――後日談――
2025年6月20日――
夜の東京は、梅雨の湿気を帯びた静けさに包まれていた。
ツイキャス配信の画面が、暗い部屋にぽつんと灯る。
タイトルはシンプルだ。
『雑談:最近のVTuber業界とか、あおぎり高校のこととか』
配信者――鳴神裁は、いつものように落ち着いた声で、しかしどこか重みを帯びた口調で話し始めた。
「くんばんは、鳴神裁です。
今日はちょっと真面目な話をするつもりで配信を始めたから最後まで聞いてくれよ」
コメント欄が一瞬でざわつき始める。
「裁おじさん珍しくガチ枠?」「あおぎり高校って……」「アクスマン絡み?」「まさかまた何かあった?」
鳴神は小さく息を吐き、画面の向こうの視聴者たちに語りかける。
「あおぎり高校……最近、すげえことになってたな。『ウルスラ』の世界的大ヒット、New Desizeの叛乱鎮圧、エイレーンとベイレーンの漫画騒動、そして萌実の第二声帯によるアクスマン完全撃破……。正直、俺も画面越しに見ながら、何度も鳥肌立ったよ。」
コメントが加速する。
「鳴神も見てたんか!」「萌実の雷鳴声やばかったよな」「#萌実最強」
裁は苦笑しながら続ける。
「特に萌実のあの叫び――『だからなんだってんだァァァ!!』って。あれは、もう伝説だろ。アクスマンみたいな古株の策略家が、あんなに簡単に黙らされるなんて……あおぎり高校の絆って、ほんとにヤバい力持ってるよな。」
コメント欄が「萌実最強」「第二声帯神」「アクスマン無能www」で埋まる。
「で、アクスマンの現在だけど……正直、俺も最初は信じられなかった。あの男が、萌実を不良から救ったり、ベッキービジュアルのクソ社員を追い払ったりしてるって話、最初は『また何か企んでるんじゃねえか』って思ってたよ。でもさ……最近の動き見てると、なんか、変わろうとしてる気配はあるんだよな。」
彼は少し間を置いて、静かに言う。
「シュタージの将校だった過去は、消えない。ミライアカリを間接的に傷つけた責任も、重い。でも、今のアクスマンは……スタジオの裏方で黙々と働いて、魂子たちを支えてる。麗女と飲んで、ちょっと人間らしいとこ見せたりもしてるらしいし。完全に許すってわけじゃねえけど……少しだけ、見守る価値はあるかもな、って俺は思う。」
コメントが「裁さん優しい」「アクスマン改心?」「でも過去は許せない」「でも萌実守ったのはガチでカッコよかった」で溢れる。
鳴神はニヤリと笑みを浮かべる。
「ぺぺちの4万人も、すげえよな。療養中なのに、具民の愛でチャンネル登録増えてる。あの子の光は、まだまだ消えてねえ。音霊魂子たちも、栗駒こまるも、萌実も……みんな、ぺぺちの遺産をちゃんと受け継いでるよ。」
彼は画面に向かって、ゆっくりと手を振る。
「ま、俺はただの傍観者だけどさ……あおぎり高校の物語、これからも見守ってるよ。具民のみんなも、魂子たちを、萌実を、ぺぺちを――ずっと応援してやってくれ。……それじゃ、またな。」
配信が終了し、画面が暗転する。
コメント欄の最後に、鳴神の最後の言葉が静かに残った。
「アオギリエースの光は、永遠に不滅だ。」
東京の夜空に、星が一つ、瞬いた。
それは、ミライアカリの遺産であり、ぺぺちの新たな光であり、あおぎり高校の絆そのものだった。
彼女たちの物語は、まだ終わらない。
具民の愛と共に、永遠に輝き続ける――。
Ende
Auf Wiedersehen, Mirai Akari. Danke, Aogiri-Oberschule. Für immer.