ENTUM23   作:マブラマ

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第3話 ENTUM設立式 ~波乱の余波と新たな決意~

夕陽が沈み、ENTUMのオフィスは静けさに包まれていた。設立式の喧騒が遠い記憶のように感じられる中、廊下の一角でひそやかな会話が交わされていた。萌実、ヨメミ、ベノちゃんの三人は、どこか疲れた表情で壁にもたれていた。

「怖いよー……」

萌実が涙目で呟く。彼女の声には、式典でのベアトリクスの雷鳴のような叱責の余韻が残っていた。

「これじゃ反論なんてできないよね」

ヨメミが肩をすくめ、苦笑いを浮かべる。

ベノちゃんは小さな手を顎に当て、冷静に言った。

「お姉ちゃん、ちょっと自業自得じゃない?」

萌実は頬を膨らませ、エイレーンを思い出したようにぼやく。

「まぁ……エイレーンはバカだからね。なんであの子が副社長なのさ?」

「ベイレーン姉さんの計らいだよ」

ベノちゃんがあっさり答えると、萌実とヨメミは揃って押し黙った。空気が一瞬重くなる。

そこへ、弾けるような声が響いた。

「あ、萌実次長! ヨメミ課長! それにベノ部長も!」

ミライアカリが駆け寄ってくる。彼女の目は不安と期待が入り混じった光を宿していた。

萌実が優しく微笑む。

「アカリちゃん、どうしたの?」

「今後のことなんですけど……私たち、どうなるんですか?」

アカリの声には、純粋な疑問とわずかな怯えが滲んでいた。

ベノちゃんが首を振る。

「うーん、わかんない」

「とりあえずは平常運転だね」

ヨメミが明るく言ったが、どこか力強さに欠けていた。

「それしか言えないよね……」

萌実がため息をつく。

アカリは心の中で呟いた。

「(この会社、将来どうなるんだろう……?)」

その時、背後から落ち着いた声が響いた。

「――ミライアカリだな?」

アカリが振り返ると、そこには見知らぬ三人の女性が立っていた。

「え、誰ですか?」

「幹部のニコラ・ミヒャルケだ」

ニコラが穏やかに微笑む。

「隣にいるのが――」

「カタリーナ・ディーゲルマンよ」

カタリーナが軽く手を振る。

「ファルカ・ミューレンカンプです!以後お見知り置きを!」

ファルカが元気いっぱいに敬礼した。

アカリは三人を見つめ、心の中で安堵する。

「(みんなくそ優しそうじゃん……!)」

ニコラが静かに続ける。

「何か意見があるなら、私たちが聞く。どうだ?」

アカリは一瞬躊躇したが、意を決して口を開いた。

「あの……社内の信頼関係を築き上げるには、どうすればいいですか?」

ニコラが怪訝そうに眉を上げる。

「信頼? 何だそれは?」

「え?」

アカリが目を丸くすると、ニコラの声が急に鋭くなった。

「貴様、消えるぞ!」

「ひっ!?」

アカリが一歩後ずさる。だが、ニコラはすぐに表情を和らげ、言葉を続けた。

「確かに信頼は大事だ。だがな、時には裏切り行為をする社員も出てくる。貴様はまだ未熟だ!」

アカリは唇を噛む。

「(言ってくれたな……!)」

カタリーナが遠い目をして呟く。

「あの時は大変だったわ。ある女が私たちを見捨てて、殺されそうになったのよね……」

ファルカが小さく頷く。

「ウルスラ革命……ですか?」

「ウルスラ革命?」

アカリが首を傾げると、ニコラが冷たく遮った。

「貴様が知る必要はない!」

アカリは言葉を失い、黙り込む。カタリーナが場を和ませるように笑った。

「期待してるわよ、アンタ。可愛いしね。あ、その衣装、普段着?」

「はい、そうですけど……」

アカリが少し照れながら答える。

カタリーナが何かを取り出し、差し出した。

「ほら、これ着なさい」

「コートですか?」

「ジャケットよ! 早く着なさいって!」

カタリーナの勢いに押され、アカリは慌ててジャケットを羽織る。

ファルカが目を輝かせる。

「よくお似合いです!」

ニコラが頷く。

「アルファインダストリーズのジャケットだ。貴様のものだ」

アカリはジャケットをそっと撫でながら呟く。

「ありがとうございます……(高そう! 大事にしなきゃ!)」

その時、背後から重々しい声が響いた。

「ニコラ、カタリーナ、ファルカ。何してる?」

三人揃ってピシッと敬礼する。

「同志少佐!」

アカリの心臓が跳ねた。

「(うわ、設立式の怖い人だ……! どうしよう!)」

ベアトリクスがアカリに視線を向ける。

「貴女がミライアカリね」

アカリは緊張を押し隠し、精一杯の笑顔で答えた。

「はい! ハロー、ミライアカリだよ♪」

ベアトリクスは彼女をじっと見つめ、僅かに口元を緩める。

「なるほど。ベイレーン社長に抜擢されたのも納得だ」

「名誉会長!」

萌実、ヨメミ、ベノちゃんが一斉に声を上げる。

ベアトリクスはアカリに静かに告げる。

「期待を裏切るな。貴女にはもっと活躍してもらわなきゃ困る」

アカリは胸を張り、力強く頷いた。

「はい! 名誉会長のために動画投稿して、期待を裏切らず、誠意と精神で励みます!」

萌実とヨメミが笑顔で頷き、ベノちゃんが「これからだね!」と明るく言う。

だが、その瞬間――

「百合百合パラダイスです!」

エイレーンがどこからともなく飛び出し、場をぶち壊した。

ベアトリクスの目が一瞬で氷のように冷たくなる。

「摘み出せ! 社内の反乱分子だ!」

「ハッ!」

誠実な警備員が即座に動く。

「ぎゃああああ!」

エイレーンの悲鳴が廊下に響き渡り、アカリたちは呆然とその光景を見送った。ENTUMの未来は、希望と混乱が交錯する中で、まだ始まったばかりだった――。

 

 

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