2025年5月16日――ベルリンのStudio Berlin GmbHスタジオは、朝の冷たい空気の中で、すでに熱気に包まれていた。
旧東ドイツの監視塔のセットが組まれ、照明が低く重く照らす中、viviON主導のドラマ『シュタージの残響(仮)』の撮影準備が本格的に始まっていた。
音霊魂子が現場の中央に立ち、メンバーたちを鼓舞する。
「みんな、気合入れていこう!このシーンで、東ドイツの閉塞感と、それでも希望を諦めない魂を、絶対に届けなきゃ!」
石狩あかりは台本を片手に、監督に細かな演出の提案を重ねる。
「ここ、もっと光を落として、監視の目を感じさせる影を強調したいんです。息苦しさが伝わるように……」
栗駒こまるは明るい笑顔でスタッフに声をかけ、現場の空気を一気に和ませた。
「うわ、このセットめっちゃリアル!こんなところで撮ったら、ドラマの重みが全然違うよ!」
月赴ゐぶきはカメラマンの肩を叩きながら、関西弁全開でツッコミを入れる。
「ほんまにここで撮るんか?予算大丈夫なん? アクスマン、なんか裏で金でも動かしとるんちゃう?」
ハスキーボイスが響き渡り、スタッフたちも思わず笑う。
彼女のタフさは、サイクリングで鍛えた体力が長時間の撮影にも耐え、現場を支えていた。
春雨麗女がニヤリと笑いながら、ぷわぷわぽぷらをからかう。
「ぽぷら、演技とかよくわかんな~いって言ってたけど、今日は本気出せよ!」
ぽぷらが無邪気に手を振る。
「ぽぷら、楽しそうだから頑張る~!」
萌実は少し離れたところで、台本を握りしめながら呟く。
「……アクスマン、ほんとにドラマのためだけに動いてるのかな?ぺぺちのことがあったから、なんか信じきれなくて……」
エトラは脚本の中心人物として、監督やライターと熱心に議論を重ねていた。
「このシーンでは、東ドイツの閉塞感と、でもその中で希望を見出す人々の姿をちゃんと描きたいんです!」
彼女の純粋な情熱は、現場の現地スタッフにも徐々に伝わり、信頼を勝ち取り始めていた。
しかし、その背後で、ハインツ・アクスマンはプロデューサーとして奔走していた。
予算管理、スケジュール調整、旧知のコネクションを駆使したロケーション確保――表面上は完璧にプロジェクトに尽力しているように見えた。
だが、アイリスディーナ・ベルンハルト、ベアトリクス・ブレーメ、リィズ・ホーエンシュタインの三人は、彼の動きを一瞬たりとも見逃さない。
アイリスディーナが、ベアトリクスに耳打ちする。
「彼の行動、注意深く監視する必要があるわ。シュタージ時代のネットワークが、何か企みを隠しているかもしれない。」
ベアトリクスは頷き、鋭い視線をアクスマンに向ける。
「もし彼がこのプロジェクトを私利私欲のために利用しようとしているなら、NEOENTUMの名にかけて許さない。」
リィズは静かに、しかし冷ややかに分析を加える。
「ハインツ・アクスマンは計算高い男よ。表面上は協力的でも、裏で何か動いている可能性が高い。……でも、エトラの純粋さが、彼に少し影響を与えているかもしれない。」
その言葉には、微かな希望と、決して解けない警戒が混在していた。
撮影現場では、魂子たちが旧シュタージ本部の跡地でのシーンに挑んでいた。魂子の演技は、VTuberとしての情熱をそのまま投影したように力強く、息を呑むほどの迫力があった。
あかりの繊細な表情、こまるのエネルギッシュな動き、ゐぶきのクールな存在感――すべてが、ドラマに命を吹き込んでいた。
その時、グレーテル・イエッケルンが再び現れた。
「アクスマン。このドラマがあなたの贖罪だと言うなら、どこまで本気か見せてもらうわ。」
アクスマンは一瞬目を細めるが、すぐに静かに答えた。
「議員、私はただのプロデューサーだ。このドラマの成功が、私の目的だ。」
グレーテルの視線は鋭く、しかし試すような光を帯びていた。
「なら、裏切らないことね。魂子たちの夢を、踏みにじるような真似は許さない。」
その夜、アクスマンはホテルの一室で、ミヒャエル・ゾーネと二人きりになった。
ミヒャエルが静かに切り出す。
「中佐……このプロジェクト、確かにあなたの過去を清算する機会かもしれません。魂子たちの情熱、エトラの純粋さ……それらは本物です。あなたも、変わるべきでは?」
アクスマンはグラスを手に、窓の外のベルリンの夜景を見つめる。
「……ゾーネ大尉、貴様までそんなことを言うか。シュタージの時代、私はただ命令に従った。それが生きる術だった。」
声には疲れが滲み、過去を正当化する響きが弱々しく聞こえた。
ミヒャエルは続ける。
「中佐、命令に従うだけが人生ではありません。あおぎり高校の彼女たちは、過去に縛られず未来を切り開こうとしています。あなたにも、その可能性がある。」
アクスマンは一瞬沈黙し、グラスを置いた。
「……フン、魂子たちの絆か。笑えるほど純粋だな。だが、私が本当に変われると思うか?」
ミヒャエルは静かに、しかしはっきりと答えた。
「それは、中佐が決めることです。」
翌日の撮影現場では、魂子たちが再び立ち上がる。魂子が皆を見回し、力強く宣言する。「みんな、どんな過去があっても、私たちは前を向くよ! このドラマで、世界に私たちの絆を届けるんだ!アオギリズエースは、絶対に負けない!」
メンバーたちの視線が交錯し、強い決意が燃え上がる。『シュタージの残響』は、単なるドラマではなく、アクスマンの人生を変える試金石となりつつあった。
アイリスディーナ、ベアトリクス、リィズの監視の目、エトラの純粋な信頼、魂子たちの揺るぎない絆――それらが、彼に新たな選択を迫る。
ベルリンの冷たい風の中で、アオギリエースの物語は、さらに熱を帯びて燃え上がっていた――。
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