ENTUM23   作:マブラマ

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第279話 変化

2021年10月22日――ミライアカリ自宅。

 

配信ルームは、相変わらずピンク色のデスクと淡い照明に包まれた、温かな空間だった。

 

ノートパソコンの画面には――マブラヴ オルタネイティヴ。

 

10月6日の放送開始以降、アカリはすっかりその世界観に引き込まれていた。

 

BETAとの絶望的な戦い。

極限状態の人間ドラマ。

そして何より――ヰ世界情緒が演じる臼杵咲良の声。

 

「うわっ、マブラヴめっちゃ面白い!ヰ世界情緒さんの声、最高だよ……」

 

目を輝かせ、身を乗り出す。

 

「ちょっと、アカリも戦いたいかも!」

 

その瞬間。

 

――ピンポーン。

 

インターホンが鳴った。

 

ドアの向こうに立っていたのは、月ヶ瀬ちゆる。

 

白衣姿のまま、冷静な視線で部屋を見渡す。

 

「こんにちは、アカリちゃん。様子を見に来たよ。」

 

「ちゆるさん!? どうしたの?」

 

ちゆるはモニターの映像を一瞥する。

 

爆炎。戦術機。緊迫のBGM。

 

「……ハマりかけているね。」

 

優しい声だが、分析は正確。

 

「確かに面白い。でも、アルバム『未来』の発売は10月27日。あと5日だよ。」

 

その言葉に、アカリの肩がぴくりと動く。

 

「あ……確かに。つい夢中になっちゃって……」

 

ちゆるは小さなノートを開き、淡々と続ける。

 

「今は集中が分散するとまずい時期。#SaveAkariの勢いもある。ここで完成度を落とすわけにはいかない。」

 

だが、声は厳しくない。

 

「マブラヴは逃げないよ。でも“今”の5日は戻らない。」

 

研究者らしい時間管理の理論。

 

アカリは数秒、画面を見つめる。

 

戦場の咆哮。

 

だがその向こうに、ファンの顔が浮かぶ。

 

「……うん。」

 

パタン、とノートパソコンを閉じる。

 

「アカリ、アルバム『未来』で輝くよ!マブラヴは後でちゃんと楽しむ!」

 

笑顔が戻る。

 

ちゆるは満足げに微笑む。

 

「それでこそ、ミライアカリだよ♪」

 

白衣の裾を翻し、静かに去っていった。

 

部屋に残ったアカリは、マイクと楽譜を前に深呼吸する。

 

戦う場所は戦場ではない。―――ステージだ。

 

BETAではなく、向き合うのは自分自身。

 

アルバム『未来』発売まで、あと5日。

 

秋の騒動の余波を超えて、

彼女は自分の“未来”へ向き直った。

 

画面は閉じた。

 

だが――決意の光は、消えていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年10月23日。

 

GOOMSTUDIOに配属されてまだ間もない、バンナム本社ゲーム事業部出身の新人――

 

マウアー・ファラオ。

 

彼女は社内の空気に違和感を覚えながらも、ある“伝手”を頼って行動していた。

 

その橋渡し役は――

エマ・シーン、レコア・勝生、そしてライラ・ミラ・ライラ。

 

彼女たちの紹介で、

マウアーは研究者――月ヶ瀬ちゆると対面することになった。

 

静かな研究室。

 

モニターに映る配信データと、

アルバム『未来』関連の分析資料。

 

マウアーは真剣な表情で切り出す。

 

「#SaveAkariに協力したい。組織の立場ではなく、個人として動きたい。」

 

ちゆるはしばらく彼女を見つめ、ゆっくりと頷いた。

 

「データ上も、アカリちゃんの活動は安定している。キミが加われば、さらに安全性が高まるかもしれない。」

 

マウアーは静かに拳を握る。

 

「なら、私は情報面で支える。無理な介入はしない。“守る側”に回る。」

 

研究室の空気が少しだけ柔らかくなる。

 

エマ達の橋渡し、ちゆるの分析、そしてマウアーの決意。

 

#SaveAkari の輪は、また一つ広がった。

 

GOOMSTUDIO内部にも、変化の兆しが生まれ始めていた――。

 

 

Fortgesetzt werden

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