ENTUM23   作:マブラマ

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第281話 GOOMSTUDIO、再び動く

2021年10月30日

 

バンナム千代田支部に左遷されていた生駒葵と波瀬うるうは、月ヶ瀬ちゆるからの連絡を受けて状況を把握した。

 

ちゆるが集めた新たな協力者――研究所、企業ネットワーク、現場デザイナー、分析担当――その布陣が整い始めたことで、二人は決断する。

 

「……今なら、戻れる。」

 

「GOOMSTUDIOの内部を、正しい方向へ導くために。」

 

2021年10月30日。

 

葵とうるうは正式にGOOMSTUDIOへ復帰した。

 

管理室へ足を踏み入れると、空気は以前よりも重く、しかしどこか緊張感が和らいでいた。

 

バスクは一瞬眉を上げたが、感情を押し殺す。

 

「……戻ったか。」

 

葵は冷静に言った。

 

「私たちは対立のために戻ったわけではありません。ミライアカリの未来を守るためです。」

 

うるうも続ける。

 

「外から見て分かったことがあります。強硬策では、何も安定しません。」

 

ジャミトフは黙って二人を見つめたあと、低く言った。

 

「ならば証明してみせよ。戦うのではなく、整えることで成果を出すのだ。」

 

その日からGOOMSTUDIOは、過激な企画路線から一歩引き、アルバム『未来』を軸にした安定路線へと舵を切り始める。

 

そして――#SaveAkari は新たな段階へ。

 

対立ではなく、調整。

炎上ではなく、構築。

 

物語は、次の局面へ進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年10月31日――渋谷ハロウィン

 

渋谷の街は、仮装した人々とカメラのフラッシュで賑わっていた。

音楽が流れ、ネオンが夜空を染め、ハロウィン特有の高揚感が街全体を包み込んでいる。

 

その中心に、ひときわ目を引く存在がいた。

 

ミライアカリ――この日は、ティターンズ風の制服衣装で登場していた。

 

深いネイビーのジャケットに、引き締まったシルエット。

どこか軍服を思わせる威厳あるデザインだが、アカリの持つ明るさが加わることで、不思議と重くなりすぎない。

 

彼女は鏡越しに自分の姿を見て、目を輝かせた。

 

「え、なにこれ……かっこよくない!?アカリ、こういうのめっちゃ好きかも!」

 

同行していたスタッフが心配そうに声をかける。

 

「ハロウィンとはいえ、少し強めのデザインですが……大丈夫ですか?」

 

アカリは即答した。

 

「全然オッケー!むしろテンション上がる!こういう“強いアカリ”もアリでしょ?」

 

周囲のファンからも歓声が上がる。

 

写真撮影の列ができ、

SNSには瞬く間に画像が拡散された。

 

「ティターンズアカリ最高」

「雰囲気変わってて好き」

「ギャップが強い」

 

その反応を見て、アカリはにっこり笑う。

 

「みんなが楽しんでくれてるなら、それが一番!

アカリ、今日も輝くよ!」

 

その夜、渋谷のハロウィンはさらに熱を帯び、

“強さ”と“可愛さ”を両立したアカリの姿は、多くの人の記憶に刻まれた。

 

そして本人は――

 

イベント終了後、控室でつぶやいた。

 

「この衣装、また着たいな……」

 

どうやらかなり気に入ったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渋谷のハロウィンイベントは、アカリだけでなく、さまざまな人物で賑わっていた。

 

その中に、フルート・メルヴィルとエヴィ・レーナルトの姿もあった。

 

フルートは、ハロウィン仕様の華やかな衣装に身を包んでいた。

黒とオレンジを基調にしたデザインで、ゴシック調のアクセントが施され、普段のイメージとはまた違う“イベントモード”全開の装いだ。

 

彼女はくるりと一回転し、笑顔で手を振った。

 

「どうどう? 今日のフルート、ちょっと本気出しましたよー!」

 

周囲からは「似合ってる!」「可愛い!」と歓声が上がる。

フルートは満足げにウインクした。

 

一方、エヴィ・レーナルトはキョンシーのコスプレ姿で登場していた。

伝統的な中国風衣装をベースに、額にはお札、手は前に揃えた独特のポーズ。

 

いつも冷静な彼女だが、今日は少し照れくさそうにしている。

 

「……動きづらいね、これ。」

 

そう言いながらも、ぴょん、と軽く跳ねて見せる。

 

フルートが横から笑う。

 

「エヴィさん、めっちゃ似合ってますよ! 本気でハマり役じゃん!」

 

エヴィは小さくため息をつきつつも、口元は緩んでいた。

 

「ハロウィンだからね。たまにはこういうのも悪くないわ。」

 

その様子を、近くで見ていたファンがスマホを掲げる。

 

SNSにはすぐに写真が投稿され、「フルート攻めてる!」「エヴィのキョンシー可愛い!」と話題が広がっていった。

 

渋谷の夜は、アカリのティターンズ制服姿だけでなく、フルートの華やかなハロウィン衣装、そしてエヴィのキョンシーコスプレによって、さらに彩りを増していく。

 

フルートが言った。

 

「こういうイベントってさ、みんなで楽しむのが一番ですよね!」

 

エヴィも静かに頷く。

 

「うん。仮装は、自分をちょっとだけ解放する時間だよ。」

 

三者三様のハロウィン。

 

渋谷の夜は、まだまだ終わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年11月1日、シリウスシュガー研究所

 

秋の夜風が静かに研究所の窓を揺らしていた。

 

シリウスシュガー研究所の研究室では、所長の月ヶ瀬ちゆるがモニターを見つめていた。

これまで外部からの脅威に晒されることもあったが、#SaveAkari の連合やNEOENTUMの協力によって安全体制は強化され、研究に集中できる環境が整いつつあった。

 

「……やっと落ち着いて分析できるね。」

 

そう呟きながら、ちゆるはミライアカリの最新データを開く。

 

画面には――10月31日の渋谷ハロウィンイベントでのティターンズ制服姿、

そしてアルバム『未来』のライブ配信映像が映し出されていた。

 

音声波形、コメント欄の推移、視聴維持率。

ちゆるは一つ一つ丁寧に確認する。

 

「制服姿のインパクト、想像以上だね。ファンの反応が一気に跳ね上がってる。」

 

波形グラフを見ると、アカリの声は明るく、安定している。

自信と楽しさが混ざったトーン。

 

「精神的にもかなり安定している……アルバム発売後の展開も、良い流れだよ。」

 

ちゆるはペンを走らせる。

 

・ハロウィン配信による視聴率上昇

・ファンとの双方向コミュニケーション強化

・自然発生的な拡散効果

・#SaveAkari の持続的トレンド化

 

「GOOMSTUDIO側の影響力は以前より弱まっている。今は、アカリちゃん自身の魅力が主導しているね。」

 

研究者として冷静に分析しながらも、

その表情には安心の色が浮かんでいた。

 

窓の外には静かな星空。

 

ちゆるはモニターを閉じ、深く息を吐く。

 

「次のアルバム展開に向けて、データ面から支える……それがあたしの役目だね。」

 

研究所の灯りは静かに輝き続ける。

#SaveAkari の戦いは、感情だけでなく、分析と戦略によっても支えられていた。

 

そして――アカリの未来は、確実に前へ進んでいた。

 

 

 

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