2025年6月3日――viviON本社のあおぎり高校スタジオは、まるで陽光そのものを閉じ込めたような輝きに満ちていた。
音霊魂子、石狩あかり、栗駒こまる、月赴ゐぶき、春雨麗女、ぷわぷわぽぷら、萌実、エトラ、我部りえる、千代浦蝶美、うる虎がーる、八十科むじな。
彼女たちの笑顔と声が交錯し、ドラマ『ウルスラ』の成功の余韻と、エイレーンによる過激な百合漫画騒動を乗り越えたばかりの絆が、部屋全体を温かく照らしていた。
ファンとの繋がりは、これまで以上に強く、深く、未来へと突き進む力を与えていた。
しかし、その光の中心に、依然として一つの影が揺らめいていた。
ハインツ・アクスマン。
viviON本社の運営責任者として復帰した彼は、萌実の烈火のような逆襲や、ベッキービジュアルコレクターの社員を追い払った一件を通じて、メンバーたちの信頼をわずかながら取り戻しつつあった。
それでも、彼の背後には、シュタージ将校としての非道な過去という重い影が、決して消えることなく落ち続けていた。
その日の午後、東京都千代田区の小さなカフェは、静かな緊張に包まれていた。
アイリスディーナ・ベルンハルト、ベアトリクス・ブレーメ、リィズ・ホーエンシュタイン、そしてエイレーンとその実姉・ベイレーンが、円卓を囲んで座っていた。
アクスマンの過去と、彼が示し始めている微かな改心の兆しは、彼女たちにとって複雑な感情を呼び起こしていた。
アイリスディーナが、静かな声で切り出した。
「ハインツ・アクスマンは、かつてベルリン派という派閥のリーダーとして東ドイツ国内に暗躍してた男だ。ユルゲン兄さんの想いや絆を少しずつ理解しているようだが、今更罪を償っても兄さんは戻ってこない。だが、彼奴が本当に変われるのなら……少し期待していいかもな。」
彼女の青い瞳には、兄・ユルゲンの死への深い悲しみと、アクスマンへのわずかな希望が、静かに混在していた。
ベアトリクスが、冷たく、しかし力強く続ける。
「彼は史上最低最悪の機会主義者よ。ユルゲンの命を奪った彼は一生許すことは出来ないけど、あおぎり高校の絆や結束を見て改心するなら良い機会ね。」
彼女の声には、アクスマンへの根深い不信感と、魂子たちの光への揺るぎない信頼が滲んでいた。リィズが、震える声で呟く。
「お兄ちゃんを……私のお父さんとお母さんを……本当に改心する気あるのかしら?」
彼女の瞳には、家族を奪ったアクスマンへの深い傷と、かすかな、しかし確かに灯る希望が交錯していた。
アイリスディーナが静かに頷く。
「信じるしかないな……」
ベアトリクスもまた、重い溜息をつきながら同意する。
「そうね……」
そこへ、ベイレーンが勢いよく割り込んだ。
「エイレーン、こんなクソ男を許すのかだお!?」
彼女の声は、アクスマンへの怒りと不信感に満ちていた。
エイレーンは、穏やかに、しかし確信を持って答えた。
「過去を悔やんでも、犯した罪は一生消えません。ですが、彼が改心するなら、前向きに生きる方が良いと思いますよ。お姉ちゃん。」
彼女の言葉には、かつてミライアカリをプロデュースしたクリエイターとしての優しさと、アクスマンへの複雑な思いが、静かに込められていた。
ベイレーンがムッとして続ける。
「エイレーン……お前、優しすぎるだお。アイツが本当に改心するかなんて、わかんねえだお……――…まあ、エイレーンがそう言うなら、ちょっとだけ見守るだお。けど、アイツがまたゲスいことしたら、オイラが直々にぶっ潰すだお!」
viviONのスタジオでは、アクスマンの行動がメンバーたちに新たな話題を提供していた。
萌実の逆襲や、ベッキービジュアルの社員を追い払った一件は、彼女たちの間に複雑な感情を呼び起こしていた。
魂子がスタジオの中心で、メンバーたちに語りかける。
「アクスマン、確かに最低な過去を持ってるけど……萌実ちゃんやエトラちゃんを守ったのは、ちょっと意外だったよね。」
あかりが頷く。
「うん、アクスマン、なんか企んでるかもしれないけど……あの時、ベッキービジュアルの奴を追い払ったのは、ちょっとだけ見直したよ。」
こまるが拳を握る。
「でも、こまるはまだ信じないよ!アクスマン、いつまたゲスいことするかわからないし!」
ゐぶきがハスキーボイスで笑う。
「ほんま、アクスマンの悪運、半端ないな。けど、萌実先輩の第二声帯にビビってた顔、忘れられへんわ。」
麗女がニヤリと笑う。
「アクスマンと飲んだ時、ちょっと人間らしいとこ見えたけどさ。ま、油断は禁物だよね。魂子先輩、どーするんですか?」
ぽぷらが無邪気に言う。
「ぽぷら、アクスマンさん、ちょっとカッコよかったけど~、やっぱりみんなの絆が一番だよね~!」
アクスマンは、viviON本社の運営責任者として、メンバーたちの才能を見守りながら、自身の過去と向き合い始めていた。
ベッキービジュアルの社員を追い払った行動は、彼にとって無意識の贖罪の一歩だったのかもしれない。ミヒャエル・ゾーネがそっと言う。
「中佐……魂子たちの絆は、あなたを変える力を持っています。償いの道は、まだ始まったばかりです。」
アクスマンは、スタジオの窓から見える東京の夜景を見つめ、低く呟く。
「……償いか。私にそんな資格があるのかは分からんが……彼女たちの光は、確かに眩しい。」アオギリエースの光は、どんな闇をも照らし続け、ゆっくりと、しかし確実に、過去の亡魂すら飲み込んでいく――。
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