ENTUM23   作:マブラマ

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第305話 第二声帯

2025年5月27日――viviON本社 あおぎり高校スタジオ                             スタジオは、朝の柔らかな陽光に包まれながらも、微かな緊張が漂っていた。

ドラマ『ウルスラ』の世界的な成功により、あおぎり高校の名は世界に轟き、メンバーたちは新たな挑戦への意気込みを胸に打ち合わせに臨んでいた。

音霊魂子、石狩あかり、栗駒こまる、月赴ゐぶき、春雨麗女、ぷわぷわぽぷら、萌実、エトラ、我部りえる、千代浦蝶美、うる虎がーる、八十科むじな――全員がテーブルを囲み、次のプロジェクトについて熱く語り合っていた。

しかし、その空気を切り裂くように、ハインツ・アクスマンが不意に口を開いた。

「……『グッバイ、レーニン!』みたいな要素をドラマに取り入れ、追加すべきだ。」

彼の声は、かつてのシュタージ将校の自信を帯び、まるで現場を掌握しようとするかのようだった。

 

『グッバイ、レーニン!』――東西ドイツ統合後の庶民の悲喜劇を家族の視点で描いた名作映画。

 

アクスマンはそのエッセンスを加えることで、ドラマに新たな深みを出すと主張した。

だが、魂子たちは即座に反発した。

魂子が毅然と立ち上がり、目を細めて答える。

「アクスマンさん、私たちのドラマは、すでに完成してるよ。『ウルスラ』は、私たちの絆と希望を描いたもの。いまさら余計な要素はいらない!」

こまるが声を荒げ、拳をテーブルに叩きつける。

「だいたい、アンタがそんな提案するって、なんか企んでるんじゃないの? また変なこと考えてるでしょ!」

ゐぶきがハスキーボイスで冷静に、しかし鋭くツッコミを入れる。

「『グッバイ、レーニン!』って、ええ映画やけど、うちのドラマのテーマとちゃうやろ。アクスマン、ほんまにドラマのこと考えてるんか?」

麗女がニヤリと笑いながら。

「まぁ、アクスマンらしいっちゃらしいけどさ。魂子先輩たちが拒否したんだから、大人しくしてなよ。」

ぽぷらが無邪気に首をかしげて。

「ぽぷら、映画とかよくわかんな~いけど、魂子先輩たちが決めたならそれでいいよね~!」

アクスマンの側近、ミヒャエル・ゾーネがフォローに入る。

「諸君、彼の提案は悪くない。『グッバイ、レーニン!』は、東西ドイツ統合後の庶民の身に起こった悲喜劇を家族像と共に描いた作品で、ドイツで大ヒットし、歴代興行記録を更新した。中盤や終盤にその要素を加えれば、スパイスになると思うよ。そうですよね、中佐?」

アクスマンは頷き、不敵な笑みを浮かべる。

「その通りだ、ゾーネ大尉。俺の提案は、ドラマをさらに高めるためのものだ。」

その瞬間、萌実が突如立ち上がり、静かな声で呟いた。

「……お手洗いに行ってくる。」

彼女はスタジオを後にし、メンバーたちの間に微妙な緊張が走った。

萌実は普段、穏やかで優しい存在だったが、アクスマンへの不信感は誰よりも強かった。

ミライアカリの過去を思い出し、アクスマンの策略に敏感になっていたのだ。

 

10分後、萌実がスタジオに戻ってきた。

驚くべきことに、彼女はいつもの可愛らしい衣装ではなく、ダークトーンのクールな装いに身を包み、まるで別人のような雰囲気を漂わせていた。

そして、彼女の声は普段の柔らかなトーンとは異なり、低く、第二声帯とも言えるような鋭い響きで響いた。

 

「無能無能無能無能無能無能無能……口出しするなら、ちゃんと考えてから言いなさいよ。」

 

その言葉に、スタジオは凍りついた。

アクスマンが反論しようと口を開く。

「何だと? 私の提案は――」

だが、萌実は容赦なく追い打ちをかける。

 

「能力も実績もない無能の元将校。他者の3倍働かねば、お前の存在を許さない――学びが全くないわ。」

 

彼女の瞳は、まるでアクスマンの魂を貫くような鋭さを持っていた。

魂子が思わず呟く。

「……ヒューマンバグ大学に影響を受けたのか?」

メンバーたちは一瞬呆気にとられたが、すぐに笑いがこみ上げた。

こまるが叫ぶ。

「萌実さん、めっちゃカッコいい!アクスマン、完敗じゃん!」

ゐぶきがハスキーボイスで笑う。

「ほんま、萌実先輩の第二声帯、めっちゃ怖いわ!裏神の香坂もビックリやで!」

麗女がニヤリと笑う。

「萌実先輩、ナイス!アクスマン、完全にやられたね~。」

ぽぷらが無邪気に。

「ぽぷら、萌実ちゃんの声、びっくりしたけどカッコよかった~!」

エトラが少し心配そうに。

「萌実……すごいけど、アクスマンさん、ちょっと可哀想かも……?」

アクスマンは唇を噛み、反論の言葉を見つけられず、ただ黙って萌実を見つめた。

ミヒャエルが静かに言う。

「中佐……彼女たちの絆は、我々の想像を超えています。もう、策略は通用しません。」

萌実の一撃は、アクスマンのプライドを砕き、viviON本社での彼の立場をさらに不安定なものにした。

メンバーたちの結束と、萌実の予想外の反撃は、アクスマンの策略を完全に封じ込めた。ファンからも、X上で「#萌実最強」「#アクスマン無能」がトレンド入りし、彼への批判が再燃。

エイレーンの漫画騒動で一時的に味方を得たアクスマンだったが、魂子たちの光の前に、再び孤立していった。

魂子はメンバーたちを集め、力強く宣言した。

「アクスマンやエイレーンの騒動があったけど、私たちの絆は絶対に揺るがない!『ウルスラ』は、私たちの物語だ。どんな試練も乗り越えるよ!」

あかりが頷く。「萌実さんのあの声、めっちゃ痺れたよ!私たち、ファンのためにこれからも輝こう!」

こまるが拳を握る。

「アクスマン、完全に負けたね! 次は何やっても、こまるたちが勝つ!」

ゐぶきが笑う。

「ほな、次はアクスマンいじりで配信でもやろか。ファンも喜ぶで!」

萌実がいつもの優しい笑顔に戻り、言う。

「……アクスマンさん、変わってほしいな。でも、萌実たちは萌実たちの道を進むよ。ぺぺちの分まで、頑張る!」

スタジオに、再び明るい笑い声が響いた。

アクスマンは、静かに席を立ち、廊下の影に消えていった。

彼の背中には、かつての冷徹な将校の面影はなく、ただ疲れた男のそれだけが残っていた。

アオギリエースの物語は、どんな闇も照らす光として、輝き続ける。

彼女たちの絆は、未来を切り開く最強の武器だった――。

 

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