2020年12月21日、オンライン(テレビ電話)
シリウスシュガー研究所の月ヶ瀬ちゆるは、暗号化されたテレビ電話を通じて、韓国・坡州市に潜伏中の鳴神裁に緊急の警告メッセージを送った。彼女の声には、普段の明るさとは裏腹に、緊迫感と焦りが滲んでいた。
画面越しに、ちゆるは真剣な表情で切り出した。
「鳴神君、『黒龍』ってチャイニーズマフィアがあたしの命狙ってたこと、覚えてるよね? その黒龍が、君にターゲット変えたらしいよ!」
画面の向こうで、鳴神は一瞬目を丸くし、すぐに険しい表情に変わった。
《ちゆるさん…マジかよ。黒龍が俺を? なんで急に…#SaveAkariと関係あるのか?》
ちゆるは眉を寄せ、声を潜めて続けた。
「多分、関係あるよ。姜小花さんのハッキングや君の録音データが、GOOMSTUDIOやバンナムのサーバーに深く入り込みすぎたんだ。黒龍はバスクやジャミトフと裏で繋がってるって噂もある。クリスマスライブ前に、#SaveAkariの動きを潰そうとしてるんじゃないかな」
鳴神は拳を握り、苛立ちを抑えながら答えた。
《くそっ…黒龍まで動いてきたか。ちゆるさん、情報ありがとう。夏実さんやおめがシスターズにすぐ伝える。クリスマスライブの作戦、絶対に守るぜ!》
ちゆるは小さく頷き、警告を締めくくった。
「鳴神君、気をつけて。黒龍はマジでヤバいよ。NEOENTUMのベアトリクスさんにも伝えて、警戒レベル上げておいて。#SaveAkari、絶対成功させよう!」
通話を終えた鳴神は、すぐに暗号化メッセージで夏実萌恵とおめがシスターズ(リオとレイ)に連絡。
「夏実さん、リオ、レイ、緊急事態だ。黒龍が俺を狙ってるらしい。ちゆるさんからの情報だ。クリスマスライブの警備と作戦、急いで再確認してくれ!」
2020年12月22日、東京・GOOMSTUDIO
GOOMSTUDIOの薄暗いサーバールームに、ベノちゃんの軽快な足音が響いていた。
フードを被り、胸の谷間を強調した露出度の高いトップスにパンツとニーソという大胆な姿で、彼女は無謀な計画を進めていた。
エイレーンの妹であるベノちゃんは、バンナムからのミライアカリへの接近禁止令を無視し、自身のYouTubeチャンネルで過激なコンテンツを配信する癖があった。
今回の標的は、アカリのFGO(Fate/Grand Order)データを削除するという、視聴者ウケを狙った危険な「ネタ」だった。
端末にアクセスしようとした瞬間、萌実が息を切らして駆け込んできた。
「ベノちゃん! 何やってるの!? アカリちゃんのFGOデータを消すなんて、ふざけないで!」
ベノちゃんは悪びれず、ニヤリと笑って答えた。
「えー、萌実ちゃん、落ち着いてよ! ただのネタ動画だよ! アカリちゃんのデータ消したら、バズるかなって!」
萌実は顔を真っ赤にして声を荒げた。
「バズる!? アカリちゃんはバスクに搾取されて、必死に耐えてるのに! こんな時に、NEOENTUMの信頼をぶち壊すような真似、絶対許さない! エイレーンも軽率だったけど、妹までこんなことするなんて!」
ベノちゃんは気まずそうに目を逸らし、肩をすくめた。
「…うっ、ごめん、やりすぎたかも。もうしないよ、萌実ちゃん、ほんとごめん!」
萌実は深呼吸して冷静さを取り戻し、鋭く警告した。
「ベノちゃん、二度とこんなことしないで。アカリちゃんを救うために、みんな必死なんだから。エトラには…まだ何も伝えない。彼女の笑顔が、#SaveAkariの希望を支えてるんだ」
ベノちゃんは小さく頷き、しょんぼりした様子でサーバールームを後にした。
萌実はその背中を見送りながら、グレーテル・イエッケルンの「エトラを巻き込むな」という忠告を思い出し、複雑な表情を浮かべた。
「(エトラの無垢な笑顔は、確かに希望だ…でも、アカリちゃんの危機、いつまで隠せるんだろう…)」
同日、韓国・富川市 野人時代キャンピング場
富川市の野人時代キャンピング場は、1930年代から1970年代のソウルの街並みを再現したレトロなテーマパーク「富川ファンタスティックスタジオ」の跡地に広がっていた。
SBSのテレビドラマ『野人時代』のオープンセットとして2001年に建設され、『ブラザーフッド』『力道山』『ゼロの焦点』『ソウル1945』『ロードナンバーワン』などの撮影にも使われたこの施設は、富川市の映像文化産業誘致政策により40億ウォンの投資で建てられた。
年間10万~20万人の有料入場者を集めた人気スポットだったが、木造仮設の老朽化により2011年に閉鎖。
現在は市民農園とキャンピング場として転用されていた。
おめがシスターズのリオとレイは、『野人時代』というドラマを知らなかったが、レトロな雰囲気の中で情報収集を進めるため、このキャンピング場を訪れていた。
キャンプファイヤーを囲みながら、リオはノートPCで夏実萌恵に暗号化メッセージを送った。
「夏実さん、富川に着いたよ。野人時代キャンピング場で、地元のVTuberファンや業界関係者に聞き込みしてる。#SaveAkariの韓国での支持、めっちゃ強い! シロッコの警告も、クリスマスライブの作戦に活かすよ」
レイが興奮気味に補足した。
「リオ、地元のファンが幸福の科学コラボにめっちゃ怒ってるって! バスクのやり方、韓国でも問題になってるよ。NEOENTUMの動き、もっと広めたい!」
夏実萌恵は即座に暗号化メッセージで応答した。
「リオ、レイ、よくやった。富川での情報は、韓国のファンコミュニティをさらに動かす鍵になる。シロッコの警告は、バスクの警備強化を意味する。姜小花や劉翠蘭と連携して、クリスマスライブでのハッキングを完璧にしろ」
リオとレイは互いにハイタッチし、キャンプファイヤーの炎を背景に決意を新たにした。
「アカリちゃんのために、姉妹パワー全開でいくよ!」
2020年12月23日、東京・aNCHOR本社
aNCHOR本社の会議室は、静かな緊張感と微かな期待感が交錯する空間だった。
柏木晴子は、ミライアカリの危機とGOOMSTUDIOの実態をエトラに伝えるべきか、内心で葛藤していた。
エトラの無垢な明るさがVTuber界隈の希望を支えている一方、アカリの救出に彼女の力を借りられる可能性を考えていた。
しかし、エイレーンとの会話は、予想外の方向へと進んだ。
エイレーンは目を輝かせ、晴子に大胆な提案を投げかけた。
「晴子さん、エトラさんにアカリさんの現状を伝えるなら、彼女にマブラヴアニメの出演を提案したい! エトラさんの明るさなら、絶対ハマるって!」
晴子は思わず笑いながら、即座に首を振った。
「あはは、気持ちは嬉しいけど、マブラヴアニメの出演は厳しいよ? そう簡単に受け入れられると思ってるの? エトラは確かにVTuber界隈の希望の象徴だよ。それに…もう決まっちゃったんだよ。ヰ情緒情緒は知ってるよね? KAMITSUBAKI STUDIO所属のV.W.Pのメンバーの1人」
エイレーンは目をキラキラさせ、興奮気味に応じた。
「情緒ちゃんですか? 知ってますよ! いつかエトラさんや萌実さんの配信でコラボしたいと思っていますよ。でも…」
晴子は首を傾げ、促した。
「でも?」
エイレーンは少し遠い目をして呟いた。
「情緒ちゃんを見てると、何だか遠く遙かに上を昇っていく姿が見えてて…私の企画なんてとてもじゃないですが受け入れられないというか」
晴子は優しく微笑み、エイレーンを励ました。
「エイレーン、いつか実現できるよ。情緒ちゃんもエトラも、VTuberとして輝いてる。君の情熱があれば、きっと何かすごいことが生まれるさ。でも、今はアカリの救出に集中しよう。エトラには…まだ伝えない方がいいかもね。イエッケルン議員の忠告もあるし」
エイレーンは複雑な表情で頷き、決意を新たにした。
「うん…分かった。エトラさんの笑顔、守りたい。アカリちゃんを救うため、もっと頑張るよ!」
2020年12月24日、東京・クリスマスの喧騒
東京の街はクリスマスの華やかなイルミネーションに彩られていたが、VTuber界隈はミライアカリの救出を巡るカオスな展開に突入していた。#SaveAkariムーブメントは、クリスマスライブを目前に控え、最高潮の緊張感に包まれていた。あおぎり高校の4人――音霊魂子、水菜月夏希、石狩あかり、大代真白――は、NEOENTUMの中心メンバーとして、姜小花のハッキングデータや鳴神裁の録音情報を活用し、ムーブメントの信頼を守るため奔走していた。他のVTuberたち――湊あくあ、郡道美玲、ヨメミ、萌実、おめがシスターズ――も、それぞれの役割を果たし、ファンの結束を高めていた。が、エイレーンは、#SaveAkariの危機感に押し潰されそうになりながら、衝動を抑えきれなかった。
彼女は再びGOOMSTUDIOの更衣室に忍び込み、ミライアカリのパンツを盗むという軽率な行動に出ていた。
今回は不思議なことに、監視カメラの電源が事前に切られており、彼女の行動は誰にもバレていなかった。
エイレーンはバッグにパンツを詰め込みながら、独り言を呟いた。
「うっ…アカリさんのパンツ…これでちょっとだけストレス発散…! ごめん、すぐ返すから!」
しかし、彼女の行動はパプテマス・シロッコの鋭い洞察力を逃れていなかった。
シロッコは、GOOMSTUDIOの内部監視網を通じてエイレーンの動きを察知。
バスク郷里やジャミトフ西村には報告せず、極秘裏に萌実に暗号化されたメッセージを送った。
メッセージ(シロッコから萌実へ)
「萌実、エイレーンがまたやらかした。更衣室でアカリのパンツを盗んだ。監視カメラは切られていたが、私の目は誤魔化せない。彼女の軽率な行動が#SaveAkariを危険に晒す。すぐに止めろ。シロッコ」
同日、東京某所・NEOENTUM臨時会議
萌実はシロッコからのメッセージを受け取り、愕然とした。
オンラインで緊急会議を開き、音霊魂子、水菜月夏希、石狩あかり、大代真白、湊あくあと顔を合わせた。
萌実は苛立ちを抑えながら報告した。
「みんな、エイレーンがまた…! アカリちゃんのパンツ盗んだって! シロッコからの情報よ。監視カメラは切られてたけど、シロッコに見つかった。こんな時に、NEOENTUMの信頼を壊すようなこと…!」
魂子は冷静に答えた。
「萌実、落ち着いて。エイレーンの行動は問題だけど、シロッコがバスクに報告してないのはチャンスだよ。姜小花にカメラのログを再チェックさせて、エイレーンを呼び出してガッツリ話す必要がある」
夏希が眉をひそめ、呟いた。
「エイレーンさん、なんでこんな大事な時に…。でも、アカリちゃんのクリスマスライブ目前だよ。ファンの#SaveAkariの勢い、絶対止めたくない!」
あかりが力強く補足した。
「そうだよ! 韓国のファンも、ドイツのファンも、#SaveAkariでめっちゃ盛り上がってる。エイレーンのミスでムーブメントが台無しになるなんて、絶対嫌!」
真白は少し不安げに言った。
「でも…エトラさんにはまだ伝えなくていいよね? 彼女の明るい配信が、ファンの希望になってるんだから…」
湊あくあが元気に応じた。
「うん、エトラちゃんはまだ知らなくていいよ! アカリちゃんの笑顔を取り戻すため、私たちでなんとかする! エイレーンには魂子ちゃんがビシッと言ってやって!」
会議の最後、萌実は決意を固めた。
「分かった。エイレーンには私が直接話す。シロッコの協力も利用して、クリスマスライブでバスクの支配をぶっ壊す! #SaveAkari、絶対成功させるよ!」
2020年12月25日、お台場・クリスマスライブ会場
お台場の特設会場は、クリスマスの輝くイルミネーションと華やかな装飾に彩られ、ミライアカリのクリスマスライブが盛大に開幕していた。
巨大なスクリーンに映し出されたアカリの笑顔が、会場のファンたちの歓声を一層高めていた。
キラキラしたクリスマスコスチュームに身を包んだアカリは、ステージ上で歌い、踊り、輝きを放っていた。
「みんな、ハロー! ミライアカリだよ♪ クリスマス、みんなと一緒に楽しむよ!」
ライブ配信中、劉翠蘭からの暗号化された音声メッセージがアカリのイヤホンに流れた。
「アカリさん、バスクの策略に負けないで。ヤザン、シロッコ、仲間たちがここにいますよ。#SaveAkari」
アカリの蒼い瞳が一瞬輝き、微かな笑みを浮かべた。
「みんな…ありがとう…!」
彼女は心の中で決意を固め、ファンのために全力を尽くした。コメント欄は「アカリちゃん、クリスマス最高!」「#SaveAkari」「笑顔がキラキラ!」と、ファンの熱い応援で埋め尽くされていた。
アカリはコメントを見ながら、声を張り上げた。
「みんなの応援、ちゃんと届いてるよ! アカリ、絶対に負けない!」
バックステージでは、ヤザン大塚がパプテマス・シロッコと密かに話し合っていた。
ヤザンは拳を握り、決意を込めて言った。
「シロッコさん、バスクの幸福の科学コラボ、絶対阻止する。俺、アカリを救うために動くぜ!」
シロッコは穏やかに微笑み、頷いた。
「ヤザン、君の決断は正しい。バスクの支配は時代錯誤だ。アカリの未来を、君たちと一緒に守ろう」
シロッコの言葉には、自身の真意を隠しつつも、バスクへの反発が明確に滲んでいた。
同日、韓国・富川市(朝鮮日報記者との接触)
富川市の野人時代キャンピング場での情報収集を終えたおめがシスターズのリオとレイは、夏実萌恵の指示を受け、#SaveAkariムーブメントを国際的に広めるため、韓国の大手メディアに協力を仰ぐべく動いていた。
富川市内のカフェで、朝鮮日報の記者、キム・ジヨンと対面した。
リオはノートPCを開き、資料を見せながら切り出した。
「キム記者、ミライアカリがGOOMSTUDIOで搾取されてる実態、知ってほしい。バスク郷里が給料の8割を奪い、幸福の科学とのコラボでアカリを縛ってる。韓国のVTuberファンも#SaveAkariで動いてるけど、メディアの力でさらに広めたい!」
レイが熱く補足した。
「韓国のファンは、バスクのやり方にめっちゃ怒ってる! クリスマスライブでアカリちゃんを救うため、記事で応援してほしい!」
キム記者は真剣に頷き、答えた。
「#SaveAkariの動き、韓国のオタクコミュニティで話題になってるよ。バスクの搾取や幸福の科学コラボは、韓国でも問題視されてる。NEOENTUMの動きや中国公安部の姜小花と劉翠蘭によるハッキングも噂になってる。記事化は可能だけど、証拠が必要だ。鳴神の録音データや篁唯依の調査資料、提供できるか?」
リオは即座に応じた。
「夏実さんに確認して、暗号化でデータ送るよ! キム記者、韓国のファンをもっと動かして、アカリちゃんを救おう!」
GOOMSTUDIOでは、ジャミトフ西村とバスク郷里がASOBINOTES ONLINE FEST 2nd、幸福の科学とのコラボ、クリスマスライブを強行し、ミライアカリを搾取し続けていた。
しかし、ヤザン大塚の裏切り、ジャマイカン山田の動揺、シロッコの不透明な動き、ZIZAIのハインツ・アクスマンの介入、黒龍のターゲット変更が、内部の混乱を加速させていた。
NEOENTUMのベアトリクス・ブレーメ、姜小花、篁唯依、音霊魂子、湊あくあ、郡道美玲、ヨメミ、萌実、おめがシスターズらは、姜小花のハッキングデータと鳴神裁の録音情報を基に、クリスマスライブでの決定的な一撃を準備していた。
韓国・富川市のおめがシスターズは、朝鮮日報を通じて#SaveAkariの国際的拡散を加速させ、坡州市の鳴神は黒龍の脅威に警戒しながらSNSでの拡散を続けていた。
シフィール・エシラーのチャンネル乗っ取り事件では、郡道美玲がディスコルディア・ロースターのデジタル足跡を追跡中だったが、黒龍の介入が新たな危機を招いていた。
エトラは依然としてアカリの危機に気づかず、呑気にクルマASMR配信を続けていたが、彼女の明るさがファンの団結を間接的に高めていた。
エイレーンの再びの軽率な行動は、シロッコと萌実の迅速な対応で防がれたものの、NEOENTUM内部の信頼に微妙な影を残していた。
クリスマスライブのステージで輝くアカリの笑顔は、#SaveAkariムーブメントの希望の象徴だった。VTuber業界の絆と、韓国、ドイツを含む国際的なファンの力が、革命の火を燃え上がらせていた。
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