ENTUM23   作:マブラマ

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第284話 炎上の残響

2021年11月16日

 

東京・渋谷

 

世界的にも有名な渋谷スクランブル交差点で、前代未聞の騒動が起きた。

 

人気YouTuber、ショーン・コナリーが投稿した動画。

 

内容は――

 

信号待ちのわずかな時間を狙い、交差点の中央にキングサイズのベッドを設置し、その上に寝そべるというパフォーマンス。

 

「伝説を作りたい」

 

動画内でそう語り、笑うショーン。

 

しかし、面白さを狙った演出は、

通行人の動線を妨げ、交通の混乱を招いた。

 

動画公開直後からSNSは炎上。

 

「常識を逸脱している」

「事故につながりかねない」

「迷惑系の最悪例」

 

批判は一気に拡散。

 

テレビやネットニュースでも取り上げられ、社会問題化した。

 

その後、ショーンは道路交通法違反(交通妨害物件放置)の疑いで書類送検。

 

警察への出頭の様子すら動画化。

 

当初は強気な姿勢を見せていたが、世論の反発が強まるにつれ態度を一変。

 

公式サイトに謝罪文を掲載し、「再発防止に努める」と表明した。

 

この件に対し、

鳴神裁はツイキャスで言及。

 

「面白いことと、迷惑をかけることは違うだろ。」

 

呆れた様子でそう切り出す。

 

「バズるために公共の場を使うのは一番ダメなやつ。誰かが怪我してたらどうするんだよ。」

 

淡々と、しかし強い口調。

 

炎上商法に対する警鐘だった。

 

界隈では騒動が絶えない。

 

だがこの一件は、

“注目を集めるためなら何をしてもいいのか”という

根本的な問いを突きつけた。

 

11月16日。

 

渋谷の交差点は、

また一つ“炎上の舞台”として刻まれた。と思われたが、この騒動は一過性では終わらなかった。

 

ショーンによる渋谷での迷惑行為動画は拡散を続け、炎上は11月22日頃まで沈静化しなかった。

 

SNSでは連日議論が続き、

 

「謝罪が軽い」

 

「再生数目的では?」

 

「公共の安全を軽視している」

 

といった批判が相次いだ。

 

鳴神は、ツイキャス配信で改めて言及。

 

「バズるために法律を踏み越えるのは違う。面白いことをやるなら、頭を使え。」

 

呆れと怒りが入り混じった口調で苦言を呈した。

 

さらに、

にじさんじ所属のVTuber、郡道美玲も配信でコメント。

 

彼女は“元教師”という立場を踏まえ、

 

「目立ちたい気持ちは分かる。でも、社会には守るべきルールがある。」

 

と、教育者の視点から厳しく指摘。

 

「影響力がある立場なら、なおさら自覚が必要。」

 

その言葉は多くの視聴者に共有され、議論はさらに広がった。

 

結果として、ショーンは態度を改め、

謝罪文を再掲・内容を補足する形で火消しを図ることとなる。

 

それでも、炎上が完全に落ち着くまでには時間を要した。

 

11月22日。

 

ようやく話題は次第に別のニュースへ移り始める。

 

だがこの一件は、

「影響力と責任」というテーマを、

界隈に強く刻み込む出来事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年11月23日

東京都葛飾区郊外 萌実の家(萌実ハウス)

 

配信機材に囲まれた自室。

リングライトの白い光の中、

萌実はモニター越しに鋭い視線を向けていた。

 

画面の向こうには――鳴神裁。

 

今日は特別な日。

 

ベアトリクス・ブレーメの誕生日パレードが都内某所で行われていた。

 

旧東ドイツの名車――トラバント、ヴァルトブルク、バルカス

 

およそ200台が隊列を組み、道路を並走。

 

クラシックカーのエンジン音が街に響き渡り、

一部区間では大きな交通規制が敷かれていた。

 

SNSでは

 

「壮観」

「やりすぎでは?」

「政治色を感じる」

 

と賛否が飛び交っている。

 

そんな中。

 

萌実は静かに、しかし確実に怒っていた。

 

「鳴神君」

 

低い声。

 

「今日は何の日か分かってるよね?」

 

画面越しの鳴神が肩をすくめる。

 

《誕生日パレードだろ?》

 

「そう。だから余計なことを言わないで。」

 

彼女の言葉は直球だった。

 

「今は燃やす時じゃない。アンタが余計な火種を投げたら、全部こっちに飛んでくる。」

 

沈黙。

 

鳴神は珍しく反論しない。

 

萌実は続ける。

 

「私はね、守りたいの。人も、居場所も、流れも。」

 

パレードの映像が別モニターに映る。

 

東独車の行列は壮観だが、同時に強い主張でもある。

 

「正義ぶるのは簡単。でも今はバランスを取る時。」

 

鳴神は苦笑する。

 

《……分かったよ。》

 

「本当に?」

 

《今日は黙っとく。》

 

萌実は深く息を吐いた。

 

怒りではない。

 

焦りでもない。

 

“舵取り”の責任。

 

窓の外は穏やかな夕方。

 

だが東京のどこかでは、200台の旧車がゆっくりと隊列を組んで走っている。

 

11月23日。

 

祝祭と緊張が同時に存在する一日。

 

萌実は最後に静かに言った。

 

「頼むわよ、鳴神君。」

 

その声は、仲間への叱責であり、信頼の裏返しでもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年11月24日

東京都内

 

前日のパレードの余波は、静かに、しかし確実に広がっていた。

 

ベアトリクスの誕生日を祝うために行われた旧東独車約200台の並走。

 

トラバント

ヴァルトブルク

バルカス

 

その壮観な光景はSNSで大きく拡散された。

 

「歴史的で美しい」

「やりすぎだ」

「道路占有はどうなのか」

 

賛否は真っ二つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京都葛飾区郊外 萌実の家(萌実ハウス)

 

萌実は朝のニュースを無言で見つめていた。

 

テロップには“都内で大規模クラシックカー隊列走行”の文字。

 

大きな事故はなかった。

だが交通渋滞や一部混乱は事実。

 

彼女は小さく呟く。

 

「ギリギリだったね……」

 

昨夜、ビデオ会議で叱責した

鳴神は、約束通り沈黙を守っている。

 

ツイートも配信も控えめ。

 

界隈は、嵐の“次”を警戒していた。

 

 

 

 

 

NEOENTUM本社

 

会議室では冷静な分析。

「世論は割れているが、致命傷ではない。」

報告を受けたベアトリクスは微笑む。

「話題になること自体が価値よ。」

炎上ではない。

 

“論争”。

 

彼女はそれを計算している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水面下

 

嫉子は端末越しに世論推移を確認。

姜小花も静かにログを眺める。

誰も表立って動かない。

だが全員が、次の一手を考えている。

 

11月24日。

 

派手な爆発はない。

 

だが、張り詰めた糸は切れていない。

 

東京の空は曇り。

 

静かな一日ほど、嵐の前触れになりやすい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年11月30日

ミライアカリ自宅配信ルーム

 

冬の訪れを告げる冷たい風が窓を叩く夜。

部屋の中はピンクの照明に包まれ、柔らかな温もりに満ちていた。

 

アルバム『未来』の発売から1ヶ月。

その熱は冷めるどころか、 #SaveAkari と共にさらに広がっている。

 

メンバーシップ限定企画

 

「ハロー! アカリのサインタイムだよ♪」

 

デスクの上には…。

 

・デジタルタブレット

・スタイラスペン

・当選者リスト

 

モーションキャプチャスーツに身を包んだ

ミライアカリが、満面の笑みでカメラに向かう。

 

「みんな、ハロー! ミライアカリだよ♪今日はアルバム『未来』キャンペーン当選者さんに、生でサイン描いていくよ!」

 

画面にはキラキラのタイトルロゴ。

 

コメント欄は瞬時に加速。

 

「待ってた!」

「#SaveAkariサイン最高!」

「ティターンズ制服バージョン!」

 

最初のリクエスト

 

“ティターンズ制服姿のアカリと、未来の自分”

 

アカリは楽しそうにペンを走らせる。

 

「ここにピンクのビーム足して……よし!」

 

画面に映るのは、力強く並び立つアカリと“未来の自分”。

背景には#SaveAkariロゴ。

 

コメントは歓喜で埋め尽くされる。

 

次々と描かれるサイン

 

・ハワイグラビア風水着アカリ

・アルバムジャケット風キラキラ仕様

・未来都市を背にしたヒロインver.

 

その合間に、11月2日の騒動にも触れる。

 

「デモ、大変だったよね……でも、アカリのサインで光を届けるよ!」

 

声は明るいが、芯は強い。

 

途中、画面にポップアップ。

 

萌実からのDM。

 

「アカリちゃん、萌実も見て応援中! チェーンソーで守るよ(笑)」

 

さらにエトラのメッセージ。

 

「思い出したわ! サイン可愛い!」

 

そして、ちゆるの分析テロップ。

 

《癒し効果80%アップ》

 

アカリは声を上げて笑う。

 

「データ化しないで〜!」

 

配信終盤

 

最後のサインを書き終え、深くお辞儀。

 

「みんな、当選おめでとう!

アカリの『未来』に、みんなの想いも刻むよ。」

 

少し真剣な表情。

 

「影があっても、ファンのみんなと一緒なら輝ける。」

 

コメント欄は

 

「愛してる!」

「#SaveAkari Forever」

 

で埋め尽くされた。

 

配信終了。

 

窓の外には冬の星空。

 

アルバム『未来』は単なる作品ではない。

 

それは――ファン一人ひとりと繋がる証。

 

11月30日。

 

サインは紙の上だけでなく、確かに“未来”へ刻まれた。

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