2021年9月19日――GOOMSTUDIO 会議室。
ホワイトボードには大きく書かれている。
「次の一手」
ジャミトフ西村が腕を組む。
「“おっさん化してる・・・←はぁ???”は伸びた。ならば次は、さらに踏み込む。」
バスク郷里がタブレットを見ながら淡々と報告する。
「高評価1842、再生21103回。反応は賛否両論ですが、拡散率は悪くありません。」
ジャミトフが身を乗り出す。
「よし、おっさん……おっさんずラブ!」
室内が一瞬、凍る。
ジェリドが視線を逸らし、カクリコンが咳払いをし、エマが小さくため息をつく。
そこへ、パプテマス・シロッコが静かに口を開いた。
「……それは短絡的ですな。」
ジャミトフの眉が動く。
「何が言いたい?」
シロッコは冷静に続ける。
「“話題作に乗る”のは簡単。だが、彼女の個性と噛み合わねば消費されるだけ。」
会議室に緊張が走る。
「ならばどうする?」
シロッコはわずかに笑う。
「アングラ系。所謂“検索してはいけない言葉”の検証動画。」
ざわめき。
バスクが眉をひそめる。
「刺激は強い。炎上リスクも高い。」
水谷沙羅が冷静に補足する。
「暴力・グロテスク系は避けるべきです。精神的負担も大きい。やるなら“ネタ系・都市伝説系・意味不明ワード系”から。」
ジャミトフは顎に手を当てる。
「話題性はある……。」
シロッコは続ける。
「ただし前提がある。」
「何だ?」
「彼女の意思を尊重すること。強制すれば、#SaveAkariは一気に燃え上がる。」
室内が静まる。
ミライアカリの名前こそ出ないが、全員の脳裏に浮かんでいる。
ジャミトフはゆっくりと頷いた。
「無理はさせん。あくまで提案だ。」
ホワイトボードに書き加えられる。
ネタ系“検索してはいけない言葉”
都市伝説系
ホラー控えめ
事前リサーチ徹底
ジェリドが内心で呟く。
「(やるなら段階的だな……)」
ヤザンは無言のまま腕を組む。
バスクがまとめに入る。
「企画書を作成します。彼女の了承が得られた場合のみ実施。」
シロッコは小さく微笑む。
「刺激と安全のバランス。そこが勝負どころです。」
ジャミトフは立ち上がる。
「よし。次は“怖さ”ではなく、“好奇心”を使え。」
会議室の照明が白く光る。
バズを狙うか、信頼を守るか。
その狭間で、GOOMSTUDIOの新たな一手が
静かに動き出そうとしていた。
2021年9月21日 夜。
ミライアカリチャンネル――配信開始。
軽快なオープニングBGM。
「ハロー!ミライアカリだよーっ!」
画面いっぱいに元気な笑顔。
コメント欄が一気に加速する。
〈きたあああ〉
〈今日の企画なに!?〉
〈検いけってマジ?〉
アカリは少しだけ真面目な顔になる。
「今日はね、“検索してはいけない言葉”を――やりません!」
コメント欄、爆速。
〈え!?〉
〈やらないの!?w〉
〈釣りタイトルw〉
アカリは笑う。
「だって怖いの無理だもん!!ホラー耐性ゼロだよ!?アカリ!」
机を叩くジェスチャー。
「でもね、“ちょっと不思議で”“ちょっと面白い”そういうワードを安全に検証してみます!」
画面にテロップ。
【※スタッフ事前確認済み/危険・グロ要素なし】
「はい大事!ここ大事ね!」
コメント欄も安心ムードに。
〈ちゃんとしてる〉
〈そのほうがいい〉
〈精神大事〉
アカリが最初のワードを発表。
「今日の一つ目は――“意味が分かるとちょっと笑える画像”!」
表示されるのは、遠近法トリック系の画像。
「え? なにこれ……あ!思い出した!違う違う、分かった!」
自分でツッコミ。
「いや今のはエトラさんじゃないからね!?」
コメント欄爆笑。
二つ目。
「“存在しない駅名ランキング”」
架空の駅名ネタを紹介。
「絶対ありそうなのやめてww」
三つ目。
「“都市伝説だけど可愛い系”」
怖くない、ほっこり系の都市伝説を軽く紹介。
「これなら夜眠れるわ!」
途中で少し真面目な顔。
「こういう企画ってね、刺激強いのもあるけど、無理してやるものじゃないからね。」
コメント欄が静かに流れる。
〈アカリらしい〉
〈安心した〉
〈無理しないでね〉
アカリはにこっと笑う。
「アカリはアカリのペースでいくよ!」
最後はいつもの明るい締め。
「というわけで!今日は安全第一の“ちょい不思議”回でした!またねー!」
配信終了。
――
別の場所。
GOOMSTUDIO 会議室。
沈黙。
ジャミトフが腕を組む。
「……逃げたか?」
シロッコは静かに首を振る。
「いいえ。守ったのです。」
バスクが数字を確認する。
「同接、安定。高評価率も高い。」
シロッコは微笑む。
「彼女は“炎上”より“信頼”を取った。」
モニターには、笑顔で手を振るミライアカリ。
無理をしない選択。
それが結果として、
最も強い一手になっていた。
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