ENTUM23   作:マブラマ

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第237話 活路

2021年3月3日、東京・Brave group傘下クリエイトリング あおぎり高校スタジオ

 

 

あおぎり高校のスタジオは、カラフルな装飾とVTuberたちの活気で彩られていたが、ジャミトフ西村とバスク郷里の訪問からわずか14日後のこの日、さらなる波乱が訪れた。

スタジオの中央に、音霊魂子、水菜月夏希、石狩あかり、大代真白の4人が立っていた。

そこへ、GOOMSTUDIOのパプテマス・シロッコと水谷沙羅が現れ、遅れてZIZAIのハインツ・アクスマンが姿を見せた。

スタジオの空気は一瞬にして緊張感に包まれた。

シロッコは穏やかな笑みを浮かべ、軽く手を挙げて言った。

「やあ、あおぎり高校の諸君、突然押し入って申し訳ない」

魂子は警戒の目を向け、鋭く尋ねた。

「ジャミトフとバスクとは異なるけど、誰なの?」

シロッコは落ち着いた口調で答えた。

「私はGOOMSTUDIOのパプテマス・シロッコだ。君たちの活躍は拝見しているよ」

夏希はシロッコの雰囲気に一瞬安心しつつ、慎重に尋ねた。

「(この人悪い人じゃなさそう…)何しに来たのですか?」

沙羅が一歩前に出て、丁寧に言った。

「ジャミトフ様とバスクさんのご無礼を謝罪しに参りました」

シロッコは微笑みを崩さず、続けた。

「ご挨拶だけしに来た。何も疚しい事はないさ」

真白は静かに、だがはっきりと釘を刺した。

「あのー、折り入って何ですが…私たちの邪魔するのだけはやめてください。ハッキリ言って迷惑なので」

沙羅は即座に応じ、安心させるように言った。

「ご安心ください。パプテマス様は貴方方の邪魔に入るようなことは一切致しません」

シロッコは一瞬目を細め、意味深に語った。

「君たちにはまだ理解できないが、今後、世界を導くのは女性だと考えている。私は傍観者で立会人の一人だよ」

魂子は眉をひそめ、疑念を隠さず言った。

「…本当に謝罪しに来ただけですよね?」

シロッコは軽く頷き、答えた。

「もちろんだ」

魂子は内心で警戒しつつ、言葉を選んだ。

「(胡散臭い……信用して良いのかな)誠意は伝わったので、今日の所はお引き取りを…」

その時、スタジオのドアが勢いよく開き、ハインツ・アクスマンが現れた。

彼は軽い笑みを浮かべ、言った。

「遅れて申し訳ない。少し道が混んでてね」

シロッコは一瞬表情を硬くし、冷ややかに応じた。

「…また君かね? 版権云々の話は却下だぞ」

アクスマンは手を振って笑い、話を進めた。

「いや、そんなのはどうでもいいのだ。シロッコ君――やあ、あおぎり高校の諸君、私はZIZAI幹部のハインツ・アクスマンだ。君たちに朗報を持ってきた」

魂子はうんざりした表情で尋ねた。

「(また面倒くさい奴が来た…)あの、朗報って何ですか?」

真白は即座に牽制した。

「セールスはお断りしていますので」

アクスマンは軽く笑い、自信満々に言った。

「セールス? 君は何か勘違いしてるようだね。私の目的は、水菜月夏希をスカウトしに来ただけだ。――所謂引き抜きだ」

魂子は驚き、夏希に目を向けた。

「夏希? あおぎりに離れないよね?」

夏希は即座に声を張り上げ、断固として答えた。

「当たり前じゃない! 夏希はたまこと一緒にいたいのだから!」

あかりは軽く笑い、アクスマンに言った。

「アクスマンさん、撃沈されましたよ」

真白は静かに、だが鋭く付け加えた。

「ここに来たのは無駄骨だね」

アクスマンは悔しそうに歯を食いしばった。

「ぐぬぬ…!」

魂子はアクスマンを睨み、強い口調で言った。

「よくも夏希を引き抜こうとしたわね。アクスマン――もうクリエイトリングには来ないで。ここはあなたの交渉場所じゃないよ」

アクスマンはさらに言葉を失い、呻いた。

「ぐぬぬ…」

シロッコは軽く笑い、アクスマンに言った。

「出禁になったそうだな…心中お察しするよ」

沙羅も冷ややかに付け加えた。

「ご愁傷様です」

アクスマンは顔を赤らめ、言葉を絞り出した。

「お前の思惑通りが続くと思うなら大きな間違いだ…シロッコ」

スタジオの空気は、あおぎり高校の4人の団結によって、シロッコとアクスマンの思惑を完全に跳ね返していた。

魂子は最後に全員を見渡し、決意を込めて言った。

「あおぎりは私たちの場所。アカリちゃんを救うため、#SaveAkariをこれからも広げるよ。――もう来ないでね。ハインツ・アクスマンさん」

シロッコは微笑みを崩さず、軽く頭を下げた。

「ふむ、君たちの絆、素晴らしい。では、失礼するよ」

沙羅と共にスタジオを後にした。

アクスマンは悔しさを滲ませ、魂子に一瞥を投げて立ち去った。

4人は彼らの背中を見送り、互いに視線を交わして頷き合った。

夏希は魂子の腕にしがみつき、笑顔で言った。

「たまこ、夏希、絶対離れないよ!」

魂子は笑い、夏希の頭を撫でた。

「うん、夏希、ずっと一緒だよ! アカリちゃんも、絶対救うから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年3月4日、東京・Brave group傘下クリエイトリング あおぎり高校スタジオ

 

あおぎり高校のスタジオは、昨日のパプテマス・シロッコとハインツ・アクスマンの訪問による緊張感がまだ残る中、再び波乱の舞台となった。

この日、GOOMSTUDIOの社員である生駒葵と波瀬うるうが、クリエイトリング運営元のあおぎり高校スタジオを訪れた。

アクスマンの出禁とシロッコの不透明な訪問の報を聞き、二人とも罪悪感と責任を感じていた。

スタジオの中央には、音霊魂子、水菜月夏希、石狩あかり、大代真白の4人が立ち、葵とうるうを迎えた。

葵は深く頭を下げ、声を震わせながら言った。

「あおぎり高校の皆さん、昨日は…アクスマンとシロッコが迷惑をかけて、本当にごめんなさい。私たちGOOMSTUDIOの人間として、責任を感じてます」

うるうも目を潤ませ、続けた。

「私たち、GOOMSTUDIOの内部告発で#SaveAkariを応援してるつもりだったけど…アクスマンのスカウトとか、シロッコの変な話とか、巻き込んでしまって…本当に申し訳ないです!」

魂子は二人をじっと見つめ、柔らかい笑みを浮かべた。

「葵さん、うるうさん、頭上げて。あなたたちが味方だって、ちゃんと分かってるよ。あおぎりは、#SaveAkariの心を共有する仲間を信じてる」

夏希が明るく付け加えた。

「そーそー! 葵ちゃん、うるうちゃん、謝らなくていいよ! アクスマンなんて、夏希をスカウトしようとして撃沈しただけだし! たまこと一緒にあおぎりで戦うのだ!」

あかりは軽い笑みを浮かべ、からかうように言った。

「アクスマン、ぐぬぬって顔して帰ったの、めっちゃ面白かったよね。葵さんたち、気にしないで!」

真白は静かに、だが温かく言った。

「葵さん、うるうさん、あなたたちの勇気、ちゃんと届いてるよ。アカリちゃんを救うため、一緒に戦おう」

葵は涙を拭い、力強く頷いた。

「ありがとう…魂子さん、皆さん。私たち、GOOMSTUDIOの内部からもっと情報集めて、#SaveAkariを支えるよ。バスクとジャミトフの動き、絶対暴く!」

うるうも決意を込めて言った。「うん! ディスコルディアの収監でヨメミちゃんの手がかりも出てきたし、アクスマンのH.LIVEも止めます! あおぎり高校の絆、めっちゃ心強いです!」

魂子は4人と葵、うるうの手を取り、円陣を組んだ。

「よし! あおぎりは、葵ちゃん、うるうちゃんも含めて、#SaveAkariの最前線だ! アカリちゃんの笑顔、ヨメミちゃんの帰還、シフィールさんのチャンネル、全部取り戻すよ!」

スタジオは、6人の固い絆で再び活気を取り戻した。

魂子は姜小花に暗号化メッセージを送った。

メッセージ(魂子から姜小花へ)

「小花さん、葵さんとうるうさんがあおぎりスタジオに来て、アクスマンとシロッコの件で謝罪してくれた! 二人とも完全に味方だよ。GOOMSTUDIOの内部情報、もっと引き出して、#SaveAkari加速させる! ヨメミちゃんの追跡データもお願い!」

姜小花の返信は即座だった。

「魂子さん、いい進展です! 生駒葵と波瀬うるうの情報、解析に組み込みます。美玲さんがディスコルディアの通信ログからヨメミの東アジア移動を追跡しています。H.LIVEのサーバーもハック進行中。#SaveAkari、絶対勝つ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年3月5日、東京・バンダイナムコホールディングス本社 映像制作部

 

生駒葵は、GOOMSTUDIOの重苦しい空気から一時的に離れ、バンダイナムコホールディングス本社の映像制作部を訪れていた。

彼女の目的は、親友であり映像制作部の“参謀”として知られる姫川泉花に協力を求めることだった。

葵は、#SaveAkariムーブメントを加速させるため、GOOMSTUDIOの内部情報をさらに共有し、ミライアカリのパワハラ問題やヨメミの失踪の真相を暴くための支援を必要としていた。

映像制作部のオフィスは、モニターと編集機器が並ぶ機能的な空間だった。

姫川泉花は、やや明るめのピンク色でミディアム〜セミロング程度の長さに後ろで左右に分けた低めのツインテール。結び目は黒いリボンで留めて前髪は目にかかるくらいの長さで、軽く流れるようなスタイルの全体的に毛先がややふんわりとした柔らかいシルエットの落ち着いた雰囲気の女性で、机に向かいながらも鋭い視線で葵を迎えた。

学生時代からの親友である二人は、互いに深い信頼を寄せていた。

泉花は生まれつき知能が高く、効率的な立ち回りと献身的な姿勢で映像制作部で慕われる存在だったが、表舞台には出ず、裏方としてチームを支える“参謀”として知られていた。

何か秘密を抱えているような、どこかミステリアスな空気を漂わせていた。

葵は緊張しながらも、静かに切り出した。

「泉花、急に来てごめん…。でも、#SaveAkariのこと、GOOMSTUDIOの実態を話したい。バスクとジャミトフのパワハラ、ヨメミの失踪、シフィールさんのチャンネル乗っ取り…全部、助けてほしい」

泉花はモニターから目を離し、葵をじっと見つめた。

「葵、覚悟して来たんだね。GOOMSTUDIOの闇、姜小花さんから一部聞いてるよ。でも、具体的な証拠は?」

葵はUSBメモリを取り出し、机に置いた。

「これ、内部の録音データとバスクの指示メール。『ココロヤミ』配信でアカリが追い詰められてる証拠もある。あおぎり高校の魂子さんたちとも連携してる。泉花の力なら、バンダイナムコのネットワークでこの情報を広められるよな?」

泉花はUSBを手に取り、軽く微笑んだ。

「ふふ、葵らしいね。効率的に動きたいのは分かるけど…GOOMSTUDIOとZIZAIのアクスマン、かなり厄介だよ。特にアクスマンのH.LIVE、裏で動いてる資金ルートが複雑すぎる」葵は目を潤ませ、訴えた。

「分かってる…でも、アカリの笑顔、ヨメミの帰還、絶対取り戻したい! 泉花、学生の頃みたいに、私を信じて協力して!」

泉花は一瞬目を閉じ、考え込むように黙った。

彼女の秘密――バンダイナムコ内部での独自の情報網や、過去に黒龍との接触があった噂――が頭をよぎったが、葵には明かさなかった。

「…分かったわ。葵の覚悟、ちゃんと受け止めるよ。このデータ、映像制作部で解析して、#SaveAkariの拡散に使えるコンテンツにする。姜小花さんや美玲さんとも連携するわ」

葵は安堵の笑みを浮かべた。

「ありがとう、泉花! やっぱり親友だよ!」

泉花は小さく笑い、意味深に付け加えた。

「ただ、葵、気をつけて。バンダイナムコも完全にクリーンじゃない。私の…秘密も、いつか話すかもしれないよ」

葵は一瞬驚いたが、信頼の眼差しで頷いた。

「うん、泉花が話してくれるまで待つよ。#SaveAkari、絶対成功させる!」

泉花は姜小花に暗号化メッセージを送った。

 

メッセージ(泉花から姜小花へ)

「小花さん、葵からGOOMSTUDIOの内部データ受け取った。バスクのパワハラとアクスマンのH.LIVE資金ルート、映像制作部で解析開始。#SaveAkariの拡散用コンテンツも準備するよ。美玲のヨメミ追跡データと連携お願い!」

姜小花の返信は迅速だった。

「姫川さん……了解しました。データ解析、すぐ共有します。美玲さんがディスコルディアの通信ログからヨメミさんの東アジアルート絞り込んでる。#SaveAkari、もっと加速です!」

葵と泉花の親友としての絆とバンダイナムコの協力は、#SaveAkariムーブメントに新たな戦略と情報網をもたらした。

ディスコルディアの収監、アクスマンのH.LIVE計画、ヨメミの失踪、シフィールのチャンネル乗っ取りの真相が迫る中、ヤザン・シロッコの暗躍とアカリのパワハラ問題が、GOOMSTUDIOの支配を揺さぶっていた。

VTuber業界の絆と国際的なファンの力が、革命の火を燃え上がらせていた。

 

 

 

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