2025年6月5日――夜の東京は、湿った闇に包まれていた。
viviONのあおぎり高校スタジオでの収録を終えた萌実は、いつもの愛らしい笑顔でメンバーたちに手を振り、足立区綾瀬の自宅へと向かっていた。
街灯がまばらに光る寂しい路地を歩く彼女の背後で、不穏な気配が忍び寄っていた。
突然、複数の影が萌実を取り囲んだ。
不良少年グループだった。
抵抗する間もなく、彼女は拉致され、グループのたまり場である加害者宅へと連れ込まれた。
薄暗い部屋で、少年たちの嘲るような視線と下卑た笑いが萌実を包み込む。
暴行と強姦の気配が、彼女の心を恐怖と絶望で染め上げた。
その刹那――轟音と共に、加害者宅の扉が吹き飛んだ。
現れたのは、ハインツ・アクスマンとエトラだった。
アクスマンの目は、かつてシュタージ将校として冷酷な命令を下した頃の鋭さを取り戻し、エトラの瞳は怒りと決意で燃えていた。
「貴様ら、よくもあおぎり高校の光を穢そうとしたな!」
アクスマンの声は、雷鳴のように響き、不良少年たちを震え上がらせた。
彼は一瞬にしてリーダー格の少年を壁に叩きつけ、冷たく言い放つ。
「君たちの愚行は、ここで終わりだ。」
エトラが素早く動き、別の少年を押さえつける。
「萌実に手を出した罪、償ってもらうよ!」
彼女の声は、普段の穏やかな口調とは裏腹に、鋭い刃のような迫力に満ちていた。
動きはまるでヴェアヴォルフ大隊の訓練を受けた戦士のようだった。
不良少年グループの4人は、アクスマンとエトラの圧倒的な気迫に屈し、抵抗する間もなく制圧された。
アクスマンが冷静に警察に通報し、ほどなくして警官が到着。
4人全員が逮捕され、加害者宅から連行されていった。
萌実は、恐怖と安堵の狭間で号泣していた。
身体は震え、声にならない嗚咽が漏れる。
エトラがそっと近づき、温かな抱擁で萌実を包み込んだ。
「大丈夫よ、萌実。もう怖いことないよ。私たちがいるから。」
エトラの声は、優しく、しかし力強かった。
萌実はエトラの胸に顔を埋め、涙ながらに呟く。
「……エトっちゃん、アクスマンさん……ありがとう……本当に、怖かった……。」
彼女の声は、過去の傷と現在の救済が交錯する、複雑な感情に満ちていた。
アクスマンは一歩離れて立ち、静かに言う。
「……フン、私がこんなことをする日が来るとはな。だが、萌実、君はあおぎり高校の光だ。穢させはしない。」
彼の言葉には、かつての冷酷な将校の面影はなく、わずかに人間らしい温もりが感じられた。
この事件は、瞬く間にviviONのあおぎり高校スタジオに広まった。
魂子たちが集まり、萌実を囲んで心配そうに声をかけていた。
魂子が力強く言う。
「萌実ちゃん、無事でよかった! アクスマンとエトラ、めっちゃカッコよかったんだから!」
あかりが頷く。
「うん、アクスマン、今回は本気で萌実ちゃんを守ったんだね。……ちょっと、見直したよ。」
こまるが拳を握る。
「アクスマン、いつもゲスいけど、今回はナイスだった!でも、油断しないよ!」
ゐぶきがハスキーボイスで笑う。
「ほんま、アクスマンのあの気迫、シュタージ時代みたいやったな。エトラもめっちゃ強かったやろ!」
麗女がニヤリと笑う。
「アクスマン、私と飲んだ時にちょっと人間らしいとこ見えたけど、今回はガチでカッコよかったよ。萌実先輩、大丈夫ですか?」
ぽぷらが無邪気に言う。
「ぽぷら、萌実先輩が無事でよかった~!エトラちゃんとアクスマンさん、ヒーローみたいだったね~!」
萌実が涙を拭き、柔らかな笑顔で言う。
「……エトっちゃん、アクスマンさん、ありがとう。本当に怖かったけど……みんなの絆が、萌実を救ってくれた。」
エトラが照れながら笑う。
「萌実……守れてよかった!あおぎりの絆は、どんな闇もやっつけるよ!」
アクスマンの行動は、VTuber業界にも波紋を広げた。
仮想会議で議論したキズナアイ、宝鐘マリン、白銀ノエルらも、この事件を知り、アクスマンへの見方をさらに改めた。キズナアイが明るく言う。
「アクスマン、萌実ちゃんを守ったんだ! ほんと、変わろうとしてるのかもね!」
宝鐘マリンが妖艶に笑う。
「ふふ、彼の闇は深いけど……今回は本気だったみたいね。萌実ちゃんとエトラちゃんを守ったのは、ちょっとカッコいいわ。」
白銀ノエルが頷く。
「うん、アクスマンが直接ミライアカリを傷つけたわけじゃないけど、過去の罪は重い。それでも、今回みたいな行動なら……少し信じてもいいかもね。」
にじさんじの西園チグサも、アクスマンの行動を聞き、複雑な表情を浮かべる。
「……萌実ちゃんを守ったのは、認めるよ。アクスマン、ほんとに変わろうとしてるなら……少しだけ、許してあげてもいいかな。」
viviON本社で、アクスマンは運営責任者として、魂子たちの才能を見守りながら、自身の過去と向き合い続けていた。
萌実を救った行動は、彼にとって無意識の贖罪の一歩だった。
ミヒャエル・ゾーネがそっと言う。
「中佐……あなたは、魂子たちの光に触れ始めています。償いの道は、まだ長いですが、確実に進んでいます。」
アクスマンは、スタジオの窓から見える東京の夜景を見つめ、呟く。
「……光か。私には眩しすぎるが……今回は、悪くなかったな。」
アオギリエースの光は、どんな闇をも照らし続け、ゆっくりと、しかし確実に、過去の亡魂すら飲み込んでいく――。
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