ENTUM23   作:マブラマ

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第296話 エモい雰囲気

2025年5月15日

viviON本社 あおぎり高校スタジオ

スタジオは、朝から異様な熱気と緊張感に包まれていた。壁一面の大型モニターには、東ドイツ時代のベルリンのモノクロ写真が映し出され、テーブルには分厚い脚本の束とスケジュール表が山積みになっている。

音霊魂子、石狩あかり、栗駒こまる、萌実、月赴ゐぶき、春雨麗女、ぷわぷわぽぷら、そしてエトラ――あおぎり高校のメンバーたちが、互いに身を寄せ合いながら本格的なプロジェクト始動を迎えていた。

このドラマは、ただの作品ではない。

彼女たちの絆と、VTuberとして生きる魂を、世界に刻みつける一大挑戦だった。

しかし、その中心に立つ影は、暗く重かった。

 

ハインツ・アクスマン。

 

Studio Berlin GmbHとの交渉を成功させ、プロデューサーという重要な役割を掴んだ男。

かつてシュタージの将校として数え切れないほどの命を踏みにじった過去を持つ彼が、プロジェクトの要となることに、メンバーたちの胸には未だ不信と警戒が渦巻いていた。

エトラだけが、静かに彼を擁護する。

「彼の知識とコネクションは、このドラマを本物にするために必要だよ……」

その言葉に、魂子は唇を噛み、あかりは冷たい視線を、こまるは不安げな表情を浮かべた。

そんな中、プロジェクトの監修陣が揃った。

 

株式会社MEDIX会長・アイリスディーナ・ベルンハルト。

 

NEOENTUM会長・ベアトリクス・ブレーメ。

 

そして、かつてアクスマンの部下だったリィズ・ホーエンシュタイン。

初回の全体会議。

広い会議室に、張りつめた空気が満ちる。

アイリスディーナが、青い瞳を鋭く光らせて宣言した。

「このドラマは、東ドイツの歴史をただ描くだけじゃない。VTuberたちの情熱と絆を、世界に伝えるものだ。アクスマン……お前の過去は、決して忘れない。だが、ここでは一プロデューサーとして、誠実に働いてもらう。」

その声は剣のように鋭く、アクスマンの胸を貫いた。

ベアトリクスが、冷静でありながらも鋼のような力強さで続ける。

「ENTUMの崩壊は、二度と繰り返さない。アクスマン、少しでも不穏な動きを見せたら……私が直々に、あなたを排除するわ。」

彼女の瞳には、NEOENTUMを率いるリーダーとしての冷徹な決意が燃えていた。

リィズ・ホーエンシュタインは、静かに微笑みながらも、アクスマンに向かって冷ややかな視線を投げかけた。

「“中佐”、昔の私なら、あなたの言いなりだったかもしれない。でも、今は違う。このプロジェクトは、私の義兄との再会を果たした私が、過去を清算する一歩でもある。裏切らないでよね。」

その言葉には、癒えぬ傷と、それでも前を向く新たな希望が交錯していた。

アクスマンは三人の監視の目に晒され、薄く笑った。

「フン……随分と厳しい監視だな。だが、ドラマの成功は私にとっても利益だ。安心しろ、余計なことはしない。」

声には挑発的な響きが残っていたが、ミヒャエル・ゾーネがそっと主の肩に手を置き、静かに首を振った。

ミヒャエル自身、あおぎり高校の少女たちの絆に触れる中で、徐々に変化の兆しを見せ始めていた。

 

一方、スタジオに戻ったメンバーたちは、脚本の読み合わせに熱中していた。

こまるが台本を振り回し、目を輝かせる。

「このシーン、めっちゃエモいね!東ドイツの閉鎖的な雰囲気と、私たちの自由な魂がぶつかり合う感じ、最高じゃん!」

ゐぶきがハスキーボイスで、いつものクールなツッコミを入れる。

「エモいのはええけど、予算オーバーしたらあかんぞ。アクスマンの提案でドイツロケとか、ほんまに大丈夫なん?」

麗女がニヤリと笑いながら。

「ま、アクスマンがしくじったら、アイリスディーナさんたちがガッツリ締め上げてくれるでしょ。ほら、エトラ、監督気取りで気合入れなよ!」

エトラは少し頰を赤らめながらも、拳を強く握りしめた。

「うん!このドラマ、私たちの想いを全部詰め込むよ!東ドイツの歴史をちゃんと描きつつ、あおぎり高校の絆を見せつけるんだから!」

萌実は少し不安げに、しかし優しい声で呟く。

「……アクスマン、ほんとに裏切らないよね?ぺぺちのこともあるし、なんか心配……」魂子が力強く萌実の肩を叩いた。

「大丈夫だよ、萌実ちゃん! 私たちがいる限り、アクスマンに変なことさせない!

アオギリエースは、どんな試練だって乗り越えるんだから!」viviON主導のドラマ製作プロジェクトは、Studio Berlin GmbHの協力のもと、着々と動き始めた。

アイリスディーナ、ベアトリクス、リィズの三重の監視の下、魂子たちあおぎり高校のメンバーたちは、絆と情熱を武器に、新たな伝説を刻もうとしていた。

だが、アクスマンの心の奥底に潜む闇が、このプロジェクトにどのような影を落とすのか――その答えは、まだ誰にも分からない。

アオギリエースの物語は、過去と未来の狭間で、再び激しく動き出していた――。

 

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