ENTUM23   作:マブラマ

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第298話 衝撃な事実

2025年5月20日――ベルリンのStudio Berlin GmbHでは、『シュタージの残響(仮)』の撮影が本格化し、セットの空気は重く冷たく張りつめていた。

旧監視塔の再現セットで、魂子たちが息を潜めて演じるシーンが繰り返される中、日本・viviONのあおぎり高校スタジオに、異様な静けさが訪れた。

音霊魂子のデスクに、誰かが置いていった分厚い封筒。

差出人の名前も住所もなく、ただ白い紙に黒いペンで「魂子へ」とだけ記されていた。

魂子はメンバーたち――石狩あかり、栗駒こまる、月赴ゐぶき、春雨麗女、ぷわぷわぽぷら、萌実、そしてエトラ――を急遽スタジオに呼び集めた。

好奇心と警戒心が交錯する中、彼女は震える指で封筒を開けた。

 

中から現れたのは、1980年代の東ドイツを舞台にした、衝撃的な資料の束だった。

 

リィズ・ホーエンシュタインと義兄テオドール・エーベルバッハ、そして両親マレーネ・とトーマス・ホーエンシュタインの悲劇が、克明に記されていた。

1980年、当時15歳のリィズと家族は西ドイツへの亡命を試みたが、国境警備隊に捕らえられ、ハインツ・アクスマンの尋問室へと連行された。

トーマスは拷問の末に息絶え、マレーネは不特定多数の兵士たちに凌辱され、強制的に10人の子を産まされた末、最後の出産直後に命を落とした。

リィズ自身もアクスマンに暴行され、ハニートラップ任務を強要され、シュタージの一員として罪なき国民を粛清する日々に追いやられた。

テオドールは拷問の後解放されたものの、叛乱分子の烙印を押され、まともな職に就けず、国家人民軍(NVA)へ入隊せざるを得なかった。

 

魂子は資料を読み進めるうち、顔を青ざめさせた。

「……こんな酷いことが……リィズさん、こんな目に遭ってたなんて……。」

声が震え、涙がこぼれ落ちる。こまるが拳を握りしめ、怒りに声を荒げた。

「アクスマン……リィズさんをこんな目に合わせて、よくも平気な顔でプロデューサーなんてやってられるよね!」

ゐぶきがハスキーボイスで、静かに呟く。

「……これ、ほんまにアクスマンの仕業やとしたら、ただのプロデューサーやない。こんな過去持ってる奴が、ドラマに関わってるなんて、ゾッとするわ。」

萌実は小さな声で、悲しげに続ける。

「ぺぺち……ミライアカリも、アクスマンに苦しめられたんだよね。リィズさんも、こんな過去があったなんて……。」

エトラだけが、複雑な表情で資料を見つめた。

「……アクスマンさんの過去、知ってたけど……ここまで酷いとは……。でも、彼は変わろうとしてるんじゃない?私たちのドラマで、償おうとしてるのかも……。」

あかりが鋭く切り返す。

「エトラ、甘いよ!こんな男が簡単に変わるわけない。リィズさんの人生を壊したんだよ!」

麗女が静かに、しかし鋭く口を開く。

「でもさ、この資料、誰が送ってきたんだろう?アクスマンを追い詰めたい誰かが、わざと私たちに知らせたんじゃない?」

ぽぷらが無邪気に、しかし少し怯えた声で。

「ぽぷら、わかんな~いけど、なんか怖い話だね~……。」

魂子は深呼吸し、決意を込めて立ち上がった。

「この資料、アイリスディーナさんたちにも見せなきゃ。アクスマンの過去が本当なら、ドラマのプロデューサーとして関わらせるのは危険すぎる!」

資料には、さらに不穏な記述が続いていた。

 

アイリスディーナ・ベルンハルトに関する噂――1978年、実の兄を国家保安省(シュタージ)に密告し、現在の地位を得たというもの。

本人は否定も肯定もせず、その曖昧さが噂に信憑性を与えていた。

しかし、資料の奥には別の記述も。

兄の志を継ぐため、自らの手で兄を処刑した後、シュタージのような下劣な行為を二度と行わなかった、と。

さらに、リィズが正体を明かした後、アイリスディーナはシュタージに捕らえられ、ベアトリクス・ブレーメの「無力に果てていく姿を見たい」という趣味により、尋問や拷問は免れたものの、放置監禁された。

テオドールらの手で救出されたが、アクスマンが彼女を亡命取引の材料に利用しようとした際の銃撃戦で、カティアという人物を庇って致命傷を負った。

ベアトリクスが秘密裏に救急車を呼び、奇跡的に生還。

その後、ベアトリクスはシュタージ特殊部隊「ヴェアヴォルフ大隊」の大隊長に、アイリスディーナは国家人民軍第666中隊の中隊長として、それぞれ新たな道を歩んだ。

 

魂子は資料を握りしめ、ベルリンへの緊急会議を求めた。

ベルリンの一室で、アイリスディーナ、ベアトリクス、リィズが資料を読み、沈黙が落ちる。

アイリスディーナが静かに資料を閉じ、落ち着いた声で言った。

「……私の過去については、今は話さない。だが、アクスマンの罪は許されない。彼がこのドラマに関わるのは、リスクが大きすぎる。」

リィズが冷たく笑う。

「彼は、昔も今も変わらない。自分の利益のために、誰かを犠牲にする男よ。この資料が本物なら、彼をプロデューサーから外すべきよ。」

ベアトリクスが腕を組み、厳しい口調で。

「アクスマンを排除するなら、Studio Berlin GmbHとの契約も見直さないといけないかもしれない。でも、魂子たちの夢を潰すわけにはいかない。どうする?」

魂子はメンバーたちの顔を思い浮かべ、力強く答えた。

「私たちのドラマは、アクスマンの過去に縛られちゃダメだよ。リィズさん、アイリスディーナさん、ベアトリクスさん、私たちを信じて!あおぎり高校の絆で、このドラマを絶対に成功させる!」

エトラがそっと口を開く。

「……アクスマンさんを信じたい気持ちもあるけど、こんな過去を知ったら……。でも、私たちのドラマは、過去を乗り越える物語にしたい。魂子ちゃん、みんなで頑張ろう!」

会議の末、魂子たちはアクスマンをプロデューサーから外すことを決断した。

アイリスディーナとベアトリクスが新たなプロデューサーを選定し、リィズが歴史的監修としてさらに深く関わることになった。アクスマンはミヒャエルと共にスタジオを去り、ベルリンの街に消えた。

彼の背中は、かつての冷徹な将校のそれではなく、どこか疲れ果てた男のそれだった。

魂子たちの情熱と、リィズの過去が、重く心に響いていた。

『シュタージの残響』は、新たな体制で撮影を続けた。

魂子のリーダーシップ、あかりの繊細さ、こまるの情熱、ゐぶきのクールさ、麗女の鋭さ、ぽぷらの純粋さ、萌実の優しさ、エトラの信念――それらが一つになり、ドラマは輝きを増していった。

過去の亡魂と向き合いながら、あおぎり高校のメンバーたちは、未来への希望を胸に演技に臨んだ。アオギリエースの戦いは、決して終わらない。

どんな闇が待ち受けようとも、彼女たちの絆は、決して折れない――。

 

 

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