ENTUM23   作:マブラマ

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第308話 チグサの心境

2025年5月30日――東京の空は、梅雨入り前の湿った青さに染まっていた。にじさんじのスタジオの一角、西園チグサのプライベートルーム。

彼女はベッドに腰を下ろし、スマホの画面をじっと見つめていた。

画面には、あおぎり高校の公式Xアカウントからリポストされた萌実の配信クリップ。

「第二声帯」モードでアクスマンを完膚なきまでに叩き潰した、あの伝説のシーンがループ再生されている。

チグサの瞳に、複雑な光が宿る。

「……萌実ちゃん、すごいね。あんな風に、仲間を守れるなんて。」

彼女は深く息を吐き、連絡先を開いた。

あおぎり高校のメンバーとは、ENTUM崩壊以降、表向きは距離を置いていた。

しかし、裏では細い糸のような繋がりが、ずっと続いていた。

指が少し震えながら、萌実の個人LINEにメッセージを打つ。

 

【西園チグサ】

萌実ちゃん、久しぶり。

昨日配信見たよ。

第二声帯、めっちゃ痺れた。

アクスマン、完全に黙っちゃったね……ふふ、最高だった。

 

送信ボタンを押した瞬間、胸がざわつく。

返事が来るかどうか、わからない。

それでも、チグサはスマホを握りしめたまま、窓の外の空を見上げた。数分後、既読がつく。

そして、すぐに返信が届いた。

 

【萌実】

チグサちゃん!?

うわぁ、久しぶりすぎてびっくりしたよ~!

てへっ、昨日はちょっと暴走しちゃったかも……でも、みんなを守りたかっただけなんだ。

チグサちゃんも、ずっと見ててくれたんだね……ありがとう。

 

チグサの唇に、かすかな笑みが浮かぶ。

 

【西園チグサ】

見てたよ。

ENTUMの時、私たちみんなバラバラになったけど……あおぎり高校を見てると、なんか、救われるんだ。

萌実ちゃんの声、ほんとに強かった。

私も、いつかあんな風に、仲間を守れるようになりたいな。

 

萌実からの返信は、すぐに来た。

絵文字がたくさん並んだ、いつもの優しい文面。

 

【萌実】

チグサちゃん……泣きそう。

私も、チグサちゃんのこと、ずっと気になってたよ。

ぺぺちのことも、チグサちゃんのことも、忘れたことなんてないから。

いつか、みんなでまた……話せたらいいね。

あおぎりも、にじさんじも、関係なく。

 

仲間だもんね。チグサはスマホを胸に押し当て、目を閉じた。

涙が一筋、頰を伝う。

 

【西園チグサ】

うん。

仲間だよ。

萌実ちゃん、ありがとう。

第二声帯、かっこよかったよ。

また、いつか……会おうね。

 

萌実からの最後の返信は、ハートがいっぱいのシンプルな一言。

 

【萌実】

うん! 絶対だよ♡♡♡

 

チグサはスマホを置いて、ゆっくり立ち上がった。

窓の外、東京の空はまだ曇りがちだったが、彼女の胸の中には、小さな、でも確かな光が灯っていた。

あおぎり高校と、にじさんじ。

バラバラになったはずの仲間たちが、まだ、繋がっている。アオギリエースの物語は、どんな距離も、どんな時間も超えて、静かに、しかし確かに続いていく――。

 

Fortgesetzt werden

 

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