2021年10月30日
バンナム千代田支部に左遷されていた生駒葵と波瀬うるうは、月ヶ瀬ちゆるからの連絡を受けて状況を把握した。
ちゆるが集めた新たな協力者――研究所、企業ネットワーク、現場デザイナー、分析担当――その布陣が整い始めたことで、二人は決断する。
「……今なら、戻れる。」
「GOOMSTUDIOの内部を、正しい方向へ導くために。」
2021年10月30日。
葵とうるうは正式にGOOMSTUDIOへ復帰した。
管理室へ足を踏み入れると、空気は以前よりも重く、しかしどこか緊張感が和らいでいた。
バスクは一瞬眉を上げたが、感情を押し殺す。
「……戻ったか。」
葵は冷静に言った。
「私たちは対立のために戻ったわけではありません。ミライアカリの未来を守るためです。」
うるうも続ける。
「外から見て分かったことがあります。強硬策では、何も安定しません。」
ジャミトフは黙って二人を見つめたあと、低く言った。
「ならば証明してみせよ。戦うのではなく、整えることで成果を出すのだ。」
その日からGOOMSTUDIOは、過激な企画路線から一歩引き、アルバム『未来』を軸にした安定路線へと舵を切り始める。
そして――#SaveAkari は新たな段階へ。
対立ではなく、調整。
炎上ではなく、構築。
物語は、次の局面へ進んでいく。
2021年10月31日――渋谷ハロウィン
渋谷の街は、仮装した人々とカメラのフラッシュで賑わっていた。
音楽が流れ、ネオンが夜空を染め、ハロウィン特有の高揚感が街全体を包み込んでいる。
その中心に、ひときわ目を引く存在がいた。
ミライアカリ――この日は、ティターンズ風の制服衣装で登場していた。
深いネイビーのジャケットに、引き締まったシルエット。
どこか軍服を思わせる威厳あるデザインだが、アカリの持つ明るさが加わることで、不思議と重くなりすぎない。
彼女は鏡越しに自分の姿を見て、目を輝かせた。
「え、なにこれ……かっこよくない!?アカリ、こういうのめっちゃ好きかも!」
同行していたスタッフが心配そうに声をかける。
「ハロウィンとはいえ、少し強めのデザインですが……大丈夫ですか?」
アカリは即答した。
「全然オッケー!むしろテンション上がる!こういう“強いアカリ”もアリでしょ?」
周囲のファンからも歓声が上がる。
写真撮影の列ができ、
SNSには瞬く間に画像が拡散された。
「ティターンズアカリ最高」
「雰囲気変わってて好き」
「ギャップが強い」
その反応を見て、アカリはにっこり笑う。
「みんなが楽しんでくれてるなら、それが一番!
アカリ、今日も輝くよ!」
その夜、渋谷のハロウィンはさらに熱を帯び、
“強さ”と“可愛さ”を両立したアカリの姿は、多くの人の記憶に刻まれた。
そして本人は――
イベント終了後、控室でつぶやいた。
「この衣装、また着たいな……」
どうやらかなり気に入ったらしい。
渋谷のハロウィンイベントは、アカリだけでなく、さまざまな人物で賑わっていた。
その中に、フルート・メルヴィルとエヴィ・レーナルトの姿もあった。
フルートは、ハロウィン仕様の華やかな衣装に身を包んでいた。
黒とオレンジを基調にしたデザインで、ゴシック調のアクセントが施され、普段のイメージとはまた違う“イベントモード”全開の装いだ。
彼女はくるりと一回転し、笑顔で手を振った。
「どうどう? 今日のフルート、ちょっと本気出しましたよー!」
周囲からは「似合ってる!」「可愛い!」と歓声が上がる。
フルートは満足げにウインクした。
一方、エヴィ・レーナルトはキョンシーのコスプレ姿で登場していた。
伝統的な中国風衣装をベースに、額にはお札、手は前に揃えた独特のポーズ。
いつも冷静な彼女だが、今日は少し照れくさそうにしている。
「……動きづらいね、これ。」
そう言いながらも、ぴょん、と軽く跳ねて見せる。
フルートが横から笑う。
「エヴィさん、めっちゃ似合ってますよ! 本気でハマり役じゃん!」
エヴィは小さくため息をつきつつも、口元は緩んでいた。
「ハロウィンだからね。たまにはこういうのも悪くないわ。」
その様子を、近くで見ていたファンがスマホを掲げる。
SNSにはすぐに写真が投稿され、「フルート攻めてる!」「エヴィのキョンシー可愛い!」と話題が広がっていった。
渋谷の夜は、アカリのティターンズ制服姿だけでなく、フルートの華やかなハロウィン衣装、そしてエヴィのキョンシーコスプレによって、さらに彩りを増していく。
フルートが言った。
「こういうイベントってさ、みんなで楽しむのが一番ですよね!」
エヴィも静かに頷く。
「うん。仮装は、自分をちょっとだけ解放する時間だよ。」
三者三様のハロウィン。
渋谷の夜は、まだまだ終わらない。
2021年11月1日、シリウスシュガー研究所
秋の夜風が静かに研究所の窓を揺らしていた。
シリウスシュガー研究所の研究室では、所長の月ヶ瀬ちゆるがモニターを見つめていた。
これまで外部からの脅威に晒されることもあったが、#SaveAkari の連合やNEOENTUMの協力によって安全体制は強化され、研究に集中できる環境が整いつつあった。
「……やっと落ち着いて分析できるね。」
そう呟きながら、ちゆるはミライアカリの最新データを開く。
画面には――10月31日の渋谷ハロウィンイベントでのティターンズ制服姿、
そしてアルバム『未来』のライブ配信映像が映し出されていた。
音声波形、コメント欄の推移、視聴維持率。
ちゆるは一つ一つ丁寧に確認する。
「制服姿のインパクト、想像以上だね。ファンの反応が一気に跳ね上がってる。」
波形グラフを見ると、アカリの声は明るく、安定している。
自信と楽しさが混ざったトーン。
「精神的にもかなり安定している……アルバム発売後の展開も、良い流れだよ。」
ちゆるはペンを走らせる。
・ハロウィン配信による視聴率上昇
・ファンとの双方向コミュニケーション強化
・自然発生的な拡散効果
・#SaveAkari の持続的トレンド化
「GOOMSTUDIO側の影響力は以前より弱まっている。今は、アカリちゃん自身の魅力が主導しているね。」
研究者として冷静に分析しながらも、
その表情には安心の色が浮かんでいた。
窓の外には静かな星空。
ちゆるはモニターを閉じ、深く息を吐く。
「次のアルバム展開に向けて、データ面から支える……それがあたしの役目だね。」
研究所の灯りは静かに輝き続ける。
#SaveAkari の戦いは、感情だけでなく、分析と戦略によっても支えられていた。
そして――アカリの未来は、確実に前へ進んでいた。
Fortgesetzt werden