ENTUM23   作:マブラマ

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第303話 粉砕

2025年5月25日――ベルリンの熱気から一転、東京のviviONスタジオは、再び波乱の中心となっていた。

ハインツ・アクスマンの策略により、エイレーンがCi-en事業部を通じて投稿したR18指定の百合漫画は、あおぎり高校のファンコミュニティに大きな波紋を巻き起こしていた。

音霊魂子、石狩あかり、栗駒こまる、月赴ゐぶき、春雨麗女、ぷわぷわぽぷら、エトラが過激な描写で描かれたことで、ファンの批判が殺到。

しかし、エイレーンは動じることなく、新たな一手を打ってきた。

彼女は突如、全年齢向けの百合漫画をCi-enに投稿し始めたのだ。

そこには、あおぎり高校の現役メンバーだけでなく、卒業生である水菜月夏希と大代真白も描かれていた。

エイレーンの言葉によれば、「書き忘れたメンバーを描きたかったから」。

その「書き忘れたメンバー」とは、水菜月夏希と大代真白を指していた。

彼女たちの物語は、あおぎり高校の歴史に深く刻まれたものであり、エイレーンはその絆を新たな形で表現しようとしたのだ。

水菜月夏希は、2021年4月10日、あおぎり高校を卒業し、YouTubeでの活動を完全に引退した。

VTuberとしての輝かしい日々を終え、新たな夢を追い求めるため、美容業界へと進んだ。

卒業後も、魂子やあかり、こまるたちと連絡を取り合い、時折メンバーたちの配信でその名が懐かしげに語られることがあった。

夏希の笑顔と情熱は、あおぎり高校の初期を支えた礎であり、彼女の卒業は新たな旅立ちとして、ファンにもメンバーにも受け入れられていた。一方、大代真白の物語は、より複雑で切ないものだった。

2024年5月10日、彼女は自身のXアカウントで体調不良を報告。

その後、音沙汰のない日々が続き、ファンやメンバーの間に不安が広がった。

2024年7月24日、公式発表により、真白が病気療養のため当面の間活動を休止することが明らかになった。

彼女が抱える疾患は、活動継続が困難なほど重く、回復の兆しが見られない状態だった。

病名などの詳細は個人情報保護のため伏せられたが、真白自身は「メンタル面の不調ではない」と強調していた。

この休止に伴い、事前に撮影された動画コンテンツを除き、新規コンテンツの更新が停止。

真白はあおぎり高校のイベントや催事への参加も見合わせることとなった。

2025年2月10日、真白は自身の状態が「最も理想的な形で活動を続けることが困難」と判断され、2月28日をもってあおぎり高校を卒業することを発表した。

約4年間(休止期間を含めると4年9ヶ月)の活動に幕を閉じた彼女だったが、公式発表では「体調は快方に向かっている」と伝えられ、ファンに一筋の希望を与えた。

卒業後も、夏希と同様に公式サイトに卒業生としてプロフィールが残され、彼女があおぎり高校に残した多大な貢献が称えられた。

真白の純粋な情熱と、どんな時もファンに寄り添う姿勢は、メンバーたちの心に深く刻まれていた。エイレーンの全年齢向け百合漫画は、R18の過激さとは打って変わり、あおぎり高校のメンバーたちの絆と日常を優しく描いたものだった。

魂子とあかりの信頼、こまるの明るさ、ゐぶきのクールなツッコミ、麗女の鋭さ、ぽぷらの無邪気さ、エトラの情熱、そして卒業生の夏希と真白の思い出が、繊細なタッチで綴られていた。

特に、夏希の美容業界での新たな挑戦や、真白の療養中の静かな闘いが、温かな物語として描かれ、ファンの心を掴んだ。

viviONのスタジオで、魂子たちが新しい漫画を手に取った。魂子は目を輝かせて言う。

「これ……めっちゃいいじゃん! エイレーン、R18の時はやりすぎかと思ったけど、今回は私たちの絆をちゃんと描いてくれてる!」

あかりが頷く。

「夏希先輩と真白ちゃんのことも、ちゃんとリスペクトして描いてる。……でも、エイレーンってほんと予測不能だよね。」

こまるが笑いながら。

「ハハッ、真白先輩のシーン、めっちゃエモい!療養中の頑張りが伝わってくるよ! エイレーン、ちょっと見直した!」

ゐぶきがハスキーボイスでツッコミを入れる。

「見直した言うても、裏でアクスマンが絡んでるんやろ?あの男、ほんまに大人しくCi-enで雑務しとるんか怪しいわ。」

麗女がニヤリと笑う。

「まぁ、エイレーンらしいっちゃらしいよね。百合百合パラダイス、嫌いじゃないよ。

ぽぷら、どう思う?」

ぽぷらが無邪気に。

「ぽぷら、漫画に夏希先輩と真白先輩出てて嬉しい~! なんか、みんなでまた一緒にいるみたいだね~!」

萌実が柔らかく微笑む。

「……真白ちゃん、元気になってるって聞いて安心した。エイレーン、萌実を外してくれてありがとう、かな?でも、アクスマンが絡んでるのはやっぱり気になる……。」

エトラが少し複雑な表情で。

「…きっと私たちのことも大事に思ってくれてるよね。アクスマンさんが関わってるのは……うーん、でも、今回はいい漫画だと思う!」

魂子たちは、エイレーンの新作漫画をきっかけに、ファンとの絆をさらに深める配信を企画した。

配信では、R18漫画への謝罪と共に、全年齢向け漫画を称賛し、夏希と真白への敬意を表明。

魂子がカメラに向かって叫ぶ。

「みんな、エイレーンさんの漫画で騒ぎになったけど、私たちの絆は変わらないよ!夏希や真白も、ずっとあおぎり高校の仲間だ!私たちは、どんな試練も乗り越える!」

ファンからの反応は熱狂的で、コメント欄は「魂子最高!」「夏希と真白、ずっと応援してる!」「あおぎり高校、負けるな!」で埋め尽くされた。

エイレーンの漫画は、結果的にメンバーたちの絆を再確認する機会となり、ファンの信頼を取り戻した。

 

一方、アクスマンはCi-en事業部の片隅で、エイレーンの成功を静かに見つめていた。

ミヒャエル・ゾーネがそっと言う。

「中佐……魂子たちの絆は、あなたの策略を超えました。もう、過去のやり方は通用しません。」

アクスマンは苦笑し、呟く。

「……フン、私はただ、彼女たちの光を利用したかっただけだ。だが、あの光はあまりにも眩しいな。」

彼の心には、魂子たちの情熱が小さな波紋を広げていた。

エイレーンの漫画は、あおぎり高校のメンバーと卒業生の絆を新たな形で世界に示し、ファンの心を掴んだ。

アクスマンの策略は、魂子たちの輝きによって打ち砕かれ、彼はCi-en事業部でさらに影を潜めることとなった。

夏希と真白の物語は、メンバーたちの心に生き続け、彼女たちの絆はどんな試練も乗り越える力となっていた。

魂子がスタジオで笑顔で言う。

「これからも、私たちは一緒に未来を切り開く!あおぎり高校、永遠に!」

彼女たちの物語は、過去の傷を癒し、新たな伝説を刻み続ける。

彼女たちの光は、どんな闇も照らし、未来へと突き進む――。

 

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