ENTUM23   作:マブラマ

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第271話 あおぎりの新人

2021年8月12日

株式会社Brave group傘下クリエイトリング あおぎり高校スタジオ

 

あおぎり高校に新たな風が吹いた。

デビューを果たしたのは、千代浦蝶美。

「握力40kgのアイドルVTuber!千代浦蝶美ですっ!!」

149cmの小柄な体ながら“握力ゴリラ”を名乗るインパクト。

誕生日は2月5日、永遠の22歳という設定。

アイドルらしい可憐さと、どこか真面目で清楚な雰囲気をあわせ持つ存在だった。

ファンネームは「蝶民」。

牛タンや日本酒を愛する一面、天然気味な“ちよる”発言、

そしてセンシティブ路線に頼らない歌枠中心の活動方針。

後に自作曲「夢追いの蝶」を発表し、地上波ラジオパーソナリティも経験。

着実に実力と信頼を積み上げていくタイプのアイドルだった。

 

2021年8月14日 ― 2日後の衝撃

 

続いてデビューしたのが、栗駒こまる。

「み、皆さん、初めまして…あおぎり高校1年の栗駒こまる。だゾ☆」

152cmの小柄な体で「まろん組」を結成。

デビュー当初はASMRを武器に急浮上。

攻めた企画で注目を集めつつ、ガイドラインとの戦いも経験。

「歩く18禁」を自称する破天荒さ。

大食い、コスプレ、バラエティ適性の高さ。

蝶美が“王道アイドル”なら、こまるは“攻めのエンターテイナー”。

対照的な二人が、同時期にあおぎりへ加わった。

 

8月下旬 ― LOW-NON-BARでの会合

 

場所はマーチエキュート神田万世橋内のLOW-NON-BAR。

そこには既に音霊魂子、石狩あかり、大代真白、山黒音玄の姿。

 

そして呼びかけ人――ヰ世界情緒。

ハーブモクテルを手に、蝶美が真剣な眼差しで語る。

「アカリちゃんの輝き、守りたいよ。私、歌で支えたい。」

こまるは腕を組み、少しニヤリと笑う。

「私は私のやり方でいく。笑わせて、盛り上げて、味方だって分からせる。」

魂子がまとめる。

「王道もバラエティも両方いる。それがあおぎりだろ。」

静かなバーの空間に、確かな連帯が生まれた。

 

蝶美の誠実さ。

こまるの突破力。

 

その二つが加わったことで、

あおぎり高校は“勢い”だけでなく“層の厚み”を持ち始める。

#SaveAkariは単なる救済運動ではなく、

「界隈を前に進めるための共闘」へと形を変えていった。

バーの照明が柔らかく揺れる。

誰か一人を守るためではなく、

VTuberという文化そのものを守るための意思。

 

2021年夏。

 

その夜、確かに新しい流れが生まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日――

 

配信部屋に響く、こまるの甘い囁き声。

「ねぇ……もっと近く、来て?」

マイクは高性能。

距離は限界。

内容は――ギリギリ。

 

チャット欄は盛り上がる。

だが同時に、内部通報も入っていた。

 

数時間後。

あおぎり高校運営元・クリエイトリングの会議室。

調査を終えた篁唯依が資料を机に置く。

「こまる。」

栗駒こまるは正座。

「は、はい……」

「今回のASMR配信。YouTubeガイドラインに明らかに抵触しかけている。センシティブすぎる内容は、チャンネルBANのリスクを高めるだけだ」

こまるは目を泳がせる。

「えっと……ファンが喜んでくれてたから、ついノリで……。でも、アカリちゃんの#SaveAkariに協力したい気持ちもあって!」

唯依は一拍置く。

「……その気持ちは理解する。」

空気が少し和らぐ。

「だが、ルールを破れば活動自体が終わる。あおぎり高校の仲間、ファン、そして自分自身を守るためにも慎重になれ。次からは必ず事前相談。自分の役割を理解しろ。」

視線が鋭くなる。

「――貴様は未熟だ。」

こまるは深く頭を下げる。

「……分かった。ガイドライン、ちゃんと守る。篁さん、ありがとう。次は安全な企画で応援する!」

唯依は小さく頷く。

「良い返事だ。その調子で続けろ。」

 

廊下。

 

大代真白が壁にもたれていた。

「こまるちゃん、大丈夫?」

「真白先輩……篁さん、怖いけどちゃんとしてる人ですね」

真白は苦笑。

「言い方が軍人なんだよなぁ、あの人」

こまるは拳を握る。

「よし。こまる、健全路線でギリギリを攻める!」

真白が即ツッコミ。

「ギリギリ攻めるな!!」

二人の声が廊下に響く。

 

その夜。

 

こまるは配信予告を更新。

「次回:健全ASMRチャレンジ(※ほんとに健全)」

 

コメント欄は爆笑。

一方、唯依はモニター越しに呟く。

 

「成長しろ……それが守るということだ。」

 

夏はまだ続く。

 

だがこの日、こまるは一つ

“活動者としての責任”を学んだのだった。

 

 

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