裏ではバスクのプレッシャーで限界に近いって…。あと、ZIZAIのハインツ・アクスマンが何か企んでるらしいけど、詳細は誰も掴めてないよ」

唯依はメモを取りながら、冷静に頷いた。

「なるほど…ヤザンの動きとシロッコの真意は鍵になりそうだな。アクスマンの介入も気になる…。他に、バスクの次の動きや、NEOENTUMへの対策について何か聞いてる?」

晴子は一瞬躊躇し、声をさらに潜めて言った。

「バスクがクリスマスライブで、アカリちゃんの『ココロヤミ』設定をさらに押し出して、ファンの心を縛る企画を準備してるって話。あと、NEOENTUMのハッキングがバンナムのサーバーに深く入り込んでるって、バスクがかなり焦ってるみたい」

唯依の目が一瞬キラリと輝いた。

「(これだ…! この情報があれば、クリスマスライブでの作戦がさらに確実になる)」 彼女は晴子と多恵に丁寧に礼を述べ、すぐに暗号化された通信ツールで音霊魂子に情報を送信した。

「魂子、aNCHORから重要情報入手。ヤザンの寝返り確定、バスクのクリスマスライブでの『ココロヤミ』企画、NEOENTUMハッキングへの焦り。詳細データを送る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年12月18日、ドイツ・ベルリン、左翼党本部

 

ベルリンの冷たい冬の空気が左翼党本部を包む中、エイレーンは緊張感を帯びた表情でグレーテル・イエッケルン議員と対面していた。会議室は簡素だが、ドイツのVTuberコミュニティとオタク文化に精通したグレーテルの存在感で重厚な雰囲気に満ちていた。#SaveAkariムーブメントの国際的な広がりを把握するキーパーソンとして、彼女はNEOENTUMのエイレーンにとって重要な協力者だった。エイレーンはNEOENTUMの名を背負い、真剣な口調で切り出した。

「イエッケルン議員、ミライアカリが…アカリさんがGOOMSTUDIOに所属した直後、バンナムから他のVTuberとの接近禁止令が出されたんです。バスク郷里がアカリの給料の8割を搾取し、幸福の科学とのコラボのような無謀な企画で彼女を縛っていて……。ドイツのVTuberコミュニティでは、どんな反応が起きてますか?」

グレーテルは冷静に応じ、資料を手にしながら答えた。

「ドイツのVTuberファンも、#SaveAkariのムーブメントに呼応してる。特に若年層の間で、バスクの搾取や幸福の科学コラボへの反発が強い。アカリの笑顔を愛するファンたちが、SNSで抗議を広げ、ベルリンやハンブルクで小さな応援イベントも企画されてるよ。NEOENTUMの動きや中国公安部の姜小花と劉翠蘭のハッキングも、ドイツのオタクコミュニティで話題になってる」

エイレーンはさらに踏み込み、鋭く尋ねた。

「ヤザン大塚の寝返りやシロッコの自由な姿勢、ZIZAIのハインツ・アクスマンの介入については、何か情報は?」

グレーテルは一瞬目を細め、慎重に答えた。

「…シロッコの動向は、ドイツの業界関係者でも謎だ。彼がバスクを牽制してるのは確かだが、真意は不明。アクスマンのZIZAIは、バンナムとの版権争いで分裂気味だ。ヤザンの寝返りは、GOOMSTUDIOの内部崩壊を加速させてる。だが、エイレーン、貴様の更衣室での行動…あれは軽率すぎた。NEOENTUMの信頼を傷つけるつもりか?」

エイレーンはバツが悪そうに目を逸らし、頬を掻きながら弁解した。

「うっ…それ、沙羅ちゃんにガッツリ怒られたよ。もうしない、約束! でも、アカリさんを救うため、ドイツのファンにもっと協力を呼びかけたい!」

グレーテルは鋭く釘を刺した。

「いいか、エイレーン。エトラにはまだこのことを知らせるな。彼女の明るさが、VTuber界隈の希望を保ってる。#SaveAkariの緊迫した状況を知れば、彼女の配信に影響が出る。アカリを失った今、エトラは最後の希望だ。時期が来るまで、彼女を巻き込むな」

エイレーンは目を伏せ、複雑な表情で呟いた。

「…分かりました。エトラさんは…確かに、みんなを笑顔にしてくれる存在ですよね。アカリさんを失った私にとって、エトラさんの無垢な笑顔は…本当に最後の希望です」

彼女の声には、悔恨と決意が混じっていた。グレーテルは静かに頷き、話を締めくくった。

「なら、行動で示せ。クリスマスライブでのNEOENTUMの作戦を成功させるため、ドイツのファンを動員しろ。アカリの自由を取り戻すんだ」

 

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