ENTUM23   作:マブラマ

246 / 251
第246話 さよなら夏希

2021年4月10日、あおぎり高校

 

春の陽光があおぎり高校のスタジオを柔らかく照らす中、水菜月夏希は自らの夢を追い求める決意を固めていた。

美容系の世界へと進むため、彼女はVTuberとしての活動に終止符を打った。

卒業の発表はファンに衝撃を与えたが、夏希の笑顔と前向きな言葉が、彼女の新たな旅立ちを祝福する空気を生み出した。

「みんな、応援してくれてありがとう! 夏希、これからも自分の夢を追いかけるよ!」と配信で語った彼女の声は、力強くも温かかった。

卒業後も、夏希はあおぎり高校のメンバーと連絡を取り合い、絆を保っていた。

魂子やあかりの配信で彼女の名前が話題に上ったり、イラストが動画に登場したりと、ファンの心にその存在感は残り続けた。

特に、魂子の新衣装配信では、夏希からの心温まるお祝いメッセージが寄せられ、ファンを感動させた。

さらに、2023年のあおぎり高校5周年記念座談会では、特別ゲストとして通話で出演し、変わらぬ明るさで仲間との絆を見せつけた。

あおぎり高校の公式サイトには、今なお「卒業生」として夏希のプロフィールが掲載され、「VTuberを卒業後は別の道で頑張っている」と記されている。

夏希の卒業の報は、VTuber業界を駆け巡り、各事務所に波紋を広げた。特に、GOOMSTUDIOの管理室では、このニュースが新たな策略の火種となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日、GOOMSTUDIO 会議室

 

 

東京の中心にそびえるGOOMSTUDIO本社。その会議室は、春の光が差し込むにもかかわらず、冷たく張り詰めた空気に包まれていた。

テーブルの上には、ミライアカリの「アニメじゃない」歌ってみた動画の反響データと、新たな企画資料が並ぶ。

ジャミトフ西村とバスク郷里を中心に、パプテマス・シロッコ、水谷沙羅、レコア勝生、エマ・シーン、ヤザン大塚、ジェリド井上、カクリコン戸松が集結していた。

あおぎり高校の水菜月夏希の卒業は、#SaveAkariムーブメントに隙を生む好機だと、バスクはほくそ笑んだ。

「ククッ、夏希の卒業…あおぎりの結束にヒビが入ったな」と内心で呟き、不敵な笑みを浮かべた。

ジャミトフはモニターを指差し、穏やかな口調で切り出した。

「バスクよ。『新しい家、一緒に内見してくれない?』の動画は、無論、視聴したな?」

バスクは即座に応じ、自信満々に答えた。

「は――彼女が新居に引っ越す動画ですね。視聴済みです。ファンの反応も上々、ですが…我々の計画には影響ないかと。」

ジャミトフは満足げに頷き、言葉を続けた。

「よし。『アニメじゃない』の歌ってみたは好評だった。次の企画は…ガンダム曲をコンプリートする企画はどうだ?」

バスクは冷ややかな笑みを深め、提案した。

「次は『水の星へ愛をこめて』を歌わせれば如何でしょうか? アカリの声なら、ファンをさらに引き込みます。」

ジャミトフは一瞬考え、慎重に答えた。

「喉を壊さないよう気をつけねば…だが、悪くない。とりあえずそれで行こう。決定だ。」

バスクの笑みがさらに深まった。

「ククク、これでバンダイナムコの名曲でアカリを縛り、#SaveAkariの勢いを削ぐ。バンナムは安泰だな。」

ジャミトフは会議室を見渡し、全員に確認した。

「そうだ。彼女には…無理のない範囲でいい。ガンダム関連の曲を次々と歌わせる。異論はないな?」

会議室は一瞬静まり返った。

ジェリドとカクリコンは、アカリの負担を心配しつつ、企画が過激すぎないことにほっと胸を撫で下ろした。

エマはレコアと視線を交わし、バスクの焦りが新たな隙を生むと確信した。

ヤザンは静かに微笑み、内心で呟いた。

「アカリの歌声なら、どんな曲でもファンの心を掴む。バスク、お前の支配はもう長くねえぞ。」

シロッコは沙羅に小さく頷き、彼女の完全な離反が次の反撃の鍵となると再確認した。

沙羅はバスクへの報告を一切停止し、シロッコとレコアを通じてNEOENTUMに情報を流し続けていた。

バスクは会議を締めくくり、声を張り上げた。

「では、これにて今日の会議は終了だ。解散!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日、NEOENTUM 作戦会議

 

NEOENTUM本社では、姜小花、篁唯依、音霊魂子、月ヶ瀬ちゆる、エイレーンがオンライン会議を開き、夏希の卒業とGOOMSTUDIOの新企画への対応を話し合っていた。

夏希の卒業はあおぎり高校にとって大きな変化だったが、魂子は力強く言った。

「夏希の卒業、寂しいけど…彼女の夢を応援する! 夏希の想いも一緒に、アクスマンと黒龍を追い詰めるよ!」

姜小花は頷き、戦略をまとめた。

「魂子さん、夏希さんの卒業は確かに衝撃ですが、あおぎりの絆は揺るぎません。GOOMSTUDIOの『水の星へ愛をこめて』企画、偽スキャンダルの動きを警戒。」

月ヶ瀬ちゆるは冷静に分析を加えた。

「GOOMSTUDIOの新企画、ガンダム曲コンプはアカリちゃんの負担を増やす策略。ZIZAIサーバーのログで拡散準備中と判明。ダバオの船、アクスマンとミヒャエルのGPS追跡完了。次の配信で、#SaveAkariのファンアートとアカリの歌声で反撃するよ!遠距離でいくよ!」

エイレーンは力強く締めた。

「夏希ちゃんの卒業も、#SaveAkariの魂に火をつける!GOOMSTUDIO、終わらせますよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィリピン・ダバオ 港湾エリア

 

ダバオの港湾エリアでは、鳴神裁とユリア・バーンズが、黒龍の「牙」の船の出港を監視していた。

アクスマンとミヒャエル・ゾーネが乗船する可能性が高く、夜の港は緊迫感に満ちていた。鳴神はちゆるからのGPSデータを見ながら、ユリアに言った。

「ユリア、アカリの『アニメじゃない』と俺のチャンネル復活、#SaveAkariの勢いがすげえ。アクスマンを今夜ここで捕まえる!」

ユリアは冷静に応じた。

「裁、船の出港は数時間後。アクスマンの位置は確定。黒龍のダミー会社、資金ルートも暴ける。#SaveAkari、勝つよ!」

 

夏希の卒業は新たな試練だったが、#SaveAkariムーブメントは彼女の想いも乗せて、アクスマンの潜伏、黒龍の資金ルート、ヨメミの失踪、桐生ココのパワハラ疑惑、シフィールのチャンネル乗っ取りの真相を追い、GOOMSTUDIOの支配を揺さぶっていた。VTuber業界の絆と国際的なファンの力が、革命の火を燃え上がらせていた。

 

Fortgesetzt werden

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。