ENTUM23   作:マブラマ

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第77話 冬コミの準備

2018年11月某日

 

ENTUMのオフィス、談話室は、冬コミの準備で熱気に包まれていた。壁には『ミライアカリオルタネイティヴ』のキャラクターデザインやストーリーボードが貼られ、萌実の主題歌の楽譜がテーブルに散らばっている。アカリはソファに座り、金髪サイドテールをいじりながら、ファルカの言葉に目を丸くしていた。花野蜜は隣でメモを取り、エイレーンはコーヒーを淹れながら微笑んでいる。

アカリが勢いよく立ち上がり、叫ぶ。

「冬コミ!!? 出すんですか!? ブースを?」

ファルカが冷静に頷き、書類を手に答える。

「はい、出しますよ」

「やったー! またWUGちゃんと会えるよ!」

アカリが手を叩き、目をキラキラさせる。彼女の頭には、Wake Up, Girls!との楽しかったコミケの思い出が蘇る。

ファルカが書類をめくり、続ける。

「ですが、アカリグッズと花野蜜グッズだけでは寂しいかと。そこで、昨日、666中隊一同に向けてこう言ったんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一日前

 

新宿の夜、居酒屋ダイニング『なのは』は、666中隊の賑やかな笑い声とビールの泡で溢れていた。長テーブルには焼き鳥や枝豆が並び、VTuberたちの熱い議論が響く。ファルカは顔を真っ赤にし、ビールジョッキを手に、テーブルを叩いて叫んでいた。

バン!

「そんなくだらないゲームや、別に欲しくないキーホルダーやぬいぐるみ置いても、客なんか来る訳ないでしょ!!? VTuberってのは総合芸術なんです! スカスカな内容で、途中で生放送動画で誤魔化そうなんて…小賢し過ぎるんですよ!!」

二コラが隣で串を手に、呆れたように呟く。

「ファルカ、珍しく怒ってるな」

カタリーナがビールを飲みながら苦笑い。

「べろべろに酔ってる…」

ベアトリクスが無言で焼き鳥をつまみ、遠くを見つめる。

「…」

アネットがため息をつき、呟く。

「はぁ…」

ファムも同じく無言で、枝豆を口に放り込む。

「…」

ヴァルターが静かにビールを飲み、黙り込む。

「…」

グレーテルが不満げに言う。

「久々に皆と飲み会なのに、こんな説教付き合わされると思ってなかったわ」

カティアが俯き、テオドールが彼女の肩を軽く叩く。

「気にするな、カティア。いつも通りの連中だ」

アイリスディーナが仲裁に入り、冷静に言う。

「とりあえず落ち着け」

ファルカがジョッキを振り回し、続ける。

「肝心なストーリーがなきゃ、リスナーは食いついてこないんだよ! こんな基本的な事、分からないのか!?」

シルヴィアが鋭く切り返す。

「じゃあ、貴女は面白い動画作れるの?」

ファルカが胸を張り、自信満々に答える。

「作れるね。と言うか、アカリさんと一緒に作ってる最中です。アカリさんは元々小説家、シナリオライター志望だったから、そこの所はバッチリです!」

第666中隊一同が一斉に驚きの声を上げる。

「おおっ!」

ファルカがジョッキを掲げ、叫ぶ。

「なんなら置いてやろうか? 本物のVTuber動画を教えてやる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ENTUM 談話室

 

ファルカが書類を閉じ、ニヤリと笑う。

「666中隊の連中が泣いて頼むものでしてね。私達のゲームをブースに置いた事にしたんです」

アカリが目を丸くし、叫ぶ。

「って、あと一月もないじゃないですか!」

ファルカが冷ややかに返す。

「締め切りがないと、だらだら過ごしてるばかりですよね!? 大体、ゲーム作ろうって言ったのはアカリさんだし」

「…」

アカリが言葉に詰まり、唇を尖らせる。

ファルカが一歩近づき、真剣な目で言う。

「トップVTuberに…なりたいんですよね?」

「!…分かったよ」

アカリが拳を握り、決意を固める。キャサリンの「未来はない」という言葉が頭をよぎるが、ENTUMの仲間たちの顔がそれを打ち消す。

ファルカが書類を手に、きびきびと言う。

「9月に公開したのはデモンストレーション版で12月は完成版を出しますよ。休憩終わったら作業始めます! 何しろ、私達が与えられた時間は限りありますからね」

「うん…」

アカリが少し気圧されつつ、頷く。彼女のスマホが光り、萌実からのメッセージが表示される。

「アカリちゃん、冬コミのブース、めっちゃ楽しみ! 主題歌のデモ、早く聴かせたい!(´ω`)」

アカリの唇に笑みが戻る。

「よし! 冬コミで『ミライアカリオルタネイティヴ』をドカンと出して、トップVTuberになるよ!」

花野蜜がメモを手に、元気よく言う。

「アカリちゃん、ファルカさん、私もグッズデザイン手伝うよ! マンガマニュアルのキャラも、ちょっと出してみない?」

エイレーンがコーヒーを配りながら笑う。

「みんな、いい感じですね。WUGちゃんたちにも負けないブースにしましょう!」

談話室に笑い声が響き、ENTUMの絆が冬コミへの挑戦を後押しする。だが、どこか遠くで、ナズナの微笑みとキャサリンの影が、静かに物語の続きを覗っていた。アカリの新たなサクセスストーリーは、締め切りのプレッシャーとともに始まったばかりだった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ENTUMの編集作業室は、冬コミの締め切りを目前に、緊張と集中の空気に包まれていた。モニターの光が部屋を照らし、キーボードの打鍵音とアカリの小さなため息が響く。壁には『ミライアカリオルタネイティヴ』のキャラクターデザインやストーリーボードが貼られ、萌実の主題歌のデモ音源がスピーカーから小さく流れている。ファルカはデスクでノートパソコンに向かい、鋭い目で作業を進め、アカリは隣の席で少し肩を落としている。

ファルカが画面から目を離さず、きびきびと言う。

「そこのノートパソコン使ってください。お互いサボらないよう監視しながらやりましょう!」

アカリが気乗りしない様子でノートパソコンを開き、呟く。

「…はぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

作業室の空気は、冷房の故障でさらに冷え込んでいた。アカリは手をこすりながら、震える声で言う。

「うぅ…さぶ!…寒いですね、ファルカさん」

ファルカがモニターに目を固定したまま、淡々と答える。

「それが何か?」

「暖房…効いてないみたいですけど」

アカリが肩をすくめ、部屋を見回す。

ファルカが一瞬手を止め、言う。

「ちょっと前から調子悪かったですからね。遂に故障したんでしょう」

「あ、そうですか…さぶ!」

アカリがコートを羽織り、キーボードに手を戻す。

……

静寂が続き、キーボードの音だけが響く。アカリがふと手を止め、ファルカをチラリと見て提案する。

「ファルカさん、お腹空いたし、マック行きませんか?」

ファルカがピクリと眉を動かし、冷たく返す。

「…そんな暇ありませんよ」

「でも、少しぐらい気分転換した方が…作業効率上がるし」

アカリが少し食い下がる。

ファルカがモニターから目を離し、アカリを睨む。

「なら、マックじゃなくてもいいでしょ!」

「そりゃそうだけど…」

アカリが気まずそうに目を逸らす。

ファルカが声を低くし、呟く。

「マック行っても良い事なんかないですよ…」

「…」

アカリが言葉を失い、ファルカの横顔を見つめる。

「…何もないんですから」

ファルカが小さく付け加え、再びモニターに目を戻す。

「ファルカさん…」

アカリが何か言おうとするが、言葉を飲み込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

作業室の冷えた空気の中、アカリはコートを着込んだまま、ノートパソコンに向かってため息をつく。

「はぁ…」

ファルカが作業を進めながら、冷静に言う。

「アカリさん、ヒロインの色設定終わりました。共有するので確認してください」

「はーい」

アカリがノートパソコンを操作し、ファルカが送ったデータを開く。画面には『ミライアカリオルタネイティヴ』のヒロインが、鮮やかな緑の配色で輝いている。アカリの目が少し輝き、呟く。

「…お、めっちゃいい感じ! ファルカさん、これ、絶対リスナー食いつくよ!」

ファルカが小さく頷き、言う。

「貴女のシナリオあってこそです。ストーリーの葛藤シーン、ちゃんと反映しましたか?」

「うん! ヒロインの『現実と夢の間で揺れる』部分、めっちゃ力入れた! キャサリンさんのこと、ちょっと思い出しちゃったけど…」

アカリが苦笑いする。

ファルカが一瞬手を止め、言う。

「…あの人のことは忘れましょう。貴女のドリームは、ENTUMと冬コミで叶えるんです」

アカリが拳を握り、笑顔を取り戻す。

「うん! 絶対『ミライアカリオルタネイティヴ』を冬コミでドカンと出す! トップVTuber、目指すよ!」

スマホが光り、萌実からのメッセージが表示される。

「アカリちゃん、主題歌のデモ、めっちゃ進んだ! ファルカさんにも聴かせたいな!(´ω`)」

アカリがメッセージを見て、作業への意欲を新たにする。だが、冷えた作業室の空気と締め切りのプレッシャーが、彼女たちを試し続けていた。ENTUMの絆とアカリの情熱が、冬コミへの道を切り開く鍵となる――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ENTUMの編集作業室は、冬コミの締め切りが迫る中、寒さと情熱が交錯する戦場と化していた。モニターの光がアカリとファルカの顔を照らし、『ミライアカリオルタネイティヴ』のキャラクターデザインやシナリオが画面に映し出されている。暖房の故障で部屋は冷え切り、アカリの金髪サイドテールは寒さに震えながらも、彼女の情熱は燃えていた。ファルカは隣でノートパソコンを叩き、時折鋭い視線をアカリに投げる。

アカリがモニターを見つめ、興奮気味に言う。

「へぇー…結構いいじゃないですか! おおっ…これが私が乗る戦術機…(ミライアカリの秘密を暴露する日本帝国本土防衛軍の駒木咲代子中尉)」

 

 

 

 

 

シナリオ:厚木基地での告白

 

日本帝国本土防衛軍の女性衛士、駒木咲代子中尉は部下の星宮アカリ少尉と厚木基地の屋上で景色を眺めていた

咲代子が拳を握り、叫ぶ。

「…私には何もない…何もないのよ!」

佐渡島の戦場でかつて共に戦ってきた女性上官、坂崎都大尉のことを想い彼女を守ろうとしたが、本人は「無用だ」と言われ、最後の命令で「この悲惨な現実から目を背けるな。生き延びろ」と。

その結果、都は自ら殿を務め、BETAと立ち向かい戦死した。

都の死で咲代子は沙霧尚哉大尉の腹心として日本を守ると決意した。

アカリが声を張る。

「違う!あなたは私がいるじゃないですか!私は駒木中尉を守ります!例え…世界中に敵回しても!」

「星宮……」

その時、咲代子は涙を流しアカリを抱きついた

そして互いに目と目で見つめ――――目を瞑り。

「こ、駒木中尉…?」

アカリは咲代子の唇を重ねようとしたその時、アカリの目の前に何故かキズナアイがいた。

「はいどうもー!キズナアイでーすっ☆ こんなところで百合百合してていいのかなー? ねぇねぇ、続きはVRでやるー?」

時空の理(ことわり)を超えて現れた“謎の存在”に、戦場の空気は完全にぶっ壊れた。

アカリと咲代子は、ただ呆然とキズナアイを見つめるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うあああああああああああああああああああああああ!」

アカリがモニターから顔を上げ、叫び声を上げる。

ファルカがハッと振り返る。

「どうしました?」

「え? いや、何でもないです(何でアイちゃんが出てきたの?)」

アカリが気を取り直し、笑顔で言う。

「おおっ…良いですよ、ファルカさん! グッジョブです!(大洗サンビーチで駒木さんは水着姿で…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シナリオ:大洗サンビーチの絆

 

夏の日差しが照りつける、大洗サンビーチ。

「そーれっ!」

弾ける水しぶきと共に、駒木咲代子中尉の笑い声が砂浜に響いた。

その標的は――部下であり、今は無邪気に水着姿ではしゃぐ星宮アカリ少尉。

「きゃっ! もうっ、やりましたねっ、駒木中尉!」

「反撃、いってみよーか!」

バシャァッ!

「ひゃん!?」

見事な一撃がアカリの脇腹に命中し、水しぶきと共に彼女は笑いながら逃げ出した。

咲代子も追いかけようとした――その瞬間だった。

「わっ、きゃ――!?」

不意に足を取られ、咲代子はバランスを崩して波にのまれるように転倒した。

 

ジャバーンッ!

 

数秒後、波間から顔を出した咲代子は……何かがないことに気づいた。

「……っ!?」

咲代子の頬が一気に真っ赤に染まる。両手で胸を押さえ、周囲を見渡すが、目の前には驚いた様子のアカリがいた。

「駒木さん、大丈夫ですか……って、あ、あああああっ!?」

アカリの顔も真っ赤に染まり、思わず視線を逸らす。

「ご、ごめん……!」

「……いい。――お前だけなら……見られても」

咲代子は恥ずかしそうに目を伏せながら、そっと両手を外す。

「っ……!」

アカリは声も出せずに固まった。

そして、次の瞬間――

 

「やっほー☆ キズナアイでーすっ♪ いやぁ、夏って最高だよね~!」

どこからともなく現れた水着姿のキズナアイが、ビーチボールを抱えて元気に跳ねながら登場した。

「ちょっとちょっと、なんかいい雰囲気になってたけど! バッチリ見ちゃったよーん♡」

「「なっ……!?」」

ラブコメな空気を一瞬で吹き飛ばす謎のVアイドルの乱入に、咲代子もアカリも凍りつくしかなかった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うがあああああああああああああああああああああ!」

アカリがモニターを叩き、叫ぶ。

「アカリさん!!」

ファルカが椅子から立ち上がる。

「あ、いや、何でもない! 何でもないよ」

アカリが慌てて手を振る。

ファルカがため息をつき、言う。

「ったく…集中出来ないじゃないですか!」

アカリがモニターを指差し、呟く。

「(何で…アイちゃんが出てくるのよ)」

アカリはノートパソコンに保管しているフォルダを開く。それはキャラクターの設定集の一つで駒木咲代子中尉の衛士強化装備姿だ。

「(これは、駒木さんが着用している強化装備―――確か99式だったよね)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シナリオ:帝都クーデター

 

帝都クーデターに加わった駒木咲代子中尉と星宮アカリ少尉は沙霧尚哉大尉の意思で国連軍のヴァルキリーズ中隊と戦闘していた。

しかし、戦況は明らかに不利で沙霧大尉の同志達は次々と散っていく。

《投降しろ!最早追撃は間に合わん!これ以上無駄な血を流させるな!》

咲代子を追い詰めた伊隅大尉は咆哮する

武力をもって降伏させようとするが

《日本語!?貴様日本人か!》

咲代子機は伊隅大尉機に近づき長刀を握り刃を向ける

《現状を見てもなお殿下を連れ去ろうとするか…売国奴め!!》

《我々は軍人としての責務を果たす!必要なのはそれだけだ!》

《そういう言葉を言い訳にして皆が現実から目を背けた結果がこれだ!》

刃を向き合う双方は猛攻し合う

アカリはただ見守るだけで介入することはできない

《己の利益や立場を守ることしか考えずそのために他者を貶めるなら―――BETAと何が違うというのだ!!》

練度がえげつない!

近距離での突撃砲全部回避する伊隅大尉

《繰り返す!武装を解除して部下達を投降させろ!貴様達の計画は既に破綻している。これ以上の問答は不要だ!》

最後通告、これ以上はやめた方がいいとアカリは悟った

坂崎大尉が喜ぶわけがないし軽蔑されるだろう

《第2小隊…ぐわーっ!》

《我…行動不能…我…行動不能…先に逝きます…駒木中尉…》

次々と撃墜されていくクーデター軍側の戦術機

咲代子は最後の悪足掻きをしたが伊隅大尉の練度が高過ぎたか左腕が切断され倒れた

《ここまでだ。殿下は間もなく国連軍保護の下戦域を離脱される》

これ以上邪魔をしようってんなら、容赦はしない

伊隅大尉はそう思った。

《既に追撃は不可能。貴様の目的は潰えた》

アカリは突撃砲を下げ、伊隅大尉機に近づく

《この戦乱もここで終わりだ》

伊隅大尉はそう言い放ち、駒木は弱弱しい声で何か呟いた

《既に雪は降り出した…地に積もった雪は日に照らされ冬の終わりを告げる雪解け水となる…夜明けは近い…我等は清流となりこの国の汚濁を洗い流す…日の差す所に…雪が残ることはない》

最早、助けることは不可能―――と思った次の瞬間、国連軍カラーの不知火を操るキズナアイが何故か介入した。これは明らかに場違い過ぎるハイテンションな声だった。

『やっほー☆ バーチャルYouTuber、キズナアイでーすっ♪ なんかちょっとピリピリしてるけど、大丈夫~?』

《……!?》

咲代子も伊隅も、そしてアカリも動きを止めた。

『争いはダメだよっ!みんな、仲良くしよ? わたしが来たからには、ここがバーチャル平和会議場だよ~☆』

《なんで……あのキズナアイが、不知火に……!?》

困惑と混乱の中、咲代子はぼそりと呟く。

《……これが、現実逃避の極致か……》

だがキズナアイはニッコリとVサインを決めていた。

『はいっ、チーズ☆ みんなで仲直り記念SS撮っちゃお~!ハイ、戦術機もポーズっ!』

――終焉の戦場で、誰もが一瞬、時が止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁあああああああああああ!」

アカリが椅子から転げ落ち、叫ぶ。

ドスン!

ファルカが目を丸くする。

「…!」

ドスン! ドスン! ドスン!

アカリが床を転がり、叫ぶ。

「アカリは一体どうなってしまったの!? 痛いよー!」

ファルカが立ち上がり、声を張る。

「アカリさん、貴女リアル恋愛で悩んでいますね? さっきからキズナアイさんの事ばかり考えてるんじゃないですか?」

「え? いや…リアルと言うより、アイちゃんは特殊な事例だし、同性愛って言うか…」

アカリが慌てて弁解する。

ファルカが拳を握り、叫ぶ。

「それは正にラブって事でしょうが!!!」

「!!!!!!い、言われてみれば…!」

アカリが目を見開く。

 

(脳内イメージ)

アカリは、キズナアイがアカリに向けて笑みを浮かべるイメージを思い浮かべる

「アカリちゃん♪」

 

アカリが頭を抱える。

「そんなー…アカリが…アイちゃんを…ラブだなんて…」

ファルカが冷笑し、言う。

「愚かですよ、アカリさん」

「何?」

アカリがハッと顔を上げる。

ファルカが熱弁を始める。

「ふふふ…女は…女性はデリケートな存在! 所詮3次元は萌えなど存在しませんよ!」

「2.5次元ならあり得るけど(-_-;)」

アカリが突っ込む。

ファルカがさらに続ける。

「良いですか? 本来日本は恋愛と言う概念は存在しなかった。あったのは見合いと夜這いだけ、恋愛は海外から入ってきた風習なんです! ロマンチックラブは資本主義を拡大する為の罠なんです! そんなものに踊らされてどうするんです!? 寧ろ我々ENTUMは恋愛幻想を手玉に取って金儲けする側に回らなきゃダメなんですよ!」

アカリが反撃する。

「そういうファルカさんはどうなんですか!?」

「!!」

ファルカが凍りつく。

アカリが畳み掛ける。

「ファルカさんだって、リィズって女に惚れてるんじゃないんですか!?」

「!!!」

ファルカの顔が赤くなる。

「このキャラクターだって、リィズさんがモデルなんですよね!!??」

アカリがモニターのキャラクターを指差す。

「!!!!」

ファルカが言葉を失う。

「…!」

アカリがファルカを睨む。

「…!」

ファルカがアカリを睨み返す。

「…!!」

アカリがさらに睨む。

ファルカが突然叫ぶ。

「…マックなんてこの世から消え去ればいいんだ!」

「…」

アカリが呆然とする。

プシュゥッ

ファルカが缶ビールを開け、飲み干す。

「ん…」

ゴクゴクゴクゴク…

「ぷはー!…私は疎かにも再び同じ過ちを繰り返すところでした」

ファルカが目を閉じ、呟く。

「同じ…過ち?」

アカリが首をかしげる。

ファルカが遠くを見つめ、語り始める。

「…あれはまだ私が7歳の時です。東西冷戦で東と西に分かれていた時代…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ENTUMの編集作業室は、冬コミの締め切りが迫る中、冷えた空気と熱い議論で異様な雰囲気に包まれていた。モニターには『ミライアカリオルタネイティヴ』のヒロインや戦術機のデザインが映し出され、萌実の主題歌のデモが小さく流れている。アカリは椅子に座り、ファルカの突然の告白に目を丸くしていた。ファルカは空の缶ビールを手に、遠くを見つめ、1973年のベルリンの記憶に浸っている。

 

 

1973年 ドイツ民主共和国、首都ベルリン

灰色の空の下、ベルリンの街角は冷戦の緊張に満ちていた。東ドイツの子供たちが、みすぼらしい路地でファルカを取り囲み、嘲笑を浴びせる。

「やーいやーい!」

「鬼畜米帝!」

「資本主義の犬が!」

「裏切者!」

「西側のスパイなんだろ?」

7歳のファルカは、ボロボロのコートを握りしめ、涙目で震えていた。

「うぅ…」

そこへ、紳士的な男子小学生が駆け寄り、声を張る。

「やめろ! 女の子を泣かせてるじゃないか!」

「やっべー!」

「あ、チクられる前に総員退避!」

子供たちが散り散りに逃げ、男子小学生がファルカに手を差し伸べる。

「あ!…酷い…君、怪我してるじゃないか!」

ファルカが涙を拭い、彼を見上げる。

「あ…」

 

 

 

 

 

 

 

ファルカが缶ビールを握り、静かに続ける。

「これが私の初恋だったんです。でも、私は西側にいるお爺ちゃんの元に帰ると…せめて最後にマクドナルドに連れて行って、ハンバーガー食おうと彼から言ったんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1973年

ベルリン、別れの瞬間―――――ベルリンの壁の影で、ファルカと紳士的な男子小学生が立ち尽くす。冷たい風が二人の間を吹き抜ける。

男子小学生が困惑した声で言う。

「え…? 何で…」

ファルカが俯き、震える声で答える。

「ごめんなさい…私、お爺ちゃんの元に行かないと…これから先どうなるかわからないし…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アカリが目を丸くし、叫ぶ。

「自分から断ったんですか!?」

ファルカが淡々と頷く。

「そうですが」

アカリが身を乗り出し、言う。

「せめて別れ方ってのは…!」

ファルカが目を閉じ、苦々しく続ける。

「あの頃は冷戦真っ只中でしたからね。西側のスパイって思われるのが嫌でしたから…こうして私の初恋はあっけなく終わったんです。ですが、それが本当に終わりだったら、どんなに救われたことか…!」

「…」

アカリが言葉を失い、ファルカの横顔を見つめる。彼女の心には、キャサリンの「未来はない」という言葉や、自身のマルチ商法での迷いが重なる。

ファルカが缶ビールをテーブルに置き、言う。

「アカリさん、貴女のシナリオにキズナアイさんの恋愛を入れたのは、きっと貴女自身の心のどこかで、恋愛の幻想に囚われてるからでしょう」

「え!? いや、アカリ、そんなつもりじゃ…!」

アカリが慌てて否定する。

ファルカが冷たく笑う。

「恋愛は資本主義の罠だと言いましたが…私もリィズ先輩に心を乱された愚か者です。ヒロインのモデルが彼女だと、貴女に見抜かれた時点で、私の負けですよ」

アカリがハッと息を呑む。

「ファルカさん…」

ファルカがモニターに目を戻し、言う。

「…マックは、私にとってあの日のベルリンを思い出す場所。だから嫌いなんです。さ、作業に戻りましょう。冬コミまで時間はありません」

アカリがノートパソコンを手に、呟く。

「うん…でも、ファルカさんの初恋、なんかアカリのシナリオに活かせそう!」

ファルカが一瞬微笑み、言う。

「貴女らしい発想ですね。なら、その情熱を『ミライアカリオルタネイティヴ』にぶつけて、トップVTuberになってください」

スマホが光り、萌実からのメッセージが表示される。

「アカリちゃん、ファルカさん、シナリオめっちゃいい感じ! 冬コミ、絶対成功するよ!(´ω`)」

アカリの唇に笑みが戻る。だが、冬コミの締め切りが迫る中、ファルカの激しい告白とアカリの戸惑いで異様な熱気を帯びていた。冷えた部屋にはモニターの光が揺れ、『ミライアカリオルタネイティヴ』のシナリオとキャラクターデザインが映し出されている。アカリは椅子に座り、ファルカの1973年のベルリンでの初恋の続きに耳を傾け、彼女の心の傷に触れる。ファルカは空の缶ビールを握り、過去の記憶に声を震わせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1973年:ドイツ連邦共和国、ミュンヘン

西ドイツのミュンヘン、冬の街角は雪で白く染まっていた。ファルカは祖父の家に身を寄せ、マクドナルドのハンバーガーを手に、幸せそうに口ずさむ。

「♪…美味しい」

祖父のヨハネスが笑顔で言う。

「また食べたいのかな?」

「うん!…あ(あの子は…)!!」

ファルカがハンバーガーを握りしめ、凍りつく。雪の向こうに、ベルリンで別れた初恋の男子小学生の姿が見える。だが、彼の目は冷たく、ファルカを拒絶するように遠ざかる。

……

ファルカが雪の中で立ち尽くし、呟く。

「…消え失せろ。叛乱分子」

……

彼女の声が震え、涙が頬を伝う。

「消え失せろ…国賊!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファルカが缶ビールを叩きつけ、声を張り上げる。

「男は平気で嘘を吐く! 男共は自分は何もしていないと言いつつ本当は未成年の女の子と援助交際しているに違いありません!! キズナアイさんだって陰でコソコソアカリさんの事を変態バーチャル芸人と小馬鹿しているに決まっています!男はこの世の害毒です! 我々は世の男性を鉄槌下さねばならないのです! 消え失せろ! 叛乱分子! さぁ、アカリさんも一緒に! 消え失せろ! 叛乱分子!」

アカリが気圧され、戸惑いながら呟く。

「き…消え失せろ…叛乱分子」

ファルカがさらに声を荒げる。

「声が小さい! 消え失せろ叛乱分子! 国賊!」

アカリが勢いに乗り、叫ぶ。

「消え失せろ! 叛乱分子!」

「消え失せろ! 叛乱分子!」

ファルカが拳を振り上げる。

「消え失せろ…叛乱分子!」

アカリが続く。

「消え失せろ…」

ファルカが声を低くする。

《この指に止まれ♪ほらねGirl meets Girl! ♪》

スマホの着信音が響き、ファルカがハッと我に返る。

「はい…え? ―――はい! 分かりました…」

その間にも、アカリの口は止まらない。

「消え失せろ!叛乱分子…」

「アカリさん、煩いですよ! 黙っててくれませんか!――――はい! 今すぐ行きます!」

ピッ

ファルカは苛立った様子で通話を切り、ふうっと深く息を吐く。

「―――偶には気分転換しなきゃダメですね」

アカリがぼんやりと呟く。

「…皆…消え失せろ」

彼女の声がさらに暗く、冷たくなる。

「皆、雪に埋もれて死んじゃえ」

花野蜜が作業室のドアを開け、明るい声で言う。

「アカリちゃん!」

「蜜先生、どうしたの?」

アカリがハッと振り返る。

花野蜜が微笑み、手を引く。

「外に行こう。いい景色よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ENTUMビルの屋上庭園は、雪が静かに降り積もる幻想的な空間に変わっていた。雪化粧をまとった植木と、街灯の柔らかな光が、まるで別世界のような雰囲気を醸し出す。アカリは金髪サイドテールを揺らし、雪を見上げて目を輝かせる。花野蜜は『マンガで分かるマルチ商法対処法マニュアル』を手に微笑み、二コラとカタリーナは寄り添って雪を眺め、月夜ソラは元気よく雪をつかもうと手を伸ばす。冬コミの締め切りが迫る中、この一瞬の休息は、ENTUMの仲間たちの絆を深めていた。

アカリが雪を手に取り、叫ぶ。

「わぁ…雪だ!」

月夜ソラが目をキラキラさせ、言う。

「雪と言えば雪合戦ですよ!」

花野蜜がクスクス笑い、言う。

「ふふ…まだまだ積もってないわよ」

「あ、そうっすか」

月夜ソラが少し肩を落とす。

アカリが雪を見上げ、呟く。

「綺麗…」

二コラがコートを羽織りながら言う。

「ここの屋上庭園は、冬になると雪が積もるな」

カタリーナが酒瓶を手に、微笑む。

「雪見酒ね」

「雪見酒…いいですね!それ!」

アカリが目を輝かせる。

花野蜜が笑う。

「ふふふ」

アカリが頷く。

「うんうん」

二コラも微笑む。

「…ふふ」

カタリーナが雪を見上げ、二コラの手を握り、囁く。

「アンタと一緒にいて嬉しいよ…二コラ」

二コラがカタリーナの手を握り返し、微笑む。

「そうか…私も一緒にいて嬉しいよ…」

カタリーナが笑う。

「ふふ」

二コラも笑う。

「ふふふ」

アカリが雪を見上げ、拳を握り、叫ぶ。

「私たちの戦いは始まったばかり…!」

花野蜜が歌に合わせて手を振る。

「♪」

アカリが心の中で決意する。

「(行く行くは私がトップVTuberに! アイちゃんの座を!)」

スマホが光り、萌実からのメッセージが表示される。

「アカリちゃん、屋上庭園、めっちゃ綺麗だね! 主題歌の最終版、明日聴かせて!(´ω`)」

アカリの唇に力強い笑みが浮かぶ。雪の屋上庭園で、ENTUMの絆とアカリの情熱が、冬コミへの道を照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新宿の夜、スナック『ミツコ』のカウンターは、ほのかな照明と昭和の歌謡曲で温かい雰囲気に包まれていた。カウンターの向こうで、ママのミツコがグラスを磨きながら、常連客たちと軽快に会話を交わす。夕呼は焼酎の水割りを手に、ベアトリクスは赤ワインを傾け、ENTUMのVTuber事業の話題で盛り上がっていた。そこへ、予想外の新顔が現れ、場に新たな風を吹き込む。

ミツコがグラスを拭きながら、ニヤリと笑う。

「最近、どうしてるのかしら?」

夕呼がキョトンとして、グラスを置く。

「ん?」

「アレよアレ」

ミツコが意味深に目を細める。

ベアトリクスがワインを一口飲み、冷静に言う。

「VTuber事業のことかしら?」

「それね」

ミツコが手を叩き、笑う。

ベアトリクスが首をかしげる。

「ん?」

ミツコがカウンターの奥に目をやり、言う。

「あら? 見かけない顔ね」

新顔の二人が立ち上がり、元気よく名乗る。

「初めまして、ENTUM所属のニーツ/VT-212です!」

ニーツが敬礼ポーズで自己紹介。彼女のメカニカルなデザインとクールな声が、場に近未来的な空気を加える。

「同じく、作曲作詞VTuberのミディでーす♪」

ミディが弾ける笑顔で手を振る。彼女のカラフルな髪とポップな衣装が、スナックのレトロな雰囲気に鮮やかなコントラストを生む。

ベアトリクスが眉をひそめ、ワイングラスを握りしめる。

「入れた覚えないが…」

ミディがウインクし、軽快に答える。

「エイレーン社長に気に入られて!」

ベアトリクスが目を細め、声を低くする。

「制裁!」

「ひゃっ!」

ミディがカウンターの後ろに隠れ、ニーツが冷静にフォローする。

「ベアトリクスさん、落ち着いてください。エイレーン社長の直々のスカウトです。私たちは『ミライアカリオルタネイティヴ』の音楽とプロモーションを強化するために加入しました」

夕呼が笑いながら言う。

「へぇ、エイレーンもやるじゃない。で、冬コミはどうなってるの? アカリちゃんたちのゲーム、間に合う?」

ミツコが興味津々に身を乗り出す。

「そうそう! アカリちゃん、トップVTuber目指してるって聞いたけど、最近マルチ商法のトラブルがあったとか?」

ベアトリクスがため息をつき、言う。

「その件は解決済み。キャサリン・ワードのネオアムウェイは倒産し、アカリは借金を清算してENTUMに復帰した。今はファルカや花野蜜、萌実たちと冬コミのブース準備に追われてるわ」

ミディが手を挙げ、興奮気味に言う。

「私、萌実ちゃんの主題歌のアレンジ手伝ってるんです! 『ミライアカリオルタネイティヴ』のテーマ、めっちゃエモいですよ!」

ニーツが頷き、補足する。

「私はプロモーション動画の編集を担当。シナリオに駒木咲代子中尉の恋愛要素を入れたアカリのアイデア、リスナーに刺さると思います」

夕呼がグラスを掲げ、言う。

「ほぉ、アカリちゃん、シナリオライターとしても才能発揮してるの。WUGとのコラボも楽しみね」

ミツコがグラスを磨きながら笑う。

「アカリちゃん、変態バーチャル芸人のレッテルも、冬コミで吹っ飛ばしそうね。で、ベアトリクス、ENTUMの次の一手は?」

ベアトリクスがワインを飲み干し、ニヤリと笑う。

「冬コミで『ミライアカリオルタネイティヴ』を成功させたら、ENTUMはVTuber業界のトップを狙う。新人二人も、しっかり働いてもらうわよ」

ミディがビクッとし、ニーツが冷静に答える。

「了解しました。ENTUMの未来、共に切り開きます」

カウンターに笑い声が響き、スナック『ミツコ』はENTUMの新たな挑戦を祝福する場となった。

ミツコが焼酎を注ぎ、夕呼とベアトリクスがENTUMの最新動向を語り合う中、話題はアカリの新作動画『こんな男性は嫌だ!5選』に集中していた。カウンターの隅では、ファルカ、二コラ、カタリーナが動画の反響について熱く議論し、新加入のニーツ/VT-212とミディも加わり、スナックはENTUMの新たなエネルギーで活気づいていた。

 

 

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