ENTUM23   作:マブラマ

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第45話 淋しくて眠れない

2018年7月某日、PM22:15 東京スカイツリー 展望台

東京スカイツリーの展望台は、まるで星空に浮かぶ船のようだった。地上450メートルの高さから見下ろす東京の夜景は、無数の光が織りなす宝石の海のよう。レインボーブリッジや東京タワーの灯りが遠くで瞬き、夜の街が静かに息づいている。月夜ソラとユメノツキミは、展望台のガラス窓に寄り添い、先ほどの追跡劇の緊張から解放された一瞬を共有していた。

「うわぁ……街が小さく見えるわ」

ユメノツキミが窓に額を押し当て、キラキラと輝く夜景に目を奪われた。彼女の声には、純粋な感動と、疲れ果てた心を癒す安堵が滲んでいる。ガーランドでの逃走劇の後、こうして穏やかな時間を過ごせることに、彼女の心はほっとしていた。

「来て良かっただろ?」

ソラがツキミの隣でニヤリと笑い、彼女の肩にそっと手を置いた。彼の声には、いつもの無鉄砲な自信と、ツキミを喜ばせられた満足感が混じっている。先ほどの戦闘で疲れ切った表情は隠せないが、ツキミの笑顔を見ることで、彼の心も少し軽くなっていた。

「♪」

ツキミが小さく鼻歌を歌い、ソラの手に自分の手を重ねた。彼女の瞳には、東京の夜景が映り込み、まるで星が宿ったように輝いている。追跡の危機はまだ終わっていないが、この瞬間だけは、二人だけの時間が静かに流れていた。

展望台の静寂の中、月夜ソラとユメノツキミの絆が、夜景の美しさに寄り添うように深まっていく。だが、この穏やかな時間は長くは続かない――ENTUMの新たな脅威が、すぐそこまで迫っているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM22:20 東京スカイツリー周辺

東京スカイツリーの周辺は、夜の静寂に包まれていたが、その下ではENTUM直属の衛士たちが動き始めていた。スカイツリーの基部に集結したヴェアヴォルフ大隊の隊員たちは、サーチライトと無線機を手に、月夜ソラとユメノツキミの動向を監視していた。冷たい夜風が隊員たちの間を吹き抜ける中、一人の衛士が慌てた声で報告を上げた。

「大隊指揮官殿、2人を確認! スカイツリーの展望台にいる模様!」

ENTUM直属衛士の声は緊張と焦りに震え、無線機を通じてベアトリクスに届いた。彼の額には汗が滲み、ガーランドを逃がした責任感と、次の行動へのプレッシャーが彼を苛んでいる。

ベアトリクスの声が無線越しに冷たく響いた。

《降りてくるまで待機よ》

彼女の指示は冷静で、まるで獲物をじっくりと追い詰める狩人のようだった。スカイツリーの高さにいるソラとツキミを逃がさないための戦略が、彼女の頭の中で着々と組み立てられている。

「了解です!」

衛士が慌てて応じ、無線機を握る手に力がこもった。彼は部下たちに視線を走らせ、待機の指示を伝える。ヴェアヴォルフ大隊の隊員たちは、スカイツリーの周辺に配置につき、サーチライトを展望台に向けたまま、次の動きを待つ。

夜の東京スカイツリー周辺に、再び緊張の糸が張り詰める。月夜ソラとユメノツキミが展望台で穏やかな時間を過ごしているその裏で、ENTUMの包囲網が静かに、だが確実に狭まっていた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京スカイツリーの展望台は、先ほどまでの穏やかな時間が嘘のように緊迫した空気に変わっていた。月夜ソラとユメノツキミは、夜景を眺めながら束の間の休息を楽しんでいたが、展望台のガラス窓越しに見えた光景が二人の心を一瞬で凍りつかせた。

「何だありゃ!!?」

ソラが叫び、窓に手を押し当てて下を見下ろした。彼女の目には、スカイツリーの基部に展開する巨大な人型兵器の姿が映っている。チボラシュカ――ENTUMが極秘裏に開発した戦術歩行戦闘機が、サーチライトの光を浴びて不気味なシルエットを浮かび上がらせていた。その異様な姿は、まるで戦争映画から飛び出してきた怪物のように見えた。

「人型兵器……?」

ユメノツキミがソラの隣で呟き、恐怖に震える声が展望台に小さく響いた。彼女の瞳には、チボラシュカの巨大な姿が映り込み、戦闘の恐怖が再び彼女の心を締め付ける。彼女の手が無意識にソラの腕を握り、頼るように寄り添った。

「ここもダメか…逃げるぞ!」

ソラが即座に決断し、ツキミの手を引いて展望台の出口へ向かった。彼女の声には、危機感と、ツキミを守るための強い意志が込められている。チボラシュカの出現は、ENTUMが本気でガーランドを奪還しに来た証拠だ――このままでは逃げ場がない。

展望台の静寂が再び緊張に変わり、月夜ソラとユメノツキミはガーランドへと急ぐ。だが、スカイツリーの基部で待ち構えるチボラシュカとヴェアヴォルフ大隊の包囲網が、二人の逃走劇にさらなる試練を課そうとしていた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京スカイツリーの周辺は、ENTUMのヴェアヴォルフ大隊が張り巡らせた包囲網によって、まるで戦場のような緊張感に包まれていた。サーチライトが夜空を切り裂き、チボラシュカの巨大なシルエットが不気味にそびえ立つ中、ENTUM直属衛士の一人が展望台の動きを監視していた。彼の手に握られた無線機が、緊迫した報告を伝える。

「あ、降りていきます! 大隊指揮官!」

衛士の声は焦りに震え、無線越しにベアトリクスに届いた。彼の視線は、スカイツリーのエレベーターが動き出し、月夜ソラとユメノツキミが降りてくる様子を捉えている。額に滲む汗が、彼の緊張を物語っていた。

ベアトリクスの声が無線越しに冷たく響いた。

《出て来た所で撃て。射殺もやむ得ない。会社の極秘機密を知られた以上、野放しにはしておけないわ》

彼女の命令は、まるで氷のように冷酷で、一切の感情を排除していた。ガーランドとENTUMの機密を守るためなら、ソラとツキミの命さえも奪う覚悟がそこにはあった。

「了解…! くっ、人の命を何だと思ってやがる!」

衛士が無線に応じながらも、唇を噛みしめて呟いた。彼の声には、命令に従う義務感と、ベアトリクスの非情な判断への怒りが混じっている。ソラとツキミがまだ高校生であることを知る彼にとって、この命令はあまりに重く、心の葛藤を抑えきれなかった。

ヴェアヴォルフ大隊の隊員たちが銃を構え、スカイツリーの出口に狙いを定める。チボラシュカのエンジンが低く唸りを上げ、戦闘準備が整う中、月夜ソラとユメノツキミは知らずして死地へと足を踏み入れようとしていた。ENTUMの包囲網が完成し、逃走劇は最終局面へと突入する――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM23:00 歌舞伎町 とあるラブホテル

歌舞伎町の裏路地にひっそりと佇むラブホテルは、ネオンの光が窓から漏れる怪しげな雰囲気を漂わせていた。部屋の中は意外にも清潔で、淡いピンクの照明が柔らかな空気を演出している。月夜ソラとユメノツキミは、東京スカイツリーでの追跡劇を辛うじて逃れ、ガーランドを隠してこの場所に身を潜めていた。

「ここなら安全だ」

ソラが部屋のドアをロックし、ベッドの縁に腰掛けて息をついた。彼の声には、追跡の緊張から解放された安堵と、ツキミを守れたという責任感が滲んでいる。

「え!? ソラ君!? 私達、まだ高校生だよ!」

ツキミが目を丸くし、頬を真っ赤にして声を上げた。彼女は部屋の入口で立ち尽くし、ラブホテルという場所に動揺を隠せない。彼女の心臓がドキドキと鳴り、ソラの意図を誤解してしまった羞恥が彼女を襲う。

「そんな事はご都合主義で作られた言い訳だよ」

ソラがニヤリと笑い、ツキミをからかうように言った。彼の目はいたずらっぽく光り、ツキミの動揺を楽しんでいるようだった。だが、その裏には、彼なりの優しさと、ツキミを安心させたい気持ちが隠れている。

「……」

ツキミは言葉を失い、恥ずかしそうに視線を床に落とした。彼女の頬はますます赤くなり、心の中ではソラの言葉をどう受け止めるべきか葛藤していた。

「ツキミちゃん!」

ソラが突然真剣な声で呼び、ベッドから立ち上がった。彼の表情は一変し、先ほどの軽い雰囲気から、どこか緊張した面持ちに変わる。

「は、はい!」

ツキミが慌てて顔を上げ、ソラの真剣な眼差しにドキリとした。彼女の小さな手が無意識にスカートの裾を握り、期待と緊張が入り混じる。

「お、俺と……」

ソラが一瞬言葉を詰まらせ、深呼吸してから続けた。

「俺と付き合ってくれ!」

彼の声は少し震えていたが、気持ちをしっかりと伝えるための真剣さが込められている。スカイツリーでの戦闘のさなか、すでに気持ちを伝え合っていた二人だが、この場所で改めて告白することで、ソラは二人の関係を確かなものにしたいと思っていた。

「ソラ君…………」

ツキミがソラの言葉に目を潤ませ、彼の真っ直ぐな瞳を見つめた。その心臓が再び高鳴り、胸の奥から温かいものが溢れ出す。

「……」

ソラはツキミの答えを待つ間、息を止めるように彼女を見つめた。彼女の手に汗が滲み、緊張がピークに達する。

「……フフッ、はい! 喜んで」

ツキミが小さく笑い、照れながらもはっきりと答えた。彼女の頬に浮かぶ笑顔は、まるで花が咲いたように愛らしく、ソラの告白を受け入れた喜びが全身から溢れていた。

「や…やったああああああああ!! ハハハハッ!」

ソラが両手を挙げて叫び、部屋の中で跳ね回った。彼の顔には、純粋な喜びと達成感が輝き、まるで子供のようにはしゃぐ姿にツキミも思わず笑顔になる。

「じゃ、これ私の家の住所と電話番号、あとLINE IDも」

ツキミが鞄からメモを取り出し、ソラに渡しながら言った。彼女の声には、恋人としての新たな一歩を踏み出す嬉しさが滲んでいる。

「じゃ俺も」

ソラが自分の連絡先をメモに書き込み、ツキミに手渡した。彼の動きには、どこかぎこちなさがあるが、ツキミとの関係が深まる喜びが隠しきれていない。

「フフフッ、まるで恋人みたいね。生配信や収録の時は他人として接したのに、まさかソラ君とデートする時が来るなんて思わなかったわ」

ツキミがメモを手に微笑み、ソラとの思い出を振り返った。彼女の瞳には、ソラと過ごした今日一日のドキドキが映り込み、幸せな気持ちが溢れていた。

「そうか。なら俺の家泊まる?」

ソラが少し照れながら提案し、ツキミをチラリと見た。彼女の声には、ツキミをさらに近くに感じたいという純粋な願いが込められている。

「……うん」

ツキミが小さく頷き、恥ずかしそうに微笑んだ。彼女の頬は再び赤くなり、ソラとの新しい関係に胸が高鳴る。

ラブホテルの淡い照明が二人を優しく照らし、歌舞伎町の喧騒から隔絶されたこの部屋は、月夜ソラとユメノツキミの新たな一歩を見守る空間となった。だが、ENTUMの追跡の手がまだ迫っていることを、二人はまだ知らない――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM23:30 株式会社ENTUM 談話室

株式会社ENTUMの談話室は、夜遅くにもかかわらず穏やかな雰囲気に包まれていた。ソファに置かれたクッションが柔らかな光を浴び、自動販売機の小さな稼働音が静寂を埋める。ミライアカリともちひよこは、ソファに並んで座り、今日の収録の疲れを癒しながら雑談に興じていた。

「結局2人来なかったね」

アカリがソファに背を預け、ため息をつきながら呟いた。彼女の声には、ユメノツキミと月夜ソラの不在に対する心配と、どこか寂しさが混じっている。

「そうだね」

もちひよこが小さく頷き、アカリの隣でカップを手に持った。彼女の声は控えめだが、ソラとツキミの突然の不在に、同じく疑問を感じている様子が窺える。

「ツキミちゃんとソラ君…付き合ってたりして?」

アカリが突然目を輝かせ、身を乗り出して言った。彼女の口元には、ちょっとした好奇心と、恋バナを楽しむような軽い笑みが浮かんでいる。

「え!?」

もちひよこが驚いたように目を丸くし、アカリの言葉に反応した。彼女の手元のカップが少し揺れ、想像もしていなかった展開に心がざわつく。

「あーあ、アカリも早く彼氏作って結婚したいなー」

アカリが両手を伸ばして伸びをし、夢見るような声で呟いた。彼女の瞳には、恋愛への憧れと、ちょっとした現実逃避の気持ちが映っている。

その時、談話室のドアが静かに開き、アイリスディーナが姿を現した。

「結婚なんてそう生易しい事じゃないぞ」

彼女の声は低く、どこか渋い響きを持っていた。談話室の空気が一瞬引き締まり、アカリともちひよこが振り返る。

「あ、会長!」

アカリが慌ててソファから身を起こし、アイリスディーナに笑顔を向けた。彼女の声には、突然の登場に驚きつつも、会長への敬意が込められている。

アイリスディーナは腕を組み、談話室を見渡しながら言った。

「ベアトリクスの姿を見かけないが……アカリは何処にいるか知ってるのか?」

彼女の表情は厳しく、ベアトリクスの不在に対する不信感と、何か大きな動きを察知したような鋭さがあった。

「いえ…何も知りません」

アカリが首を振って答えた。彼女の声には、純粋な無知と、アイリスディーナの質問に少し緊張した様子が滲んでいる。

「そうか…それにしても何処にいるんだ!?」

アイリスディーナが眉をひそめ、苛立ちを隠さずに呟いた。彼女の視線は遠くを見据え、ベアトリクスの動向と、ソラとツキミの不在が関連しているのではないかという疑念が頭をよぎる。

談話室の穏やかな雰囲気は、アイリスディーナの登場によって微妙な緊張感に変わった。アカリともちひよこが知らない裏で、ベアトリクスはガーランドとソラたちを追って動き出している――ENTUM内部の不穏な空気が、静かに広がり始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM23:45 ソラの家周辺

夜の静けさがソラの家を包み込んでいた。街灯の淡い光が、住宅街の道を照らし、時折吹く風が木々の葉を揺らす音が響く。だが、その静寂の裏で、ENTUM直属の衛士たちが家の周囲に潜み、冷たい視線で家の中を監視していた。冷静なENTUM直属衛士は、無線機を手に、家の窓から漏れる灯りをじっと見つめていた。

「少佐、家に入りました! 2人を確認!」

衛士の声は冷静だが、微かに緊張が滲んでいる。彼の視線は、ソラとツキミが家の中でくつろぐ姿を捉え、任務の重さを改めて感じ取っていた。無線機の向こうで待つベアトリクスの冷酷な命令が、彼の心に重くのしかかる。

ベアトリクスの声が無線越しに響いた。

《この極秘情報を知った奴は全員潰しなさい》

その言葉は、まるで氷の刃のように冷たく、一切の感情を排除していた。極秘情報――ガーランドの存在とENTUMの機密を守るためなら、ソラとツキミの命さえも奪う覚悟がそこにはあった。

「了解です!」

衛士が即座に応じ、無線機を握る手に力がこもった。彼の声は冷静を保っているが、内心ではベアトリクスの非情な命令にわずかな葛藤が渦巻いている。ソラとツキミがまだ高校生であることを知る彼にとって、この任務はあまりに重く、心の奥で小さな反発が芽生えていた。

家の周囲に配置された衛士たちが、静かに銃を構え、ソラの家を包囲する。夜の静けさが一層深まり、月夜ソラとユメノツキミは知らずして、死地へと足を踏み入れていた。ENTUMの包囲網が完成し、逃走劇は最終局面へと突入する――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM23:50 ソラの家

夜の静寂がソラの家を包んでいたが、その静けさは不気味なほどに張り詰めていた。窓の外、ENTUMの衛士たちが闇に紛れ、じりじりと家の周囲を締め付けていく。月夜ソラはカーテンの隙間から外を覗き、サーチライトの冷たい光が壁をなぞるのを見て、息を呑んだ。

「彼奴ら、俺の家まで…!」

ソラの声は震え、怒りと焦りが絡み合っていた。握り潰した拳が震え、額には冷や汗が光る。ガーランドを盗んだ代償が、こんなにも早く、こんなにも重く彼に襲いかかってきたのだ。心臓が早鐘を打ち、逃げ場のない現実が彼を追い詰める。

「どうするの!?」

ユメノツキミがソラの腕を掴み、切羽詰まった声で叫んだ。彼女の瞳は恐怖で揺れ、ソラを見つめるその視線は助けを求めるようだった。でも、その奥にはソラを信じる強い光が確かに宿っている。彼女はただ怯えているだけじゃない――ソラの答えを、行動を待っていた。

ソラは一瞬目を閉じ、乱れる息を整えた。そして、ツキミを真っ直ぐ見据え、決然と言い放つ。

「会社に戻ろう! アカリちゃん達にこのバイクの事を全部話す!」

その声は鋭く、逃げるのではなく立ち向かう覚悟に満ちていた。ガーランドの秘密を明かし、ENTUMの追跡を振り切る――それが彼に残された唯一の道だった。

「私も行くわ!」

ツキミが即座に応え、ソラの手を強く握りしめた。彼女の声は震えていたが、そこにはソラと共に行く決意と、彼を支える強い想いが込められている。恐怖を押し殺し、ソラの隣に立つことを選んだ彼女の瞳が、月明かりに輝いた。

「ああ」

ソラが短く頷き、二人は動き出した。窓の外では衛士たちの足音が近づき、包囲網が刻一刻と狭まっていく。だが、二人の心はすでに決まっていた。ガーランドに飛び乗り、会社へと向かう――アカリたちに真実を伝え、ENTUMに立ち向かうために。

夜の闇を切り裂き、月夜ソラとユメノツキミは再び走り出す。追跡者の影が迫る中、彼らの物語は新たな局面へと突入していく――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

株式会社ENTUMの地下駐車場。夜の静寂がコンクリートの空間を支配する中、アイリスディーナは自分の車――黒塗りの高級セダンの前に立ち、キーを手に持っていた。彼女は小さく呟く。

「最近、送り迎えばかりだから私の車動かしてないわ。偶には自分の車で帰らないとな」

その声は疲れを含みつつも、どこか落ち着いた響きを帯びていた。ENTUMの会長としての重責が、彼女の日常に影を落としているのかもしれない。

すると突然、駐車場の奥からけたたましい音が響き渡った。

グオオオオオオオオォォォォ…

エンジン音が反響し、直後に急ブレーキの音――キィィッ――が鋭く空気を切り裂く。アイリスディーナは驚いて振り返った。

「?」

彼女の視線の先で、月夜ソラとユメノツキミが慌てて姿を現した。ソラは息を切らし、汗だくの顔でアイリスディーナに駆け寄る。

「アイリスディーナさん!」

ソラの声は切迫感に満ちていた。彼の背後には、ツキミが不安げな表情で寄り添っている。

アイリスディーナは一瞬目を細め、冷静さを取り戻しながら応じる。

「ソラ、ツキミまで…お前ら今まで何処に…」

彼女の言葉には驚きと疑問が混じるが、声のトーンは落ち着いている。状況を把握しようとする彼女らしい反応だ。

ソラは一歩踏み出し、真剣な眼差しで訴えた。

「お話ししたい事があります!」

その声には、ただ事ではない緊迫感と、アイリスディーナへの信頼が込められていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下駐車場の薄暗い空間に、冷たい風が静かに流れていた。コンクリートの壁に囲まれた場所に、蛍光灯の青白い光が淡く反射し、車や柱に長い影を落としている。そんな静寂を切り裂くように、ミライアカリの元気な声が響き渡った。

「ソラ君、ツキミちゃん! 何処にいてたの!?」

アカリは目をキラキラさせ、両手を大きく振って二人に近づいた。彼女の声には、心配と喜びが混じり合って弾けている。まるでずっと探していた宝物を見つけたような笑顔だ。

「あ、その…」

月夜ソラは言葉に詰まり、視線を地面に落とした。彼の頬には疲れが滲み、肩がわずかに震えている。隣に立つユメノツキミが、そんな彼をそっと見つめ、小さく微笑んだ。

「ソラ君とデートしてきたのよ」

ツキミがアカリにそう告げると、彼女の声には少しの照れと誇らしさが混ざっていた。頬がほんのり赤くなり、ソラをチラリと見ては目を伏せるその仕草が、秘密を打ち明けた安心感を漂わせている。

「よし! アカリが言った事当たってた!」

アカリは拳を握り、飛び跳ねるように叫んだ。彼女のテンションはまるで爆発した花火のようで、周囲の空気を一気に明るくする。だが、その横で、もちひよこが「(-_-;)」と顔文字のような表情を浮かべ、アカリのハイテンションに呆れたように首を振った。

すると、そこにアイリスディーナの冷ややかな声が割り込んだ。

「話とは?」

彼女の声は鋭く、まるで氷の欠片が空気を切り裂くようだった。ソラとツキミを見据えるその瞳には、冷静さと探るような鋭さが宿っている。

「あのバイクについて知ってたんですか?」

ソラが突然話題を変え、声を震わせながら尋ねた。彼の目は真剣そのもので、まるで何か大きな不安に押し潰されそうになっているかのようだ。地下駐車場の静けさが、一瞬にして緊張感に包まれた。

「バイク? ああ、ベアトリクスが二輪車業界進出を試み、極秘開発してるバイクの事か?」

アイリスディーナは首を軽く傾げ、淡々と言った。彼女の口調は落ち着いていて、まるで日常の雑談でもするかのような自然さがある。だが、その瞳の奥には、何かを計るような光がちらついていた。

「それですが…ヤバいっスよ!」

ソラが一歩踏み出し、声を荒げて訴えた。彼の額には汗が滲み、手が小さく震えている。普段の軽い雰囲気は消え、代わりに恐怖と焦りが彼を支配しているようだった。

「何がだ?」

アイリスディーナが眉を寄せ、初めてわずかな動揺を見せた。彼女の声には、事態の深刻さを察知したような緊迫感が滲み始めている。

「あのバイク…武装してますよ…俺達消されるんじゃ…俺達ではなく、蜜先生やひいろちゃん…ウカさんにひなたちゃんも」

ソラの声は震え、言葉が途切れ途切れにこぼれ落ちた。彼の目には、悪夢のような光景が映っているかのようだ。地下駐車場の冷たい空気が、さらに重苦しく感じられた。

アイリスディーナの表情が一瞬で硬くなり、内心で呟いた。

「(何を企んでるんだ!? ベアトリクス)」

彼女の頭の中で、ベアトリクスの意図とソラの言葉が結びつき、不穏な影が浮かび上がる。鋭い視線が虚空を貫き、まるで闇の中の真実を見極めようとしているかのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下駐車場の薄暗い空間に、重苦しい緊張が漂っていた。月夜ソラとユメノツキミがアイリスディーナにガーランドの秘密を訴えたその瞬間、ENTUMの追跡チームはすでに彼らのすぐ近くまで迫っていた。闇の中に潜む衛士たちの無線が、冷たく響く。

《会社内にいます! 少佐…ご命令を》

衛士の声は抑えたものだったが、その裏には任務への忠誠と、迫りくる戦闘への覚悟が滲んでいる。無線機の向こうで、ベアトリクスの返答が待たれていた。

「やれ! 情報を知った者は揉み消せ!」

ベアトリクスの声が無線越しに鋭く響き、まるで氷の刃が空気を切り裂くようだった。彼女の命令には一切の躊躇がなく、ガーランドの秘密を守るためなら手段を選ばない冷酷さが込められている。ソラとツキミ、そして知ってしまった者たち全てを消し去る覚悟が、そこにはあった。

《―――――は!》

衛士たちが一斉に応じ、銃を構える音が地下駐車場の静寂を破った。彼らの動きは機械的で、命令に従うことだけが彼らの存在理由であるかのように見えた。

ベアトリクスは無線を切り、隣に立つ二コラに視線を向けた。

「舐めた真似を…二コラ、私も出るわ! 武装は試作型素粒子刀よ!」

彼女の声は冷たく、だがその奥には燃え上がるような怒りが隠されている。試作型素粒子刀――ENTUMが極秘開発した、物質を分子レベルで切り裂く最先端の兵器。その名を口にするだけで、彼女の戦闘への決意が伝わってくる。

「了解です!」

二コラが即座に応じ、敬礼と共に姿勢を正した。彼女の表情には緊張が滲むが、ベアトリクスの命令に従う忠誠心がそれを上回っている。だが、心の奥底では、ソラとツキミを追い詰めるこの任務に、微かな葛藤が芽生えていた。

ベアトリクスは衛士強化装備に着替え、戦術機“アリゲートル”のコックピットに乗り込み、システムを起動させた。戦術機のエンジンが低く唸りを上げ、金属の装甲が微かに震える。彼女の瞳は鋭く光り、内心で呟いた。

「(潰す! 何もかも全部……!)」

その言葉には、ソラとツキミへの怒りと、ENTUMの機密を守るための絶対的な決意が込められている。アリゲートルの装甲が月明かりに鈍く輝き、戦闘の準備が整った。

地下駐車場の闇が一層深まり、月夜ソラとユメノツキミ、そしてアイリスディーナたちを巡る戦闘が、今まさに始まろうとしていた。ベアトリクスの冷酷な意志が、戦術機と共に動き出す――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下駐車場の冷たいコンクリートの空間に、銃声と叫び声が響き渡っていた。蛍光灯の光が薄暗く揺れ、血と硝煙の匂いが漂う中、月夜ソラたち一行はENTUM直属の傭兵たちに追い詰められていた。絶体絶命の状況の中、ベイレーンが叫び声を上げた。

「大変だお! 武装した警備員がこっちに向かってくるお!」

ベイレーンは目を白黒させ、駐車場の入り口を指差した。その声は恐怖と焦りに震え、仲間たちに危機を知らせようと必死だった。

「お姉ちゃんがいたら…」

ベノちゃんが小さな声で呟き、姉妹の絆を懐かしむように目を伏せた。だが、その願いも虚しく、現実が彼女たちを容赦なく襲う。

アイリスディーナが鋭い視線を入り口に向け、歯を食いしばった。

「ベアトリクスだ……私達を消そうとしている!」

彼女の声は低く、怒りと危機感が混じり合っていた。ENTUMの会長としての彼女が、ベアトリクスの裏切りとも言える行動に直面し、初めて動揺が隠せない。

「消す!? それって殺されるって事ですよね!!?」

アカリが目を丸くし、声を震わせて叫んだ。彼女の明るい笑顔は一瞬にして消え、恐怖がその顔を覆い尽くす。現実の重さに、彼女の心が押し潰されそうになる。

「……!」

アイリスディーナが言葉を詰まらせ、唇を噛んだ。彼女の頭の中で、状況を打破する方法を必死に模索するが、迫りくる傭兵たちの足音がその思考を遮る。

「俺の所為だ」

ソラが突然呟き、拳を握り潰してうなだれた。彼の声には深い悔恨が滲み、目を閉じるその顔には罪悪感が刻まれている。ガーランドを盗んだことで、こんな事態を招いてしまった――その思いが彼を苛む。

「!」

ユメノツキミがソラの言葉に息を呑み、彼の肩にそっと手を置いた。彼女の目にはソラへの心配と、共に戦う決意が宿っている。

「俺の所為で…蜜先生やひいろちゃんまで巻き込んだ……」

ソラがさらに言葉を絞り出し、声が震えた。仲間たちを危険に晒してしまった自責の念が、彼の心を締め付ける。

「まだ死んだとは限らない。ここで諦めるな! 何処かで生きてる筈だ」

アイリスディーナがソラを叱咤するように言い放ち、彼の肩を叩いた。彼女の声には、仲間を鼓舞する力が込められている。絶望の中でも希望を見出す――それが彼女の強さだった。

その時、駐車場の奥から慌てたENTUM社員が駆け込んできた。

「た、大変です! 社長! 武装した警備員が…」

彼の声は恐怖に震え、言葉を最後まで言い終わる前に――

ガガガガガガガガガ!

無慈悲な銃声が響き、社員の体が弾丸に貫かれた。「うが!」と短い叫びを上げ、彼はコンクリートの床に倒れ伏した。鮮血が床に広がり、駐車場の空気が一気に戦場と化した。

「貴様等は何故私達を!?」

アイリスディーナが叫び、倒れた社員を見下ろして傭兵たちを睨みつけた。彼女の声には怒りと、裏切られた悲しみが混じっている。

「貴様等にはここで死んで貰う!」

殺意に満ちたENTUM直属傭兵が冷たく言い放ち、銃口をアイリスディーナたちに向けた。彼の目は冷酷で、まるで機械のように感情がない。ENTUMの機密を守るためなら、どんな犠牲も厭わない――それが彼らの使命だった。

「(クソ!…私は…)」

アイリスディーナが内心で呟き、拳を握り潰した。彼女の頭の中で、戦うか逃げるかの選択が瞬時に駆け巡る。だが、その瞬間――

「でぇやああああああああああああああああ!」

ソラが突如叫び、傭兵の一人に突進した。ボガ! と鈍い音が響き、彼の拳が傭兵の腹にめり込む。

「ぐぶぼ!」と傭兵が呻き、膝をついた。

「な、何だ此奴は!!?」

別の高血糖のENTUM直属傭兵が驚愕の声を上げ、ソラに銃を向けた。だが、その瞬間――

ダァーン!

ベイレーンがワルサーP38を構え、冷静に引き金を引いた。銃弾が傭兵の肩を貫き、「づぶずこ!」と叫び声を上げて彼が倒れる。

「!!」

ベイレーンが鋭い視線を周囲に走らせ、仲間たちを守るために立ち上がった。

「ここはオイラに任せるお!」

ベイレーンが叫び、ワルサーP38を構えたまま傭兵たちを牽制した。彼女の声には、仲間を守るための強い決意が込められている。

「早く行って!」

ベノちゃんが小さな体で叫び、ベイレーンと共に戦う覚悟を見せた。彼女の目には涙が浮かんでいるが、仲間を逃がすための勇気がそこにはあった。

「でも…そんな事…」

アカリが声を震わせ、ベイレーンとベノちゃんを振り返った。彼女の心は、仲間を見捨てることができない葛藤で揺れている。

「大丈夫だお。オイラは死なないお」

ベイレーンが力強く言い、薄く微笑んだ。彼女の言葉には、仲間への信頼と、自分を犠牲にしてでも未来を守る決意が込められている。

「私も!」

ベノちゃんが小さな声で付け加え、姉妹の絆がその場に温かな光を灯した。

「すまない…あとは任せた!」

アイリスディーナが声を絞り出し、ソラとアカリを連れて走り出した。彼女の背中には、ベイレーンたちへの感謝と、必ず生きて再会するという決意が宿っている。

「行ってこい…未来を掴めだお」

ベイレーンが呟き、ワルサーP38を構えたまま傭兵たちに向き合った。彼女の瞳には、仲間たちへの深い信頼と、戦う覚悟が燃えている。

「ベイレーンお姉ちゃん……エボラちゃん……クリーパーカー…エイレーンお姉ちゃん…今までありがとう…楽しかったよ」

ベノちゃんが涙をこらえながら呟き、過去の思い出を胸に刻んだ。彼女の小さな手が震えながらも、姉と共に戦う決意を固める。

カチ

ベイレーンが次の銃弾を装填し、引き金を引く。ダァーンと銃声が響き、戦闘が再び激化する。地下駐車場の闇が、血と銃煙で満たされていく――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歌舞伎町の夜は、ネオンの光が乱反射し、喧騒と活気が渦巻いていた。居酒屋の呼び込みの声、キャバクラの看板が放つ派手な光、酔客たちの笑い声が響き合う中、突然、空を切り裂くような重低音が轟いた。

グオオオオオオオオオ…

戦術機“アリゲートル”のエンジン音が夜空を震わせ、18メートルの巨大な機体が歌舞伎町上空にその姿を現した。金属の装甲がネオンの光を反射し、まるで鋼の怪物が街を見下ろすかのよう。コックピット内でベアトリクスが無線を受け、冷たく応じる。

《妨害されましたが、2人は排除しました》

部下の報告が無線越しに届き、ベアトリクスの唇がわずかに歪んだ。排除――ベイレーンとベノちゃんの犠牲を意味するその言葉に、彼女の心には一切の動揺がない。

「月夜ソラ……決着を付けてやる!」

ベアトリクスの声は低く、殺意と決意に満ちていた。彼女の瞳は鋭く光り、アリゲートルの操縦桿を握る手に力がこもる。試作型素粒子刀が起動し、刀身が淡い青白い光を放ち始める。ソラとガーランドを潰し、ENTUMの機密を守る――それが彼女の唯一の目的だった。

地上では、歌舞伎町の雑踏にいた人々が一斉に空を見上げ、驚愕の声を上げた。

「何だありゃ!?」

普通のサラリーマンがビール瓶を手に呆然と呟き、足を止めた。ネクタイが緩んだままの彼の顔には、酔いが一瞬で吹き飛んだような驚きが広がっている。

「ロボットか!?」

キャバクラ店員が看板の前で叫び、客引きの手を止めて空を指差した。彼女の声には、信じられない光景への戸惑いが滲んでいる。

「マジ…嘘…?」

キャバ嬢が店の入り口で立ち尽くし、化粧の濃い顔が恐怖で青ざめた。彼女の手に持ったスマホが震え、撮影するのも忘れてただ見上げるだけだ。

「あれは18メートルあるな…」

居酒屋店員が店の軒先で呟き、冷静にアリゲートルの大きさを推測した。だが、その声にも微かな震えが混じり、異常事態に直面した現実感が彼を襲う。

歌舞伎町の喧騒が一瞬静まり返り、誰もが空を見上げていた。アリゲートルの巨大なシルエットがネオンの光に照らされ、まるで終末の使者のように不気味に浮かび上がる。ベアトリクスの決意が、戦術機と共に動き出し、月夜ソラとの最後の決戦が今、始まろうとしていた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歌舞伎町の路地裏は、ネオンの光が届かない薄暗い闇に包まれていた。遠くで戦術機“アリゲートル”のエンジン音が低く唸り、月夜ソラたち一行は一時的に身を隠していた。だが、その静寂はすぐにアイリスディーナの鋭い声によって破られた。

「今何を…」

アイリスディーナがソラを睨みつけ、低く呟いた。彼女の声には、状況の深刻さと、ソラの行動を抑えようとする焦りが滲んでいる。彼女の瞳は鋭く、戦場を知る者特有の冷静さと危機感が宿っていた。

「ベアトリクスと決着付ける!」

ソラが叫び、拳を握り潰した。彼の声は震えていたが、その奥には揺るぎない決意が燃えている。額に滲む汗と、鋭く光る瞳が、彼の覚悟を物語っていた。ガーランドを手に、ベアトリクスに立ち向かう――それが彼の選んだ道だった。

「お前…自分が何言ってるか分かってるのか!? ベアトリクスに歯向かったら…」

アイリスディーナが声を荒げ、ソラの腕を掴んだ。彼女の表情には、ソラの無謀さを止めるための必死さと、ベアトリクスの恐ろしさを熟知する恐怖が混じっている。彼女の言葉は、ソラに現実を突きつける警告だった。

「もうこれ以上犠牲者を増やしたくない…蜜先生、ひいろちゃんの仇を!」

ソラがアイリスディーナの手を振り払い、叫んだ。彼の声には、悔しさと怒りが滾り、仲間を失った悲しみが溢れ出している。蜜先生やひいろちゃんの顔が脳裏に浮かび、彼の心を締め付ける。もう誰も失いたくない――その一心が彼を突き動かしていた。

「ひなたちゃんからLINE見たけど…」

アカリが震える声で割り込み、スマホを握り潰すように手に持った。彼女の顔は青ざめ、目には涙が滲んでいる。

「何だ?」

アイリスディーナがアカリに視線を移し、鋭く尋ねた。彼女の声には、不穏な予感が混じっている。

「蜜先生殺されたらしいよ…ひいろちゃんも…うあああああん! まだまだいっぱい話したかったのにぃぃ!!」

アカリが声を上げ、泣き崩れた。彼女の叫びは路地裏に響き、仲間を失った悲しみが周囲の空気を重くする。涙が頬を伝い、スマホを握る手が震えていた。彼女の明るさは完全に失われ、ただ悲嘆に暮れる姿だけがそこにあった。

「俺が行く!」

ソラが叫び、ガーランドに跨る準備を始めた。彼の声には、決意と怒りが込められている。蜜先生とひいろちゃんの死を知り、彼の中で何かが決定的に変わったのだ。ベアトリクスを止めなければ、この悲劇は続く――その思いが彼を突き動かす。

「無茶だ! やめろ! 私が知ってるベアトリクス・ブレーメは東西ドイツで恐れられた元シュタージの兵士だ!」

アイリスディーナが叫び、ソラの腕を再び掴んだ。彼女の声には、ベアトリクスの恐ろしさを伝える切実さと、ソラを止めるための必死さが滲んでいる。シュタージ――東ドイツの秘密警察。その名を口にするだけで、彼女の顔には戦慄が走った。

「直ぐ戻ってきますよ。ツキミちゃん、アカリちゃん達の傍にいろ。俺は必ず戻ってくる!」

ソラがアイリスディーナの手を振りほどき、ツキミに視線を向けた。彼の声には、仲間を守るための強い意志と、必ず生きて帰るという約束が込められている。ツキミを見つめるその瞳には、彼女への深い信頼と愛情が宿っていた。

「……」

アイリスディーナが唇を噛み、ソラの背中を見つめた。彼女の心には、ソラの無謀さを止めるべきだという思いと、彼の決意を信じたいという葛藤が渦巻いている。だが、ソラの覚悟を前に、彼女は言葉を飲み込み、ただ彼を見送るしかなかった。

歌舞伎町の路地裏に、ガーランドのエンジン音が響き始める。月夜ソラはベアトリクスとの決戦に向け、夜の闇へと飛び込んでいく。仲間たちの未来を守るため、そして蜜先生とひいろちゃんの仇を討つために――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渋谷パルコSR6付近の夜は、戦闘の熱気で沸騰していた。ネオンの光がビルの壁を彩る中、戦術機“アリゲートル”のエンジン音が轟き、チボラシュカを操る二コラ、カタリーナ、ファルカが周囲を警戒する。ベアトリクスはアリゲートルのコックピット内で無線を手に、冷静に指示を出す。

「二コラ、聞こえて?」

ベアトリクスの声は冷たく、戦場を支配する指揮官の威厳に満ちていた。

《はい!》

二コラが即座に応じ、チボラシュカのシステムを調整しながら待機する。

「カタリーナも」

ベアトリクスがさらに続ける。

《はい、問題ありません》

カタリーナの声が無線越しに響き、彼女のチボラシュカが武器を構えた。

《同じく!》

ファルカも応じ、戦闘準備を整える。

「よし!…ん? 早速来たみたいね」

ベアトリクスが視線を前方に固定し、唇がわずかに歪んだ。彼女の視線の先で、轟音と共にガーランドが姿を現す。

グオオオオオオオオオオオオッ

ガーランドのエンジンが咆哮し、月夜ソラが叫び声を上げた。

「ベアトリクスーーーーーーーーーーーー!!」

ソラの叫びが夜空を切り裂き、彼の瞳は怒りと決意で燃え上がっている。ガーランドの装甲がネオンの光を反射し、まるで黒い雷霆のように迫ってくる。

「武器がない……丸腰なら行けるわ。始末しなさい」

ベアトリクスが冷酷に命じ、アリゲートルの操縦桿を握り直した。

《了解です》

二コラが即座に応じ、チボラシュカを前進させた。

「そんなんだから大人は…」

ソラが呟き、ガーランドを急加速させる。ボガァッ! と衝撃音が響き、彼がファルカのチボラシュカに体当たりを仕掛けた。

「な…!? 私を馬鹿にして!」

ファルカが怒りを露わにし、チボラシュカの腕を振り上げる。ソラは「 おわぁぁっ!」と叫び、ガーランドを急旋回させて攻撃をかわした。

その瞬間、ガーランドのシステムが起動音を響かせた。

《ハッカドールシステム始動。コード:666。繰り返しますコード:666》

ガーランドのディスプレイが赤く点滅し、ソラが驚愕の声を上げる。

「ハッカドールシステム!?」

《武装は収納解除。ENT突撃銃を使用許可確認。シークエンス》

ジャキッ! ガーランドの装甲が展開し、突撃砲が現れる。

「こいつ…ハッカドールシステムを起動したわ。各機警戒を怠るな!」

ベアトリクスが鋭く叫び、アリゲートルのセンサーを最大出力に切り替えた。

《同志少佐! ここは私が!》

ファルカが叫び、チボラシュカを突進させる。

「舐めやがって!」

ソラが叫び、突撃砲を構えて引き金を引いた。ガガガガガガガガガガガガガガガガ! 銃弾がファルカのチボラシュカに降り注ぎ、火花が散る。

「こ、こいつ! 動きが早くなって…」

ファルカが焦り、チボラシュカの操縦に必死になる。ガガガガガガガガガガガガガガガ! さらなる弾幕が襲い、ボガァッ! と衝撃音が響いた。

「メインカメラ損傷…左右腕部大破…跳躍ユニット損傷…制御不能だと!?」

ファルカが叫び、チボラシュカが膝をつく。

「ファルカは脱出して! ここは私が…」

カタリーナが叫び、自身のチボラシュカを前進させた。

《行くな!》

ベアトリクスの鋭い命令が響き、カタリーナが「!!!」と動きを止めた。

「カタリーナさん……ごめん!」

ソラが叫び、突撃砲をカタリーナに向ける。ガガガガガガガガガガガガガ! 銃弾が彼女のチボラシュカを襲い、ボガァッ! と爆発音が響く。

「え? な、何!?」

カタリーナが驚愕の声を上げ、「ひゃああああああ」と叫びながら機体が大破する。

「カタリーナ! クソ…よくもカタリーナを!!」

二コラが怒りに震え、チボラシュカを急加速させた。

「死んでたまるか!」

ソラが叫び、ガガガガガガガガガガガガガ! と弾幕を浴びせる。

「舐めるな!」

二コラが叫び、チボラシュカがゲシィッ! と蹴りを仕掛ける。

「おわぁぁっ! クソ! ツキミちゃん…俺は…」

ソラが叫び、ガーランドが攻撃をかいくぐる。その瞬間、システムが再び起動した。

《リミッター解除します。使用許可確認。シークエンス…オールグリーン》

グォアアアアアア! ガーランドのエンジンが咆哮し、機体がさらに加速する。

「な…!?」

二コラが驚愕の声を上げた。

《前よ! よそ見するな!》

ベアトリクスの鋭い声が響き、二コラが「!!!」と我に返る。

ガガガガガガガガガガガガガ! ソラが再び弾幕を浴びせ、ガーランドが自動操縦で動く。

「自動操縦で…!?」

グアアアアアアアアアアアアアアアアア! ガーランドが急加速し、二コラの攻撃を回避した。

「避けただと!!?」

二コラが叫び、チボラシュカがバランスを崩す。

「至近距離なら!」

ソラが叫び、突撃砲を構えるが――カチ、カチ。

「弾切れ!!!!???」

「貰った!」

二コラが叫び、ジャキッ! とCIWSナイフを取り出した。

「撃てないなら叩くしかない!」

ソラが叫び、残弾0になった突撃砲を振り上げる。ドゴォッ! ドゴォッ! と二コラのチボラシュカに打撃を加え、彼女が「うぐ……! も、申し訳ありません…同志少佐」と呻く。

「残るのはお前だけだ! ベアトリクス・ブレーメ!」

ソラが叫び、ガーランドをアリゲートルに向けた。

「フン! 使いこなしただけで私に勝てると思って?」

ベアトリクスが冷笑し、アリゲートルが動き出す。

「ざけんな! 行くぞ! うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

ソラが叫び、ガーランドが突進する。

「これを使う時が来るとはね」

ベアトリクスが呟き、試作型素粒子刀を握った。ブァシャアアアアアアアアアア! 刀身が青白い光を放ち、まるでビームサーベルのように輝く。

「あれは…ビームサーベル!?」

ソラが驚愕の声を上げた。

「世界を変えるのはこの私だ!!」

ベアトリクスが叫び、アリゲートルが素粒子刀を振り下ろす。グアアアアアアアアアアアアアアア!

「速い! 追いつけるか!?」

ソラが叫び、ガーランドが回避行動を取る。その瞬間、システムが再び起動した。

《ハッカドールシステム2起動》

「え!!?」

ソラが驚く。

「システム2を起動したか…」

ベアトリクスが呟き、素粒子刀を構え直す。

「だあああああああああああ!!」

ソラが叫び、ガーランドが加速する。

「そこだ!」

ベアトリクスが叫び、ズヴァァァッ! ズシャアァァァッ! と素粒子刀がガーランドを切り裂く。

「うわあああああああああああああ!」

ソラが叫び、ガーランドが火花を散らす。ズシャアッ! ズシャアッ!

「くっ…がは!」

ソラが呻き、ガーランドが膝をつく。

「さっきの威勢はどうしたの?」

ベアトリクスが冷たく言い放ち、ズシャアッ! ズシャアッ! と連続攻撃を加える。

「私に歯向かうからこうなるのよ!」

ズシャァッ! 最後の斬撃がガーランドを貫き、ソラが意識を失う。

「……」

静寂が渋谷の夜に戻った。ベアトリクスはアリゲートルのコックピットで無線を開き、静かに尋ねる。

「みんな無事かしら?」

《は、はい…》

二コラが弱々しく応じた。

《何とか…ね》

カタリーナが疲れた声で答える。

《終わったんですね…》

ファルカが安堵の声を漏らした。

「ああ、終わったわ…作戦終了! 全機帰投せよ!」

ベアトリクスが冷たく命じ、アリゲートルが夜空に消えていく。渋谷パルコSR6付近に、戦闘の余韻だけが残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渋谷パルコSR6付近の戦場跡は、静寂に包まれていた。ガーランドの残骸が冷たいアスファルトに横たわり、ネオンの光がその傷だらけの装甲を淡く照らす。月夜ソラはコックピットの中で意識を取り戻し、呻き声を上げた。

「うぅ……いでぇ………」

ソラの体は全身が軋むように痛み、額から流れ落ちる血が視界を滲ませる。彼の息は荒く、戦闘の激しさと敗北の重さが彼を押し潰していた。

その時、ガーランドのシステムからハッカドール2号の声が流れ始めた。

《私の輝きを追い続けて♪》

軽やかな歌声が、壊れたコックピット内に響き渡る。だが、その明るいメロディは、ソラの心に虚しさと痛みを呼び起こすだけだった。

「うぐ……」

ソラが呻き、頭を振った。ハッカドール2号の歌が続く。

《No!

目立たなくっちゃ 意味ないし

埋もれるなんて ごめんだし

Yes!

何でも出来て失敗知らずの

完璧な私になる

そう 充実した日々過ごして

不満なんてない

全 く な い ん だ け ど

ほっておけないから

付き合ってるだけで

私はね 暇じゃないの!

琥珀色キャンディが

胸に溶け込んで

「楽しい」なんて言葉

言いそうになった

でも私は私で

輝きを見つける

きっとそうなの…♪》

歌詞がソラの心に突き刺さる。ツキミと過ごした日々、彼女と笑い合った時間が脳裏をよぎり、彼の胸を締め付けた。「う…うぐ…」と呻きながら、ソラは涙を堪える。

バシュウ…

コックピットハッチが開き、冷たい夜風がソラの頬を撫でた。「う…」と呻きながら、彼はよろめくようにガーランドから這い出した。

「……」

渋谷の夜景が広がる中、ソラは力なく地面に膝をついた。視界がぼやけ、意識が遠のきかける。

「ツキミちゃん……」

ソラが呟き、虚空を見つめた。彼女の笑顔、彼女の声が脳裏に浮かぶ。だが、今はもう彼女はいない――ベアトリクスとの戦闘の中で、すべてを失ったのだ。

遠くで、ツキミの幻がソラを見つめていた。

(ソラ君………直ぐ戻ってくるわ…私は)

彼女の声が心の中で響き、ソラの胸をさらに締め付ける。「うぐ!」とソラが呻き、地面に拳を叩きつけた。

「うぅ…」

ソラは立ち上がり、よろめきながら歩き出した。渋谷109に向かう彼の背中は、まるで亡魂のように寂しげだった。戦いの果てに何もかもを失い、彼はただ一人、夜の街を彷徨う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソラの足音が、渋谷の雑踏に消えていく。彼の心には、かつての思い出と、ツキミとの時間が蘇っていた。まるで彼の孤独を慰めるように、頭の中で一つのメロディが流れ始める。

ハートタウンで 巡り会った

陽気な仕草が どこか悲しいシティーガール

あれからしばらく 会えないけれど

街の噂が 気にかかる

ソラの脳裏に、ツキミとの出会いがフラッシュバックする。ハートタウンでの偶然の出会い、彼女の陽気な笑顔が、どこか寂しさを湛えていたこと。彼女と過ごした時間が、今は遠い記憶となって彼を苛む。

何処か悪戯に ワンスモア ハートエイク

あいつを連れて 歩くのを見たさ

ツキミと一緒に歩いた渋谷の街。彼女のいたずらっぽい笑顔が、今はもう見られない。ソラの胸に、喪失感が重くのしかかる。

思い切りジェントリー この歌が流れたら

帰ってくれるかな ロマン連れて

ソラの目から涙がこぼれ落ちた。彼女が戻ってくることはない。それでも、もしこの歌が流れれば、彼女が笑顔で戻ってくるのではないか――そんな儚い希望が、彼の心を締め付ける。

想い出香る ギムレット

一度だけ恋を ささやいていたカフェバー

あれから 御無沙汰しているけれど

おまえコールミー 今すぐに

ツキミと訪れたカフェバーでの思い出。ギムレットの香りとともに、彼女が囁いた「好きだよ」という言葉が蘇る。あの日以来、ソラはその場所に足を踏み入れていない。だが、今すぐにでも彼女に会いたいという衝動が、彼を駆り立てる。

そうさ淋しくて スリープレスナイト

喧嘩別れを しちゃったけれど

ソラの心は、孤独と後悔で満たされていた。ツキミと最後に交わした言葉が、喧嘩別れだったこと。眠れない夜を過ごし、彼女を失った痛みが彼を苛む。

思い切りテンダリー この歌が聞こえたら

帰ってくれるかな 笑顔見せて

思い切りテンダリー この歌が流れたら

帰ってくれるかな ロマン連れて

思い切りテンダリー この歌が聞こえたら

帰ってくれるかな 笑顔見せて

ソラは渋谷109の前に立ち尽くし、夜空を見上げた。彼女の笑顔が、もう一度見たい。彼女と過ごしたロマンを取り戻したい。だが、現実は冷たく、彼に孤独だけを突きつける。ソラの足音が、渋谷の夜に虚しく響き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝の柔らかな陽光が、カーテンの隙間から部屋に差し込んでいた。月夜ソラはベッドの中でうっすらと目を覚まし、頭がまだぼんやりとする中、聞き慣れた声が耳に届いた。

「ソラ君…起きて。ソラ君」

花野蜜の優しい声が、ソラの意識を現実へと引き戻す。

「蜜先生の声…?」

ソラが呟き、目を擦りながら体を起こした。目の前に立つ蜜の姿を見て、彼の心臓が一瞬止まる。夢の中で見た、彼女が殺された光景が脳裏をよぎった。

「もう…また変な夢でも見たの? お寝坊さんね」

蜜が微笑みながらソラの頭を軽く叩いた。彼女の声はいつも通り優しく、まるで何事もなかったかのようだ。ソラの胸に、安堵と混乱が同時に押し寄せる。

「蜜先生……死んだなんて……」

ソラが呟き、夢の記憶がまだ鮮明に彼を苛む。だが、その言葉を遮るように、別の声が響いた。

「私がやるわ」

ベアトリクスの冷たい声が部屋に響き、ソラの背筋が凍りつく。

「え?」

蜜が振り返った瞬間、ダァーン! ダァーン! ダァーン! と銃声が連続して響き渡った。ベアトリクスがルガーP08を構え、冷酷な目で発砲したのだ。

「うわあああああああああああああっ! 何? え? 何!?」

ソラが叫び、ベッドから飛び起きた。心臓がバクバクと鳴り、冷や汗が全身を濡らす。だが、目の前に広がる光景に、彼は目を疑った。

「おっはよー♪」

ミライアカリが明るい声で手を振り、ニコニコと笑いながら部屋に入ってきた。

「何の夢見たんだ?」

皆守ひいろがアカリの後ろから顔を出し、興味津々にソラを見た。彼女の無邪気な笑顔が、ソラの心をさらに混乱させる。

「みんな………」

ソラが呆然と呟き、部屋を見渡した。そこには、夢の中で死に別れた仲間たちが、まるで何事もなかったかのように集まっている。

「おっはよー♪ ソラ君♪」

ユメノツキミがソラの隣に駆け寄り、満面の笑みで彼に抱きついた。彼女の温もりと、夢の中で失った恐怖が交錯し、ソラの頭はますます混乱する。

「ツキミちゃん!!? あれ? 俺は…」

ソラがツキミを抱きしめながら、夢と現実の境界が曖昧になっていくのを感じた。

「くだらない夢でも見たのか?」

二コラが部屋の隅から冷たく言い放ち、ソラを一瞥した。彼女の声には、いつもの辛辣さが滲んでいる。

「二コラも人の事言えないわよ」

カタリーナが二コラをからかうように笑い、彼女の肩を軽く叩いた。

「な…あれはその…何?…」

二コラが頬を赤らめ、言葉を詰まらせた。彼女の動揺した様子に、部屋が一瞬ざわつく。

「お二人共、朝から仲良くて激しい愛を」

ファルカがニヤリと笑い、二コラとカタリーナをからかった。彼女の言葉に、部屋が一気に和やかな笑いに包まれる。

「俺は…」

ソラが呟き、目の前の光景をまだ信じられない様子で周囲を見渡した。

「ソラ君?」

ツキミが心配そうにソラの顔を覗き込み、彼の手を握った。彼女の優しい眼差しが、ソラの心を温かく包み込む。

「ソラ君おはよう」

夜桜カノンが部屋に入ってきて、ソラに微笑みかけた。彼女の姿に、ソラの目がさらに大きく見開かれる。

「カノン!!? え? お前殺された筈じゃ」

ソラが叫び、夢の中で見たカノンの死が脳裏をよぎる。

「寝ぼけて?」

ベアトリクスが冷たく言い放ち、ルガーP08を手に持ったままソラを見た。だが、その表情には殺意はなく、ただの冗談だったことが伺える。

「よ! お前らおはよう!」

ベイレーンが元気よく部屋に飛び込んできた。彼女の明るい声が、部屋の雰囲気をさらに和やかにする。

「ベイレーンさん!!? って事は今までの事は全部夢だったのか!」

ソラが叫び、ようやく現実を理解した。彼の顔に、安堵の笑みが広がる。戦闘、死別、絶望――すべてが夢だったのだ。

「今日もネタ探しするお!」

ベイレーンが拳を突き上げ、力強く宣言した。彼女の声に、仲間たちが一斉に応える。

「はい!」

ENTUM所属VTuber一同が声を揃え、笑顔で手を挙げた。部屋は一気に活気に満ち、ソラの心もようやく安堵に包まれた。

 

 

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