ENTUM23   作:マブラマ

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第44話 風のララバイ

2018年7月某日、株式会社ENTUM 第3スタジオ

株式会社ENTUMの第3スタジオは、まるでライブ会場のような熱気に包まれていた。録音ブースのガラス越しに響くビート、防音壁を震わせる歓声の代わりに、スタジオに集った仲間たちの手拍子と笑顔が空気を満たす。スポットライトの代わりにモニターの光が皆守ひいろを照らし、彼女の歌声がスタジオを一瞬にして魔法の空間に変えた。

「みんな声をあわせて WOO YEAH! 腕をのばして そうそう WOO YEAH!」

ひいろの声は、まるで太陽のように明るく、スタジオの隅々まで響き渡った。彼女はマイクを握りしめ、汗と笑顔で輝きながら歌う。

「一体感がでてきちゃう WOO YEAH! WOO YEAH! 魔法の言葉♪」

「ひいろちゃーーーーーーーーん!」

ミライアカリがブースの外で飛び跳ね、両手を振って応援した。彼女の声は純粋な興奮に満ち、ひいろの歌に合わせて体が自然と揺れる。

もちひよこがそっと隣で手を叩き、「♪」と小さなハミングで盛り上げに加わった。

アイリスディーナはコントロールルームで腕を組み、ひいろの歌をじっと聴いていた。彼女の厳しい表情が一瞬緩み、静かに尋ねた。

「何故、この歌を選んだ?」

ベアトリクスは隣で軽く肩をすくめ、口元に微笑を浮かべた。

「聞く必要なくて?」

その言葉には、ひいろのパフォーマンスへの信頼と、わずかな満足感が滲んでいる。

ひいろは歌い続け、まるで目の前に何千人もの観客がいるかのように全身で表現した。「楽しんでくれたなら嬉しいです アリーナや2階席や3階席も、見える! 今はまだエアだけど それくらいの笑顔視野にはいってます♪」

彼女の声には、夢を追いかける情熱と、仲間たちへの感謝が込められていた。

「ひいろちゃーーーーーーん!」

アカリの声が再び響き、今度は届木ウカとカタリーナが「♪」とハーモニーを添えた。スタジオの空気が、まるで本物のライブ会場のように熱く、温かく変わっていく。

ひいろの歌はさらに勢いを増し、観客を巻き込むように高揚した。

「あのドアの端っこにもたれてる 初めてでアウェイ感だしている きみもこの曲でノレるから こぶしをにぎって準備をしてね!」

彼女の視線は、スタジオの隅に立つスタッフや仲間たちを捉え、一人ひとりに笑顔を届ける。

「この世界にあふれるたくさんのイベント そのなかで選んでくれたのありがとう いっちゃいましょう 一緒に WOO YEAH!」

ひいろの歌声は、まるで魔法の言葉のように、スタジオにいる全員の心を一つにした。

アカリがまた叫んだ。

「ひいろちゃーーーーーーーーーん!」

彼女の声に、ニコラ、ファルカ、カタリーナが手拍子で応え、スタジオは一体感に満ち溢れた。

ひいろは一瞬目を閉じ、歌に全てを込めた。

「毎日が祭りならいいのになぁ 毎日がライブならいいのにな だけどライブからライブまでの 毎日それもねライブです」

彼女の声は優しく、しかし力強く、仲間たちへの深い絆を歌い上げる。

「みんなに会うシアワセ みんなといるシアワセ ずっとずうっとよろしくね わたしの居場所です 信じていきます」

ニコラがそっと「♪」と口ずさみ、ファルカも笑顔でリズムを取った。カタリーナの瞳には、ひいろの情熱に共鳴する光が宿っている。

ひいろの歌はクライマックスへ突き進む。

「満開全開 それでは WOO YEAH! 単純明快 それそれ WOO YEAH! ちっちゃいコトは飛んでいく それがライブの醍醐味!」

彼女はマイクを高く掲げ、まるで世界中の人々を繋ぐように歌った。

「ちっちゃい子も おじいちゃんも 言葉がちがってても ワールドワイドにできること WOO YEAH! WOO YEAH! 大合唱!」

「ひいろちゃーーーーーーーーーーーーーん!!♪」

アカリの声が最高潮に達し、スタジオにいる全員が一つになって手拍子を打ち鳴らした。

ひいろは最後のフレーズを全力で歌い上げた。

「最高のエンタメ 誰のため YEAH! YEAH! みんなのためなら えんやこりゃだ YEAH! YEAH! ありゃありゃ 止まらない 楽しいね YEAH! YEAH! 最後にもう一度 大きくね! YEAH! YEAH!♪」

歌が終わると、スタジオは一瞬の静寂に包まれた。だが、すぐにアカリの歓声と仲間たちの拍手が響き合い、ひいろの笑顔を祝福した。

アイリスディーナは静かに頷き、渋い声で呟いた。

「うむ、いい歌声だ」

彼女の言葉には、ひいろへの確かな評価が込められていた。

ベアトリクスはコントロールルームのモニターを一瞥し、満足げに言った。

「テコ入れしたけど効果はあったようね。これで再生数は伸びる事は間違いないわ」

彼女の口元には、戦略が成功した自信と、ひいろの才能への賞賛が浮かんでいた。

ひいろはブース内で深く息をつき、マイクを下ろして仲間たちを見やった。彼女の瞳には、達成感と、仲間たちと共有した魔法のような時間が輝いている。

だが、スタジオの熱気が冷めやらぬ中、月夜ソラとユメノツキミの不在は、ひっそりと影を落としていた。彼らの物語は、別の場所でどんな旋律を奏でているのか――それは、まだ誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お台場海浜公園は、夜の帳が下りた後も静かな輝きに満ちていた。東京湾の水面には、レインボーブリッジや高層ビルの光が揺らめき、まるで星空が地上に降りてきたかのよう。そよ風が潮の香りを運び、公園のベンチに腰掛ける月夜ソラとユメノツキミの髪を優しく揺らした。二人は肩を寄せ合い、初デートの余韻に浸りながら、目の前の夜景に目を奪われていた。

「綺麗な景色………」

ツキミの声は、まるで夢の中にいるように柔らかかった。彼女の瞳には、夜の光がキラキラと映り、どこか遠くを見つめるような穏やかな笑みが浮かんでいる。

「そうっスね……」

ソラはツキミの横で頷き、いつもより少し静かな口調で答えた。彼女の手はベンチの縁を握り、夜景よりもツキミの横顔に視線が引き寄せられている。

ツキミはふとソラを振り返り、頬をほのかに染めて口を開いた。

「ソラ君、私…貴方と出逢って…その…好きになったの……私は」

彼女の声は震え、言葉を紡ぐたびに心臓の鼓動が聞こえてきそうだった。告白の言葉は、夜の静寂にそっと溶け込み、まるで二人だけの世界を作り上げた。

ソラは一瞬目を丸くし、ツキミの真剣な瞳を見つめた。彼女の口元に、ゆっくりと温かい笑みが広がる。

「そうっスね。俺もツキミちゃんと同じだよ」

「え…………?」

ツキミの声が小さく震え、驚きと喜びが彼女の表情を彩った。彼女の手が無意識にソラの袖を握り、夜の光がその瞬間を優しく照らす。

ソラはツキミの手をそっと握り返し、まっすぐに彼女を見つめた。

「お互い付き合いましょう!」

その言葉は、シンプルだが力強く、まるで夜空に新しい星を灯すようだった。

「‥‥ソラ君………」

ツキミの瞳に涙が光り、彼女はソラの胸にそっと寄りかかった。二人の間に流れる時間は、まるで永遠のように温かく、甘酸っぱい。

だが、その瞬間――

バラバラバラバラ!

突然、空を切り裂くような轟音が響き渡った。夜空に黒い影が現れ、強烈な風が公園の木々を揺さぶる。

「ん?」

ソラが顔を上げ、夜空を見上げた。

「何?」

ツキミも慌てて視線を上げ、ソラの手を握りしめた。

二人の視線の先には、巨大なMi-24――通称ハインドと呼ばれる攻撃ヘリコプターが、低空で旋回していた。その重厚な機体は、夜の光を反射しながら不気味な存在感を放ち、まるで二人の甘い瞬間を嘲笑うかのようだ。

ソラはツキミを庇うように立ち上がり、ニヤリと笑った。

「さて、ツキミちゃん。デートにちょっとしたスパイスが加わったぜ」

ツキミは目を丸くしたが、ソラの頼もしさに笑顔を取り戻した。「ソラ君…何!?」

ハインドのローター音が夜空を支配する中、月夜ソラとユメノツキミの新たな冒険が、予期せぬ形で幕を開けようとしていた。告白の余韻も束の間、二人の物語はまだまだ終わらない――いや、むしろこれからが本番だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お台場海浜公園の夜は、まるで宝石箱をひっくり返したような美しさだった。レインボーブリッジの光が東京湾の水面に映り、遠くの高層ビルが星のように瞬く。月夜ソラとユメノツキミはベンチに寄り添い、互いの気持ちを確かめ合ったばかりの甘い余韻に浸っていた。だが、その静かな幸福は、突然の轟音によって切り裂かれた。

バラバラバラバラ!

夜空を震わせる重厚なローター音が響き、巨大なMi-24――通称ハインドと呼ばれる攻撃ヘリコプターが低空で旋回していた。ヘリコプターの機体は、夜の光を鈍く反射し、まるで黒い猛禽類のように不気味な存在感を放つ。

ヘリコプターのコックピット内で、ミヒャエルが双眼鏡越しに地上を見下ろした。彼の声が、無線越しに弾けるように響く。

《月夜ソラ、ユメノツキミ!2人を確認! 少佐!》

ミヒャエルの報告は、まるで戦場のような緊迫感と、どこか彼の個性が滲むユーモラスな勢いを持っていた。

ベアトリクスの声が即座に応じた。

「煙幕を張れ!」

彼女の命令は冷たく、一切の迷いを許さない。ヘリコプターの操縦席に座る彼女の瞳は、獲物を逃がすまいと鋭く光っている。

「ハッ!」

ミヒャエルが素早くスイッチを操作すると、バシュウッ! とけたたましい音が響き、ヘリコプターから白い煙幕が一気に噴射された。煙は夜空に広がり、お台場海浜公園の上空を覆い尽くす。

地上では、ソラがツキミの手を握り、空を見上げていた。

「何だあれ!?」

彼女の声には驚きと、どこかこの状況を楽しむような興奮が混じっている。

ツキミはソラの腕にしがみつき、煙幕に隠れゆくヘリコプターを見つめた。

「ソラ君…どうするの!?」

彼女の声は不安に震えていたが、ソラの手の温もりに安心を求めていた。

煙幕が公園を包み込む中、ハインドのローター音が一層大きく響く。ベアトリクスの追跡は、月夜ソラとユメノツキミの初デートの甘い夜を、まるでアクション映画のようなスリリングな舞台へと変えた。

ソラはニヤリと笑い、ツキミの手を引いて走り出した。

「逃げるしかねえ! 行くぞ、ツキミちゃん!」

二人の背後で、煙幕の中からハインドのシルエットが不気味に浮かび上がる。告白の余韻も束の間、月夜ソラとユメノツキミの新たな試練が始まり、二人は煙幕を突き抜け、公園の端に停めてあったガーランドに辿り着いた。ソラは素早く跨り、エンジンをかけるためにキーを捻った。

 

ギュルルル……!

 

ガーランドのエンジンが唸りを上げ、だが、まだ始動しない。

「掛かってくれ!」

ソラが焦りを滲ませながら叫び、再度キーを捻る。彼女の額には汗が滲み、背後から迫るハインドのローター音がプレッシャーを増す。

ギュルルルル……!

エンジンはまだ始動せず、ソラの焦りがピークに達した。

「早く!」

ギュルルルル……!

その瞬間、ようやくエンジンが火を吹き、グアアアアアアアアア! とガーランドが咆哮を上げた。

グアアアアアアアアアア!

バイク型ロボットは一気に加速し、煙幕の中を突き抜ける。ソラはハンドルを握りしめ、風を切る勢いで公園の外へ飛び出した。

「げほ! げほ!」

ソラが煙を吸い込んで咳き込みながら、視界の悪い中を必死に運転した。

「煙たいよー!」

ツキミもソラの背中で咳き込み、目を擦りながら訴えた。彼女の髪は煙で乱れ、顔には煤がうっすらと付いている。

「クソ!」

ソラが苛立ちを吐き出し、ガーランドをさらに加速させた。ブオオオォォォー! とエンジンが咆哮し、バイクは煙幕を抜けてお台場の夜道へと突き進む。

だが、背後ではハインドのローター音がまだ遠ざからない。ベアトリクスの追跡は執拗で、鋭い視線で地上を見下ろし、月夜ソラとユメノツキミの逃走するガーランドの軌跡を追っていた。

「逃がすな! 追跡しなさい!」

ベアトリクスの命令が、無線越しに冷たく響いた。彼女の声は一切の感情を排除し、まるで機械のように冷酷だ。

「ハッ!」

ミヒャエルが即座に応じ、操縦桿を握り直してヘリコプターを加速させた。ハインドの機体が低空で旋回し、ガーランドを追い詰めるように距離を詰める。

二コラはコックピットの隅で、複雑な表情を浮かべた。「逃避行ですか……」

彼女の呟きには、ソラとツキミの行動に対する驚きと、どこか理解するような柔らかさが混じっていた。

ベアトリクスは無言で二コラを一瞥し、視線を再び地上に戻した。「……」

彼女の沈黙は、重く、まるで嵐の前の静けさのようだった。

 

ベアトリクスの頭の中で、ガーランドの存在がもたらす影響が計算されていた。

「(あれが世間に知られ拡がって行ったら、他の会社がデッドコピーとして作られてしまうわ。事前に止めないと)」

彼女の瞳が鋭く光り、決断が下った。

「実弾の使用を許可する」

「え!? 2人はまだ高校生ですよ!」

二コラが思わず声を上げ、ベアトリクスの非情な命令に抗議の色を浮かべた。彼女の目は、驚きと葛藤で揺れている。

「だから何?」

ベアトリクスの返答は冷酷そのものだった。彼女の視線は、ソラとツキミをただのターゲットとして捉え、一切の感情を排除している。

「……了解しました」

二コラは唇を噛み、渋々命令に従った。

「YakB-12.7発射用意。目標:月夜ソラ、ユメノツキミの2名」

彼女の声は震えていたが、プロフェッショナルとしての責任感がそれを抑え込んだ。

「了解! YakB-12.7発射!」

ミヒャエルが即座に応じ、ハインドの機銃システムを起動させた。

ENTUM直属のヘリ操縦士がトリガーを引き、叫んだ。

「発射!」

ガガガガガガガガガガガガガガガガ!

ハインドのYakB-12.7機関銃が火を噴き、夜空を切り裂く銃弾がガーランドを追った。銃声が東京湾に反響し、煙幕の残骸を突き抜けて地上へと降り注ぐ。

お台場の夜は、恋の逃避行から一転、命をかけた追跡劇の舞台と化した。月夜ソラとユメノツキミは、実弾の雨をくぐり抜け、果たしてこの危機を乗り越えられるのか――その答えは、夜の闇の中に隠されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お台場の夜道は、Mi-24ハインドの機関銃が放つ銃弾の嵐によって戦場と化していた。ガガガガガガガガガガガガガガガガ! というけたたましい銃声が夜空を切り裂き、アスファルトに火花が散る。月夜ソラとユメノツキミを乗せたガーランドは、まるで黒い雷鳴のように加速し、実弾の雨を必死にかわしながら疾走していた。

「嘘だろ!!?」

ソラが叫び、ガーランドのハンドルを握る手に汗が滲んだ。彼女の目は背後から迫る銃弾の軌跡を捉え、信じられない状況に顔が引きつる。ハインドの機関銃が放つYakB-12.7の弾丸が、地面を抉り、街灯を粉々に砕いた。

グアアアアアアアアアアアア!

ガーランドのエンジンが咆哮し、ソラはバイク型ロボットを限界まで加速させた。彼女はハンドルを切り、路地を縫うように逃走するが、背後のハインドは執拗に追いすがる。

「ソラ君…!」

ユメノツキミがソラの背中にしがみつき、恐怖に震える声で叫んだ。彼女の髪は風と銃弾の衝撃で乱れ、顔には煤と汗が混じっている。だが、ソラの背中に感じる温もりが、彼女にわずかな安心を与えていた。

「しっかり捕まれ!」

ソラが叫び返し、ツキミの腕を一瞬確認した。彼女の声には危機感が滲むが、ツキミを守る決意がしっかりと響いている。

グアアアアアアアアアアアアアアア!

ガーランドは再び加速し、路地の角をギリギリで滑り抜けた。銃弾がコンクリートの壁を抉り、破片が宙を舞う。ソラは歯を食いしばり、状況を整理しようと頭をフル回転させた。

「何だよ! どうなってるんだ!!?」

ソラの叫びが夜道に響き、ハインドのローター音に掻き消された。彼女の心臓は激しく鼓動し、頭の中ではガーランドを盗んだこと、ベアトリクスの追跡、そしてこの異常なまでの攻撃の理由が渦巻いている。

お台場の夜は、恋の逃避行から命がけのサバイバルへと一変した。月夜ソラとユメノツキミは、実弾の雨をくぐり抜けながら、果たしてこの危機を乗り越えられるのか――その答えは、夜の闇と銃弾の先に隠されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Mi-24ハインドのコックピット内は、緊張と焦燥が入り混じった空気に包まれていた。ローターの重低音が機体を震わせ、夜空を切り裂くエンジン音が追跡の執念を物語る。ベアトリクスの命令のもと、月夜ソラとユメノツキミを乗せたガーランドを追うハインドは、先ほどのYakB-12.7機関銃の攻撃が外れたことで、さらに攻撃をエスカレートさせようとしていた。

「全弾外れました」

ミヒャエルが無線越しに報告し、操縦桿を握る手に苛立ちが滲む。彼の声には、ターゲットを仕留めきれなかった焦りと、次の一手への緊張が混じっていた。

二コラはコックピットのモニターを睨み、冷静だが鋭い声で次の指示を下した。

「S-5ロケット弾発射だ! 攻撃を許可する」

彼女の言葉は、まるで氷のように冷たく、一切の迷いを排除していた。

ミヒャエルが思わず声を上げた。

「しかしこれはやり過ぎでは!?」

彼の声には、ソラとツキミがまだ高校生であることへの躊躇と、命令の過酷さに対する抵抗が滲んでいる。

二コラは一瞬目を細め、ミヒャエルの抗議を一蹴するように言った。

「威嚇射撃だ。直撃させるな!」

彼女の声には、命令を守るプロフェッショナリズムと、わずかな人間味が混在していた。ソラとツキミを傷つけるつもりはない――だが、ガーランドを止めるためには手段を選ばない覚悟がそこにはあった。

「りょ、了解です……S-5ロケット弾発射準備!」

ミヒャエルは渋々頷き、機体の武器システムを操作した。ハインドのロケットポッドがカチリと音を立て、発射準備が整う。

ENTUM直属のヘリ操縦士が即座に応じ、トリガーに指をかけた。

「了解! S-5ロケット弾発射!」

バシュウッ!

ハインドのロケットポッドからS-5ロケット弾が一斉に発射され、夜空に炎の尾を引いて地上へと降り注いだ。ロケット弾はガーランドの周囲を狙い、アスファルトを抉り、爆風が夜道を揺さぶる。威嚇射撃とはいえ、その威力は凄まじく、お台場の夜はまるで戦場のような混乱に包まれた。

ハインドの追跡はさらに過熱し、月夜ソラとユメノツキミの逃走劇は、ますます命がけのサバイバルへと突き進んでいく。果たして二人はこの危機を乗り越えられるのか――その答えは、夜の闇と爆風の先に隠されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM21:30 お台場近郊の夜道

お台場の夜道は、Mi-24ハインドから放たれたS-5ロケット弾の爆風で地獄絵図と化していた。ロケット弾がガーランドの周囲に着弾し、アスファルトが抉れ、爆炎が夜空を赤く染める。月夜ソラとユメノツキミを乗せたガーランドは、まるで黒い雷鳴のように疾走しながら、爆風をギリギリでかわしていた。

「ミサイルだ!」

ソラが叫び、背後で炸裂するロケット弾の炎を目で追った。彼女の額には汗が滲み、ガーランドのハンドルを握る手に力がこもる。ハインドの執拗な追跡と、威嚇射撃とはいえあまりに危険な攻撃に、彼女の心は焦りと怒りで煮えたぎっていた。

「私怖いよ…!」

ユメノツキミがソラの背中にしがみつき、震える声で訴えた。彼女の小さな体は爆風の衝撃で揺れ、顔は恐怖に青ざめている。だが、ソラの背中に感じる温もりが、彼女にわずかな勇気を与えていた。

「クソ……! 遣るしかないか!」

ソラが歯を食いしばり、決意を固めた。彼女の目は鋭く光り、ガーランドのコンソールに手を伸ばす。

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

ガーランドの装甲が再び動き出し、金属が軋む音が響いた。バイク型ロボットは瞬時に変形し、突撃砲を備えた戦闘形態へと移行する。車体のパーツがカチリと嵌まり合い、まるで生き物のように新たな姿を現した。

ソラは突撃砲を構え、ハインドを見据えた。

「俺達の……!」

彼女の声は怒りに満ち、ツキミを守るための覚悟が込められている。

ジャキッ!

突撃砲がロックされ、ソラの指がトリガーに掛かった。

「邪魔をするなーーーーーーーーーーーー!」

ソラの叫びが夜空を切り裂き、ガガガガガガガガガガガガガガガ! と突撃砲が火を噴いた。ガーランドから放たれた弾丸がハインドに向かって飛び、夜道に火花と銃声が響き合う。

爆風と銃弾が交錯する中、月夜ソラとユメノツキミの逃走劇は新たな局面を迎えていた。ガーランドの反撃がハインドにどう影響を与えるのか、そして二人はこの危機を乗り越えられるのか――お台場の夜は、さらなる混沌へと突き進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お台場上空を旋回するMi-24ハインドのコックピット内は、戦場さながらの緊張感に包まれていた。月夜ソラが駆るガーランドからの突撃砲の反撃が、ハインドの装甲をかすめ、火花が夜空に散る。ローターの重低音と銃声が交錯し、追跡劇は一触即発の戦闘へと突入していた。

「撃って来た!」

ミヒャエルが叫び、操縦桿を握る手に汗が滲んだ。ガーランドから放たれた弾丸がハインドの機体を掠め、警告音がコックピット内に鳴り響く。彼の声には驚きと、戦闘への覚悟が混じっていた。

ベアトリクスは冷静に、だが鋭く命令を下した。

「応戦しろ!」

彼女の声は冷たく、一切の躊躇がない。彼女の瞳は、ガーランドを逃がすまいと燃え上がり、追跡の執念がハインドの機体を突き動かす。

「ハッ!」

ミヒャエルが即座に応じ、機銃システムを再起動させた。ハインドのYakB-12.7機関銃が再び唸りを上げ、応戦の準備が整う。

ガガガガガガガガガ!

ハインドから放たれた機関銃の弾幕が、ガーランドに向かって降り注いだ。銃弾が夜道を切り裂き、アスファルトに火花を散らし、ガーランドの周囲を包囲するように襲いかかる。

お台場の夜は、月夜ソラとユメノツキミの逃走劇から、ハインドとの全面対決へと一変した。

お台場の夜道は、銃弾と爆風が織りなす戦場と化していた。月夜ソラとユメノツキミを乗せたガーランドは、Mi-24ハインドからの執拗な攻撃をかわしながら、突撃砲で反撃を続けている。夜空を切り裂く銃声と、ガーランドのエンジンの咆哮が響き合い、戦闘は一進一退の攻防を繰り広げていた。

「これだから大人は!」

ソラが叫び、ガーランドの操縦桿を握る手に怒りが滾った。彼女の声には、大人たちへの苛立ちと、自由を奪おうとする追跡への反抗心が込められている。ハインドの機関銃が放つ弾幕がガーランドをかすめ、アスファルトに火花が散る中、ソラの目は燃えるように鋭く光っていた。

グアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

ガーランドが再び咆哮を上げ、ソラは突撃砲をハインドに狙いを定めた。バイク型ロボットの装甲が夜の光を反射し、まるで黒い雷霆のように疾走する。

「堕ちろーーーーーーーーー!」

ソラの叫びが夜空を切り裂き、突撃砲が火を噴いた。ガガガガガ! と放たれた弾丸がハインドに向かって飛び、機体をかすめて火花を散らす。彼の声には、ハインドを撃ち落とす決意と、ツキミを守るための覚悟が込められていた。

戦闘の熱気はさらに高まり、月夜ソラとユメノツキミの逃走劇は、ハインドとの壮絶な対決へと突き進んでいく。果たしてソラの反撃はハインドを退けられるのか――その答えは、銃煙と夜の闇の先に隠されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お台場上空での戦闘は、まるで夜空を舞台にした壮絶な空中戦のようだった。月夜ソラが駆るガーランドから放たれた突撃砲の弾丸が、Mi-24ハインドに向かって襲いかかる。火花と銃声が交錯する中、ハインドのコックピット内では、ベアトリクスとミヒャエルが冷静に状況を掌握していた。

「回避だ」

ベアトリクスの声が、無線越しに鋭く響いた。彼女の命令は冷たく、一切の動揺がない。ガーランドの弾丸が迫る中、彼女の瞳はまるで戦場を見据える鷹のように鋭く光っている。

「ハッ!」

ミヒャエルが即座に応じ、操縦桿を力強く操作した。ハインドの機体が急旋回し、ローターが空気を切り裂く音が一層高まる。ガーランドの弾丸はハインドをかすめ、夜空に火花を散らして消えた。

ハインドは機敏な動きで攻撃を回避し、再びガーランドを追跡する態勢を整えた。ベアトリクスの冷酷な指揮とミヒャエルの操縦技術が、追跡チームのプロフェッショナリズムを際立たせる。

お台場の夜道を疾走するガーランドは、Mi-24ハインドとの壮絶な戦闘の真っ只中にあった。月夜ソラが放った突撃砲の弾丸は、夜空を切り裂いてハインドに迫ったが、敵の機敏な回避によって空を切った。ソラとユメノツキミを乗せたガーランドは、依然として追跡の危機から逃れられずにいる。

「避けられた!?」

ソラが叫び、ガーランドの操縦席で目を丸くした。彼女の視線は、ハインドが急旋回して弾丸を回避する姿を捉え、驚きと苛立ちが顔に浮かぶ。ハンドルを握る手に汗が滲み、背後から迫るローター音が彼女の焦りをさらに煽った。

カチ、カチ。

突撃砲のトリガーを引くが、反応がない。乾いた音だけが虚しく響き、ソラの心臓が一瞬止まった。

「弾切れ!!!?」

ソラの叫びが夜道に響き、彼女の声には危機感と絶望が混じっていた。ガーランドのディスプレイに表示された弾薬カウンターがゼロを示し、戦闘の主導権が一気にハインド側に傾く。

背後では、ハインドが再び攻撃態勢を整え、月夜ソラとユメノツキミに迫る。弾切れという最悪のタイミングで、ガーランドの反撃手段が失われた今、二人の逃走劇はさらに絶体絶命の状況へと突き進んでいく――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お台場上空を旋回するMi-24ハインドのコックピット内は、戦闘の熱気と緊張感に包まれていた。月夜ソラのガーランドが弾切れで反撃手段を失った今、ベアトリクス率いる追跡チームは一気に攻勢を強めようとしていた。ローターの重低音が夜空を震わせ、ハインドの機体は獲物を仕留める猛禽類のようにガーランドに迫る。

「ワイヤーを展開しろ」

ベアトリクスの声が無線越しに響き、冷酷な命令がコックピット内に重く響いた。彼女の瞳は鋭く、ガーランドを絡め取るための次の戦略を冷静に計算している。ワイヤーを使えば、ガーランドの機動力を封じ、一網打尽にできる――彼女の頭の中では、勝利が目前に迫っていた。

だが、その瞬間――

「待ってください!」

ミヒャエルが叫び、操縦桿を握る手が一瞬止まった。彼の声には、命令への躊躇と、何かを見逃せない緊迫感が滲んでいる。

「!!?」

ベアトリクスが鋭い視線をミヒャエルに向けた。彼女の眉がピクリと動き、いつも冷静な彼女の表情に、初めて動揺の色が浮かんだ。ミヒャエルの制止には、ただの抗議ではない何かが隠されている――その予感が、ベアトリクスの心に一瞬の波紋を広げた。

ハインドのローター音が響く中、追跡劇は新たな展開を迎えようとしていた。ミヒャエルの叫びが何を意味するのか、そしてガーランドを巡る戦闘の行方は――夜の闇と緊張の先に隠されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お台場の夜道は、先ほどの銃撃戦と爆風の喧騒が嘘のように静まり返っていた。月夜ソラとユメノツキミを乗せたガーランドは、路地の影に身を潜め、Mi-24ハインドの追跡を一時的に振り切ったかに見えた。だが、ガーランドの突撃砲は弾切れ、エンジンの熱は限界に近く、二人の状況は絶体絶命のままだった。

「……」

ソラはガーランドの操縦席で無言のまま、荒々しい息を整えていた。彼女の目は遠くを見つめ、ハンドルを握る手に力が入らない。いつもは無鉄砲で前向きな彼女の表情に、初めて疲労と諦めの色が浮かんでいる。ハインドの執拗な追跡、弾切れの現実、そしてツキミを守る責任――その全てが、彼女の心に重くのしかかっていた。

ユメノツキミはソラの背中に寄り添い、静かに彼の背中を見つめた。

「(ソラ君…白旗を…)」

彼女の心の中で、諦めの言葉が渦巻く。ツキミの小さな手はソラのジャケットを握りしめ、恐怖と疲労で震えていた。だが、ソラの背中に感じる温もりが、彼女にまだ希望を捨てない理由を与えていた。

夜の静寂が二人の間を包み、遠くでハインドのローター音が再び近づいてくる。絶望的な状況の中、月夜ソラとユメノツキミの絆だけが、かすかな光として残っていた。果たして二人はこの危機を乗り越えられるのか――その答えは、まだ夜の闇の中に隠されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お台場上空を旋回するMi-24ハインドのコックピット内は、緊張感が張り詰めていた。ローターの重低音が夜空を震わせ、眼下の路地で一時停止したガーランドの姿がサーチライトに照らし出される。月夜ソラとユメノツキミが白旗を掲げたように見える状況に、追跡チームの動きも一瞬だけ静止した。

「白旗を挙げています」

ミヒャエルが双眼鏡越しに状況を確認し、無線越しに報告した。彼の声には、戦闘の終結を予感させる安堵と、なおも残る警戒心が混じっている。ガーランドの動きが止まり、白旗が見えたことで、彼の心に一瞬の緩みが芽生えていた。

「……油断するな! ハッタリかもしれないわ」

ベアトリクスの声が、冷たく鋭く響いた。彼女の瞳はガーランドを射抜くように鋭く、一切の隙を見せない。白旗という状況にも関わらず、彼女の頭の中ではソラの狡猾さと、ガーランドの未知の能力に対する警戒が渦巻いている。彼女の言葉は、ミヒャエルの緩みを一瞬で引き締めた。

「ハッ!」

ミヒャエルが即座に姿勢を正し、操縦桿を握り直した。彼の視線は再びガーランドに固定され、ベアトリクスの疑念に従い、万が一の反撃に備える。ハインドの機体が低空で旋回を続け、サーチライトがガーランドを照らし続ける中、戦闘の緊張感は再び高まった。

白旗は本物か、それともソラの策略か――ベアトリクスの鋭い直感が、追跡劇に新たな局面をもたらそうとしていた。

月夜ソラとユメノツキミを乗せたガーランドは、白旗を掲げたように見せかけ、Mi-24ハインドのサーチライトに照らされていた。だが、それはベアトリクスの疑念通り、ソラの仕掛けたハッタリだった。

「今だ!」

ソラが叫び、ガーランドの操縦席で一気にアクセルを捻った。彼の目は鋭く光り、ハインドの動きが一瞬緩んだ瞬間を見逃さなかった。白旗を掲げたのは、追跡チームの油断を誘うための策略――ソラの無鉄砲な性格と狡猾さが、この危機的状況で活きた。

グアアアアアアアアアアアアアアア!

ガーランドのエンジンが咆哮を上げ、バイク型ロボットが一気に加速した。アスファルトを削るタイヤの音が夜道に響き、サーチライトの光をかいくぐるように路地の奥へと突き進む。

「ひゃあん!」

ユメノツキミがソラの背中で小さな悲鳴を上げ、慌てて彼の腰にしがみついた。急加速の衝撃に彼女の体が揺れ、髪が風に乱れる。だが、ソラの背中に感じる頼もしさが、彼女の恐怖をわずかに和らげていた。

ハインドのサーチライトが遅れてガーランドを追い、追跡チームの静寂が再び戦闘の喧騒へと変わる。月夜ソラとユメノツキミの逃走劇は、ソラの策略によって再び動き出し、夜の闇の中へと突き進んでいく。果たして二人はこの追跡から逃げ切れるのか――その答えは、まだ見えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お台場上空を旋回するMi-24ハインドのコックピット内は、月夜ソラの策略によって再び緊張感に包まれていた。ガーランドが白旗をハッタリとして使い、急加速で路地の奥へと逃げ込んだ瞬間、追跡チームのサーチライトは一瞬ターゲットを見失った。ローターの重低音が夜空を震わせ、戦闘の熱気が再び燃え上がる。

「逃げられました!」

ミヒャエルが叫び、操縦桿を握る手に焦りが滲んだ。彼の視線は、サーチライトが捉えきれなかったガーランドの影を追い、声には苛立ちと危機感が混じっている。ソラの狡猾な策略に完全に裏をかかれた瞬間だった。

《逃がすな! 追いかけなさい!》

ベアトリクスの声が無線越しに鋭く響いた。彼女の命令は冷酷で、一切の妥協を許さない。瞳は炎のように燃え上がり、ガーランドを絶対に逃がさないという執念がハインドの機体を突き動かす。彼女の頭の中では、すでに次の追跡ルートが計算され、ソラとツキミを必ず捕まえるための戦略が組み立てられていた。

ハインドが再び低空で旋回し、サーチライトが夜道を照らし出す。月夜ソラとユメノツキミの逃走劇は、ベアトリクスの執拗な追跡によって、さらに過熱していく。果たして二人はこの追跡から逃げ切れるのか――その答えは、夜の闇とローター音の先に隠されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM21:45 とある洋食屋

とある洋食屋の店内は、夜の穏やかな時間が流れていた。木製のテーブルにはチェック柄のクロスが敷かれ、壁のランプが温かな光を投げかける。カウンター席でコーヒーを啜る花野蜜と皆守ひいろは、いつも通りの軽い会話を楽しんでいたが、心のどこかでソラとツキミの不在に引っかかりを感じていた。

「ソラ君、どうしたんだろう?」

花野蜜がカップを手に呟き、窓の外の夜景に目をやった。彼女の声には、教え子への心配と、何か予感めいた不安が滲んでいる。

「分からないよ。ツキミちゃんもいなくなるし、何が何だか訳が分からないよ」

皆守ひいろが首を振って応じ、フォークでパスタを弄びながらため息をついた。彼女の瞳には、友達の突然の不在に対する困惑が浮かんでいる。

その時――

グアアアアアアアアアアアアッ!

洋食屋の外から、まるで雷鳴のようなエンジン音が響き渡った。窓ガラスがビリビリと震え、店内の客たちが一斉に驚いた顔で外を振り返る。

「え!!?」

花野蜜がカップをテーブルに置き、目を丸くして立ち上がった。

「何だありゃ!!?」

ひいろも席から飛び上がり、窓に駆け寄って外を覗き込んだ。

洋食屋の前に停まったのは、赤色のバイク型ロボット――ガーランドだった。その異様なフォルムと、エンジンの熱気から立ち上るかすかな煙が、夜の街に不気味な存在感を放っている。

「蜜先生、ひいろちゃん!」

ユメノツキミがガーランドから降り、洋食屋のドアを押し開けて叫んだ。彼女の髪は乱れ、顔には疲労と緊張が色濃く浮かんでいる。

「あ、蜜先生に……ひいろちゃんも」

ソラもガーランドから降り、ヘルメットを外しながら二人に声を掛けた。彼女の声には、いつも通りの軽さがあるが、どこか疲れが滲んでいる。

花野蜜はガーランドに目をやり、眉をひそめて尋ねた。

「ソラ君、そのバイクは…?」

彼女の視線には、ただのバイクではない何かを感じ取る鋭さがあった。

ソラはニヤリと笑い、ガーランドを指差した。

「ただのバイクじゃないっスよ。時速350キロ、エンジンはF1級の奴っスよ」

彼女の声には、自慢と誇りが混じっているが、その裏に隠された危機感はまだ蜜には伝わっていない。

「すっげー! 何処で造られたの!?」

ひいろが目を輝かせ、ガーランドに近づいて感嘆の声を上げた。彼女の好奇心が、ガーランドの近未来的なデザインに引き寄せられている。

「メーカー? えぇ…と、ん?」

ソラがガーランドの車体を改めて見やり、装甲に刻まれたロゴに気づいた。

「ENTUMって書いてある…」

「それって…!?」

花野蜜の表情が一瞬で強張った。彼女の頭の中に、ENTUMという名前がもたらす危険な意味が瞬時に浮かぶ。彼女の視線がソラとツキミに向き、事態の深刻さを悟った。

「ヤバい奴っスよ」

ソラが苦笑いを浮かべ、肩をすくめた。彼女の言葉には、事態の重さと、どこか諦めにも似た軽さが混じっている。

「ソラ君、それ捨てた方が…」

花野蜜が静かに、だが真剣な声で進言した。彼女の目は、ソラとツキミを守りたいという強い意志で輝いている。

「もう遅いっスよ」

ソラが首を振って応じ、遠くの夜空に視線をやった。彼女の言葉には、すでに追跡の手が迫っている現実と、逃げ切るしかない覚悟が込められている。

「……」

花野蜜は唇を噛み、無言でソラを見つめた。洋食屋の穏やかな空気は、ガーランドの出現とENTUMの影によって、一気に緊迫したものへと変わった。月夜ソラとユメノツキミの逃走劇は、新たな局面へと突入しようとしていた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM22:00 株式会社ENTUM 地下特設会議室

株式会社ENTUMの地下特設会議室は、まるで軍事基地のような重厚な空気に包まれていた。冷たいコンクリートの壁に囲まれた部屋には、長大なテーブルが置かれ、モニターには東京の地図とガーランドの現在位置が映し出されている。部屋の中央に立つベアトリクスは、鋭い眼光で部下たちを見渡し、一切の妥協を許さない威圧感を放っていた。

「アレの存在をまだ知らせてはならないわ。月夜ソラを捕縛し、ガーランドを奪取しろ!」

ベアトリクスの声が、会議室に冷たく響き渡った。彼女の命令は、まるで氷の刃のように鋭く、部下たちに緊張を強いる。ガーランドの技術が外部に漏れることへの危機感が、彼女の言葉に滲んでいた。

「ハッ!」

ENTUM直属傭兵Aが即座に敬礼し、ソラの捕縛に向けた準備を整える決意を示した。

「貴様はユメノツキミを捕縛だ!」

ベアトリクスが別の傭兵に視線を移し、次の指示を下した。

「了解です!」

ENTUM直属傭兵Bが力強く応じ、任務に備えて姿勢を正した。

その時、会議室のドアが開き、ENTUM直属傭兵Cが息を切らせて報告に入った。

「報告します! ガーランドは東京スカイツリーに!」

彼の声には、追跡の苛烈さと、ターゲットの動きを捉えた興奮が混じっていた。

ベアトリクスの目が一瞬細まり、即座に決断を下した。

「チボラシュカを出せ! 緊急配備だ」

その言葉に、会議室の空気が一気に凍りついた。「チボラシュカ」――その名は、ENTUM内部でも極秘とされる兵器のコードネームだった。

「了解です!」

傭兵Cが慌てて応じ、通信機に指示を飛ばす準備を始めた。

二コラが思わず声を上げた。

「少佐! アレを出すのですか!?」

彼女の声には、驚きと不安が混じっている。チボラシュカの存在は、彼女にとっても未知の領域であり、その破壊力への恐れが彼女の表情に滲んでいた。

ベアトリクスは冷たく微笑み、淡々と説明した。

「西側諸国のSDI計画の1つよ。それを極秘ルートで設計図を手に入れて作った訳よ。つまり、元々却下された兵器の設計図を参考にして作られた」

彼女の言葉には、チボラシュカの恐るべき出自と、ENTUMの技術力が込められていた。

「戦術歩行戦闘機………!?」

二コラが息を呑み、その言葉を呟いた。彼女の頭の中では、チボラシュカの姿――巨大な戦闘ロボットが東京の街を踏み荒らす光景が浮かび、背筋が凍る思いだった。

「ヴェアヴォルフ大隊出撃する! 貴様等は会社の警備に専念しろ」

ベアトリクスがさらに指示を重ね、会議室に集った部下たちに視線を走らせた。ヴェアヴォルフ大隊――ENTUMの最精鋭部隊の投入は、事態が最終局面に突入したことを意味していた。

「ハッ!」

ENTUM直属隊員一同が一斉に敬礼し、命令に従う準備を整えた。

「了解です!」

傭兵たちも声を揃え、任務に備えて気合を入れた。

ベアトリクスはモニターに映るガーランドの位置を睨み、静かに呟いた。

「生意気だわ…踏み潰してやる!」

彼女の声には、月夜ソラへの苛立ちと、ガーランドを奪い返す絶対的な決意が込められていた。

地下特設会議室の空気がさらに重くなり、ENTUMの総力戦が始まろうとしていた。東京スカイツリーを目指す月夜ソラとユメノツキミは、新たな脅威――チボラシュカとヴェアヴォルフ大隊の猛攻に立ち向かうことになる。果たして二人はこの危機を乗り越えられるのか――その答えは、夜の東京と戦闘の先に隠されている。

 

 

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